擬装の極限遣いが見る世界   作:極麗霊夢

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第4話

 ――朱い月とsixと山田太郎が、一緒の部屋で夜を過ごした次の日の朝。

 山田太郎達はホテルをチェックアウトして、とある場所へとやって来た。 そこは先の出来事で親族を失った七夜まつきを匿った場所であり、今は亡き退魔一族達の血を継いだ子供達が安心して過ごせる場所―――その名も、月野孤児院。

 裏事情を知ってる者から言わせれば、「ふざけるな」という一喝が飛んできそうな極々何処にでもあるありふれた孤児院の名前だが、古来より「目には目を歯には歯を」「木を隠すには森の中、人を隠すには人混みの中」と言うように、保護するにはうってつけの場所だったりする。

 

「で、此処が稀少種の動物園というのはわかったが、なんなのだ? その珍妙な格好は……」

 

 朱い月とsixに目の前の施設の説明をする山田太郎に、朱い月はこめかみに青筋を起てて山田太郎の格好を指摘する。 山田太郎の現在の格好は、先っぽが丸い小さなポンポンが付いた二又の帽子に、右の目元には大きな雫のマーク、左の目元には赤い三日月のマークが着いた笑ってる道化(ピエロ)の仮面、着てる服は昨夜着てたスーツとは違ってド派手な道化服に道化の靴を履いていた。

 

「うふっ、何処からどう見ても立派なピエロさ♪」

 

 山田太郎はクルッと一回転して決めポーズを取る所で、足を滑らせてお尻から大きくずっこける。

 

「うふっ似合う?」

 

 決めポーズを決めきれなかったのに山田太郎は、笑い声を上げて朱い月とsixに感想を聞きながら二人を見ると、山田太郎の目には青筋を起ててキレてる朱い月と、悪くないといった表情で頷くsixだった。

 

「どうやら朱い月には不評みたいだね♪ でもこれも大切なプロセスなんだよ?」

 

「ほほぅ……言ってみよ」

 

 朱い月から漂う「下らぬ事なら踏む」という眼力によって、汗を一つ山田太郎の頬を伝いながら口を開く。

 

「子供達を笑顔にするぶっ!!」

 

「ああ、済まぬ。 踏んだ」

 

 嘘偽りの化身たる山田太郎も嘘も偽りもない本心を言うも、その答えは朱い月に好感を持つようなモノではなかった為に、朱い月は山田太郎の顔面を踏みつけた。

 常人ならば子供達を笑顔に~という意思を下らないことと否定されれば怒るだろうが、山田太郎は朱い月の足を退けても笑顔を維持したままだった。 それは山田太郎が朱い月のことをよく知っているからであり、朱い月好みの言葉を嘘偽りの言葉で吐き出せば、踏みつけるよりも悲惨な事になると理解してるからだ。

 

「うふっ下らなくても、これは本当に重要な事さ。 この孤児院には現在精神的に不安定な子が居てね。 暴走されたら困るしね」

 

「困るのなら始末してしまえば良いだろうに……」

 

「それだと保護してる意味ないと思うが?」

 

「sixの言う通りだよ。 僕の前では滅多な事は言わない。 それは君が一番よく知ってると思ってたんだけどな」

 

「ふん、知っておるさ。 だから言うだけに留めた」

 

 山田太郎の射殺すような視線から逃れるように、朱い月は早々に孤児院へと入っていく。 しばらく朱い月を見送った後、山田太郎もsixと一緒に孤児院へと入っていった。

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 孤児院の中へと入った三人が待っていたのは、退魔一族の血を引く者達の攻撃、超能力や化け物の混血の能力(ちから)を使う子供達だった。 退魔の子達は己が血に従い、無謀にも朱い月とsixへと攻撃をするが、朱い月もsixも羽虫を払うような仕草で子供達を振り払う。

 

「ん……」

 

「……いつの間に」

 

 退魔の子供達を振り払った後、自身の違和感に感じる二人は先程の子供達を見て、その違和感を察した。 二人の目の前には払った子供達が起き上がってくる姿で、究極の一である朱い月と死徒を統べるsixの攻撃を受けて生きていける人間は一人しか居ない。

 ならなぜ子供達は生きてるのか、その考えもすぐに導き出される。

 

「思考の偽装か」

 

「私達が出せる力は、全て人の子並の出力に統一されてる」

 

 足下の石を拾い、握り潰そうとしたsixは偽装された思考で、どれ程の力が上限かを見極める。

 

「うふっ正解。 だいたい僕が君たちに何もせずに、此処へ連れて行く分けないじゃないか。 これでも保護してるんだよ?」

 

 子供達の攻撃を捌きながら、時に直撃を受けながらも、独特の笑い声で説明する。

 山田太郎の能力は、人間は勿論のこと、神や星、人外たる悪魔や真祖、死徒、英霊、魔術師、魔法使い、モノすらも欺く偽装能力。

 それ故に人々は彼を怯え、魔術師たちは彼を欲し、人外たちは彼を対等に扱う。

 

「くっくっくっ……誰もが欲する能力を高々人の子を守るために使うとは、つくづく贅沢な子だな」

 

「はいはい、そんなこと言っても、この能力は誰にも渡さないし、渡せないから……さ、君たちもあんまりオイタが過ぎると、僕は本気を出さないといけないよ~。 うふふっ」

 

 山田太郎の言葉に、今まで襲い掛かってきた子供達は即座に攻撃するのを止めて三人の前に整列する。 それを見て山田太郎はうんうんと頷き、普段の自身と同じ顔をしたシスターに子供達を任せて、目的の子供が居るとこへ歩いていった。

 

「あやつ一人で大丈夫とは言いたいが、別の意味で大丈夫なのだろうな?」

 

「うふっ……大丈夫ですよ。 いつもの役目ですから」

 

 山田太郎に似たシスターは、山田太郎と同じ声で朱い月の独り言に答えて、子供達と共に施設の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 

 孤児院内で一番広い部屋の隅に、七夜まつきがいた。 まつきは体操座りで顔を膝に(うず)めて、さながら貝のように、甲羅に籠った亀のような姿勢でジッとしていた。

 

「やっほ~、まつきちゃん」

 

「…………やまぁ?」

 

 自分の殻に閉じ籠ってるまつきに、山田太郎は遠慮なく近付き、まつきに声を掛けるとまつきは顔を上げて道化師となった山田太郎を見上げる。 まつきの声はやはりと言うべきか、弱々しくまさに普通の子供のソレと同じだった。

 

「ごめんよ、助けに行けず……」

 

「ん」

 

 山田太郎の顔から薄っぺらな笑顔が消え、まつきを抱きしめるとまつきも山田太郎にしがみつく。 まつきを抱きしめる山田太郎は、昔のようにまつきの髪を解くように撫でてまつきを落ち着かせていた。

 

「これからは此処で生きていくと良い。 今日まで塞ぎ混んでた分、これから笑顔が絶えない人生を送りな。 君にはその権利がある」

 

「やまは? やまも笑顔になる?」

 

「勿論さ! うふふっ僕は君たちが幸せでいるなら、僕の笑顔は絶えないよ」

 

 ニッコリと仮面越しに笑顔を作り、まつきも山田太郎の声で今笑顔になってるのだろうと思い、山田太郎に笑顔を向ける。

 大好きな山田太郎が、自分の事で泣かない為に、もう大丈夫だよという意味を込めて……。




眼鬼に思考を読ませれないように思考を擬装させてるから大丈夫。
というか、極限使いって根源使いと置き換えても良さげ?
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