バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編 作:道長(最近灯に目覚めた)
さっさと全色出せるよう頑張ります。
「ということで今回もコラボを始めていくわけだが……、どうした妹よ。乗り気じゃなさそうだな」
自分が冒頭の挨拶をしてる時点でおかしいし、始まる前から妹のテンションが低いし、そもそもコラボ相手と打ち合わせを一切してなくて今も会場にいない。どうなっているのか。
(そしてなぜ醤油さしがテーブルにあるんだ……)
「……ごめん。今日は『アーキタイプ』だっけ?さっさと終わって帰ろう。うん」
「枠はきっちりやらんとまずいだろう。第一コラボ相手が……」
「いいからいいから。よく分かんないけどデッキのタイプだっけ?」
「いや、だから……」
ずいぶんと妹が急かしてくるが、そんなにコラボ相手が嫌なのか。打ち合わせもせず、時間になっても現れないあたり、妹が嫌いなタイプのフルコースなのは確かだ。私も好きなタイプではないが。
と、ここで音楽が聞こえてきた。このイントロは……。
「借◯大王?」
「げっ、来ちゃったよ……」
スタジオに小走りで長身の男性が入ってくる。Vとしてどう写ってるかは分からないが、装飾品の類いは時計くらいで、ラフに着こなすTシャツとジーンズがよく似合っている。
顔は十分二枚目、二枚目で通じるんだが……。
:来たな借金大王
:クソノ金返せ
:BGMの使用料でまた借金が増えるぞ
(まあ、ありえんわな)
「別に来なくてよかったんですよ。久園先輩」
「いんや、いつも袖にされるスズちゃんからのお誘いときたら来るしかないっしょ」
「じゃあなんで遅れたんですか?」
「元カノから逃げてきた」
:その言い訳何回目だ
:ホントだろうとウソだろうとクズ過ぎる
:クーズ!クーズ!クーズ!
コメント欄も大盛況だ。会社のNo.2という情報はもらっていたが、登場だけでこの反響振り、流石である。
「真偽はともかく、遅れるなら連絡くれませんか?」
「じゃあディスコかRINE教えてよ」
「誰が教えるか。普通に事務所に連絡してください」
「えー、いいじゃん。てか今フリーだからさ、スズちゃん俺の彼女になってくんない?」
「それ女性Vtuberに毎回言ってますよね? 挨拶代わりに口説くのやめたらどうですか?」
「ということではじめましてスズさんのお兄さん。登場と挨拶が遅れて申し訳ありません。大変失礼しました」
あまりにも礼儀正しい態度に面食らったが、こちらに向ける視線でなんとなく意図を察することが出来た。
「こちらこそ黙っていて申し訳ありません。はじめまして久園さん」
「ゾノでいいですよ。言いにくいんで。リリーのヤツとは違って、妹さんにはご覧のとおり迷惑をかけてばかりなんですよ」
「OK。じゃあゾノで。私の方も好きに呼んでくれて構いません」
「では義兄上と……」
「そんな大層な人間じゃない。コイツをもらってくれるなら、これ程嬉しいことはないし」
「じゃあアニサンで。てかマジ? アニサン公認だってスズちゃん」
「なんで私を置いて意気投合してんの!? 一番失礼されてんの私なんですけど!?」
だってこう、近いものを感じたんだもん。コイツ多分コッチ側だなって。
「お義兄さまにご挨拶しただけじゃない、スズちゃん」
「彼氏面しないでくれません? 先輩とつき合うくらいなら、私は出家します」
「だそうだ。本人の意思は大事だ。今は諦めてくれ、ゾノ」
「アニサンに言われたらしゃーない。残念、また今度」
あっさり引き下がるあたり、本当に挨拶代わりなんだろう。妹もよくきっぱり断るものだ。ゾノとの絡み方で女性ライバーは振り分けられているのかもしれない。
「前みたくすっぽかせばよかったのに……」
「だって面白そうだし。リリーがバズったのって2人が原因っしょ?ネギと大根」
そうだ。あの配信のあと日輪刀をネギと大根、その他野菜に置き換える雑コラが一時的に流行ったのだ。
お労しや、兄上。
まさかネギに負けるとは。ちなみに大根とネギの二刀流をするリリーさんは何柱なんだろうか?
