バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編 作:道長(最近灯に目覚めた)
ちょっと実在の人物名が入ってるので何かあったら書き換えます。
「おっ? えるしぃさんのヴィンテージが間に合ったっぽいですね」
その言葉に反応した2人が画面に向き直る。そのままやっててもらってもよかったんだけどね。一応初心者向けMTG講座だから、この配信。
土地(1)
1 トレイリアのアカデミー
クリーチャー(3)
1 グリセルブランド
1 引き裂かれし永劫、エムラクール
1 約束された終末、エムラクール
インスタント(9)
1 吸血の教示者
1 神秘の教示者
1 渦まく知識
2 暗黒の儀式
1 Demonic Consultation
1 Ansestral Recall
1 浅すぎる墓穴
1 裂け目の突破
ソーサリー(7)
1 伝国の王璽
1 Time Walk
1 悪魔の教示者
1 チャネル
1 ヨーグモスの意志
1 Time twister
1 Wheel of Fortune
アーティファクト(10)
1 ライオンの瞳のダイアモンド
1 モックス・ダイアモンド
1 水蓮の花びら
1 Black Lotus
1 Mox Emerald
1 Mox Jet
1 Mox Pearl
1 Mox Ruby
1 Mox Sapphire
1 三なる宝球
時間が無くて制限カードをひたすら積む感じになってしまいました。
三なる宝球出せばとりあえず動けなくなるし、エムラクールかグリセルブランド出せれば勝ちじゃないですかね?
えるしぃ
:時間無かったからマジック最強クラスのフィニッシャーを適当にぶちこむ形になりました
:雑ゥ!だが一理ある
:ヴィンテージは知らんけど他のフォーマットよりは降臨早そうだしなぁ
「仮にフォーマットをヴィンテージに合わせるとこうなるよなって感じだな。勝ち手段に関しては、この縛りだと即死コンボは一種類が限度だし」
「また即死コンボ?」
「正確には即死級のコンボだな。誰だって2、3ターン目に15/15の『TimeWalk』内蔵の耐性及び除去持ち飛行クリーチャーが出てきたら誰だってゲーム投げる。あるいは7/7で7枚ドローとかな」
「何言ってるか分からないけどロクなカードじゃないねぇ!?」
「具体的にはどんなやり方なんですか?」
「『裂け目の突破』による踏み倒し、『伝国の王璽』によるリアニメイト、マナ加速からの正規召喚ですね。ただそれだけだと時間がかかる上に一切アドバンテージを獲得出来ないので、各パワーカードで補ってるようです」
「ほとんど1枚しか入ってないのは、その『制限カード』だからですか?」
「ほぼ全てがそうですね。『ヴィンテージ』は基本的には禁止カード無しで戦う環境なので、そこで制限という時点で大体のことは察していただけるかと。ウィザーズの黒歴史が饗宴しているフォーマットです」
「それゲームとして成り立つの?」
「知り合い曰く、一周回って成立するらしい。制限カードまみれだから、デッキそのものがリソースになるせいで変なコンボが積めないとかなんとか。詳しくは知らないが」
『王冠泥棒、オーコ』が機能する場面、機能させるデッキもあるそうだ。
そして最近『夢の巣のルールス』というカードが、『ヴィンテージ』の禁止カードリストに20年振りに追加されたとか。
令和のカード、マジ令和。
「とりあえずヴィンテージまで出たから、お次は変わり種だ。見た時思わず唸ってしまった。確かにマジックはこういう楽しみもある」
「なに? どうしたの?」
「いや。自分がマジックをやろうとしたきっかけは、これだったなと」
「そういや、昔は遊戯王だったよね。何があったわけ?」
征竜禁止後の9期、シャドール、クリフォート、ネクロス、辺りが差し合いしてる環境、その後の彼岸まではまだ楽しく出来たんだがなぁ。
猿とヒグルミが先攻蓋閉じゲーを加速、抑止力になるために刷られたはずの幽鬼うさぎと、次の灰流うららがトップメタ以外を駆逐する辺りから完全に離れてしまった。シャドール新規で一瞬戻ったがそれっきりだ。
別にディスりたい訳じゃないが、自分がやめた理由はそんなものである。
正直グッドスタッフデッキが環境にいない時点でカードのバランスはあまりよろしくない。強すぎても困るのだが。
「遊戯王は先攻制圧か、それを返せるデッキ、開発者が想定してるデザインドのコンボデッキしかなくてイマイチ個性が薄いと思ってな……。実際は違うんだが、そう感じてしまった時点でもうやれないな、と思った」
「要は飽きたのね」
「んー、ちょっと違うんだが。目は食べたいのに胃は油ものを受け付けないというか、ランド派からシー派に改宗したというか」
「先生がマジックを楽しいと思う理由は何ですか?」
あんまり遊戯王ディスりで終わりたくないと思った時に、ちょうどリリーさんが助け船を出してくれた。変わらないほわほわした微笑みで話してるあたり、天然でやってるのかもしれないが、この辺が人気の秘訣だろうなと感じた。
「色んなデッキが環境にいますからね。トップメタと言っても大会入賞率が10%を超えるデッキは基本的には滅多にありませんし、大会には必ずメタゲーム外のデッキを持ち込む人や、昔から同じデッキしかつかわない人がいますから。『アーキタイプ』に関しては次回話しますが、とにかくデッキの種類が豊富なんです」
「配信も人が多い方が楽しいですからねー。でも、あまり多いと、いつも観てくれる人を覚えるのも大変です」
「そういや、先輩って最初の方はリスナー全員の名前読み上げてましたよね?」
妹の発言に素朴な疑問が持ち上がる。人気配信者がそんなことしたらマトモに放送できないのでは?
