擬装の極限遣いが見る世界   作:極麗霊夢

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第2話にしてオリキャラ誕生とか……プロットではなかったのになぁ……タグ付けなきゃ……。


第2話

 白い魔犬(プライミッツ・マーダー)黒騎士(リィゾ=バール・シュトラウト)の目を欺きというより、大まかな目的地を言って散歩に駆り出た一人の青年は、砂漠の上を爆走していた。

 後ろから青い光と虹の光とかを背にして、砂塵を巻き起こしながら――――間近に砂柱が立てば冷や汗が背筋を撫でるように落ち、虹の光が髪を掠めればさらに走る速度を加速させ、青い光が目の前に着弾すれば自分の体をタイプ・マアキュリーの外皮に偽装して、さらに逃げる速度を上げる。

 

「ちょっと逃げないでよ! 生活費!!」

 

「いやいや、自分を売り飛ばそうとする人に、ホイホイ着いていくバカは居ないと思うよ」

 

「居るわよ!! 山田とか太郎とか山田太郎とか!!」

 

「それ全部僕!!」

 

 青いレーザーを本当に青年――山田太郎を捕まえようとしてるのか、殺しに掛かってるかわからない女性――蒼崎青子は、なかなか捕まらない山田太郎に怒声を飛ばしながらも、発動させるレーザーを放つのを止めない。

 それを見ながらも、虹のレーザーをブッパしてる翁も、山田太郎に声を掛ける。

 

「なら、わしと一緒に来んか? 並行世界旅行も中々乙なもんじゃぞ?」

 

「いくら僕でも、並行世界旅行に(かこ)つけて亡き者にしようとしてるくらいわかりますよ」

 

 ニタァと隠す気のない殺気と笑顔で、山田太郎を抹殺しようとする翁―――キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグは、青子の魔術を利用して山田太郎が逃げるところにピンポイントで虹のレーザーを掃射させる。

 

「ちょっとお爺さん。 私の生活費に何すんのよ!? 死んだら生活費が減るじゃない!!」

 

「喧しい!! お前さんこそ、わしの邪魔をするな!!」

 

 蒼崎青子とゼルレッチが山田太郎から目を離して、互いに罵り、喧嘩を始める魔法使い。 山田太郎はこれは好都合とソロリソロリと、気配を断ちながらその場から逃げようとするが、山田太郎の逃走方向に虹と蒼のレーザーが着弾して砂柱を立てた。

 

「…………」

 

 着弾したとこをチラリと見ると、そこにはさらさらさらさらと砂が下へと流れていく穴があり、その穴を開けた二人を見ると二人の目は山田太郎の方を向いており、口以上に目が山田太郎に語っていた。

 

 ――――逃げるな、と。

 

「……うふっ。 お断りするよゼル坊や、青ちゃん」

 

 先程までの追い詰められたような口調でも、逃げ回っていた姿とはかけ離れた言葉と顔で二人の魔法使いに対峙する山田太郎。

 その謎の自信に、二人の魔法使いは警戒心を高める。 先程まで追い詰めていた対象相手に、難敵とぶち当たったかのような警戒レベルにだ。

 それは、山田太郎という男或いは女を知ってる者なら誰もが知ってる法則だ。

 

 山田太郎が対峙せずに、逃げる時はまだ追える。

 山田太郎が対峙せずに、本格的に隠れた時はもう追えない。

 山田太郎が逃げずに、対峙した時は全てを疑うべし――。

 

 その法則を知って尚、対処できた者は居ない故に警戒のレベルを上げる必要があった。

 そして三人は砂塵の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 砂塵が晴れた時、そこに居たのは地に伏していたゼルレッチと蒼崎青子の姿だけだった。

 

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 フランスに建つ満点の星と、地上に輝く星を眺めることが出来る展望レストランで青年と女性が座って食事をしていた。

