盤の上では、冒険者達と怪物が死闘を繰り広げていました。
暗い森の奥で暴れる、石化の牙を持つ大きな怪物、
一党を組んだばかりの駆け出し冒険者達は、その巨体から繰り出す素早く重い攻撃に、翻弄されてしまいます。
はらはらと他の神々が見守る中、小さな神様が勇気を出し、恐る恐る賽子を振ります。
ころころ、ころり。
ーーー
只人の戦士が長剣を振り、暴れまわる蛇王を斬ると、蛇王は「グオオオオッ!」と空に向かって叫び、そのまま倒れました。冒険者達の大勝利です!
皆が歓声を上げて、拍手をします。冒険者達の勝利を讃えましょう。怪物達の健闘を讃えましょう。大盛り上がりのどんちゃん騒ぎです。
怪物を用意した神様は「怪物を強くし過ぎたかもなぁ」と少し反省します。次は大蛇にしておこう。
「あー、今日も面白かったなぁ」
見学をしていた《幻想》の女神様は、弾けるような可愛らしい声で呟きました。うん、やっぱり冒険はこうでなくっちゃ。
観ているだけでも楽しいですが、やはり、自分も
今度はどんな迷宮を用意しよう? 初めは……やっぱりゴブリン?
いやいや、それはありきたりすぎるのかな? どうだろう?
そうやって、ああでもない、こうでもないと考え事に耽っていると、何やら盤に光の橋がかかったではありませんか。
「あれ? 何だろう?」
その光を辿ると、見慣れない盤を見つけました。勿論、用意した筈はありません。
突然ふわっと現れた新しい盤。それがこちらの盤に向かって光を伸ばしていたのです。
そこでは、少女達が懸命に大きな怪物と戦っているのが見えます。
むむむと唸り、《幻想》の女神様は首を傾げます。はて、これは何だったかな?
そうして「ああっ」と手をたたきました。
これは、他の神が用意した盤。何でも、何処かの神が勝手に模写した、この盤とは異なる世界の複製なのだとか。
全く、いくら元々の世界に影響が出ないとはいえ、許可を取らなきゃ、そこの神様が困るでしょうに。
でも……まあいっか。こちらが盤に誘われているのだから、誰も文句は言わないはず。理由ならそれで良いでしょう!
冒険の切っ掛けは、いつだって突然訪れるのですから。
「さて、どんな怪物を用意しようかな? と、まずはこの世界の事を知らなくちゃね」
何故この盤が現れたのか深く考えずに、《幻想》の女神様は、覗き見しつつ、駒を用意し始めました。
ーーーこの瞬間から、既に賽子は振られていたのでしょう。