バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編 作:道長(最近灯に目覚めた)
読んでくださるだけでなく感想や評価をくださる方がいらっしゃってびっくり。
皆さんありがとうございます。
追記
12月15日17時30分。
致命的なルールミスを発見。ブロックした時タップ、召喚酔いの挙動とかデュエマやんけ……。
上記は修正済みです。他にミスがあれば言っていただければと思います。
「赤と黒、どっちのデッキを使いたい?」
「迷うなー。兄さんはどっちが好き?」
「黒」
「即答かー。じゃあ黒使う」
「理由は?」
「兄さんに好きなデッキ使わせて勝てる未来が見えない」
「まぁ、好きに選べ。所詮はウェルカムデッキだ」
実はウェルカムデッキ同士の対戦は長期戦になりやすいため、サルベージ手段がある黒が有利になりやすい。ただし火力で除去されるクリーチャーが多いのもあって、赤が有利な面も確かにある。
「次はデッキのシャッフル。最初はカードが固まってるから念入りにやっておいた方がいい」
「トランプも最初に7並べやると悲惨になるよね」
コイツは悪魔か。
「トランプ買って最初に7並べをやるやつなんてお前位だよ」
「一応全部あるか確認したいじゃん」
「普通に確認しろ。トランプだって自由を夢見て工場の生産ラインから出荷されるんだ。「ねぇスペードのジャックくん。君はなんのゲームが好き?」「ボクはブラックジャックがいいなぁ。ハートのクイーンちゃんは?」「大っ人〜。私は普通にババ抜きかなー」って包装から解き放たれてる所に7並べェ? 残酷な人間だな。お前」
「えっ? なんで私責められてんの? 少なくとも7は望んでるよ!」
「7が望んでるのはセブンブリッジだ」
出来る人少ないけど。でも7並べだけは絶対に望んでないね。彼らは。7並べとはトランプ達にとって、自分達の宿命を思い起こすための悲壮な儀式なのだ。
「人の都合で生み出された玩具がやっと自由になったと言うのに、再び出荷前の如く規則正しく整列しろと? アメリカがイギリスの下に合併するようなもんだぞ?」
「そもそも私の配信でトランプの気持ちについて説教されるとか意味不明過ぎない!? 何これ、自分で言っといて何言ってるか分かんなくなってきた……!」
視聴者も大分困惑しているようだ。いかん。だからなぜ話が逸れる。
「妹が血も涙もないヤツだと分かったところで始めるか。最初は手札を公開しながらやろう。初期手札は7枚な」
「いや、これ絶対私は悪くないよ……」
「俺は悪くねえっ! 俺は悪くねえっ!」
「ネタは詳しく知らないけど。バカにされてるのだけは分かる」
ぶつぶつ文句を言いながらもシャッフルした山札から7枚カードを引き、手札を晒す。
「土地3枚に2マナクリーチャーもいるからやっていいと思うぞ? 私ならキープだ」
「キープって?」
「マジックは初手を見て駄目だと思ったら、デッキに戻してシャッフルした後もう一回引き直せる。ただし、引いた7枚のうち引き直した回数分、手札をデッキボトムに送らなくてはいけない。1回引き直したら1枚、2回なら2枚。これをマリガンと言う」
「じゃあ手札が悪すぎて試合にならないってことはあんまりない? 手札の枚数は減るけど」
「というよりMTGは土地と呪文の関係上、マリガンがないとやってられない。実はこのマリガンのやり方も何度か変更されている。現行のマリガンは、最初に正式採用されたチャンピオンシップの名前からロンドン・マリガンという名前が付けられた。これのせいでコンボデッキ有利の土壌になったという反論もあるが、どっちもどっちだな」
モダンのフォーマット限定で具体的に言えば、ロンドン・マリガン方式と『トロン』や『アドグレイス』、『the spy』等の相性が良過ぎる所為だが、ここで言う必要はあるまい。
マリガンなしのカードゲームプレイヤーからは「羨ましい」、「マリガン採用したら先攻有利が加速する」といったコメントが見受けられる。遊戯王なんかは手札2枚から制圧するデッキもあるから仕方がないと思うが。デュエマも全体のカードパワーが高いって聞くし。
他のマリガン出来ないゲームのバランスを嘆くプレイヤーもいるが、マリガン前提のゲームシステムの完成度が高い、というわけではない。
結局は好みの問題だ。
「私もキープだな。では、とりあえず私の先攻から始めるか。アンタップステップ、アップキープステップ、ドローステップ、なんだが。先攻1ターン目にドローは出来ないので実質何もない」
