この悲運の主人公に救済を!   作:第22SAS連隊隊員

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久しぶりのオリジナルエピソードとなります。


Episode21 「U」NIQUE THE WORK

王都での義賊騒ぎから数週間後、カズマ達はアクセルから遠く離れた町にいた。

冒険者ギルドで依頼を探していたところ、離れた町で不動産を経営している人間から「所有している借家に開かない地下室の扉があるので、何とかして欲しい」という依頼を見つけたのだ。

よくあるモンスターの討伐や、指定された材料の収集ではなく、開かずの扉を開けて欲しいという珍しい依頼内容にカズマ達は興味を惹かれた。

 

「もしかしたら、扉の向こうにはとんでもないお宝が眠っていて、報酬として一部が貰えるかも!」

 

まだ受けるかどうかも決めていないのに、皮算用で莫大な報酬を夢見るアクアに呆れつつも。中に何が入っているか分からない、という不確定要素に少なからず心が動いたカズマは、この依頼を引き受けることにした。

乗り合い馬車に乗りアクセルを発ってから数時間後、依頼人が住む町に到着したカズマ達は、詳しい事情を聞くために依頼人が経営する不動産店を探していた。

 

「えーと、ここを右だな」

 

手にしたメモに目を通しながら、カズマが角を右に曲がる。後ろを歩いていた千翼達四人もあとに続いて曲がったところで、アクアが不満の声を上げた。

 

「ねー、カズマさーん。まだ着かないのー?」

 

「もう少しの辛抱だ。んっと、目印は通りに突き出た赤い看板……あった、あれか!」

 

人々が行き交う通りに軒を連ねる店の数々の内、メモに書いてある看板を探していると、通りの真上に突き出ている真っ赤な吊り下げ看板を見つけた。

目印を見つけたカズマは、メモをポケットにしまうと目的地である店の前に立つ。扉に手をかけてゆっくりと押し込むと、取り付けられたドアベルが涼やかな音を立ててカズマ達の来店を知らせた。

 

「おや、いらっしゃいませ。御用はなんでしょうか?」

 

店内のカウンターで仕事をしていた中年の男が顔を上げ、持っていたペンを胸ポケットにしまうと、かけている眼鏡の位置を直した。

 

「アクセルのギルドで依頼を引き受けたカズマです。依頼内容の確認にきました」

 

「おお、あなたが! 依頼を引き受けて下さり、ありがとうございます」

 

中年の男がカズマ達に向かって頭を下げる。五人も同じく頭を下げて礼を返すと、挨拶もそこそこに中年の男は早速依頼内容の説明を始めた。

 

「お願いしたいのは依頼書に書かれていた通り、ある借家の地下室の扉を開けて欲しいのです。数ヶ月前にその家に住んでいた方が亡くなりまして、後片付けをしていたのですが……」

 

「地下室を確認しようとしたら、扉が開かなかった」

 

「はい、その通りです」

 

ダクネスの言葉に男は頷く。

 

「その方は防犯に不安があるから、と言って古くなった地下室の扉を交換したいと言ってきました。私も以前から扉を交換しようと思っていたので、ちょうど良いと思いそれを了承したのですが……」

 

「何かトラブルがあったのですか?」

 

「いえ、特にトラブルは無かったのですが。住んでいる方が「新しい扉や交換作業、それにかかる費用は全て払うから、扉の交換は自分にさせて欲しい」と言ってきたのです」

 

「普通は業者に頼むよな……」

 

「なんでそこまでして自分でやろうとしたんだろ……?」

 

住民の不可解な行動を聞いたカズマと千翼は、揃って腕を組み、首を傾げる。

 

「私も最初は不思議に思ったのですが、中にとても大事な物を保管するから普通の扉では安心できない。何か問題が発生したら責任は全て自分が負う。と言い切られたので、本人に任せることにしました。そして扉を交換してから二、三ヶ月ほどが経過した時でした。いつもならキチンと振り込まれているはずの家賃が入っていなかったので、不思議に思って家に確認しにいったところ……」

 

「その人は亡くなっていた。ですか?」

 

「はい……敷地内に生えている木にロープをかけ、それで自分の首を……」

 

男の口から伝えられた借家の住人の最期を聞き。カズマ達の眉間に一瞬だけ皺が刻まれる。

事の経緯を話し終えた男は大きく息を吐くと、気を取り直すように姿勢を正した。

 

「改めて皆さんにお願いします。開かなくなった地下室への扉をどうにかしていただけないでしょうか。私としても地下室を確認しないと、いつまで経っても借家を次の人に貸すことができず大変困っています。どうかよろしくお願いします」

 

 

◆◆◆

 

 

依頼人の男から事情を聞き終えたカズマ達は、件の扉が具体的にどのような物かを確認するために、男に家まで案内してもらった。

人が集まる町の中央を離れ、住宅がまばらに建つ郊外を抜け、畑すら無いような町外れをしばらく歩いた所にその家はあった。

 

「ここがその家です」

 

