バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編   作:道長(最近灯に目覚めた)

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 これ書くのに何話かかってるんですかねぇ? 過去最長なのは確かですが。
 次からはもっとスマートに書こうと思います。


フォーマット5(フォーマットについてだけ知りたい方はここだけでも十分です)

「まずは『スタンダード』。MTGにおいて最大の競技人口を抱える花形フォーマット。特徴はなんと言っても『ローテーション』の存在だろう。毎年10月に使えるカードセットが更新される。具体的に言えば発売日から2回目の10月を迎えると、そのカードセットは使えなくなってしまうんだ。目安は発売日から2年弱位か」

「折角買ったのに使えなくなっちゃうの!?」

「もったいないですねー」

 

 驚く2人。特に妹は良いリアクションをする。実際TCG初心者にとっては衝撃的な内容だろう。MTGが敷居が高いと言われる大きな理由の1つだ。

 

「短く見えますが、TCGで同じデッキが2年もトップメタであり続けるということはまずありえません。新商品が出れば環境が動きますし、出さないと利益が出ません」

「そういうもんなの?」

「環境に変化が無いとメタが固まりきってしまうから、それはそれで良くない。新パック毎に禁止カードが出るようなのも好ましくはないが」

「前者は飽きるし、後者はついていけなくなるか」

「商品が売れないと企業が潰れちゃいますよねー。どちらかに偏り過ぎても人が離れてしまいます」

 

 2人とも要点を理解してくれたようだ。このまま説明を続けて良いだろう。

 

 

「ウィザーズ社は、その難題を使えるカードプールを限定し、ルールとして明文化することで競技性に昇華させた。『スタンダード』はメタゲームの変化を楽しみ、環境を読むことを含めて戦う『フォーマット』でもある。使えるカードプールが狭ければバランスが取りやすいし、新カードも出しやすくなる」

「『スタンダード』を追いかけてる人なら、そういった変化を楽しめるプレイヤーさんですからねー」

 

 リリーさんは笑っているが、妹はイマイチ納得していなさそうだ。多分『スタン落ち』したカードのことが気になってるに違いない。

 どっちにしろ下環境について説明するから、今は触れるタイミングではないか。

 

「利点は参入難易度の低さ。新パックメインのフォーマットだからカードが手に入りやすく、一部を除いてかなり安価にカードが買えます。色を絞って、コモン、アンコモンで揃えれば、5000円でそれなりのものが組めるのではないでしょうか。ショップ側も理解してるから『スタンダード』専用のコーナーを作っていることがほとんどです」

「難点はその『ローテーション』、ですか?」

「そのとおりです。新パック毎に環境が動くのと、必ず『スタン落ち』が発生します。遊べる時間がない社会人だと、折角買っても一回も使えず環境落ち、ということもありえます。自由になるお金はそんなにないけど時間はある、学生向けの『フォーマット』かもしれません。『英語の勉強も兼ねた遊びがしたい』と言えば、親の財布も緩むかも」

「英語のパックも国内で販売されてるようですからねー」

「そして買った親の方がハマり出すまでがワンセットです。あと『スタンダード』環境は『MTGアリーナ』でデジタルカードゲーム化してるので、いきなり買うのは、という人もどうぞ。基本プレイ無料、近々アプリ版も出されるようですし」

 

 実際今、『スタンダード』を紙でやるのはリスクが大きい。昔は『ほとんど禁止が出ないフォーマット』が誘い文句だったのが、今は過去最高枚数の禁止カードを排出している。紙だと補填はないが、『アリーナ』なら補填される。よほどでない限り紙で『スタンダード』を始める必要はないだろう。

 さて、そろそろ妹をつっつくか。

 

「何か言いたいことはあるか、妹よ」

「その『スタンダード』で使えなくなったカードはどうなるわけ?公式の大会では使えないイラストになるの?」

「そういった『スタン落ち』したカードを受け止める『フォーマット』が『パイオニア』だ」

 

 スクリーンが切り替わり画像がラヴニカ次元のものになる。各ギルド門の他、『ジェイス』と『ニヴ=ミゼット』がいる。

 

「イケメンじゃん」

「使えるカードは2013年発売『ラヴニカへの回帰』以降のカード。本来は『モダン』がこの役割を担ってたんだが、あまりにカードプールが広くなりすぎたため作られた『フォーマット』だ。実際『スタン落ち』したデッキをそのまま使っても勝ち負けは別として、それなりに戦える」