「あれ? 後攻はドロー出来るの?」
「あぁ」
「じゃあ先攻不利のゲームじゃん。手札の多い方が有利なのは、初心者でも分かるよ」
「いい着眼点だ。確かにそうだ」
しかしそれだけでは勝てないのも事実。これは実際にやってみないと分からないだろう。
「メインフェイズに入る。その名前の通り、一番やれることが多いフェイズだ。ここで出来るのは土地を置くこと、呪文を唱えること。土地を置けるのは基本的に1ターンに一度、1枚だけ置ける。私は『山』を置く。唱えることで〈戦場〉に置かれる呪文、土地を『パーマネント』と言う。特に条件がなければ〈パーマネント〉は縦の状態、要はアンタップ状態で置いていい。そして1マナで唱えられる呪文もないのでターンエンド」
その他の処理は実際に動いた時にやるべきか。
「じゃあ私の番だね。ドローしてそのアンタップってやつで『沼』置いて終わり」
「ターンを貰おう。一番はじめのアンタップステップで場でタップしているカードが縦になる。今回は『山』がアンタップの状態だから、特にやることはないな」
「タップって?」
「『沼』のカードを見てみろ。グルリと回ってる矢印の横に、黒マナを生むって書いてあるだろう」
「……つまりカードを一回転させると黒いマナが1つ出てくる?」
「それを1フィート上からやるとヴィンテージの禁止カード*1になるな。縦のカードを横にすることと覚えてくれ。アンタップは横になったカードを縦にすること」
「はーい」
「ではドローしてメインフェイズ、『山』を置く。2枚の『山』をタップして赤マナを2つ出す。そして2マナの『ゴブリンの通り魔』を唱えよう」
手札から乱暴そうなゴブリンが戦場に現れた。パワー2、タフネス2。これで熊と同じ強さらしいので、既に普通の人間には対処不能だ。
「お~、でたでた。ということは私、攻撃されちゃう?」
「いや、クリーチャーは攻撃する時タップする必要があるんだが、唱えられたターンは〈召喚酔い〉という状態なので、自分からタップ、アンタップすることが出来ない。速攻という能力を持っているクリーチャーは別だが。だからこれでターンエンド」
「じゃあ私のターン、『沼』置いて私も『歩く死骸』を出すよ。兄さん殴れないし、終わり」
「ターンを貰う。アンタップステップで山がアンタップする。アップキープ、ドロー。山を置いて3マナ『恐れなき矛槍兵』をキャスト。パワー2、タフネス3だ。あとは何もせずターンエンド」
「ゴブリンで攻撃は?」
意外そうな顔で妹が聞いてきた。カードゲームをやったことがないのなら〈ブロック〉の感覚を知らないのも無理はない。一緒に〈ライフ〉についても教えるべきか。
「クリーチャーが戦闘を行うフェイズを〈戦闘フェイズ〉と言う。やることを大雑把に言うと、〈攻撃を行うクリーチャーの指定〉、それに対する〈ブロックを行うクリーチャーの指定〉、そして〈戦闘ダメージの処理〉だ。仮に私がここで『ゴブリンの通り魔』で攻撃を宣言したとしよう。次にお前が〈ブロッカーの指定〉に入る」
「じゃあ『歩く死骸』でブロック」
「そのまま『ゴブリンの通り魔」と『歩く死骸』が戦闘する。カード右下の数字を見てくれ。左がパワー、右がタフネスだ。ゴブリンのパワーは2、タフネスも2。死骸も同じだ。パワーはこのクリーチャーが与えられるダメージ、タフネスは体力で0以下になると〈戦場〉から〈墓地〉に送られてしまう。今回はお互い2のダメージを受けてタフネスが0となるので、どちらも墓地に送られる。〈ブロック〉しなかった場合は、プレイヤーへ2点のダメージが入る。プレイヤーの〈ライフ〉は〈20〉。これが0以下になったら負けだ」
「あと10回攻撃しなきゃいけないんでしょ? じゃあ攻撃した方がいいじゃん?」
「自分が最初に言ったことを思い出せ。先攻はドロー出来ない。ここでブロックされると1:1交換になる。もし1:1交換を繰り返していったらどうなる?」
「あ。先に先攻の手札が無くなるね」
「例外はいくらでもあるが、今このデッキでそれをする価値は低いと、私は考える」
「なるほど。じゃあ兄さんは攻撃しないで私のターンね。『沼』を立てて……ドロー!」
一部の敏感な男性が不穏なコメントを残すが、真面目なコメントもいくつかあった。1人でも興味を持ってくれたら、妹の会社やウィザーズ社への義理は果たせただろう。
「『沼』置いて3つタップ。『男爵領の吸血鬼』を出して、終わり!」
「アンタップ、アップキープ、ドロー……ふむ」
ここでこれか。そろそろ〈インスタント〉について教えるタイミングか?