男が手の平で差した家は、煙突が付いた赤い屋根の小さな家であり、一人か二人で暮らすに向いていそうな大きさである。

ポケットから男が鍵を取り出して玄関の扉を開け、中に入るとカズマ達も後を追って家の中に入った。

中は最低限の家具しか置かれておらず、こざっぱりとした印象を受ける。定期的に掃除がされているらしく、目立った汚れや埃は見当たらなかった。

部屋の隅には、そのままテーブルや椅子に使えそうな大きめの箱がいくつか置かれている。

こちらです。と言って男が隣の部屋に移動して、五人はその後に続く。

 

「これが例の開かずの扉になります」

 

隣の部屋の壁には、真新しい一枚の鉄扉が取り付けられていた。

灰色の扉には丸いドアノブと、そのすぐ下に鍵穴がある。

一見すれば何の特徴も変哲も無い、まさに普通の扉であった。

 

「鍵は家のテーブルの上に置いてありました。当初はこれで開くと思ったのですが……」

 

男はポケットから玄関の物とは違う鍵を取り出す。それを鉄扉の鍵穴に差し込んで回すと、部屋に小さな音が響いた。

鍵を抜いて男がノブを掴んで回し、前後に揺するが、扉は音を立てるばかりで開く気配は無かった。

 

「手応えはあるのですが、このように全く開かないのです。試してみますか?」

 

頷いて鍵を受け取ったカズマは、それを扉の鍵穴に差し込んでまずは左に回す。音が聞こえて施錠されたことを確認してから、今度はゆっくりと右に回した。

カチリ、という小気味の良い音と共に、鍵越しに微かな振動が手に伝わる。

 

「……うん、確かに手応えがあるな」

 

鍵を抜いたカズマはドアノブに手をかけ、捻ってから手前に引こうとする。固い音を立てて、扉は全く動かなかった。

今度は逆に押し込もうとするものの、またしても扉は音を立てるだけで動かない。

 

「押しても引いてもダメ……確かに開かないな」

 

「これまで解錠のスキルを持った方や、扉一枚で済むならと力自慢の方に無理矢理開けようとしてもらったのですが、結果は惨敗。解錠に挑戦した方からは、こんなタイプの鍵は見たことがないと言われ。扉を壊そうとした方からは、アダマンタイトよりも硬いと言われました」

 

「そこまでして開かないなら、いっそのこと壁ごと壊した方が早くないですか? 面倒臭いしそうしましょう!」

 

「だ、ダメですよ! そんなことをしたら修繕にいくらかかるか……それだけでなく、家そのものの価値も下がってしまうから、私としては絶対に避けたいんです」

 

めぐみんの乱暴な提案に不動産の男は慌てた様子で扉に張り付いた。恐らく爆裂魔法でこの問題を解決するつもりだったらしく、めぐみんは残念そうに引き下がる。力任せにも程がある解決方法を提案した彼女に、カズマは頭を軽く小突いた。

 

「そういえば、この家には物が殆ど無いのだが、住んでいた男の遺品はどこに?」

 

「遺品は種類ごとに分けて、先程の部屋に置いてある箱にしまってあります。もしかしたら扉を開ける手がかりがあるかもしれないので、家の中にあった物は全て箱に入っています」

 

ダクネスの質問に、男は先程自分たちが通った部屋の方を指差した。

 

「じゃあ、それを調べるしかないな」

 

「家を傷付けたり壊したりしない限りは自由に調べて構いません。申し訳ありませんが私も仕事がありますので、ここら辺で失礼させていただきます。あとはよろしくお願いします」

 

男は頭を下げると、玄関の鍵をカズマに手渡して家を出て行った。

残された五人が隣の部屋を覗くと、件の箱が置かれている。

 

「それじゃ、調査開始だな」

 

カズマは一つ目の箱の蓋を開けた。中には食器類や調理器具が入っており、割れないように丸めた新聞紙が隙間に捻じ込まれている。

手始めに緩衝材の新聞紙を取り出し、次に皿やナイフ、フライパンや鍋を一つ一つ箱から取り出す。

五人で手分けして皿の模様や、ナイフやフォークにおかしな点が無いかつぶさに調べるが、これといった成果は得られなかった。

出した物を箱に入れ直し、次の箱の蓋を開ける。今度は本類が入っていた。

 

「これは期待できそうだな」

 

日記やメモ帳などが見つかれば、中に扉を開けるヒントが書かれている可能性は高い。

期待に胸を膨らませつつ、カズマは一冊ずつ本を取り出した。

四人はそれぞれ本を受け取ると、パラパラとページを捲って中身を確認する。

手書きで何か書かれていないか、メモ用紙などが挟まっていないか一ページごとに確かめるが、収穫は無かった。

その後も箱の中に入っている本を調べるが、出てくるのは雑誌や小説ばかりで結果は空振り。オマケに日記やメモの類いも見つからなかった。

カズマは溜息を吐きながら本を箱に戻し、次の箱の蓋に手をかける。

蓋を持ち上げると、今度は衣類が納められていた。

丁寧に畳まれたシャツや防寒用のコート、寝間着などが入っており。一着取り出しては広げてポケットに何か入っていないか確認する。

 