「あぁ、『モダン』って公式でサポートされてるんだ。てっきり身内の特殊ルールなんだと思ってた」

「そういうのもないことはないがな。『2サイクル』とか。フォーマットの特徴は『フェッチランド』が使用できないため、多色化すると途端にマナ基盤がタイトになる。3色以上のデッキを組むのは何か明確な強みがない限りオススメ出来ない」

 

 『5色ニヴ=ミゼット』とか。ただ『血染めの月』に代表される『マナディストラクション』戦術が少ないため、一度回り始めれば多色のカードパワー差でなんとかなったりするが。

 

「良いところは『スタンダード』と同じく参入難易度の低さ。カードプールが『スタンダード』より広いのも相まって、選べば『スタンダード』より安く一線級のデッキが組めることもある。それこそ『スタンダード』から入って、『スタン落ち』したデッキをそのまま『パイオニア』のパーツで強化すればいいから入りやすい」

 

 現『スタンダード』を長くやっていれば自然と遊べるようになる『フォーマット』だろう。正式な制定自体も最近だから初心者も多い。

 

「ただ制定されたのが最近なので人が少ない。私の地域だと『モダン』の大会は十数人集まるが、『パイオニア』は下手をすると片手の指で足りる規模の時がある。あと新規カードの影響を露骨に受けるからメタゲームの変遷が割りと激しい」

 

 マナ基盤が厳しいからコンボデッキは組みにくいと思ったら、そんなことはないからな。一応『ヴィンテージ』でも戦える『The SPY』が組めちゃうし。

 

「良くも悪くも『スタンダード』の延長線上にある『フォーマット』ってわけね」

「裏を返せば、お友達と一緒に始めやすい『フォーマット』、なんですね?私達みたいな学生が遊ぶには、丁度良さそうです」

「そんなところです」

 

 人数の少なさは顔馴染みを作りやすいことでもあるからマイナス面だけではない。

 要はこれからの『フォーマット』ということである。今から始めれば、数年後には君も後方腕組みおじさんになれるかもしれない。

 

「お次は『モダン』、私がやっている『フォーマット』だ」

「兄さんが使ってるのは『ジャンド』だっけ?」

「『モダン』では制定当初からあるデッキだな。使えるのは2003年発売『ミラディン』のカードから」

「『モダン』と命名された割りには、かなり古いカードが使えるんですね?」

 

 そう。制定当初は正しく『モダン』だったのだ。が、今では大正モダンみたいな意味になってきている。

 

「おっしゃるとおり、時が経つにつれモダンのカードプールも莫大なものになってきて、『スタンダード』落ちのデッキを受け止めるには不適切なものになってしまいました。『パイオニア』が出来た理由が納得出来たでしょうか?」

「はい。先生」

 

 ちょっと油断していた。そう邪気無く笑顔で「先生」なんて言われると目覚めそうになる。美人さんだからなおさら。なので、手元の水を飲んで誤魔化す。無論妹にはモロバレなので、冷たい視線が突き刺さっているのだが。

 

「環境としてはとにかく多彩なデッキがあります。最初期の調整不足カード、特に青のパワーカードや狂ったアーティファクト、イカれ……コホン。イカした土地が存在しないため5色のパワーバランスは概ね公平です」

「もしかして元々はオーバーパワーのカードを切り離すために作られたんでしようか?」

「それもありますね。本場アメリカでは『スタンダード』を凌ぐ人気があるとか。私の地域だと一番人がいます」

「ふーん。じゃあ環境としては安定してるんだ」

 

 ところがどっこい、メイン5つの『フォーマット』のなかでもトップクラスに即死コンボや無限ループを勝ち筋にしやすい環境だったりする。

 

「人によっては一番の地獄と言われる『フォーマット』だぞ?」

「マジ?」

「青のパワーカードが存在しないとは言ったが、同時に強力な打ち消し呪文も使えないという事情がある。お陰でオールインコンボデッキへのメインデッキでの対抗手段がほぼ無いデッキが多い。いくら使える土地が絞られているとは言っても、『フェッチランド』と『ショックランド』が使えるから多色化も容易。MTGの歴史の中でも指折りのインフレが起きた『ローウィン』~『ミラディンの傷痕』のカードが使用可能なのもあって、カードパワーに対して打ち消し呪文の性能が追い付いてない」

 