「コンバット、『恐れなき矛槍兵』。さっきは言い忘れたが、タップしたクリーチャーは攻撃出来ないし、ブロックに参加出来ない」
「そうなんだ。んー、ブロック……しない!」
「ほう。では2点ダメージだな。戦闘終了後再びメインフェイズがある。そこで『山』を置き、3マナで2枚目の矛槍兵を唱えてターンエンド」
『男爵領の吸血鬼』がパワー3、タフネス2だから、とりあえず1:1交換を狙ってくるのかと思ったが違うのか。
私も多分ブロックしないが。
「じゃあ私のターンになってアンタップしてドロー。3マナで『殺害』! 対象は縦の矛槍兵!」
「破壊される」
「じゃあ『男爵領の吸血鬼』で攻撃するよ」
「ん? 『男爵領の吸血鬼』で殴るのか?」
「そうだけど」
……あれ? 私の勘違いか?
「すまん、『男爵領の吸血鬼』貸してくれ」
「いいよ」
カードにはフレーバーテキストだけで効果はないし、ステータスも3/2で間違いない。
「……ちなみになんで殴った?」
「だってブロックされなかったら3点ダメージだし、ゴブリンにブロックされてもゴブリンやっつけられるじゃん」
「吸血鬼とゴブリンは相打ちだぞ?」
「えっ? なんで?」
「えっ?」
「えっ?」
妹は心底不思議そうに首を傾げた。
「算数ゥ!」
悲報。ウチの妹、大学生なのに1桁の引き算が出来ない。
「マジか。私の妹は算数が出来なかったのか。すまん。気がつかなかった。兄貴失格だったわ。ごめん。マジごめん」
「えっ。えっ。なんでそうなるの?」
「だって身内が大学生になって2引く2が出来ないんだぞ? よく今まで生きてこれたな。むしろ偉い。ウチの妹チョーエライ!」
「バカにするなぁバカ兄貴! 2引く2くらい出来るわ!」
「答えは?」
「0!」
「じゃあなんで吸血鬼で殴んの!?」
「だってゴブリンが先にやられるでしょ! 2と3なら3の方が強いじゃん!」
「なるほど……、いや、そういうゲームじゃねえからこれ!?」
理由は分かった。 ウチの妹が結構脳筋ということも。
「それやったらタフネスいらんわ。何か特殊な効果がない限り、クリーチャー同士の戦闘は〈自分のクリーチャーのタフネス〉引く〈相手のクリーチャーのパワー〉を同時に行う。今回の場合『吸血鬼』のタフネスが0、『ゴブリン』が-1になるからお互いに死亡する」
「あぁ。そういう意味なのね……。じゃあ攻撃しないし、『殺害』も唱えないなー」
「構わん。巻き戻していいぞ」
「じゃあ『沼』置いて4マナの『張り出し櫓のコウモリ』を出して終わりかな」
「ターン終了時に1マナ払って『ショック』。コウモリに2点ダメージ。タフネスが-1になるから破壊される」
「へっ? 呪文ってメインフェイズしか唱えられないんじゃないの?」
「〈インスタント〉は別だ。マナさえあればいつでも唱えられる。さっきの『殺害』もそうだな」
「ホント? ……ちょっと待って」
妹が額に手を当て、少しの間考え込む。
「よくよく考えると先攻って、こっちが1マナで動いた後に2マナで動けるじゃん」
「そうだな」
「もしかして後攻ってメチャクチャ不利?」
「お前マジックのセンスあるよ」
ふとパソコンを見ると、コメント欄がスゴイ勢いで流れている。
結局妹は巻き返せず、この試合は私が勝った。
ハーメルンの短編は4話までなので、次で一区切りにしたいと思います。
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ついしん
さいきん『ふぉーすおぶうぃる』がとなえられるようになりました
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でゅあるらんどってとってもたかいとおもいましたまる
次の話の内容について
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妹とウェルカムデッキでガチ対戦
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友人(膝邪魔)とのガチ対戦(モダン)
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調子に乗った妹を躾する
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解説系(カラーパイは最後まで話します)
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その他