部活動新入生勧誘期間が始まって数日が経った。
勧誘期間も中盤戦。有力な新入生は大体は何処かの部に入っているが部活動の掛け持ちを誘おうと結局のところ勢いは収まることはない。
そしてMMA部に入った星空も未だに勧誘は受けていたが上手くはぐらかすなどして勧誘を回避しつつ、風紀委員として違反者を取り締まる業務に追われていた。
「こちら、高町。準備棟入り口前で魔法使用の容疑で違反者を確保しました。」
《わかった。そっちに人員を回して連れて行かせる》
完全に動けないように組み伏せ、通信で風紀委員会本部に連絡する星空は直ぐにやってきた風紀委員に取り押さえた違反者の身柄を引き渡すと緊張を解く。
「凄え……今日でもう四件目か?」
「あの1年に見つかって逃げられた奴いないってよ」
「噂で聞いたんだけど。あの子、二年前に当時の3年一科生複数人に魔法を使わず勝ったって」
「知ってる。鬼神でしょ?信じられないって思ってたけど。2人の違反者を重力操作で取り押さえたところ見たら納得できちゃったわ」
「…………」
そんな周りの小声に星空もいちいち構ってはいられないが頭を抱えたくなる衝動にかられる。
(ん?)
星空がそんな思いをしていると不意に妙な視線を感じ視線をそちらに向けるがそこには誰もおらず。感じた視線も消えていた。
(またか)
この数日間、何度も妙な視線を向けられていた星空は目を細めその人物を考える。
実際にこの期間中一科生、二科生共々公平に取り締まったことが一部のプライドが高い一科生に反感を買ってしまい何度か事故に見せかけた嫌がらせを受けてた。
といっても星空はその実行犯を尽く取り締まっているので諦めるのも時間の問題といったところ。
しかし視線の人物はプライドが高い一科生とは思えず。星空自身も見当がつかない。
「お疲れ。星空」
「鋼、そっちこそお疲れ。部活の練習?」
「うん、少し休憩してるけどね。そっちは忙しそうだね」
視線の正体を考えていると動きやすい体操着に着替えている鋼が星空に声をかけると星空も考えるのをやめて服装から部活途中かと尋ねると鋼は頷き。歩きながら語り合う。
「この期間が終われば部活にも顔出せると思うから、それまでの辛抱かな?」
「そうだね。その時にまたスパーリング付き合ってね」
お互い同じ部活に入った同士、直ぐに意気投合した星空と鋼は同じ話題を語り合った後。別れて暫く校内を見回りをした後。真由美に呼ばれて生徒会室に訪れる。
中に入ると、生徒会メンバーは勿論、摩利お達也もいてそうそうたる顔ぶれが集まっていた。
「真由美先輩失礼します。」
「いらっしゃい星空くん。ごめんね、忙しいのに」
「別に構いませんよ。それで……ここに集まったのはどういった要件ですか?」
「ああ、話す前に先ずは椅子に座ってくれ」
そう摩利に促されて、星空は空いている席に座ると少し間を開けてから真由美が真剣な顔つきで口を開いた。
「まだ忙しい期間なのに呼んだのは他でもないわ。実はね、この学園には目安箱があるんだけど」
「目安箱?そんなものがあったんですか?」
「ああ、設置はされていたが殆ど使われたことはなかったがな」
「つまり、その目安箱に何かしら気になる内容が書かれていたんですね」
集めた本題を語る真由美に星空は目安箱が存在する事実すら知らなかったことから真由美に聞き返すと摩利が補足としてあまり使われていないことを告げる。
それを聞いた達也が呼んだ理由をある程度察したのか目安箱に何が入っていたのか真由美を向きながら尋ねると。少し間を空けてから達也くんと呟いた。
「実は、書かれていた内容は達也くんが何者かに意図的に狙われているという。告発書だったのよ」
そういって目安箱に入れられていたという紙を達也の元へ歩き手渡すと達也が確認し、横から深雪と星空が内容を覗き込む。
「えっと……この数日間。1年E組司波達也が意図的に魔法などを使い狙われている。」
「これは明らかな悪意のある行為。即座の対処を要求する……か」
「達也、これ本当なの?」
前者は星空、後者は達也。2人でこの紙に書かれた内容を読み終えると星空は達也に真意を尋ねる。
「……ああ、確かに明らかな悪意は感じていた。しかしちょっとした嫌がらせだったのもあってそこまで気にしていたわけじゃないからな」
「それでも達也のことを案じてこんな告発書まで出してくるんだからよっぽどなんだろうな……真由美先輩。これ筆跡から女子みたいですけどこれの告発者ってわかりますか?筆跡鑑定とか」
「流石にプライバシーなことだから分からないわ。それに筆跡鑑定なんて……今は大体電子モニターが主流なんだからもっと分からないわよ」
真由美のお手上げという動きに星空も確かにと頷き。
頭の中で考えていると春だというのに真冬のような肌寒さに見舞われる。
何事かと生徒会内で動揺が起きるが達也と星空は直ぐに真横にいる深雪に視線を向けると想子が体から漏れて深雪を起点に周囲が凍り付き始めている。
「これは……どういうことですか?」
「深雪!?落ち着け!」
「落ち着いてなど出来ません!お兄様が狙われているなどとそのような狼藉を働く者を見つけなければ……」
「だから落ち着け!深雪が俺のことを思って憤ってくれるのは嬉しいがそうやって周りに被害を出すのは看過は出来ないぞ」
「っ!申し訳ございません。お兄様」
達也に危害を加えようとする存在に憤る深雪、達也も拙いと直ぐに深雪を宥めて落ち着かせ、室温や凍り付いていたものが元通りに戻る。
それを見て真由美達は干渉力の高さに驚くとあまり驚かなかった星空が咳払った後、話し始める。
「取りあえず。達也が狙われているのは確実で警戒を怠れないのも確かなわけで……達也心当たりとか無いのか?」
もしかしたら達也なら色々と分かっているのではと星空は達也に尋ねてみると意外にも簡単に達也は話し始める。
「流石に誰かとは分からないが……どうやらこの学園に反魔法主義者の組織が紛れ込んでいるのは確かでしょう……例えばブランシュとか」
ブランシュ
その名前が出たとき、部屋の空気が一気に一変する。
真由美と摩利はその名前を知っているようで達也からその言葉が出たことに絶句し鈴音はあまり表情には出さなかったが眉をひそめる。唯一あずさだけが何のことなのか理解できておらず首を傾げていたが星空もブランシュのことをある程度知っていたから頭の中に記憶していることを思い出す。
(ブランシュ、魔法師が政治的に優遇されている行政システムに反対し、魔法能力による社会差別を根絶することを目的に活動する反魔法国際政治団体)
そんな反魔法団体が何故と星空も疑問に思うが真由美達の戸惑いの疑念は達也からその組織の名前が出てきたことに向いている。
「達也くん。どうしてそのことを」
「幾ら情報規制されているとはいえ完全に漏洩されていないわけではないですよ。恐らくですがブランシュの下部組織が絡んでいるかもしれません。実際俺を襲ってきた人物はみな同じリストバンドをしていましたから」
達也の予測に真由美も戸惑いつつも返事をして第一高に蔓延る反魔法団体の魔の手、それを聞き星空も真剣な表情でこれからどうするか考えるのであった。