「ん?」

 

「なにか見つかったのか?」

 

ダクネスの質問に、カズマは無言で箱の中から折り畳まれた一枚の黒い服を取り出す。広げるとそれは黒いジャケットであることがわかった。

そして肩の部分には、4Cと書かれたパッチが縫い付けられている。

 

「カズマ、それってもしかして……!」

 

「ああ。4Cって確か、前に千翼がいた特殊部隊だっけか?」

 

「うん。野座間製薬が設立した、対アマゾン用の特殊部隊だよ。俺もかつて所属していたし、イユもそこにいた……」

 

「てことは、ここの住人は……」

 

五人が箱の中を覗き込む。

中には、綺麗に折り畳まれた分厚い黒い服――この世界には存在しない、化学繊維で作られた防刃ベストが納められていた。

更にその隣には、拳銃やマガジンを携帯するためのポーチが付いたタクティカルベスト、肘や膝を守るためのプロテクター、丈夫そうなアーミーブーツも一緒に入っていた。

 

「ここの住人、転生者だったのか……」

 

「それも4Cのね……」

 

「それじゃあ、あの扉ってもしかして……」

 

めぐみんの呟きに、転生者である二人は首を縦に振って肯定する。

 

「十中八九、チートスキルで作った物で間違いないだろうな」

 

「だから今まで誰も開けることも、壊すこともできなかったんだ」

 

「ちょっと待ってよ。転生者が作ったなら、本人以外は開けられないように出来ててもおかしくないわよ。もしそうだったらどうするのよ?」

 

「いや、それは絶対に無いな」

 

他ならぬ転生者を送り出した女神の疑問に、カズマはキッパリと言い切った。

 

「もし特定の人間以外が開けられないように出来ているなら、そもそも扉に鍵穴なんて付けないし、鍵だって処分しているはずだ。両方あるってことは、必ず開ける方法があるってことだ。そうと分かったら遺品を徹底的に調べるぞ」

 

やる気に満ちたカズマの声に、四人は同意して頷く。

それぞれ遺品の装備を手に取ると、不審な点がないか調べ始めた。

ヘルメットやプロテクターのあちこちを叩くアクアとめぐみん、アーミーブーツの中敷きを取り出して靴底を調べるダクネス、防刃ベストの縫い目の一つ一つを確かめる千翼。

そしてカズマはタクティカルベストのマガジンポーチの一つを開けると、中にはポーチの形が崩れないように丸められた紙が押し込まれていた。

それを見てフラップを閉じようとしたが、もしやと思い、入っている紙を一つ取り出しては破かないように慎重に広げ。また一つ取り出しては広げる。

一つ目のポーチの中身を全て取り出すが、全て白紙だったので隣のポーチも同じように中の紙を広げて一枚ずつ確かめる。

このポーチも空振りに終わり、三つ目の中身を調べていると、ある一枚の紙を広げてカズマの動きが止まった。

 

「……やっぱり、この世界ではこれが一番安全なんだな」

 

しわくちゃの紙を広げて微かに笑みを浮かべるカズマを見て、仲間達が集まってくる。

紙に書かれている文章を読めないめぐみんとダクネスの為に、カズマは音読を始めた。

 

『この文章が読めるということは、きっと善良な心を持った日本人なのだろう。頼む、地下室にあるものを全て破壊してくれ。そして絶対に誰にも渡さないでくれ。』

『地下室へ続く扉には鍵がかけてあるが、あれは特殊な方法を使わないと開かないようになっている。万が一に備えて答えは直接書かない。ヒントは形状記憶合金、熱、冷気。』

『そして、俺の犯した過ちの責任を押し付けるようなこと、その後始末さえも押し付けるような真似をさせてしまって本当に申し訳ない。どうか愚かな俺を許してくれ。』

 

「……けーじょーきおくごーきんって、なに?」

 

「ああもう、ここまで書いたなら答えも書いてくださいよ!」

 

「カズマ、このヒントで何か分かりそうか?」

 

女性陣は紙に書かれていた文章に対する感想を口にする。

 

「いま考えてる。ちょっと話しかけないでくれ」

 

「形状記憶合金……金属製の遺品って何かあったっけ?」

 

反対に男二人は、ヒントに書かれていたキーワードを元に、扉を開ける答えを推理していた。

金属製の物が怪しいと考えた千翼は、今まで調べた遺品の中で該当する物を思い出している。

カズマはしわくちゃの紙を片手に小さく唸り声を上げる。時折ぶつぶつと、ヒントである三つの単語を繰り返していた。

やがて、答えが分かったのか小さな声を漏らすと、ポケットから鍵を取り出した。

 

「どうしました? 扉の開け方がわかったんですか?」

 

「ああ、バッチリだ。それにしてもよく出来てるな、メモが読めないと絶対に分からないし、読めてもヒントの意味が分からないと開かない方法で鍵をかけるなんて」

 

