バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編 作:道長(最近灯に目覚めた)
間違ってることがあれば言っていただければ。
「リスナーのみんなー、こんチッス!今日からまた通常営業で配信していくよ~」
初めて訪れた妹の部屋は小綺麗に片付いていた。自室で配信しているとはいえ、年頃にしてはモノが少ない方だろう。
手慣れた様子で配信を始める妹を、しげしげと見つめてしまう。うまいものだ。この姿を見ると採用されたのも合点がいく。よくも家族ですら見付けられなかった妹の才能を見出だしてくれたと思う。マネージャーさんには打ち合わせの時にお礼はしたが、これが終わった後にもう一度頭を下げねばなるまい。
(まあ。これだけ成長しても、微妙に抜けてるのは変わらんな)
妹を挟んで向こう側にある襖が目についた。
恐らくこの部屋を掃除した時、色々詰め込んだであろう押し入れの戸が僅かに空いている。
「――ということで今回はゲストがいます。兄さん、自己紹介」
「どうも。『
あいさつは噛まずに出来た。
妹から紹介されてマイクのスイッチを入れる。ミスしてもカバーしてくれる存在がいるという安心感が、緊張感を程よく緩和してくれる。
コメントを見る限り、自分を歓迎してくれる人が多いようだ。
「さーて兄さん。企画を始める前に、初めて動画配信の感想は?」
「自分が動画に出る日が来るとは夢にも思わなかった。流石に立ち絵はないから、某フリー素材を使わせて貰ってるけどな」
「だよねー。私も兄さんを出すことになるとは考えてもみなかったよ」
「他人の褌でウンタラカンタラとかいう諺があるが、まさか妹の褌でやることになるとは」
「言葉のチョイス!」
コメント欄が若干沸く。少しは笑ってくれたようでなにより。せっかく時間を割いて見てくれているのだ。出来るだけ楽しい時間を提供したい。
「直接的に言うなら『妹のアカウントで配信』だぞ?」
「それも何か含むものを感じるなぁ」
「おや? 反応してくださっている人の中に、きくうしの方がいらっしゃるようで。古戦場から逃げてこられたのでしょうか」
コメント欄が「古戦場から逃げるな」という言葉で更新されていく。なるほど。これは結構楽しい。妹の努力を横からかっさらうようで、素直に楽しめないのが残念だ。
自分はクズだが、誰かの成果や努力を踏みにじったり、横取りする様な人間にはなりたくない。実践出来るかは別として。
「まぁ。妹の人気に便乗して、ノコノコ配信に参加する人間のクズが言うことではないですね」
「ちょ、兄さん!?」
そうだよ(便乗)という言葉でグラブル用語が上書きされた。
ホモの方も多い、と。無論、反応している人の中には私が出ることに対するアンチもいるが。
「ホント出来た妹で助かってます。本人がクズでも、家族が優秀だと実に楽です。人生イージーモード」
「それ以上視聴者のみんなを煽らなーい。そろそろ本題行くよー」
妹が慌てて話を遮った。やはりVをやってても真面目キャラらしい。Vの名前を見た時*1も思ったが、ある種の安全装置か。マネージャーさん曰く、誰とコラボしても絶対に荒れない安全牌なようで。パッと見地味だが、会社としては非常にありがたい存在とのこと。
「MTGについて、だったな。実は自分もちゃんと始めて1年も経ってない」
「えっ、ウソ」
「ホントだ。TCG歴自体は長いが。だから視聴者の皆さまと一緒に上手くなれればと思います」
カメラがセッティングされたテーブルに切り替わる。特殊な処理がされているらしく妹がカメラの撮影範囲内に入ると、『薑スズネ』に変換されるらしい。技術って凄いね。
「MTGの設定について簡単に説明しよう。プレイヤーは『プレインズウォーカー』という次元を股にかける魔法使いという設定だ。妹よ。魔法使いといえばなんだ」
「そりゃ魔法じゃない? アブラカタブラ、ちちんぷいぷい」
「チョイスに時代を感じるがほぼその通り。MTGにおいてはそれを『呪文』という。では『呪文』に必要なものは?」
視聴者に「ちちんぷいぷい」の一部に邪な気配を感じた人間がいた他、様々な呪文が書き込まれていく。
「んー……、杖? 箒?」
「間違っちゃいないが、私が望んだ答えじゃあない。答えは魔力、正確にはマナという燃料が必要になる。そしてそのマナを生み出すのが『土地』。MTGのカードを最も大雑把に分けると種類は2つ。『呪文』と『土地』だ」
「魔法使いなら自分の魔力で唱えられるじゃないの?」
ルールだから、と言えれば簡単なのだがそれだと白けるだけに違いない。少し仰々しく説明してやろう。
「……プレインズウォーカーの使う魔法は強力無比だ。人ひとりではとても賄えない。たった1マナで大地を灼く稲妻を起こし、世界を滅ぼすような怪物だろうと、簡単に次元の彼方へ放逐したりな」
「えっ。スゴっ!」
「中にはマナを生み出す道具もあるが……それはとても希少だ。あらゆる意味で。Lotus、MOX、MTGをやったことがある人なら、これを聞いて思わず身構えてしまうプレイヤーだっているんじゃないか?」
反応はそこそこ、だが動きが少なく急かすコメントが少し見受けられる。何より私ばかり喋っていることに不満を持っている層もいる。
妹の素直な反応を可愛く思っている視聴者がいるのが幸いか。
「視聴者も説明ばかりでは飽きるだろうから、実際のカードを見てみるか。テーブルの上の箱を開封してみてくれ」
「オッケー。なんか男の人が描いてあるね」
ウェルカムデッキを開封し始める妹、私の好みで黒にしてしまったが、果たして残りの30枚のデッキは何色か。
「赤と黒のカードが出てきたよー」
「ラクドスカラーか。最近、強化された色だな」
朝ディカーで結構な強化パーツを貰えた色のはずだ。黒はオムナスにハブられていたが。
「とりあえず赤のデッキの一番上のカードを見てくれ。『シヴ山のドラゴン』というカードだ」
「THEドラゴンって感じだねー。強そう」
「マジックを代表する1枚だな。黎明期の赤を支えたフィニッシャーだ。カードの右上になにか書いてないか?」
「数字と、なんかマークが書いてある」
「それがその呪文を唱えるために必要なマナの数だ。『シヴ山のドラゴン』には④という数字と、赤のシンボルマークが2つ書いてある。つまり赤2マナを含めた6マナがないと、『シヴ山のドラゴン』は手札から唱えられない」
「4マナの部分はどんな色でも良いわけ?」
「ああ。そこは何色でも構わない」
「へぇー。よく見ると『山』っていうカードに同じマークが印刷されてる」
「察しがいいな。それが土地と呼ばれるカードだ。『山』は赤マナが出る土地。『シヴ山のドラゴン』を呼び出すには、その『山』が6つないといけない」
「なんか壮大な話だね。こんな山が6つも必要なんて」
「他にも説明することは山ほどある。『山』だけに」
「はっ?」
妹と視聴者から総ツッコミをくらった。予想はしていたが想像以上に堪える。
「……だが、時間もないから一度やってみるぞ」
「うわ、逃げたよこの人』
キリがいいのでここまでにします。
前書きのとおりMTG初心者向け講座も兼ねてます。もし、何か読んでみたいこと、必須情報が抜けているなんてことがあれば活動報告やメッセージで受け付けます。気楽にどうぞ。
むしろそれをネタに書かせていただきます。よろしくお願いします。
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解説系(カラーパイは最後まで話します)
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