 青年は朝から昼にかけて魔法使い二人に追われていた山田太郎で、女性は先日黒いお姫様と白い騎士、黒い騎士、白い魔犬の八つ当たりから辛くも生きて戻り、山田太郎を捕縛せよと命じた亡者の女王に報告し、八つ当たりのような罵声をスルーして、事業へと戻って先日の夜に掛けて今日の分の損失を0にしたヴァン=フェムだった。

 

「地上と天上の星を眺めての食事は中々乙なものだね。 僕を求めてきた人が見せてきた景色の中で、この景色が一番好きだよ……ヴァンちゃん」

 

「だったらずっと此処に居て欲しいのだが? まさか欲しい人物が私の所に来るとは……つくづく君は私の予定を崩してくれる」

 

 まぁ、無理だろう? 無理だね♪と、目と目のやり取りで終え、二人は静かな食事を続ける。 ヴァンからしたら、東へ行ったのではないのか?とか、何を見たのか?とか、今お前の値段を知ってるか?と問いたかったが、その質問をしても山田太郎は「うふふっ」と笑うだけと知っており、時間の無駄となるならば、一時(ひととき)の食事を楽しむことにした。

 

「このチーズ……コクが深すぎ、臭いもキツい、舌に残る後味……出されたワインと調和しようとせずに殺すとか、ヴァンちゃんにしては失敗を掴まされた?」

 

「どうやらそのようだ……。 後で然る処罰を与えておこう。 安心しろ、もう口にすることはないさ」

 

「そっ」

 

 手の上に遊ばせたかじった跡がついたチーズを握りしめ、紙くずのように丸めたソレをまだ沢山盛り付けられたチーズがある皿に戻す。 その皿を部下に下げさせ、ヴァンと山田太郎はワインだけで夜景を楽しんだ。

 

「あ、今日はヴァンちゃんのベットで寝るから……」

 

「今日は流石の私も寝るぞ?」

 

「何か問題でも?」

 

「ない、な」

 

 山田太郎と昔っから交流のある者なら、山田太郎の異能は誰よりも理解しており、男と女だとかそう言った次元の羞恥は既にない。

 世間の目が気になるというならば、山田太郎が女になれば良いだけなのだから―――それだけ聞くと山田太郎の異能は、性別を変えるだけの能力と勘違いされがちだが、性別を変えるというのは山田太郎の異能の一部なのだ。

 

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 朝と昼を睡眠に費やして、山田太郎は夕方に起きてヴァンの下から何も言わずに立ち去る。

 ヴァンの居城を出ると、山田太郎の行く先に黒いゴシックドレスを着飾って不敵に笑う女性と、青い髪のショートヘアーの無表情の少年が佇んでいた。

 

「日本の『山田太郎』から報告よ」

 

「遠野が七夜の里を襲撃。 七夜は鬼によって一人残して滅亡」

 

「生き残った七夜は誰かな?」

 

「七夜志貴……七夜当主の長子よ。 現在は遠野が彼を引き取ってる」

 

 引き取ってるという言葉に、反応して女性を見つめ返し、女性は山田太郎の視線を何とも思わないのか、笑みを崩さずに報告を続ける。

 

「私も殺すかと思ったんだけど、遠野家当主の考えは完全にたまたま……息子の名前に似てるから、自分の子供と重ねたみたいね」

 

「鬼の力を借りたとはいえ、随分と身勝手な話だね。 まぁ、保険は掛けてあったはずだけど? そっちは?」

 

「黄理の長女、七夜まつきを保護した」

 

「現在、遠野家に居る『山田太郎』と、七夜家に居た『山田太郎』が偽装工作してるわ」

 

「そう、報告ありがとうね。 引き続き何かあったら報告よろしく♪」

 

 なんの感情も感じさせない笑顔で山田太郎は、その場を締めくくり、報告した二人は一瞬にして山田太郎の目の前から消えた。

 

遠野 槙久(とおの まきひさ)……僕への進言もなしに、七夜を滅亡させた代償を払ってもらうよ?」

 

 全身に怒りを顕にして、遥か極東の地へ睨み付けて、山田太郎は自身が興した組織へと足を向けた。

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