ネつながりで根の呼吸?
やめなされ……やめなされ……。惨いクソコラやめなされ……。
「特に面白いことなんて言えないんだが?」
「自然体でいいと思うけどね、アニサンは」
「そうか?」
妹やゾノがいるから私は添えもので十分か。気が楽でいい。
おっと、大事なことを聞くのを忘れていた。
「そういえばゾノのMTG経験は?」
「ない。けど、他TCGの経験はある。遊戯王とかデュエマも多少は触った」
「色のイメージとマナの概念は? これは遊戯王だが、エンドサイクの強さとか」
「なんとなくなら」
「なら説明の手間が大分省けるな」
そのあたりが分かってるなら飲み込みはスムーズだろう。カラーパイもそうだが、TCG初心者だと、相手のターンエンド時にインスタントをうつとか、フェッチランドを起動させる強さを理解するまで時間がかかる。
「一番違和感感じたのは、クリーチャーが呪文扱いってことだな。スズちゃんはすんなり理解したみたいだけど」
「えっ、あれって『クリーチャーを呼ぶ魔法』って意味じゃないの?」
「そのとおりだ。ただ他のカードゲームだとクリーチャーやモンスター、キャラクターは『魔法』ではなく『物理的な経路できてもらう』みたいな扱いでな。MTGのように、全てがあくまでも『呪文』として一括されているTCGは珍しかったりする」
「へぇー、そうなんだ」
「あとカードごとの特殊裁定が存在しないのも特徴だ」
「すげぇな、それ。遊戯王とか特殊裁定まみれだぞ。それならまだしも、W◯kiにすら正しい挙動が載ってないことあるし」
「あれはゲームデザインをシンプルにしようとし過ぎて、むしろこんがらがったパターンだからな。元々漫画の中のゲームを再現しようとした、所謂キャラゲーが発祥だからしかたない部分もある」
タイミングを逃す、ブリューナクが発端となった調整中まみれのW◯ki、カードが違います、等々やらかしたこともあるが、よくゲームとしておとしこんだと思う。
「他の大きな差異は遊戯王のチェーンにあたるスタックが、1つ解決するごとに優先権が発生すること、攻撃宣言の巻き戻しが基本的に発生しないことぐらいか?」
あと打ち消しが直前の呪文じゃなくても対象にとれること。発動を無効にするカードは、遊戯王だと直前のチェーンに積まれたカードしか対象に取れないことが多い。
「ごめん、全然わかんない」
「該当場面になったら改めて教えるさ。遊戯王プレイヤーになんとなく伝わってくれたらいいと思って話したから」
「えーと、今日のテーマは『アーキタイプ』だっけ?それにしても喉が渇いた」
そう言ってゾノは醤油さしに手を伸ばした。
「いや何やってんの? ゾノ」
「水分補給だけど?」
「醤油で!?」
塩分過多で病気になるぞ!?
私のツッコミも虚しく、醤油さしの中身はゾノの口の中に吸い込まれていった。
「……今日は普通にコーラか。アニサン知らなかったんなら勿体ぶった方がよかったねぇ。そういやスタッフさん、今日のこれ、いくらです?」
特売で買ったんで30円くらいでーす。
スタッフさんの声がスタジオ内を通りすぎていった。中身コーラなのね。なら安心……、いや何故に醤油さし!?
:チッ、今回はハズレか
:ガチ醤油だったとき意地で配信やりきったのほんますこ
:黒酢回一番好き
これ下手な芸人より身体張ってるよね。コンプライアンス的に大丈夫なのか?
「つまり借金30円追加と……。モデルの調整してくれたのはいいんだけど、最初の頃より借金の額がなぜか増えてんだよね~。どうしてだろうね~」
:夜◯駆けるを夜逃げの歌なんかに替え歌するから…
:示談金ヤバかったな
:初3Dで3Dモデルの請求書渡されたの草
:その後記念パーティーで開催費請求されたのもっと草
:調子にのってロマネ・コンティなんて開けるから…
「あらゆる手段を講じて俺の借金増やそうとしてくるからね。社長筆頭に」
真っ黒じゃねえか。借金カタにして働かせるなんて私よりもよっぽど真っ黒だよ!?
