儀式が成るまで、後僅か。
人の身体に、虫のように六本腕を生やし、蠍の尾を持つ四ツ目の異形は舌舐めずりして、その時を待っていた。
暗黒の彼方より遥かに遠く……否、今宵は近くに在るという異なる世界で、脅威とされた者達の欠片。
それは、遠き世界の同胞からの贈り物。
愛しき神々の祝福を授けられた触媒。
(……他にはないだろう)
祈るように持ち、
《ーーー汝、秘術をもって怪物を作り、恐怖を世に撒き散らせーーー》
覚知の神より賜った使命は、この胸の中で暗い高揚感と共にある。
嗚呼、
とはいえ、神聖なる儀式に邪魔が入るのは御免だ。
時間さえ稼げれば問題はないが……。
矮小でありながら、凄まじい悪意を持った悍ましい怪物を利用しよう。
異界の友への返礼として寄贈した怪物達が少し惜しいが、本命ではないのだ。どうにでもなる。
それに、必要なのは雑兵程度の者共である。
(まずは、怪物の肉体を再生させなければ……)
合成させる為の、母体となる優秀な怪物が必要だ。
彼はそれを、異世界の怪物の欠片から作り出すつもりでいた。
(……さて、どうしたものか)
欠片を手に思案する。
これ程の物を授かったのだ、産み出す恐怖が失敗作であってはならぬのだ。
その中で特に目を引くのは、奇妙な金属片だ。
聞けば、学習し、更なる高みに至る兵器なのだという。
やはり脅威とするならば、こちらが良いだろう。
夥しい程の、魔の瘴気を流し込んだ。
ーーー病的なまでに毒々しい桃色のその欠片が、妖しく光り、ごぼりと音を立てて膨らんだ。
◇◆◇
【美食殿】の活動として、上質な山菜の採れる山に現れた岩を喰う魔物の撃退というクエストを受け、私達は山中の穴だらけな洞窟にて件の魔物の討伐をしていたのですが……。
「やあ! 手伝ってくれて助かったよ。怪我はないかな?」
「うん! ありがとう」
「はい、大丈夫ですっ! こちらこそ、ありがとうございます!」
「いや、手伝ってもらったのはこっちだから感謝するけど……一体何なのよあんたら……?」
猫耳をぴくぴくと動かし、キャル様が怪しむような目で見つめる先には、突然空から降ってきた御三方。
様々な魔法を扱い、サポートから攻撃までこなした、博識そうな方。
洗練された動きにて敵を翻弄し、嵐のように斬り続けた、刀使いの方。
ペコリーヌ様のように軽々と太剣を振るう、太陽のように眩しいお方。
(本当に、どなたでしょうか?)
主様とペコリーヌ様はすぐに打ち解けてしまわれました。
どのような方であれ、助けて頂いたのですから初めにお礼をしなければ。
「ああそうだっ! 自己紹介していなかったね、うっかりしていたよ」
「こちらも失念していた」
その前に、その女性は思い出したかのように大きな声で言いました。
……そういえば、まだ、お互いに名前を知らないままでした。
「そうでした、まだお名前を訊いていなかったですね。初めに私から。コッコロと申します」
「ユウキだよ~」
「……キャルよ」
「お腹ペコペコのペコリーヌっです!」
元気なペコリーヌ様を見て、楽しそうに綺麗な笑みを浮かべて、太陽のような方はこちらに向きなおった。
「初めまして、僕はーーー」
◇◆◇
この出会いがあのような事件になるとは、私達は思ってもみませんでした。
投稿が遅くてすみません。
書き直しが終わらない……。