バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編   作:道長(最近灯に目覚めた)

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年甲斐もなくはしゃぐのはやめましょう

「MTGってどういうゲームなわけ?」

 

 実家の居間で、シルバーのノートパソコンを抱えた妹が、突拍子もなくそんなことを言った。妹の口からその言葉が聞けるとは到底考えられなかったので、頭が意味を理解するのに数秒の間を要した。

 

「悪い男にでも引っ掛かったか?」

「違うし。彼氏いたけど、大学受験で自然消滅したし」

「マジか。いやマジか」

 

 これも衝撃的な発言である。具体的に言えば2点位のダメージ。

 

「お前がヤリ捨てられたのは良いとして。いきなりどうした?」

「良くないし。まだ膜は無事だし」

「ウッソだろお前。そこはヤっとけよ」

「進学校行ったくせに、高卒の童貞で彼女もいない兄貴には言われたくないわ」

「よく分かってるじゃないか」

 

 どうでもいいけど。

 常在効果で忠誠度がマイナスされて、プラス能力起動にリアルマネーが必要なプレインズウォーカーがいるってマジ?

 プロテクション(親)目的以外に使い道ないでしょ。

 

「彼女とか1:1交換すら出来ないアド損カードだろ」

「そういうところなんだけど。高校受験前日に「シンクロ召喚!」とか言ってたら誰だってキレるわ。ちゃんと勉強してた姉さんが落ちて、なんでアンタが受かるわけ?」

「流石に大学は落ちたけどな。私立ならワンチャンあったけど。でも、あのまま大学行ってたらどうしようもないクズになってたと思うわ」

「ホント、そういうところなんだけど」

 

 軽蔑8割、呆れ2割の視線を投げかけてくる。姉さんを見習い、兄を人間のクズ扱いする妹に心底感心する。

 ずいぶんマトモな人間に育ったじゃないか。兄は嬉しいぞ。姉さんには及ばないが。

 

「カードをいじる私を生ゴミ扱いしていたお前から、TCGに対して好意的かつ意欲的な質問が出るのは正気とは思えんのだが。神話生物にでも会った? 不定の狂気? 精神分析なんてもってないぞ」

「常時発狂してるのが目の前にいるんだよなぁ。……まあ、私もあの頃は毛嫌いが過ぎたと思う」

「いや、その感覚は正しい。この家のクズは私1人で間に合ってる」

「なんでこの人は息を吐くように自己否定出来るわけ……?」

 

 否定もなにもクズは一生クズなんですよ。その中で社会に適応しようとしているのが良いクズ。諦めてるのが悪いクズ。

 幸いなことに、日本社会は税金を納められる程度の能力さえあれば、クズでも人間として生きていける位には懐が広い。人種も宗教もLGBTにも比較的寛容な国だ。

 

 え? 私? クソみたいなクズだけど?

 

「何故ここまで話が逸れる。すまん。私も結構動揺してるな」

「我ながら変なこと言ってる自覚はあるけどさ。うん。実を言うと」

 

 そう言って抱えていたノートパソコンを開いて見せてきた。画面には大手動画サイトのマイページが映っている。

 アイコンには見覚えのないアニメキャラ?が使われていた。

 

「お前動画投稿してるん?」

「一応ね。……いわゆるVtuberなんだけど」

「ほほーん」

 

 Vtuberねぇ……。名前しか知らん。

 

「反応薄くない?」

「そもそもVtuberがなんなのかよく分かってないから反応しようがない」

「絶対否定されると思ってた」

「んー、やれとは絶対言わんけど、人の道を踏み外さなければ、まぁ。私には、お前を否定出来るほどの論拠も信用も責任も無いわけで」

 

 ちょっと安心したように息を吐く妹。

 給料をガチャとカードに費やしてきた人間にとやかく言う資格は無いわ。

 むしろなぜ安心する?

 

「母さんには言うなよ。ややこしくなる」

「当たり前じゃん。こんなこと兄貴にしか話さないって」

「それは喜ぶべきことか? それとも悲しむべきか?」

 

 さあ? どうでしょうと、妹がニヤケる。

 大学生になっても髪も染めず、初めてのマトモな長期休みにこうやって実家に帰ってきた。

 別に咎める要素は、無い。

 緊張も完全に解いたようで、表情が目に見えてイキイキし始めた。本音を喋ってくれるのは嬉しいが、自分と似て調子にのりやすい性格はどうにかならないものか。

 

「見ての通りギャル系Vでさ」

「色々盛ってるな。こういうキャラじゃないだろ? お前」

「うっさいわ。ギャップ萌えってやつ? 見た目こんなんだけど、常識人ってことでやってる」

 

 一番見た目で近いのは艦◯れの鈴谷だろうか。妹とは……似てるっちゃ似ている。美化し過ぎな点は否めないが。

 

「納得。妥当なところだ。で、見てる人は?」

「それなんだよね~。同期と比べるとノビがイマイチでさ」

「ん? やってるのはもしかして私のゲームか? あの時RINEで聞いてきたのはこれか」

 

 サムネのライウン先生で一発で分かった。肩のライウン砲が今か今かと狙いを定めている。

 ゲーム的に知名度は低いが、コアなファンは付きそうだ。コッチ路線で攻めさせた訳ね。

 

「マネージャーさんに家にあるゲーム言ったらこれになった。なんであの時『管理局強行偵察』勧めて来たわけ?」

「様式美。と言いたい所だが、初手ラストレイヴンは攻め過ぎだろ」

「結局ライウン避けて1回目のエンディングで一旦凍結しちゃったよ……。最後までやったら変わってたのかな?」

「配信だし、初っ端からダレるのも良くないから最低ではないんじゃね? その無難な選択肢が視聴者に受けるかは別として」

「だよねー」

 