大変だからといってやめると、視聴者からは人気に驕ったように見えるから難しい問題だろうに。
「はい。実は観てくれた人の名前を読み上げるだけで配信が終わっちゃったことがありまして……。それ以来お名前を呼ぶのはホドホドにしてます。まだまだ未熟者です」
「伝説の配信ですよね~。SNSに拡散されて同接が最後の最後まで増え続けたっていう」
「あ、あのスズちゃん? 恥ずかしいのでこれ以上は……」
顔を赤くして当て所もなく手をさ迷わせるリリーさん。
それをやられてしまったら、視聴者も名前を呼ばれなくていい空気になるわな。ゴリ押しだが一番敵を作らない正攻法だ。
「……マジックのメタ読みもそんな感じですよ。とても環境のデッキ全てに対策は出来ないので、どのデッキに有利を取りにいくか考えるんです。難しいですが、とても楽しい時間ですね。しかしマジックに興味を持った一番のきっかけは、とあるカードを見たからです。そのカードについてはデッキを紹介してから話しましょう」
土地(12)
12沼
クリーチャー(6)
3 よろめくゴブリン
1 脳蛆
1 肉裂き怪物
1 忌まわしき者
インスタント(6)
2 奇怪な突然変異
2 パイ包み
2 胆汁病
ソーサリー(4)
4 コジレックの審問
アーティファクト(2)
1 ゴルゴンの首
1 Living Wall
《ラノワールのエルフ》のフレイバーテキスト
──小枝を踏み折れば、骨を折ってあがないとする──
デッキは画像と一緒に、どうぞ。
「……画像と一緒に?」
「これがその画像だ。ちなみに食事中の方は見ない方がいいです」
「え? それってどういう」
『脳蛆』のカードが大画面にアップされた。
耳の穴からグロテスクな芋虫が這い出てくるイラストだ。
「グロいグロいグロい! ストップ! ストーップ!」
目をつぶって絶叫する妹。確かに見ていて気持ちのいいものではない。
「ちょっと待ってちょっと待って! えっ? 今の耳から虫が出てたよね!?」
耳を押さえ声を張り上げる。SANチェック失敗して、アイデアに成功した探索者みたいだなと思った。
:うげっこれは
:キモい(キモい
:誰だよこのデッキ考えたやつ
:耳がヤバイ音量的な意味で(迫真
:それはどうかな?(自分の耳の穴をほじりながら
:よかった出てきたのは真っ黒な耳クソだった
:それ虫のウ○コじゃね?
