擬装の極限遣いが見る世界   作:極麗霊夢

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第5話

 まつきちゃんを落ち着かせた次の日。

 まつきちゃんは七夜一族の全てを学ぶと言い出した。 何を思ってその考えに至ったかわからないけど、僕はそれを了承して七夜の里に派遣した『山田太郎』を教育係にした。

 本当なら僕が担当したかったし、まつきちゃんも僕を担当にしたがるだろうけど、僕は僕でやることが沢山有りすぎる。

 

 そこまで考えて僕の携帯に着信が掛かり、名前を見ると七夜の山田太郎とあった。 多分、恐らく、きっと……まつきちゃんが駄々を捏ねたんだろうなぁ。

 

「はい、もしもし?」

 

『やまぁー!! やまが良いーーー!!』

 

 電話に出て最初に聞こえてきたのは、やはりまつきちゃんの泣き声と、担当変更の駄々だった。 予想してた事とはいえ、まつきちゃんの……というか子供たちの泣き声は、僕の胸に深く突き刺さるものがある。

 

『あの、えっと……ピエロの化粧しても見破られました』

 

「それは最初っからわかりきった事でしょ? いくら僕と同じ極限持ちだからと言って、君達が僕レベルの擬装を使えるわけもなく、まつきちゃんは『七夜』だよ? もともとありもしない霊的存在とかを視認出来るんだ。 ピエロの化粧した所とて、無駄に決まってるじゃないか」

 

『やまぁーーーっ!!』

 

『な、なんとか出来ませんか?』

 

「うふ、頑張ってね♪」

 

 ピッと電話を切って即座に電池パックを抜いて、何事もなかったかのように次の仕事場へと向かう。 あ、因みに朱い月とsixは、突如襲いかかって来た真祖の姫の相手をさせてる間にいそいそと退散した。

 後ろから聞こえてくる『此処は私達に任せて行け!!』の心の言葉には感動したね。 何故か口では『私達に押し付けただと!?』や『待て!!』など、まるでこの僕が二人を裏切ったかのような言葉だったが、、、、気のせいだよね。

 

「「「■ ■ ■ ■ ■ ■ーーーッ!!」」」

 

 さぁ、先に進もうと歩くのを再開すると、後ろから何かが狂ったような、そんな感じの声が三つ聞こえてきた。

 チラリと振り返ると、猛スピードで此方に向かう紫と金二つ。

 

「…………逃げよう」

 

 孤児院で捕獲した蜘蛛を篭から取り出して、僕は擬装能力を蜘蛛に使う。

 蜘蛛は僕の手から降りると、体から自身よりも大きく水晶のような足を出して、体も徐々に大きくなって足と同じように水晶のような青い蜘蛛となる。

 

 ―――それは一つの究極。

 

 ―――それは星の触覚。

 

 ―――それは絶対の捕食者。

 

 ―――それは祖に列なるモノ。

 

 ―――その名は、、、

 

 ――――――――タイプ・マアキュリー。

 

「Gyaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

 山田太郎の擬装によって、その存在を擬装されたタクシーである。

 

「GO! タイプ・マアキュリー号」

 

 タイプ・マアキュリーに擬装させた蜘蛛に乗って、山田太郎は山の中を爆走した。

 そして出鼻を挫かれた朱い月とsixは、タイプ・マアキュリーの突然の登場に正気に戻って逃げ去る山田太郎をただただ見てるだけだった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「やぁやぁ、遠野志貴くん、翡翠ちゃん」

 

「だ、だれ?」

 

「志貴様、御下がり下さい!! 此処は遠野家の敷地です。 お嬢様からは本日の来られるお客様は居ないと仰られていました……つまりは、、、」

 

 侵入者ですね!と、僕の方を指差す可愛らしいメイド少女の翡翠ちゃん。

 いや、わかってはいたけど、こうまで僕の存在を忘れ去られるなんて初めての経験だよ。 僕は良くも悪くも周りに、自分の印象を頭の奥深くに刻み込めることが出来ると自覚してるんだけどなぁ。

 そもそも此処に来たのは単なる思い付きというか、近くまで来たから顔を出していこうと思っただけで、アポイントメントも取ってない。

 証明出来ると言えば、自分の名前を言って侵入者でないことを明かすことだけど、仮にもつい先日仕えてた主を娘に引き継ぐように命じた身だ。 名前を言った所で態度は変わらないだろう……いや、もっと悪くなる可能性もなきにしもあらずかな? と、そんな事を考えてると僕の気配察知範囲に見知ったモノを感じた。