 お互いにやりたいことをぶつけ合う、基本的にはそんな『フォーマット』だ。試合時間も全フォーマット中一番短いと言われている。

 

「でも人気のある『フォーマット』なんですよね?」

「単純に色んなデッキが環境にいますから。それでいてトップクラスのデッキがいきなり環境外に落ちることは少ないですし、『レガシー』ほど凝り固まってる訳でもないので。カードプールが広がったおかげで、メタゲーム上に必ず天敵となるデッキがいる場面が多いです。個人的には社会人で紙を始めるなら一番オススメの『フォーマット』です」

 

 昔は『スタンダード』並みに環境が荒れていたようだが、今では一周回って一番安定している『フォーマット』ではないだろうか。『モダンホライゾン』の様な例もあるから油断は出来ないが。『モダン』以下を対象にした特殊セットの存在は置いておこう。

 

「それと、環境がある程度安定してるのもありますが、初心者が参入出来るギリギリのラインの『フォーマット』というのもありますね」

「なんでギリギリ? そりゃ知らないカードはいっぱいあるだろうけど」

 

 これがTCG界共有の悩みであり、MTGが醸し出す『敷居の高い初見お断りの店』感最大の要因だろう。

 

「2人に問題です。私の『Jund』、ズバリいくらでしょう?メインデッキだけで構わない」

「突拍子もなく難問出すね」

「これはタブレットの検索はなしですか?」

「検索もコメント見るのもなしでお願いします」

 

 2人とも悩んでいるが、正直当てられるとは微塵も思っていない。

 

「『スタンダード』が5000円でしょ? 強そうだし20000くらい?」

「うーんと、50000円位でしょうか。先生は社会人ですし」

「いやいや先輩、所詮カードゲームですよ? その値段なら新品の据え置き機とソフトがセット買えちゃいますから。子供の遊びで1枚の平均がワンコイン越えちゃいけないでしょ」

「あっ、そうですね。んー、でもデザイナーさん雇ってるみたいですし、それなりの値段がしそうな気も……」

「あー、忘れてました。でも1枚の値段が1000円近くするゲームって誰がするんです?」

「2人とも、時間も押してますし答えはそれでいいですね?」

「いいよー」

「はい」

「ファイナルアンサー?」

「みの◯んたかこいつ。うん。ファイナルアンサー」

「ファイナルアンサーでお願いします」

 

ダカダカダカダカダカダカダカ……

 

「まさかのセルフドラムロォル!? しかも口!?」

「……(ドラムロールを口ずさみながら)」

「見つめるな! ためるな! ウザいわ! 自分で時間潰してどうすんの!?」

「ざぁんねん! 2人とも不正解!」

「ちょっと似てるのが腹立たしい! 外れたことよりそっちのが癪にさわるわ!」

「お二人とも仲が良いですねー。羨ましいです」

「これのどこが仲良く見えるんですか!? 先輩!」

「? 全部ですよー?」

「すいません。答え言っていいですか?リリーさん」

「どうぞー」

「……いいや、もう。で、答えは?」

「十万以上」

「はっ?」

「えっ?」

 

 2人が固まった。まあ、そうだよね。60枚の手のひらサイズの紙に十数万かかるとは誰も思わんわ。そんなこと知らせずに『Jund』勧めやがったからな、アイツ。給付金がなければ即死だった……。

 コメント欄もドン引きの様相である。

 

「もう一回言って」

「十数万かかってるぞ」

「何言ってんだこのクソ兄貴」

 

 過去最低温度の視線を放つ妹がいた。予想通りとは言えキツいものはキツい。

 

「ちなみにどのカードがどれくらいするのでしょうか?」

 

 リリーさんの質問に答えないわけにはいかないだろう。こういった事情も説明しなければ、解説として成り立たない。

 

「まずは『土地』周りからいきましょう。『モダン』以下で必ず使われる『フェッチランド』、これが最初の障壁です。黒緑の『新緑の地下墓地』が4×6000で24000円、残りのフェッチランドは2000円前後だと計算して4枚で8000円。黒赤『ファストランド』が3枚で6000円。『ショックランド』が1枚1000円くらいとして3枚3000円。『キャノピーランド』だったり、基本土地が『Unhinged』という人気土地なので他も1000円前後しますが、必須ではないので大体40000円以上と計算出来ます」

 