「いやー、うん。間違いなく強化だな。予想の斜め上だったけど。一本取られました。誰が考えたんですかね? これ」
デーテ
:ワイやで
:お前だったのか…
:悲鳴助かる画像○ね
:よくもこんなキ○ガイデッキを
:イラストはウィザーズ公式なんだよな…
「意外だな。お前、ホラーそんなに怖がらないのに」
「あれは最初からそういうもんだと観てるから大丈夫なの! いきなりだったら誰だってビビるわ!」
「リリーさん大丈夫ですか? 驚いたでしょう?」
「確かにちょっと。でも虫さんが耳から出てるだけですよね?」
そう言うリリーさんは至って平然としていた。
「ええ、まぁ……。それだけですが」
「そういう虫さんもいるでしょうし、そもそも人間の体には沢山の細菌がいますから、そこまででは」
「……マジかよ」
なんというか、わかんねぇな、これ(考察放棄
:おっそうだな
:えぇ…(困惑
:そういやホラゲーで一回も悲鳴聞いたことないな…
:強い(確信
「もう消した?」
「消えたぞ」
「ホント?」
「あぁ」
薄目を開けて恐る恐るスクリーンを見ようとする。が
「まだ写ってんじゃぁぁあん!? 嘘つき!」
「いや。視聴者がもとめてんのはこういうのかなって」
「スズちゃん、ただ耳から芋虫さんがにょきにょきしてるだけですよー?」
「先輩の口からそんな発言が飛び出すとは思わなかった!」
「今、口に虫がいたような……」
「も う や め て !」
首を振って、耳を押さえつけて目を力一杯瞑っている。
「妹が配信放棄したので、リリーさんに説明しますと、デーテさんはイラストのインパクトを強化した訳です」
「なるほど~。ところで私もエルフですし、『ラノワールのエルフ』さんみたく、小枝を折った人の骨は折った方がいいんでしょうか?」
「いえ、『ラノワールのエルフ』が豪快なだけじゃないですかね(震え声)」
「そうですかー?」
「そうですよ(迫真)」
リリーさんはどうか純国産(?)エルフであってください。
万が一『ニッサ』みたくなったら『親衛隊』に殺される。
「っと、今のはグロテスクなイラストや極端なフレイバーテキストでしたが、カードのデザインもマジックの魅力の一つです。私をマジックに誘ったカードはこれ」
画面に青い魔導士の姿が映された。
両の手の間に青の呪文を蓄え、今まさに解き放たんとする男のイラストだ。
:出たな神
:財布を刻む者
:マジックを象徴するカードの1枚だよなー
「『精神を刻む者、ジェイス』。初出は2010年発売の『ワールドウェイク』。マジック史上初の4つの忠誠度能力を持つプレインズウォーカー。1枚で青がなんたるかを体現する、高い汎用性を備えた、あらゆるフォーマットで活躍する類稀なパワーカード」
「わぁ~、カッコいいですね」
「目を開けろ妹よ。お前の好きなイケメンだぞ」
「……フード被ってるから雰囲気イケメンの可能性があるんだけど」
チラリとタブレットの液晶を覗き込み、顔をあげる。
イケメンや美少女は人間を元気にするよね。見るだけなら。
「ちなみに日本語訳では『精神を刻む者』となっているが、私は英語名の『Jace, the Mind Sculptor』の方が好きだ」
「なにそれ。厨ニ病ってやつ?」
「『sculptor』が『刻む者』と訳されてるんだが、『sculp』本来の意味は彫るとか、彫刻する、という意味だろう? 他人の精神を思うがままに彫造してしまう彼を表すには、『刻む』という言葉では表現しきれてない。だからと言ってこれ以上の訳があるわけじゃないんだが」
「相変わらず変なことにこだわるねぇ、兄さん」
「実際最初に和訳を見た時、原文はmutilateとかmangleだと思ってな。sculpだと知って少し拍子抜けした。今ではむしろしっくりきてるが」
奥義だけ見ると、確かに『刻む』がぴったりだ。しかしカード全体を見た時、『sculp』の方がデザインにフィットする。
「妙な話だが、彫刻っていうのは西洋の芸術なんだと感じた。日本語には彫刻する者を的確に表せる言葉を見つけられない。少なくとも私には」
「彫刻家って言葉があるじゃん」
「それは彫刻に家がくっついただけだ。私にとっては彫刻と家を一緒にすること自体が論外。だったら芸術家の方がまだ適当だ」
「ホントよく分かんないなぁ、それがマジックを遊ぶ上で必要なわけ?」
「一切必要ないな。ただ『Sculptor』でジェイスは表現出来るが、『刻む』、ましてや『彫る』じゃ全然足りない。それだけの話だ」
「マジで関係ない話だね。次いこう。次」
「これはただの横道だが、デザインは大事だよ。イラスト、名前、フレイバーテキスト、カードの効果を含めてな」
どうでもいい雑談なのだが無言のリリーさんを見ると、何故か神妙な顔をして悩んでいる。