めぐみんの質問に答えつつ、しきりに感心しながら右手で鍵を持ち、左手の人差し指を立てるとカズマは魔法を唱える。

 

「ティンダー!」

 

初級魔法の一つ、小さな火種を指先に灯すティンダーを唱えると、カズマは指先の火で鍵の先端を炙り始めた。

 

「何をしているんだ?」

 

「まぁ、見てなって」

 

いきなり訳の分からない行動を取り始めたカズマに、ダクネスは不思議そうに尋ねる。当の本人は薄く笑みを浮かべながら、鍵を炙り続けた。

そして炙り始めてから一分ほどが経過した時だった、カズマを除いた四人が声を上げる。

 

『あっ!』

 

五つの視線が集まる中で、鍵の先端が生き物のように動き始めた。まるでスライムのように形を変え、やがて先程とは全く違う形の鍵が出来上がった。

形状の変化した鍵を持ってカズマが再び開かずの扉に向かうと、鍵を穴に差し込む。ゆっくりと回すと、小さな音が鳴った。

口端に笑みを浮かべながら鍵を抜くと、カズマは再び左手の人差し指を鍵の先端に向ける。

 

「フリーズ!」

 

今度は指先から冷気が吹き出し、熱された鍵を冷やしてゆく。

しばらくすると先程と同じように鍵が動き始め、またしても違う形に変わった。

そして鍵を差し込み、再びゆっくりと回す。またもや小さな音がなり、カズマは頷きながら鍵を抜いた。

ドアノブに手をかけて、回す。手前に引くと、驚くほどあっさりと扉は開いた。

ついに開かずの扉を開けることに成功したカズマは、得意げな笑みを浮かべる。

 

「カズマ、その鍵は一体……」

 

「ああ、この鍵は形状記憶合金……まぁ、要するに温度で形が変わる金属で作られているんだ。んで、常温、高温、低温の三つの温度で違う鍵に変形して、それぞれの鍵を使わないと開かないようになっていたんだよ」

 

「なるほど。だから解錠スキルを使っても扉が開かなかったのか……本当によく出来ているな」

 

ダクネスが腕を組みながら感心したようにしきりに頷く。アクア、めぐみん、千翼の三人は遂に開かれた扉の向こうに広がる暗闇を覗いていた。

 

「さて、問題の扉は開いたわけだが……。この先には何が眠っているやら」

 

「それはもちろんお宝よ! ここまで厳重に鍵をかけていたんだから、間違いなく凄いお宝に違いないわ! 今まで誰も開けることが出来なかったんだから、報酬としてそれを貰う権利が私たちにはあるわ」

 

「仮にお宝だとしたら、なんでさっきのメモに破壊してくれって書いてあったんだよ。とにかく地下室を調べるぞ」

 

期待に満ちた声で地下室にある物を予想するアクア。

その夢を醒ますようにツッコミを入れながら、カズマは箱からランタンを取り出すと、ティンダーで火を点ける。

明るさを調節すると地下室への入り口に立ち。よし、と小さく気合いを入れ階段を下りていく。

小さな家だから、地下室の規模もそれに合わせた物だろう。そうとは分かっていても、何が眠っているか分からない暗い地下室。というのは、否応なしに不安をかき立てた。

更に以前住んでいた住人は自殺してこの世を去ったという事実も相まって、今にも暗闇から何かが襲いかかってくるのでは、という恐怖がカズマの心を苛んでいた。

その度に恐怖を振り払うように身震いさせ、無理矢理にでも足を下ろす。一歩、また一歩と下に進む度に石階段を踏む硬い足音が鳴る。

やがて目的の地下室に辿り着いたらしく、段差が無くなった。

カズマが持っているランタンを高く掲げるが、光量が足りないため壁際に棚があることと、その棚に四角い物が置かれていることしか分からない。

 

「よく見えないな……」

 

「天井を見て下さい。あれって照明用のランタンじゃないですか?」

 

薄い暗闇で目を凝らすカズマの後ろから、めぐみんが天井に向かって指を差す。

彼女の言うとおり、地下室の天井には照明用であろう大きなランタンの影が薄らと見える。

それを見たカズマは左手を指鉄砲の形にし、狙いを定めると天井のランタンに向かって、ティンダーで火種を飛ばした。

人差し指の先端から発射された小さな火は、狙い通りにランタンの中に飛び込み、芯に抱きついて明かりを灯す。

時間と共に芯の火が大きくなっていき、やがて地下室の全容が分かるほどの明るさになった。

 

「……このケース、一体なんだ?」

 

このまま一人暮らし用の部屋として使えそうな程の広さの地下室。その壁に設置された棚に隙間無く、取っ手が付いた様々な大きさの樹脂製ケースが収められていた。

棚の最下段にだけは、金属製の長方形のケースがこれまた隙間無く並べられている。

試しにカズマが近くにあった小さなケースを一つ取り出し、慎重に床に置く。取っ手の左右のロックを外すと、ゆっくりと蓋を開けた。

 

