八王子の第一高からそこまで離れていない住宅街などから離れた廃工場。
そこは誰も使われていないというのが表の事情だが実際はブランジュ日本支部として使われていた。
そんな日本支部は今、先の第一高襲撃が失敗に終わったことから報復を恐れてこちらの守りを厳重にしている真っ最中であり支部の入り口には完全武装したテロリストが二人警備していた。
「流石に十師族の跡取りが二人もいる一高だな……あれだけの数を返り討ちにするとは」
「こわいこわい。ここも割り出されるのも時間の問題なんだろ?」
「それまでに支部を移転するって話だ。もう候補には目を付けてるらしい」
「だったら問題ないな」
なんとも緊張感もない会話をやり取りしているテロリストだが不自然に茂みが揺れたことで警戒心が上がる。
「な、なんだ!?」
「ま、まさかもうここまで……」
動いた茂みに持っているライフルの銃口を向けると茂みを揺らしたそれはテロリストの前に露わになる。
「って、なんだよただの……」
茂みから出てきたそれを見て驚異だと勘違いしていたテロリストの警戒は緩み向けていた銃口を下げた瞬間。
それの挙動と共に複数の水色の弾丸が生成から斉射されテロリストは後ろの門ごと吹き飛ばされ意識を失った。
まだ予定の範囲だった。
第一高の襲撃は失敗に終わったがそれはエガリテが主なメンバーでその援護に出した構成員もどちらかと言えば捨て駒だった。
だからこそ司一の中ではまだ許容範囲内だった。少し前までは……
少し前に響いた爆音。何事だと困惑する中、無線から侵入者と抗戦しているという通信が入ってきてブランシュ支部が一気に緊張感を漂わせる。
だがその無線から来る報告はあまりにも奇怪な内容だった。
曰く、それはすばしっこく銃弾が当たらず。まるで砲弾に様に構成員に体当たりをして構成員を何回転もさせながら吹き飛ばした。
曰く、こちらの位置を全て把握しているかのように立ち回り奇襲などができない。
曰く、角で待ち構えていた構成員が突如として曲がった水色の弾丸の餌食となった。
などなどやられ具合を報告されていたが何より奇怪なのが……人間ではないということ
それを聞いた司一は何を言っているんだ?頭がいかれたか?と本気で思ったが同じような報告が上がりその言葉の信憑性が出て来ると迫り来る未知な存在に恐怖心がこみ上げる。
ならば逆方向から逃げるべきかと今にも逃げ出したい気持ちに駆られるがそんな甘い状況でもなかった。
未知の敵に対して怖じ気づき一目散に逃げようとした構成員はいた。しかし施設の外に出た瞬間水色の弾丸の集中砲火に見舞われ逃げ出した構成員は断末魔をあげながら意識を刈り取られたと報告が上がったことで逃げることすら出来なくなった。
万全の防備だと思っていた支部は今や袋の鼠とも言える状態になり。ブランシュ構成員は迫り来る敵を身震いしながら待つことしか出来ない。
そして扉の向こうで断末魔が響き銃声が止んだことですでに扉一枚向こうにそれが迫ってきていた。
息を飲む音すら聞こえるほど静粛な間が出来る中、遂にそれは司一達の居る部屋までやってきた。
閉じられていた扉が衝撃で吹き飛び部屋に土煙が舞う中。土煙の中からそれは出て来る。
一見すれば全く人間には害にもならない小柄な体型で寧ろ愛嬌がある。しかし今拠点を襲っているそれをみて困惑する中。銃口を構える構成員の一人が言葉を溢した。
「ほ、本当に子犬だ」
ありえないという感情に支配されながらそう呟くのも無理はなかった。
実際に土煙から出てきたそれは何処からどう見ても小型犬……しかも犬種はチワワだ。
首にアクセサリーを付けているがまごう事なきチワワ。
どうすれば待ち構えていた構成員を全て倒しきれるのかと頭の中で思考していると黙っていた司一は不敵に笑みを溢す。
「そうか……そういうことか……」
笑みを溢しながらそれを見て察した司一は周りに大声で応える。
「惑わされるな!これは精神干渉による攻撃だ!私達は精神干渉魔法により認識を誤認しているんだ!」
これなら納得がいくと、精神干渉魔法により自分達はチワワだと思い込んでいるが実は違う何かだと断定しチワワに内心怖じ気づく構成員を奮い立たせると直ぐに持っていたアンティナイトでキャストジャミングを展開しチワワにジャミング波が当たる。
「キャストジャミングだ!これで魔法は使えないし精神干渉を使い続けているのだから苦しいだろう?だったら」
完全に優位に立ったと息巻く司一にその言葉を嘲笑うかのようにチワワが可愛らしい鳴き声とともに動き出した。