緑生い茂る深い森の中。日が沈み、空が朱く染まり始め、青から白、赤、黒と夜が近づいてくる時間。言うなれば、逢魔時。そんな不安定を思わせる時間帯に一つの歪みが起こる。
トンッ
何の前触れもなく、一人の少年が人気のない森に降り立った。
「よし、転移成功っと・・・ みんなも大丈夫か?」
少年が独り言を話すと瞬きの瞬間に側に少女が佇む。
「ん、おーるおーけー 箱庭内も異常なし」
カランコロン~♪
セイの言葉に対して、リアナが答え、ビーちゃんが音色を奏でる。
「よしよし、今回の転移も無事成功と・・・ さて、ここはどこだろうな?」
「ん、軽く調べてみたけど 戦国時代の日本 特徴的な地形、小さな島国内に様々な土地柄、日本語を話していることからも間違いはないと思う」
「・・・てことは、また地球か? ランダム転移なのに訪れる機会が多い気がする・・・」
「ん でも、地球に来るのは久々 ゆっくりしてもいいと思うよ?」
「それもそうだね ステータスもない身体能力的には平等な世界だから理不尽もそれほど多くない それに、今が日本の戦国時代なら少しすれば娯楽で溢れる時代が来るし、気分転換にもいいかも?」
カラン~コロン~
「ん、私も賛成」
満場一致で意見が統一され、セイたちは久々に静かな時を過ごすこととなった。一先ず、人里に訪れ詳しい事情や居住環境を整えようということになり行動に移す。
山を下り進め、セイの広い感覚内に人の気配が現れ始めた頃、同時に妙な気配の接近も感知する。
「なんだこいつ?」
「ん、人の動きにしては不自然 筋力が強すぎる それに・・・」
「血の匂いを漂わせてる」
急激に近づいていた存在は程なくしてセイとリアナの目の前に現れた。
「今日は運がいいぜ 女子供が二つ どちらからにしy・・・」
ぐじゅ
「ん、人じゃない 生首でも話せてる」
「・・・・・リアナさん? 手、早くない?」
「敵だからモーマンタイ」
「いや、そうだけども・・・ なんだかなぁ~」
リアナによって体を一瞬にして潰され、首だけになっても話し続ける異常性。その生首も潰しても肉片から再生しようと蠢き続けている生命力。明らかにただの人間ではありえない存在だ。
「んー セイ、これ動いてる 汚い」
「確かに気持ち悪いな よく手を洗っときな? それにしても、この異常な生命力は何だろう? 吸血鬼ほど瞬時に再生しないみたいだけど簡単には死にそうにないね」
「ん、細菌の集合体の様にも見える うねうね動いて集まろうとしてるのかな?」
「まぁ、何はともあれ・・・」
「「普通の日本じゃないわ ココ はぁ~」」
溜息まで息が合うとは・・・僕たちベストパートナーですねー。
それから、しばらく過ごしているうちに今回訪れた世界には『鬼』と呼ばれる人食いの化け物が日本にいることを知る。夜、人気のない場所に出歩くと、人知れず喰われてしまう、そんな昔話が語り継がれるほどには長く存在する者たちのようだ。
僕とリアナは強いから、例え襲われたとしても返り討ちにすることが出来るし、何度も遭遇する内に日の光が弱点であることも見つけたので対処も容易になった。見つけたら動けないように拘束して、日の当たる場所に放置しておけば討伐することが出来る。
光属性の魔法を使うこともできないことはないが、その世界にない法則をあまり使うべきでないことはこれまでの旅路で学んできたことだ。使うからといって何か不都合が起こる訳ではないが、現地の者に影響を与えることは確かであり、極稀に大きな変化を起こす切っ掛けにもなってしまう。だから、影響を与えない為に極力その世界の力だけで行動するようにしている。
魔力も魔法もステータスもない世界で魔法の様な超常現象を使うことは控えながら行動している。
その後も撃退しながら戦国の世を渡り歩いていると、刀一つで鬼を退治してのける人物と出会う。
ス
額に傷のある人物が、鬼の意識の隙を突き、ただ歩いて横を通るという日常の風景。
チ
納刀する際の僅かな高い音だけを残し、状況の理解できていない鬼は首を切り落とされていた。
鬼は、それから再生することなく崩れ落ちていく。
そんな灰が舞う中、僕たちは件の剣士と目を合わせた。
一瞬、刀に手を置いたが不思議そうに首を傾げる。
「君たちは人のようだが、人ではない」
僕とリアナは驚いた。
「・・・あなたには何が見えているのですか? 初見で僕たちを普通の人ではないと見破った者は初めてです」
黒髪の額にあざのある彼は、少し考える様子を見せた後口を開いた。