「これは……!」

 

「まさか……!」

 

男二人は、驚きで目を見開き。

 

「あれ……これどっかで見たことあるような……」

 

「なんですか、これ?」

 

「何かのマジックアイテムか?」

 

女三人は首を傾げた。

露わになったケースの中身。保管されている物の形に合わせて切り取られたスポンジに、それは収まっていた。

鉄と強化プラスチックで作られ、鉛で出来た弾丸を発射する道具――この世界では完全なオーバーテクノロジーである拳銃と、弾丸を込めるマガジンがケースに収められていた。

 

「これ……全部か?」

 

「下の金属ケースは弾薬箱か……」

 

視線を部屋の隅から隅まで走らせ、棚に置かれているケースの数々を見たカズマと千翼は、その中に入っているであろう多種多様な銃器と弾薬の数々を想像し、冷や汗をかきながら身を震わせた。

この家にかつて住んでいた住人は、一体何を考えてこれだけの銃を作ったのだろうか。そもそも、材料も設備も無いこの世界でどのようにして製造したのだろう。

目の前に広がる保管されたケースの数々。その中に眠っている武器と、何の目的で、何の理由で作ったのかが分からない自殺した家の住人。頭の中でそれらがグルグルと回り、パニックになったカズマは今にも逃げ出したくなった。

 

「カズマ、チヒロ! 二人とも自分たちだけで納得していないで、それが何なのか教えて下さい!」

 

めぐみんの声で、正気を失いかけていたカズマは我に返った。

確かに銃は危険な物だが、ひとりでに動いて襲いかかってくるような物では無い。下手に触らなければ暴発の危険はないし、そもそも弾が込められていなければ、ただの鉄の塊だ。

自分にそう言い聞かせて落ち着こうと深呼吸するが、換気されていない地下室の淀んだ空気を肺一杯に吸い込んでしまい、盛大にむせる。

しばらく激しく咳き込み、ようやく落ち着いたところでケースの中に入っている物体について、めぐみんに説明した。

 

「これは……銃だ」

 

「ジュウ? それはなんですか?」

 

「あー、思い出した! 銃よ銃!」

 

首を傾げて疑問符を浮かべるめぐみんと、頭の中に引っ掛かっていた物の正体が判明し、嬉しそうな声を上げるアクア。

一先ずアクアのことは置いておき、千翼は銃がどういった物なのかめぐみんに掻い摘まんで説明する。

 

「簡単に言うと、火薬の力で指先くらいの金属の塊を飛ばす武器だよ。大砲をポケットに入るくらい小さくしたような物さ」

 

「そんなに小さくしたら、せいぜい相手を脅かす程度のことしか出来ないのではないか?」

 

「ダクネス。俺達の世界の戦争では、これを使うんだ。実際にこの銃で今まで数え切れないほどの人間が死んだ」

 

銃を知らないが故にその危険性を理解出来ないダクネスに、カズマは自分の世界で銃がどのように使われ、そしてどれだけの犠牲者が出たのかを話す。

戦争に使われ、多くの犠牲者を出した。という話を聞いて、ケースに収まっている奇妙な形の物体がどれほど恐ろしい物なのか。本能的に理解したダクネスは、わずかに後退った。

 

「ということは……この地下室にある箱は全て……」

 

「うん、中身は全部銃だと思う」

 

自分の疑問を肯定する千翼の言葉に、ダクネスは固唾を飲み込む。

この地下室に保管されている大小のケースの数々。それら一つ一つに容易く人の命を奪うことが出来る道具が納められている。

自分たちがどれだけ恐ろしい場所にいるのか理解しためぐみんとダクネスは、寒気に身を震わせた。

 

「あれ? ねぇあそこ。なんか机があるわよ」

 

そんな空気を知ってか知らずか、アクアが部屋の隅を指差す。そこには、小さな机が置かれていた。

五人が下りてきた階段の脇に置かれているため、上から下りてくるとちょうど死角になる位置だった。

そしてその上には一冊の手帳が置かれている。

カズマは机に近付くと、手帳を手に取り最初の一ページ目を開く。

 

「ねぇねぇ、それってやっぱり日記?」

 

「……みたいだな」

 

「銃を作った理由が書かれているのでしょうか?」

 

「とにかく、読んでみるぞ」

 

軽く咳払いをして、カズマは手帳に書かれている文章を声に出して読み始めた。

 

 

 

○月×日

死んだと思ったら死後の世界で女神から「強力なスキルか装備を一つだけ与えて、異世界に転生させる」なんてフィクションみたいなことが本当に起きるなんて。何にするか悩んだが、様々な物を自由自在に作り出すことが出来る『万物創造』のスキルを選ぶことにした。

 

○月×日

ここは魔王の侵略から最も遠いって聞いていたのに、魔王軍の幹部は来るわ、いきなり大洪水で町がメチャクチャになるわ、巨大な兵器がやってくるわでとてもじゃないが安心して暮らせない。ここじゃなくて他の町に引っ越そう。