 スクリーンに出される計算式に我ながら感心する。よく集めたなと。紙1枚にかけてる値段じゃないわ。冷静に考えたらプレマどうこう言ってる場合じゃないね。MTGをやるとTCG関連の金銭感覚が狂う。3000円3積みとか4積みが安く思えるもん。

 

「続いて『クリーチャー』、皆大好き『タルモゴイフ』が1枚5000円だから4枚で20000円。『歴戦の紅蓮術士』が3500円位で2枚入ってくるから7000円。『死の飢えのタイタン、クロクサ』は大体3000円で、『運命の神、クローティス』が……、まぁ1000円か、1枚ずつで4000円。『血編み髪のエルフ』は安い。1枚500円で4枚だから2000円、合計33000円」

「500円ならって思ったけど、4枚積んだら2000円じゃん。ヤバイ、感覚麻痺してきてる」

「次は花形『プレインズウォーカー』。『ヴェールのリリアナ』はショップで買うなら6500円くらいかね?3枚で19500円。『レンと6番』、コイツが一番高くて店頭で1枚8000円なら買いか。3枚で24000円。他にも値段がつく『呪文』を含めてえーと、10000円は越えるな」

「急に雑になったねぇ!?」

「だってお前の視線を受け続けるのが辛いんだもん」

「当たり前だよ! 十三万も60枚の紙にかけるとは人間だとは思ってなかったよ!」

「『Jund』に関しては高いカードの詰め合わせみたいなところがあるから高騰する。『フェッチランド』と2色土地を抜いて、赤単の『バーン』にすれば頑張れば10000円台で収まるじゃないか?」

 

 『稲妻』を代表に火力呪文はそこまで高くない。『稲妻』以外の火力は『バーン』位にしか使われないし、その『稲妻』も再録が多いから状態を気にしなければ300円台、私は170円で買えたのもある。

 

「『フェッチランド』が高いんですねー。どうしてでしょうか?」

「単純に強くて便利なのと、需要があるからですね。人気のある『モダン』と古参がよくプレイしてる『レガシー』でどちらも合計で8枚前後採用されてますし。本腰いれて紙の『MTG』を始めるなら、この『フェッチランド』から集めることを推奨します。呪文はデッキによって使うものが変わりますが、色が合うなら『フェッチランド』は必ず使いますから」

「でも高いじゃん。なんで『モダン』が一番オススメな訳?」

「一度作ったデッキが無駄になりにくい。流石に禁止されたら無理だが、しばらくやれなくて久しぶりに復帰、ということになってもそれなりに戦える。特に『Jund』みたいなグッドスタッフデッキは、デッキリストを見て、数枚アップデートするだけで準環境級には戻れるからな。『スタンダード』や『パイオニア』は新パックの影響を露骨に受けるせいで、一度置いてかれると取り戻すのが難しい。学生なら問題ないだろうが、社会人に環境を追わせ続けるのは酷だろう」

 

 コンセプトを定めてデッキを組めば、環境デッキと相性ゲーに持ち込める程度のカードプールを誇るのが『モダン』だ。一番個性が出しやすいフォーマットかもしれない。

 

「それと『スタンダード』はMTGアリーナがあるし、『パイオニア』もアリーナで再現出来るようにしている動きがあるからな。何より最近は禁止カードが連発されてる荒れた環境だ。デッキそのものが組めなくなる危険性がある。そういう背景もあって、時間のない人に先に述べた2つの『フォーマット』はオススメ出来ない。結果的に『モダン』のデッキより出費が嵩む場合もあるからな。ただ初期投資が嵩むから『モダン』は社会人の新人プレインズウォーカー向けだ」

「だからって十数万は、ねぇ?」

「ちょっとびっくりしちゃいました。でも理由は納得ですねー」

「まあ、予算は50000円程あれば準環境級のものは組めると思います。それと、カード1枚が高いからプロキシ……、自分でカラーコピーしたものを使っても、フリーなら文句を言う人は少ない。気になるデッキがあるならプロキシから始めていいと思う。ただ、使うときは必ず相手にことわりをいれることを忘れずに。最低限のマナーです」

 

 こんなものか?