 

「わわっストップ、スト~ップです。 翡翠ちゃん!! その方は侵入者ではありません!! 私達を統括する組織の最高責任者、山田太郎さんですよ!!」

 

「えっ!? この不審人物(お方)が!?」

 

 僕を侵入者という疑惑を解いてくれたのは、翡翠と呼ばれたメイド少女の姉に当たる琥珀ちゃんだった。 まぁ、侵入者という疑惑から不審人物になったんだけれども……いくらルビ振って誤魔化しても擬装のスペシャリストの前では無意味。

 というか僕って翡翠ちゃんと認識なかった? 分家の屋敷に居た頃、槇久が遠野家のためにとかなんとかほざいて、琥珀ちゃんと翡翠ちゃんを遠野家に引き取らせた時に……まぁ、琥珀ちゃん達に暴力沙汰とか起こそうとしたのは驚いたけど……。

 

「やぁ、琥珀ちゃん。 君のその笑顔を見ると心が洗われそうだよ」

 

「そのまま真っ黒クロ助な心をまっさらにしてくれると、世界が平和になりそうですよ♪」

 

「うふ♪ ()してよ。 僕の涙が頑固な汚れも落ちる言い方は、僕の涙で洗剤とかを作って販売してしまいそうだ」

 

「あ、なら前言撤回致しますね♪ 山田さんの涙なんて見せ掛けだけなんですから♪」

 

「うふっきっついなあ~♪」

 

 笑顔で、グサリと僕の心を穿ち貫く琥珀ちゃんは相変わらずだ。

 

 やれやれと頭を左右に振り、僕は本題に入るため志貴くんの方へ振り向くと、そこには志貴くんを庇うように睨む遠野家当主代理の秋葉ちゃんと、獣のような目で睨み付けてくる遠野四季くんが居た。

 

「うわぁ……」

 

 琥珀ちゃんに見つかった時点で、二人にも侵入がバレてる事はわかったけど、これは流石に面倒臭くなりそうだ。

 

「それで屋敷内におもてなしは出来ませんが、どのような御用件ですか? 私は遠野家の『山田太郎』から、貴方が訪問するとは聞いていませんよ? それに代理とはいえ、当主である私の挨拶も無しに、兄さんに……」

 

遠野家当主代理(キミ)に挨拶しなかったのは謝るよ。 別に此処まで長く居るつもりじゃなかったし、ただ彼の様子を見に来ただけの用事だ。 当主になる為の勉強を邪魔するのもアレだしね」

 

「見つかって事を大きくした時点で、貴方は私の邪魔をしてるんです。 …………それと用件は終わりのようですね? では、お帰り下さい、、山田太郎」

 

 子供が出してるとは思えない程の殺気混じりの目で睨み付ける。 彼女の中で僕という存在は、気に食わないからという理由で父親を当主の座から降ろした屑という認識なんだろう。

 子供が笑顔で過ごせてない事は仕方ないとはいえ、申し訳ない気持ちになるけれど、やらかした責任は受けなければいけない……と、こんな言い訳で自分を慰めてる自分が嫌だなぁ。

 

「うふっ、そうだね。 今日はこの辺で……秋葉ちゃんもやり過ぎたら、槇久みたいに責任を取ってもらうからね? じゃあね♪」

 

 父親の名前を出すと、ギリッと歯を噛んで顔を歪ませる秋葉ちゃんと四季くん。 志貴くんはいつの間にか翡翠ちゃんと琥珀ちゃんによって、屋敷の中に連れて行かれたのか、僕が振り向いた先には誰も居らず、僕は遠野家から出ていった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 遠野家から出て、何をするでもなく町を歩いていると、正面から見知った顔を見つける。 その()も、僕に用があるのか、目で「こっちに来いというか連れて行く」と言うと、逃げる間もなく僕は後ろからサンドバッグのようにボコボコに殴られて意識を暗転させた。

 

「バ、バカ!! 殺りすぎだ!!」

 

 悲鳴のような声で自分の部下を罵倒する少女が、此方に駆け寄るのを見て僕はゆっくり眠りについた。

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