 

○月×日

離れた場所に良さそうな町があったので、そこに引っ越した。もしかしたら前と同じようなことが起こるかもしれないので、何かあったらすぐに動けるように町外れに家を借りた。ここなら落ち着いて暮らせそうだ。

 

○月×日

生活も安定してきたし、そろそろ魔王討伐に向けての行動を真剣に考えようと思う。そもそも俺がこの世界に転生した理由は、強大な魔王を倒すためだ。その役目を果たさねば。

 

○月×日

情けない話だが俺は戦闘の評価は散々だった。だけど、4Cに居た頃は装備の管理やメンテナンスを担当していたから、銃の構造については誰よりも熟知している。今こそこの知識を生かすときだ!

 

○月×日

スキルを使ってまずは試しに拳銃を作ってみた。サイズも小さいし構造も単純だから簡単にできた。弾薬も作成して試し撃ちしてみたが、動作も完璧だ。この調子でいろんな銃を作ってみよう。

 

○月×日

あれからありとあらゆる種類の銃を作っては試し撃ちをしてみた。全て動作に問題なし。防弾チョッキを始めとした装備も作ってテストをしたが、こちらも全てクリア。いよいよ本格的な量産体制に入ろうと思う。

剣や弓矢が主な武器となっているこの世界で、銃は間違いなく最強の武器だ。これで武装した討伐軍を組めば、魔王だってきっと倒せるはずだ!

 

 

 

「ん……?」

 

ページを捲って次の日記を読もうとしたカズマだったが、文章が目に入るとわずかに眉を上げて声を漏らす。

 

「どうかしましたか?」

 

「……いや」

 

めぐみんの質問に首を軽く横に振って流す。

手帳に書かれているその文字は、震えていた。

 

 

 

○月×日

俺はなんてバカなんだ。魔王を倒すことばかり考えてその後のことを全く考えていなかった。

仮に魔王を倒したところで、今度は銃を手にした国が侵略戦争に乗り出すに違いない。なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだ。

 

○月×日

あれから色々と考えてみた。別に自分が動かなくても、他の人間が、それこそ転生者が魔王を倒してくれるのではないか?

しかし、対魔王軍の最前線である王都では、日に日に魔王軍の襲撃が激しくなっているらしい。以前は一ヶ月に一回襲撃があるかないか程度のものだったが、それが一ヶ月に二、三回。一週間に一回と、どんどん状況が悪くなっているらしい。

こんな状況では他の転生者も当てにならない。やはり俺が何とかするしかないのか?

 

○月×日

銃がなければ魔王を倒せないかもしれない。だからといって銃を渡せば、それがきっかけで他の国が侵略されかねない。

俺は一体どうすればいいんだ。もう、何もかもが分からない。何が正しいのか、どうするべきなのか分からない。

 

○月×日

もうだめだ、なにもかんがえられない。なにもつくれない。なにもつくりたくない。

つらい、くるしい、いたい。しにたいしにたいしにたいしのう。

 

 

 

最後はもはや、文字として読めるかどうか怪しいほどに乱れた文章を音読し、カズマは手帳を閉じた。

沈黙に満たされた地下室で、時折思い出したようにランタンが燃える音が小さく響く。

住人の正体、大量の銃を作った理由、そして自殺の動機。それら全てが明らかとなって謎が解けたが、五人の胸中は決して晴れ晴れとしたものではなかった。

 

「……で、どうするんだ?」

 

このまま沈黙が続いても埒が開かないと判断したダクネスが、カズマに尋ねる。

 

「……全部破壊しよう。この日記を書いた奴はそれを望んでいたからな」

 

少しだけ間を開けてから、カズマはそう言い切った。

話し合いの結果、地下室に保管してあった銃と弾薬は全て外に運び出し、一箇所に集めた後にめぐみんの爆裂魔法で爆破処理することになった。

五人は地下室から出入り口まで一列に並ぶと、バケツリレー方式でケースを次々と運び出す。

全て運び出した後は、大量のケースを爆破処理する場所までどうやって運ぶのか、そもそもこの町で爆裂魔法を撃っていいような場所はあるのか。という問題が浮上する。

幸いにも家の裏にあった物置小屋から荷車が見つかったため、前者の問題はすぐに解決した。しかし、後者の問題はそう簡単には解決出来ない。

こんな大荷物を持って町を出ようものなら、間違いなく怪しまれるし、荷物を見せろと言われるだろう。それを避けるためにも可能ならば町の中で爆破処理を行いたかった。

 

「とりあえず、依頼人に扉が開いたことと、爆裂魔法を使っていいような場所があるか聞いてくるよ。地下室に何があったかは誤魔化しておく」

 

地下室にあった物については伏せておくとして、一先ずは扉が開いたことを依頼人に報告せねばと、カズマは町へと歩いて行った。

 

 

◆◆◆

 

 