「骨格、筋肉の動き、それらの配置、呼吸、視線、要素はまだあるかもしれないが凡そ直感です 人としての創りであるにもかかわらず、体の細かい単位でほぼ独立して生命を形作っている ・・・私には鬼ではないあなた方を倒す術がない」
この人物は生まれながらの天才だ。普通の人と見えている景色が全く違う。環境でこのような成長をすることはありえない。それこそステータスのある世界で観察に特化する成長をしなければ至れない極致。この世界の様な、生命に正しく平等な世界で至るには酷く異質な才能の塊。
「・・・あなた方の目的はなんですか?」
僕たちの目的か、、、 それは今も昔も変わらないなぁ~
「強くなりたい」
彼の眼を見てハッキリと簡潔に言葉を紡ぐ。
「・・・今でも私以上に強いあなたが更なる強さを求める、、、不思議なものです」
彼は踵を返す。
「わかりました 私の技術をお教えしましょう」
歩き出した彼、継国縁壱に続いて僕たちも歩き出した。
僕たちは彼、継国緑壱から教わったことは簡潔にまとめるならば呼吸法だ。
只の人間が人間の膂力、生命力、再生力を大きく上回る鬼を倒すために編み出された技術。通常、普通の人間であれば制限されている潜在能力、これを物理的な肺活量を用いて引き出す、、、と僕は緑壱をみてそのように学んだ。と言うのも緑壱の特殊な感覚、天生の技術はそれこそ生まれながらのモノである。言語化しようとしても日常的に行っているが故に説明の難しい技術だった。
分化させて記載するのであれば以下の通りの技術を学んだといえよう。
・全集中の呼吸
特殊な呼吸法を常に日常的に行うことで、一割にまで制限されている人間の能力を常に二割にまで上昇させる技術。これにより通常の人間よりも計算上二倍以上の膂力を持って活動することが出来るようになる。
・透明な世界
緑壱が生まれながらに持っている超感覚。僕の解釈で表すならば、素直過ぎるが故の直感的な行動力。これまでの記憶、経験した情報を基に疑うことなく直感的に行動できる行動力。結果起こることとは、、、情報収集能力の上昇、即断即決の判断力、超直観による別の景色。緑壱は光景を透過させて理解しているようだ。これが僕たちの正体を見破った天性の能力。
・闘争心の凪
透明な世界を十全に発揮するために必要な精神的な凪。超直観に従い行動するためには直感以外の感情を省き、行動を起こす。結果、感情を奮い立たせる闘争心すらも凪いだ湖面の様に静かに静まることになる。
・神楽舞・日の呼吸
緑壱が行った神楽舞。ただただ、うつくしかった。。。僕の全ての能力をもって完全にトレースした。
そして最後に学んだ技術が僕に会った呼吸法だ。
【火の呼吸】
・残火(ザンカ)
瞬間的に一撃の威力を上げる。一瞬赫刀化し一撃を与える。どのような体制でも安定した威力を発揮する。
僕の【火の呼吸】の型は一つのみ。様々な世界を渡り歩く過程で手に入れた技術、主に刀剣系統に共通していた能力、スキル名で表すならば『スラッシュ』を元に構築した型だ。僕の火の呼吸は全集中の呼吸に極振りする形で構築しており、能力としては単純で瞬間的な一撃の威力を上げるもの。斬撃の軌道に決まりはなく、攻撃のインパクトの一瞬に人間の潜在能力の実に七割を引き出す太刀筋。リアナ曰く幻視した光景は太刀筋の軌道に僅かに残る火の粉だったそうだ。故に技名は『残火』となった。
リアナは、、、、、、、、、、め、【冥土の呼吸】を覚えたらしい。原理は訳が分からないが、メイドとしての技術が、冥土としての技術が飛躍的に向上したのだそうだ。リアナにしては珍しく指導してくれた緑壱のことを大絶賛していたのが印象深い。。。冥途の呼吸って何!?何なの!?!?
緑壱からは人間の限界に行き着く技術を教わることが出来た。同時に、僕たちに指導する過程で緑壱も何やら学ぶことは多かったらしい。
「・・・世界は広い 」
別れの最後に緑壱がそう呟いていたことが印象的だった。
緑壱とわかれた後は、学んだ呼吸法の習熟に努めながら時代を渡り歩き、長い時を気ままに過ごした後次の世界へと渡った。
鬼は、明治初期の頃だろうか?その辺りから見かけることが無くなり実に平和な世界を過ごすことが出来たと記しておきたいと思う。
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セイ達の技術を取り入れた緑壱により鬼による被害は原作よりも大きく縮小しました。鬼殺隊の全体的な実力も向上し、原作同様、緑壱以外の【日の呼吸】の使い手は途絶えてしまいましたが、鬼による被害者は大きく減少し生き残った隊士も原作よりも多い結果となりました。