 しばらく妹の文句なり愚痴なりに付き合っていると、おもむろに動画をクリックする。

 

「で、最初の話に戻るんだけど」

「お前、こっちに戻ってからも配信してたのか。ってなんじゃこりゃ」

 

 一昨日投稿されているその動画には、大分強烈なサムネが使われていた。

 

「一昨日の夜、兄貴と友達2人で騒いでたでしょ。その隣で簡単な配信してた時の切り抜き動画」

「すまんな。声入ってたか」

 

 遮るのは古い家の薄壁一枚だから、ちょっと騒げば当然声は聞こえるわけで。

 

「それは何も言わず配信してた私が悪い。てか、むしろコッチがごめん」

「どうせ帰省を理由に全く配信しないのは、視聴者に申し訳ないって思ったんだろ?」

「うん……。まあ見てもらえば分かると思うんだけど」

 

 再生ボタンが押されると、場面は妹が質問を読み上げようとしていた所だった。

 

「続いてのマシュマロは、えーと、実家に帰省するとのことですが、何か楽しみにしていることはありますか? んー、一番はお母さんの料理かな。あとは兄さ「膝邪魔ァ!」へっ!?」

 

 突然、魂の叫びが割って入った。いや、もう心の底から膝が邪魔だったんだろうなっていう感じの。

 

「……私ともう一人で大爆笑してたわ。理由としてはアイツはオズグッド患ってたせいで膝がな。自分の膝にマジギレしてたわ」

 

 心あたりはある。あり過ぎた。その後も結構変なテンションでやってたのも覚えてる。

 

「うん。最初はリスナーのみんなも困惑してたんだけど、段々兄貴達の会話を聞きたいってなったから、マイク調節して隣の会話を拾う流れになってね」

「なんだそりゃ」

 

 マイクの調整が終わった妹が、隣の部屋の話し声を拾い始めた。もちろん、映ってるのはVだが。

 くぐもっているが、全体的に声が大きいため十分聞き取れる。

 

「5マナ出して、ていっ」

「ここで〈現実を砕くもの〉(スマッシャー)⁉︎ なんで上から解答引けんの?」

「いや、キツいのは事実だけど、〈レン6〉奥義と〈リリアナ〉布告の択迫ってるからマシでしょ」

「そうだけどさ〜。えぇ〜……。その〈エルドラージトロン〉(デッキ)に脳細胞と対戦相手いる? 脊髄だけで回せるでしょ。楽しい? そんなの使って」

「タノシイ! タノシイ!」

「人の心ないわコイツ」

 

 配信主が一切喋らず隣部屋を盗聴するという狂気の企画は続く。

 よく分からないが、脊髄だけで回せるデッキというのがウケたらしい。

 

〈謎めいた命令〉(クリコマ)で〈血編み〉うち消して1ドロー。〈ボブ〉着地どうぞ」

「……勢いで続唱から〈ボブ〉出したけど、これってもしや〈ボブ死〉あるのでは。殴れる〈ボブ〉で殴って……、終わり」

「エンド時に〈コアトル〉キャスト、キャントリップ。……これ〈ボブ〉放置正解か? 殴って何もなければどうぞ。〈ボブ〉2体目は多分プレミじゃない?」

「そうだと思う。アップキープに〈ボブ〉の効果解決。うげっ、〈コラガンの号令〉で3点受ける。〈ボブ〉2枚目は……〈血編み〉ィ!? 4ダメ。……とりあえず唱えるのは〈血編み〉か。続唱は〈思考囲い〉……、唱えたら死ぬわ」

「すまん。手札に〈ポルトガル人〉おる」

「……まけまけまけっ! アメリカが介入した時点で負けよ」

「そもそもMTG自体がアメリカのゲームなんですがそれは」

 

 その後も所々ピックされて動画が終わる。配信者が一切喋らない配信とは。

 

「こんなわけで、兄貴にMTG教わるって感じで動画配信するから。よろしく」

「お前は何を言っているんだ」

 

 どんなわけだ。まるで意味がわからんぞ。

 

「なんか視聴者から膝邪魔の人に出て欲しいって言う声があってね。いきなりは無理だから、まずは兄貴からって」

「アイツはまぁわかる。アイツが配信始めたら絶対マイリス入れるもん。私はわからん」

「兄貴も『脊髄よりばか』、『ボブに殺された男』、更にごく一部だと『A級戦犯』の名前で地味に話題になってるんだけど」

「最後のはコンプライアンス的にどうなの? ないないないない」

 

 その後はもうマネさんと話してる。リスナーも期待している。という言葉に押され、声と肘から先のみで出演という条件を強引に飲まされた。

 アリーナの方を上げてる人はそこそこいるらしいが、紙の初心者向け配信をしているVがちょうどいなかったらしい。どうやら妹の方向性はニッチ向けに振り切られているようだ。

 

 どうせ一過性のものだろう、そう思って気楽に迎えた配信当日。

 

 

 

 

 

「算数ゥ!」

 

 

 

 

 もう少しだけ配信に出なくてはいけなくなってしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 




兄……二次元の美少女は消耗品と考えるクズ。可愛ければなんでもいい。

友人(脊髄)……姉というものに幻想を抱いている。カードゲームはそこそこ。だが右手力は最強。エヴァで全盛期ニセコイや化物語に勝つ。

友人(膝が邪魔)……ゲーム関連最強だが、正座が出来ないのとロリコンなのが玉に瑕。膝はやっぱり必要とのこと。

次の話の内容について

  • 妹とウェルカムデッキでガチ対戦
  • 友人(膝邪魔)とのガチ対戦(モダン)
  • 調子に乗った妹を躾する
  • 解説系(カラーパイは最後まで話します)
  • その他
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