カズマが依頼人の元へ向かってから一時間後。

一向に戻ってこない仲間が心配になり、四人がそろそろ様子を見に行くべきかと考え始めたところで、カズマはようやく戻ってきた。

 

「カズマさんおそーい! 待ちくたびれたわよ!」

 

「わりぃわりぃ。上手い言い訳が中々思いつかなくて時間がかかっちまった」

 

遠慮無く文句を言うアクアに対して、流石のカズマも申し訳なさそうに片手を上げながら謝罪する。

結局なんと言って誤魔化した? とダクネスに尋ねられると。

地下室に期限が過ぎたマジックアイテムの材料が大量に保管されていた。下手に取り扱うと危険な物もあったので、町の中で爆破処理行いたい。と言って誤魔化したとカズマは言う。

 

「それでどうでしたか? やっぱり町中で爆裂魔法は無理ですかね?」

 

「いや、それがな。この先に岩が大量にあるせいで土地改良が出来ない場所があるって話を聞いたんだ。爆破処理するついでに岩をまとめて吹っ飛ばしてくれるなら、是非ともそうしてくれって頼まれたんだよ」

 

「おお、それはラッキーですね! ダメだったらモンスターが町に侵入したとか、理由をでっち上げて爆裂魔法を撃つつもりでしたが、その必要は無くなりましたね」

 

めぐみんの口から飛び出したとんでもない発言にカズマは苦笑いを浮かべる。

何はともあれ、これで町中で爆裂魔法を撃つ許可は下りた。

あとは目的地まで銃の入ったケースを運び、そこで爆破処理を行えば本当の意味で今回の依頼は完了となる。

ここまでの作業で五人とも疲れてはいたが、あと少しだと自分に言い聞かせ各々は最後の作業に取りかかる。

ケースを積んだ荷車を運びながら、更に町から離れる。もはや家や畑すら見当たらず、辛うじて道と呼べるような悪路を悪戦苦闘しながら進み、ようやく目的地に辿り着いた。

カズマが聞いたとおりその場所には一面に、取り除くとなればとんでもなく手間も暇もかかりそうな大小の岩が点在していた。

これを爆破処理するついでにまとめて吹っ飛ばしてもらえるならば、依頼人が爆裂魔法を放つ許可を下ろすのも納得である。

 

「ここですか?」

 

「だな。よーし、最後の作業だ。みんな頑張ろうぜ」

 

どうせやるなら出来る限り盛大に、そして最大限の効果を出すためにケースを岩場の中央にピラミッド状に積み上げる。

そうして全てのケースを積んだあと、どの位置から爆裂魔法を放つべきか、その道のエキスパートであるカズマとめぐみんが場所の目星を付けていると、町の方から放送が聞こえてきた。

 

『住民の皆様にお知らせします。これより町外れにて爆破工事のため爆裂魔法が使われます。住民の方々は慌てずに行動してください。繰り返します――』

 

街の方からスピーカーで、これから爆破処理を行う報せが響く。

めぐみんの立ち位置、残る四人の退避場所がついに決まり、いよいよ実行の時がやってきた。

 

「準備はいいですか?」

 

「おう、ド派手に頼む!」

 

カズマ達が十分に離れ、大きな木の陰に隠れていることを確かめためぐみんは、愛用の杖を握り直すとそれを掲げ、精神を集中させる。

彼女の周りで魔力が渦を巻き、それらは杖の先端の紅玉へと集まってゆく。

口から詠唱が流れるように紡がれ、収束した膨大な魔力が練り上げられてゆく。そして、その時はやって来た。

 

「エクスプロージョン!」

 

空高く爆炎が噴き上がった。

 

 

◆◆◆

 

 

「ねー、カズマさん。今回の仕事はあれで終わったんでしょ? なんで木の根元を掘り返してるの?」

 

最後の大仕事である銃の爆破処理を終え、荷車を返しに借家に戻ってきたカズマ達。

しかし、荷車を納屋に戻したかと思えば、何故かカズマは手に小さなスコップを持って出てきたのだ。

頭上に疑問符を浮かべる仲間達をよそに、家の裏に生えている木の元へ向かったカズマはその根元を掘り出し始めた。

硬い土に苦戦しながら、カズマはアクアの質問に答える。

 

「依頼人のところへ行くときに日記を読み返したんだよ。そしたら最後のページに遺言が書いてあったんだ。ここに何かが埋まってるってな。ほら、読んでみろよ」

 

カズマは懐から件の日記を取り出し、アクアに差し出す。自分の手から日記が離れると、掘り返しを再開した。

受け取ったアクアは言われたとおり最後のページを開く。遺言の内容が気になった千翼、めぐみん、ダクネスの三人も脇から覗き込んだ。

 

「えーと『最後にこれだけ伝えておく。家の裏に生えている木、そこの根元にある物を埋めておいた。一回しか使えないがこれで魔王を倒してくれ。そして、こんなことを押し付けてしまって本当に申し訳ない』ですって」

 

「魔王を倒してくれ……?」

 