 興味があるなら自分で調べてもらった方がいいし、最大の障害であろう金銭面は話した。そろそろシメに入らないと時間が押している。

 

「残り2つはちゃっちゃとやろう。私自身の知識不足もあるが、『レガシー』や『ヴィンテージ』からはじめる初心者なんてほとんどいないだろうし、いても私の埒外だ」

「理由はやっぱり予算?」

「そうだ。無論、プレイ難易度の高さもある。まずは『レガシー』、ここからは『エターナル』と呼ばれる環境だ。使用可能なのは禁止指定されたカード以外全て。『モダン』までは辛うじてシャバだが、『レガシー』から終身名誉死刑囚みたいなカードが登場してくる」

「オーバーパワーのカード達、ですね?」

「お察しのとおりです」

 

 『レガシー』を語る上で欠かせないのが『土地』と、『打ち消し』だろう。『アーティファクト』は『オーコ』のせいで下火気味だから省くとしよう。

 

「いわゆる『再録禁止カード』、色々例外はありますが『強すぎるから二度と再録しません』と公式で宣言されたカードが使われる『フォーマット』になります。代表は『デュアルランド』。『フェッチランド』で持ってこれる基本土地タイプを持ちながら、何のデメリットもなくアンタップインして2色のマナが出せる」

「でもお高いんでしょう?」

「人気のない安いものでも20000円以上、人気のものになると最低でも十万円近くする。2色デッキでもこれが2~3枚必要という素敵仕様」

「つっこむ気も起きなくなってきたよ」

 

 「どんな土地でも1坪だけ買ってやる」と言われたら、「1坪分のβ版『Volcanic Island』が欲しい」と答えるといいんじゃないかな?

 家を建てる方が間違いなく安く済む。

 

「ただ同時に多色化にリスクが生じる環境でもある。『不毛の大地』という基本でない『土地』を破壊する『土地』が存在してな。『デュアルランド』も例外ではない。『モダン』までは『クリーチャー』や『プレインズウォーカー』に焦点がいくが、『レガシー』は強力な『土地』と『打ち消し』が中心の『フォーマット』になる」

 

 それこそ『エターナル』のバランスは『青』と、おぞましい『アーティファクト』群の存在を前提に成り立っている。

 特に『青』を入れないデッキは『打ち消し』と便利な『ドロースペル』を捨てるリスクを常に頭にいれなければいけない。

 

「カードプールが広いということは、コンボデッキばかりなんですか?先生」

「いいえ、『Force of Will』を代表とする強力な打ち消しが多数存在する関係で、ジリジリとした鍔迫り合いの時間が非常に長い『フォーマット』です。コンボデッキ自体は多いですが、ビートダウン系のデッキも一定数います。『打ち消し』を警戒してコンボに全てを注ぐデッキは非常に少ないですね。逆に普通のビートダウンデッキが飛び道具……、即死コンボをサブプランで仕込んでいる場合もあります」

 

 知り合いが使っていたのはシミックカラーの『Food chain』か。『氷河のコアトル』や『自然の怒りのタイタン、ウーロ』でのビートダウンと、『Food chain』に特定のクリーチャーを組み合わせた無限マナコンボから、『歩行バリスタ』の無限火力を使い分けるデッキだった。

 

「メタゲームは最近『オーコ』と『アーカムの天測儀』、『ホガーク』が暴れてますが、基本的にはほとんど動きません。忙しい人が時間があったらやるには丁度いいかもしれませんね。懐事情が許すなら。そしてそんな凶悪犯が集う刑務所、『レガシー』ですら出禁をくらったカードが行き着くのが最後の『フォーマット』」

 

 処刑台の向こう側、ウィザーズ社の消せない罪、原初の混沌。

 

「『ヴィンテージ』。行き着くところまで行き着いた人間、いや。暇を持て余した神々が遊ぶ『フォーマット』。『レガシー』までが現世なら、この『ヴィンテージ』はあの世とか天界にあたる存在だ。どんなぶっ壊れカードでも1枚だけならデッキに入れられる。カードパワーを理由にした禁止カードは『夢の巣のルールス』以外なし。他は銀枠のジョークカードを代表に、マジックであることを放棄するようなカードばかりだ」

 

 何も知らない人間が『MTG』を知るのは、実はこの『ヴィンテージ』のカードがきっかけではないだろうか?

