「暇だクマー」
俺の隣では球磨が暇そうに睨んでくる。
「暇だクマー……」
俺は今書類の仕事で忙しく、構っている場合ではなかった。
だからひらすら仕事をしている。
「ひーまー」
椅子をガタガタ動かしながら足をブラブラさせている。
「こら。行儀が悪いぞ。そんなことするんじゃない」
「だってー暇なのが悪いクマ」
「こっちはまだ仕事中なんだ。我慢してなさい」
「むぅー……」
全く。困った子だ。
少しは姉らしい態度を取ってほしいもんだ。
「提督ー。まだ仕事終わらないクマ?」
「もうちょい」
「もうちょいってあとどれぐらいクマ?」
「3時間ぐらい」
「長すぎるクマ……」
俺だって早く終わらせたい。
けどまだ量があるし、当分は終わりそうにない。
しばらく作業を続けていると球磨が大人しくなったようだ。
これでようやく集中することができる。
「…………」
作業しながら横目で隣を見る。すると球磨はこっちをずっと見つめていた。
「…………そうだ」
球磨は突然立ち上がり、俺のすぐ横までやってきた。
「……? どうしたんだ?」
「えいっ」
「ちょ……」
球磨は俺の膝の上まで潜り込み、そのまま俺の膝に座ったのだ。
「お、おい。何をするんだ」
「ふふん。実に座り心地の良い椅子だクマー!」
「誰が椅子だ。さっさと降りろ」
「嫌だクマー」
俺の膝の上にスッポリ収まってしまった。意外と軽い。
アホ毛がちくちく刺さって痛い。
これでは作業ができん。
「ほら。早く降りなさい。仕事が出来ないだろ」
「構ってくれない提督が悪いクマ。もっと構えクマー」
「んなこと言ってもな……」
目の前で球磨の髪が揺れる。ほんのりいい香りがする。
この香りはどっかで嗅いだような……あっそうだ。思い出した。多摩の近くでもこんな感じの香りがしたな。
ということは2人は同じシャンプーを使っているのか。なんとも仲がいいことだ。
って違う違う。そうじゃない!
何を考えているんだ俺は。
とにかくこの状況をなんとかせねば。
「~♪」
やたら機嫌が良さそうだな。
さっきまで仏頂面だったくせにやけに嬉しそうだ。
……そうだ。
「……!?」
俺は球磨の頭を撫でることにした。
「むぅ~。なでなでしないでほしいクマー」
「こんな所に撫で心地がよさそうな頭があったんでな。思わず撫でてしまったよ」
「恥ずかしいから止めるクマー」
こっちに振り向いて睨んでくる。ちょっと可愛い。
「じゃあ退くことだな。退かない限りずっと撫で続けるぞ?」
「むぅ~……あっ。そうだクマ」
「?」
球磨は膝の上で体勢を変え、俺の正面に向いたのだ。
お互いに正面に向き合う形になってしまった。
「えいっ」
球磨は手を伸ばして俺の頭を撫で始めた。
「……なんのマネだ?」
「ふふん。提督も球磨の屈辱を味わうクマー!」
もしかして仕返しのつもりかこれ。
「そ、そんなことしても撫でるのはやめないからな」
「じゃあ球磨も止めないクマー」
……なんだろうこれ。
何でお互いにお互いの頭をナデナデすることになったんだ。
どういう状況だよ。
「どう? 少しは球磨の気持ちが分かったクマー?」
「ああうん。確かにこれは恥ずかしいかもな」
「ふふん。ようやく提督も思い知ったクマね。これに懲りたら球磨を撫でるのは止めるクマ」
「ってことは球磨も同じ気持ちってわけだな?」
「クマ?」
「撫で続ければ球磨も恥ずかしがらせることが出来るってわけだ。じゃあこのまま続けて存分に思い知らせてやろう」
「クマー!?」
結局、お互いに撫で続けることになったのであった。