多分設定なのだろうが、不安になったのでカメラの設定を確認してから、妹にそっと耳打ちした。
「おい、妹よ。設定だとしてもやりすぎじゃないか?」
「半分ホントだよ。元交際相手関係で借金があったらしくて、それを理由に応募したらしいし。合格した時、ウチの社長が無利子で肩代わりした額がはじまりってわけ」
「それ社長の方がヤバイな」
やはり素人に簡易とは言えモデルを準備するだけのことはある。
……あれ?これもしかして私もヤバイやつ枠? いやいや、そんなはずはない。
私は善良とは言い難いが、平々凡々な一市民だ。
「そろそろ『アーキタイプ』、いっていいか?」
「おっと、すまんアニサン。説明お願いします」
「ではアイキャッチのあと、説明に入らせてもらう」
所詮は妹におんぶにだっこされてやらせてもらっている身なのだ。勘違いすると痛い目にあう。
それを改めて肝に銘じた。
感想のやつ拾わせてもらいました。ありがとうございます。
赤の元ネタは無論あの人。
実際会うとスゴイいい人らしいんですけどね。また格ゲーやってくれませんかね……?
カップ焼きそばはまだです。代わりに別なオマケが付いてます。別に読まなくても支障はないです。
どうでもいい話
「そういえば先生はなんでカードゲームが好きなんですか?」
配信が終わり、挨拶をそこそこに済ませてスタジオを出る時、リリーさんから声をかけられた。妹は次の配信のための軽い打ち合わせで、既にここにはいない。
「急になんでまた。それと無理に先生呼びしなくてもいいんですよ?」
「いえ、先生は先生です。純粋に興味があるだけです。こちらこそ無理にお答えいただかなくて大丈夫ですよ」
「いや。無理じゃないですが……、特別な動機はありませんよ?」
「でしたら是非」
私がカードゲームが好きな理由ねぇ。別に大したものじゃない。
「リリーさんは花札はご存知ですか?」
「えーと、同じ絵を集めて点数を競うゲームですよね?」
「合ってます。ウチは小さい頃、親と一緒に花札で遊んでまして、金賭けて」
「えっ!」
「賭けるたって親から渡された100円です。役なしの点取りむしですから、動いても30円くらい。……でも10円負けでも悔しいもんは悔しいんです。50円なんて取られようなら泣いてましたからね、自分。そして泣くと「泣くなら混ぜられない」って怒られて、混ざりたいから我慢してやってました」
手加減は多少してくれたのだろうが容赦はなかった。おかげで鍛えられた部分もあるが。
「そんなわけでまぁ、子供心ながら本気ですよ。姉と妹はあんまり興味がなかったみたいで、すぐに両親との3人勝負になりました。10円、20円の世界でだいの大人と子供が真剣勝負するわけです」
端から見れば異様な光景だろう。でも、それが私の楽しみだった。
「本気の勝負ですからね。所々にその人の考え方の癖、というか本音、人間が出るんですよ。不思議ですねぇ。たかが手遊び、絵札と足し算が分かれば出来る単純なゲームなのに」
父親は大雑把、母は抜け目がなく確実。私は……ひねくれた子供だったと言っておこう。
「それを面白く思ったのが原点ですかね、今思うと。TCGとなるとデッキそのものにも個性が出ますし、自然と引き寄せられました。そこから紆余曲折あってMTGに行き着いたわけです。……私ばかり喋って申し訳ないです」
ちょっと気が緩むとすぐこれだ。ほらリリーさんだって引いてる。
「いえ。とても面白いお話でしたよ。……遊びでも人間が出るんですねー」
おや、意外と聞いてくれていたようだ。じゃあ、もう少し踏み込んでもいいか。
「私から言わせてもらうと、遊びだからこそ本気になれるんですよ。本気になるから、その人の中身が垣間見えるんです。例え本気になっても『遊び』で終われますから」
異論は認める。でも遊びってそういうもんじゃないだろうか。
「金と時間の使い方でその人の人間性が分かる」、母はそう言っていたが、このご時世、私はそこに遊びを加えてもいいと思うのだ。
余計に自分がクズになったわ。どうしてくれようか。
「なるほどー……、じゃあ私もデッキを作ってみるので、その時はお相手願えますか?」
「もちろん。喜んで」
2代目チーフへの質問、要望はこちらへ