 社会的ニュースになるほどの事件が起こるのも、この『フォーマット』の特徴だ。

 

「これはちょっと知ってるかもしれません。たしか『パワー9』でしたっけ?」

「あぁ、兄さんも言ってたね。何なのそれ?」

「おそらくMTGで最も有名なカード『Black Lotus』。各色のマナを出す5つのアーティファクト『Mox』。青1マナで3枚のカードをドロー出来る『Ancestral Recall』。青を含む2マナで追加の1ターンを得る『Time Walk』。青を含む3マナでお互いの墓地と手札をデッキに戻して7枚引く『Time Twister』。これらの最初期に登場し、その後のマジック史に多大な影響を与えた9枚のことを指す。『ヴィンテージ』はこの『パワー9』を使うことを前提にした『フォーマット』だ」

 

 コメントを見る限りこれだけは知っている人は多い。有名なのは勿論、ロマンの塊みたいなカードだからね『パワー9』。

 

「ちなみにいくら?」

「再録禁止カードの筆頭だ。全部買おうとすると安いもので揃えても1000万……とは言わんが、500万じゃ難しいな」

「ノーコメントで」

「あははは……、本物の宝石でも、そこまでするのは中々ありませんねー」

「本物の宝石はマナが出ないが『Mox』はマナ出せるから『Mox』の方が良い、なんてジョークがあるくらいですから。そんな『フォーマット』なので、蔓延るデッキは常軌を逸しています」

 

 あの『頭蓋骨絞め』が無制限な時点でね。単に『打ち消し』を構えて殴るだけじゃ間に合わない環境だ。『Will』頼みだったりすると、その前に手数で押しきられる。

 

「レベルがカンストしてるとか、神様にチートもらって無双とか、TSして美少女になったとか、そんなちゃちなもんじゃ断じてない。『ヴィンテージ』を即死をぶつけ合う俺Tueee! 『フォーマット』だと勘違いしてる人間が多いのも事実ですが。そっちはむしろ『モダン』です」

「それは果たしてちゃちで済むのか?」

「『ヴィンテージ』はそもそも前提条件が違うんだよ。こう……、ゲームをする上での致命的な欠陥やバグを楽しめるプレインズウォーカー達の集まりだ」

 

 例えるなら、なんだ。

 

「バグったカー◯ィボウルを正式レギュレーションとして楽しむとか、戦国BA◯ARA Xで対戦する為だけに中国から『(飛行機で)一本です』とか笑顔で言い始める……」

「狂気しか感じない!」

「あるいは鬼滅◯刃の日輪刀が全部ドン◯ッチソードとか、魔◯ダイコンブレードに置き換わってるような感じだ。描写そのままで」

「台無しだよ! 鬼滅せられないよ!? 単行本の表紙見ても何の漫画か分からなくなるよ!?」

 

 鬼を滅する気が微塵もない表紙が出来上がるだろう。ネギなのに。そもそも刃なのか? あれ。

 それくらい『ヴィンテージ』は違う世界なのだ。

 

「健康に良さそうですねー」

「それどういう意味ですか先輩!?」

「きっと外でごっこ遊びする子が増えますよー? 刃物は危ないですから。お野菜で遊ぶのはダメですけど、最後にちゃんと食べれば、農家の方も子供なら許してくれるんじゃないでしょうか」

「……」

 

 本気で言ってるのか冗談で言ってるのかわかんねぇ……。

 下手に突っ込むとこっちが混沌に引きずられそうだ。

 

「……まぁ、長々と『フォーマット』について話しましたが」

 

 とどのつまり、『フォーマット』が生まれた最大の理由は。

 

「要は友人やこれから友達になる人と楽しく遊ぶ為のもの、ということです。MTGに限らずTCGを楽しむコツは、同じくらいのレベルで楽しめる友人と、面つき合わせてワチャワチャ遊ぶことですから。『フォーマット』はあくまでそれをやりやすくするための指針に過ぎません」

 

 TCGの楽しさの根幹は誰かと気軽に、それでいてある程度対等に触れ合える、そんなコミュニケーションツールであることなのだと思う。




 まさかの1万文字オーバーの説明書。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。デッキと桁が1つ違うんじゃないかって? 10万文字とかやめてください死んでしまいます。

 色々齟齬があると思いますので、その時は言ってやってください。可能な限り直します。直せなかったらごめんなさい。

 なんでカップ焼きそば人気なんでしょう? そして9名のホモの方の為に、この1話でフォーマットをまとめました。マイノリティに配慮する作者の鑑とは私のことです(大嘘

 こんなマイナーネタをお気に入りにしてくれる方には感謝しかありません。わざわざ感想書いてくださる方は言うまでもく。

2代目チーフへの質問、要望はこちらへ

カップ焼きそばの需要は

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