「あの、リリーさん?」
「……表現は大事ですよねー。型が決まってても、そこに自分を流し込まなきゃいけないんです。どれだけ歪で、窮屈で、苦しくても」
「へっ?」
「ありがとうございます。先生、ちょっとだけ前進出来た気がします」
「あ、はい、どういたしまし……て?」
何故かお礼を言われてしまった。
「……そうだ、美麗なイラストもマジックの魅力の1つですよ。特に基本地形は、各次元ごとに違うものが書き下ろされるから、お気に入りのものを見付けやすい。フォーマットが違かろうと基本土地は使えるので」
「そうなんですか?」
なんとか話を本題に戻す。自分で逸らしておいてなんだが、彼女を相手にすると調子が狂う。
「自分が使っているのはJhon Avonが描いたものです」
「綺麗な山だね。ちょっと登ってみたくなる」
画面には赤い空に白い山という雄大な風景が映された。
「Unシリーズのものは全て人気だな。あとは不動の一位、グルランド。それとAPACシリーズには日本の富士山が描かれたりしてる」
パラパラとスライドショーのように画面が切り替わる。
「タッチが全然違いますね。わざわざ名指しで仰ってましたし、色んな人が描かれてるんですか?」
「ええ。それぞれのアーティストに必ず熱烈なファンがいます。有名所だと、そのグルランドを描いたTerese Nielsen、あのBlack LotusのChristopher Rush、プレインズウォーカーをデザインしたAleksi Briclot、日本人の代表なら、FFの原画を担当する天野喜孝氏が『リリアナ』を描いたことで話題になった」
「あのFFの!?」
「あくまでゲストだけどな。もしかしたらこれからも、何かの拍子に寄稿してくれるかもしれないが」
他のイラストレーターも名だたる面子なんだがな。日本人ならやっぱりFFか。
「最近だと……Seb McKinnonか」
『エルドレインの王権』のキービジュアルを描いた人だ。
「スッゴイ苦々しい顔してるけど何かあったの?」
「いや、Mckinnonは好きなんだ。大好きと言っていいくらい」
あの見た者を異世界に迷い混ませるような独特の世界観と、それを表現しきる緻密なタッチ、果たしてあの1枚を描くのに、どれほどの研鑽を積んだのだろうか。
私は好きだね。王道のファンタジーのものも、ゴシックホラー調のものも。
「いや。好きすぎて知り合いから『Fae』のプレイマットまで買ってしまってな……。冷静に考えるとプレイマット1枚にあの値段は適正だったのかどうか」
「いくら?」
「諭吉1枚じゃ足りない。適正どうこう言うなら、Mckinnonに1万って考えたら逆に不安になるくらいなんだが。自分が値段つけて良いレベルじゃない」
「……まあ、それ位なら」
「あと正確にはMckinnonじゃないんだが、ゲストイラストレーターによる作品の『Dance』も一緒に買った。これも諭吉1枚では買えてない」
「……合計は?」
「3じゃ足りんな」
「バッカじゃないの!?」
うるさいわい! そんなこと自分が一番知っとるわ! あの大胆な黒の余白を見たらいつの間にか諭吉が消えてたんだよ!
:10年後に鑑定団に出てそう
:残念! 1000円!
:額縁の方が高そう
:Sebの絵が魅力的なのは認めるがプレマに10k以上か……
:脊髄の方が賢い
「芸術にはお金がかかりますから仕方ありませんよ。スズちゃん?」
「先輩が言うなら分かりますよ。でもコイツの薄給でそんなことしたら破産しますって。まさかリポ払いとかしてないよね?」
「流石にそこまではいってない。しばらくは米と納豆だけだが、元々TCGは金がかかる趣味だからな。その辺含めてそろそろフォーマットについてちゃんと説明するか」
真面目な顔をして2人に向き直る。ほとんど雑談で時間が過ぎてるのだが、幸い視聴者数はほぼ横ばいだ。
改めて説明しようとしたところで、リリーさんが手をあげる。
「リリーさん?」
「カップ焼きそば、ぜひいらしてくださいね? そんなに食費がピンチなのでしたら」
……『ラノワールのエルフ』はカップ焼きそばの野菜はカウントにいれるのだろうか?
えるしぃさん、デーテさんありがとうございました。
特にデーテさんの視点は完全に予想外でした。イラスト、大事です。MTGに限らずTCGのイラストはどれも魅力的ですよね。
私もMckinnonのプレマ欲しいんですけどね。出回んないし高いでもう。
他の方の作品を読むと高確率で掲示板回あるんですけど、私の場合読んでくれてる皆様の感想以上のものが思いつかないんですよね。
その分感想欄で遊んでいただけたらなと思います。
2代目チーフへの質問、要望はこちらへ
カップ焼きそばの需要は
-
ある
-
ない
-
どうして女なんだ……