「何を埋めたのでしょうか……」

 

確かに遺言には「木の根元に埋めた」と書かれているが、肝心の中身については殆ど分からなかった。

「一回しか使えないがこれで魔王を倒してくれ」という一文が唯一の手がかりだが、さすがにこれだけでは何も分からない。

 

「今度こそお宝よ! 分かりやすい家の地下室じゃなくて、見付けにくい木の根元に埋めたに違いないわ!」

 

「いや、多分違うと思うけど……」

 

きっとお宝に違いないと興奮するアクア。やんわりと千翼が否定するが、当の女神の耳には届いていなかった。

その時、硬い物同士がぶつかる音がカズマの手元から響く。

 

「お、これだな」

 

カズマはスコップを置いて、掘り当てた物を傷付けないように慎重に手で土を払う。

 

「カズマ、気をつけてよ! ちょっとでも傷が付いたらお宝の価値が下がっちゃうわ!」

 

普段ならツッコミを入れるところだが、今は作業に集中したいのと、ここまでの仕事で疲れているのでこれ以上体力を使いたくないという事情も相まって、カズマは無言で土を払い続けた。

やがて地面の中から小さな金属製のケースが出てくる。懐にそのまま隠せそうな大きさのケースだった。

側面のロックを外して慎重に蓋を開けると、中には大きな銃口を持つ信号拳銃のような銃器と、先端が透明な樹脂で覆われている、魚雷のような形の大きな弾薬が一つだけ納められていた。蓋の方には、折り畳まれた取扱説明書らしき紙が挟まれている。

 

「これが遺言に書いてあったやつだな。グレネードランチャーか?」

 

「なによー、結局お宝なんて一つもなかったじゃない……」

 

「これも銃の一種ですか?」

 

「随分大きいな」

 

掘り当てた遺品が何なのか考えるカズマ、お宝では無かったので愚痴を零すアクア、妙な形の銃器に興味を示すめぐみんとダクネスと、反応は様々だった。

しかし、千翼だけはケースの中の銃と弾薬を見て顔を青ざめさせていた。視線がケースの中身――正確には弾薬に釘付けになり、目を見開く。少年の頬を一筋の汗が伝った。

 

「どうした、千翼?」

 

千翼の様子がおかしいことに気が付いたカズマが声をかける。間を置いてから、千翼はゆっくりと口を開いた。

 

「カズマ、これは……圧裂弾だ」

 

「アツレツダン? なんだそれ?」

 

「4Cが開発した対アマゾン用の特殊弾だよ。余りに威力が強すぎて市街地での使用は禁止、使うには上からの許可が必要な代物なんだ」

 

威力が強すぎる。という千翼の説明を聞いた途端、カズマは持っているケースを思わず放り投げそうになったが、既のところで踏み留まる。

女性陣は小さな悲鳴を上げながらカズマから距離を取った。

 

「大丈夫、今は信管がオフになっているから、そう簡単に爆発はしないよ」

 

「お、おお。それは良かった……ところで、これって具体的にどれ位の威力があるんだ?」

 

「俺も人から話を聞いただけだから詳しいことは……。たしか、二階建ての住居くらいなら跡形もなく吹っ飛ばせるって聞いたな。俺も一度だけ、数パーセントの威力を体験したことがあるけど、あんなのは二度とゴメンだ……」

 

その時のことを思い出してか、千翼は苦々しい顔をしながら左二の腕をさする。

カズマは今、自分が手に持っている弾薬の威力を聞き、口の端から悲鳴のような音を漏らすと、出来る限り弾薬に振動を与えないように慎重にケースの蓋を閉めた。

ケースをゆっくりと地面に置くと、これまたゆっくりとロックをかけ、しっかりと閉じていることを確認する。

大仕事を終えると、緊張と共に息を吐き出した。

 

「二階建ての家を吹き飛ばせる……爆裂魔法ほどではありませんが、これは惹かれる物がありますね。故人の遺志を尊重するためにも、ありがたく頂きましょう!」

 

「やめてよ! そんな危なっかしい物は捨てちゃいましょう!」

 

「しかし、これは魔王を倒すために作られた物だ。いずれは使う機会が……」

 

「確かに危険だけど、もしかしたら役に立つかもしれない。使う使わないは別として、俺は持っていた方がいいと思う」

 

反対するアクアを除いた三人は圧烈弾を持ち帰ることに賛成していた。

そして、まだ意見を口にしていないカズマに四つの視線が集まる。

 

「……まぁ、とにかく。これは魔王を倒すために作られた遺作だ。俺達には必要な代物だし、使わせてもらおう」

 

そんな危険物は捨てるべきだと主張するアクアを無視しながら、カズマは掘り返した穴を埋め。使ったスコップを納屋に戻す。

圧烈弾が納められたケースを慎重に懐にしまうと、忘れ物が無いか確認してから五人は家を立ち去った。

 




連載を始める前から「圧烈弾は絶対に出したい」と思っていたので、ようやく出すことが出来てとても嬉しいです。
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