擬装の極限遣いが見る世界   作:極麗霊夢

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スランプ(´・ω・`)


6話

 ―――ピチョンッ

 

 水の音、水滴が落ちて地面に当たる音、雫が弾く音、僕の意識は暗闇から浮上する。

 目を開き、最初に見た人に(なつ)く―――なんて、鳥じゃあるまいし、そんなことはないし、目を開いた先に人なんて居ない。

 最初に目にしたのは真っ暗な闇だけど、徐々に暗闇に慣れた僕の目に映ったのは暗い天井。

 視力が回復してようがしてまいが関係なかったね、うふっ。

 

「僕の記憶が確かなら、此処は白翼公の宮殿かな? カーテンが掛かった窓が無いってことは地下部屋か」

 

 白翼公……トラフィム・オーテンロッゼ。

 二十七祖の中でヴァン、リィゾと同じ最古参の死徒で、今はどうか知らないけど朱い月の最初の従者。

  一番最初に誕生した意思を持つ死徒だったっけ? う~ん、長年会ってないからそこら辺よく思い出せないや。

 ま、当分は彼女―――ロッゼちゃんの下に居るのも良いかもね。

 

「山田太郎様、トラフィム・オーテンロッゼ様がお呼びです。 どうか我々と来ていただけないでしょうか?」

 

「いいよ」

 

 地下部屋で暇を潰してると、使いの者達がやって来たので、彼らと共に地下部屋を出て玉座の間へとやって来た。

 

「さっきぶりだね。 ロッゼちゃん」

 

「うむ! 久しぶりじゃな、山田よ」

 

 そう言った彼女は、白く長すぎる髪を揺らしながら微笑んだ後、血のような紅い瞳で僕を見る。

 僕自身、彼女と会ってから全く変わってないから、そんなに見ても面白くないと思うんだけど……ロッゼちゃんも朱い月もsixもヴァンちゃんもアルトちゃんも僕と会った時の仕草は変わらないなぁ。

 

「うふっ♪ みんな、よく僕を見るけど、そんなに見ても面白くもないと思うよ?」

 

「そんなことはないぞ? 少なくとも(わらわ)は面白いし楽しい」

 

「そっ♪ しっかし、此処に居る死徒は凄いね。 前アルトちゃんのとこ襲ったのは意思をあまり感じられなかったのに、此処に居る連中は強い意思を持ってる」

 

「あの場に出したのは死徒に成り損ねた亡者(グール)じゃからな。 格が違う」

 

 それをヴァンちゃんに指揮させてアルトちゃんの所を襲わせるって、意外とヴァンちゃんに頑固婆と言われたのがショックだったのかな? まぁ、ヴァンちゃんも僕を欲してたみたいだし、億が一でも依頼が成功した旨味(メリット)があったから承けたんだろうけど……僕が逃げたせいで大損したんだっけ? …………改めてヴァンちゃんと食事…………今度は此方から誘うってのも有りかもね。

 

「聞いておるのか? 山田太郎」

 

「聞いてるよ。 ヴァンちゃんに無理難題吹っ掛けて、あわよくば黒のお姫様と共倒れにさせようとしたんだよね?」

 

「……ま、まぁ、そう言う考えを持ってなかったとは言わんが、まず共倒れになることは無いとも考えておる。 アレでもあやつらは(わらわ)という敵が()るからのう」

 

 まぁ、ヴァンちゃんもアルトちゃんも、何故か僕を狙ってるしねぇ。 ヴァンちゃんはともかく、アルトちゃんのモノになったら黙ってない人達が多いからあまりアルトちゃんに頼りたくない、、けど、そう言うわけにはいかないのが現実なんだよねぇ。

 

「とりあえず此処何日かは、お世話になるよ」

 

「うむ、何日と言わずにずっと居てもよいぞ?」

 

「うふっ」

 

 それはそれで魅力的だけど、流石にずっと居ることは出来ないよ、ロッゼちゃん。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 ロッゼちゃんの宮殿に居着いて、四年くらいの月日が流れた。

 

 今日もロッゼちゃんの城の中を散歩してると、謁見の間が騒がしい事に気付いた僕は謁見の間を覗き見る事にした。

 

「フランスの片田舎のパン屋にて、蛇の転生体を発見致しました。 蛇は既に行動を起こしており、村中の人間に手を掛けてるようです」

 

「ほぅ……あの命知らずめ(蛇の奴)、転生する気力があったのかっ!! くはっ……クックククク……クハハハハハハッ 真祖の姫に狙われ、我が君(朱い月)にも狙われ、娘君(six)に、宝石の翁(シュバインオーグ)に、女狐(アルトルージュ)に、メレムに、黒翼公(ブラックモア)に、(わらわ)に、何よりも『山田太郎』に狙われておることは、蛇も知っておろうに……」

 

 蛇……ミハイル・ロア・バルダムヨォン。 通称、各方面に喧嘩を吹っ掛けた命知らずのバカ蛇。 アルクェイドを騙して『永遠』というモノを夢見た哀れな死徒。

 他者が付けた敬称が嫌なのか『アカシャの蛇』や『転生無限者』と『各方面に喧嘩を吹っ掛けた命知らずのバカ蛇』と呼ばれる度に自称する死徒だ。

 

 何故犬猿の仲である宝石の翁と朱い月の共通の敵となってるのか、同じく犬猿の仲のアルトちゃんとロッゼちゃんの共通の敵なのか、その他僕やsixの敵になってるのかは、一重にアルクェイドに手を出したというたった一つの行動(過ち)所為(せい)だ。

 

 朱い月にとっては、自身の後継者に手を出した。

 sixにとっては、妹に手を出した。

 宝石の翁にとっては、孫のように可愛がってた娘を騙した。

 アルトちゃんにとっては、妹を魔王化させ、その妹を止めるために健闘したにも関わらず、妹との関係が険悪になった。

 ロッゼちゃん、メレム、ブラックモア卿にとっては、主である朱い月の発見したら滅ぼせと命を受けてる。

 そして僕に狙われてるのは、彼が転生する時の人選にある。

 アレは魔術的に優秀な人間または異能の能力値が優秀な存在に転生するからだ。 僕の仕事は異能を持て余して困ってる人や異能者達を保護する事だ。 護るべき異能者を化け物にしてはいけない、絶対に、何があっても……。

 

 キィイッと扉を開けてロッゼちゃんの前に現れると、ロッゼちゃんは僕を見てニヤリと笑う。

 

「行くのか?」

 

「うん、行かなくちゃ」

 

「蛇が動いてるのであれば、真祖の姫は既に起きておるが? それでも行くか?」

 

「護らないといけない」

 

「蛇が乗っ取った異能者または魔術師は、蛇を乗っ取られた者の肉体を殺さなければ救えぬ。 それは最早保護ではなく……」

 

「それでも行くよ。 蛇の事だ……きっと乗っ取った人の意識を維持させたまま、その人の精神が壊れていく様を見て楽しんでる。 一刻も早く苦しみから解放させたい」

 

「…………そうか。 では(わらわ)も行くとしよう。 準備せよ! 此より我らは我が君である朱い月のブリュンスタッド様の命を遂行する!! 蛇を狩るぞ!!」

 

 ―――オオオオオオオオォォォォォッ!!

 

 ロッゼちゃんの命令に配下の死徒達が、城内を震わす程の咆哮を上げた。

 

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