バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編 作:道長(最近灯に目覚めた)
そのせいで今回は『フォーマット』の話までいけませんでした。
UAが10000超えたことは嬉しい限りですし、きっと興味をもってくださった初見の読者さんもいると思うんです。もうゴールしていいのかな? とも思いますけど。
どうしてこうなったんでしょう?
「ということで始まりましたコラボ企画! 今回から3連続でゲストに登場してもらいます。早速ですが先輩、どうかお願いします」
「はーい、ご紹介いただきました。リリー・ナテュールです。今回はスズネちゃんにお呼ばれしちゃいました。マジック・ザ・ギャザリングのことは全然知らないので、どうかお手柔らかにお願いしますね」
今回はコラボということで当たり前だがコラボ相手がいる。お相手は妹と同じ会社に所属している先輩Vtuber。エースとは言わないものの、そのマイク越しでも滲み出る育ちの良さと、丁寧な物腰、天然ぶりから結構なリスナーがいるようで、企業内では安定感のある3番手位にいるそうだ。
アバターは大雑把に言えば、金髪エルフのお姉さんといったものを使用しているのだが、本人も負けず劣らずのかわいらしい美人さんである。そして妹曰く、結構なお嬢様らしい。実家にベヒシュタインのグランドピアノ、しかも戦前のものがあり、ピアノの腕も相当だとか。
何故そんな人がVtuberになって、よりによって妹と仲が良いのか。世の中わからないものである。
「ほら、兄さん。あいさつ!」
「……スズネの兄です。自分、本当にここにいて良いんですか?」
「もちろんですよー? スズネちゃんのお兄さんに会えるのを、とても楽しみにしてたんですから」
もっと分からないのは自分の立ち位置だがな!
内容の都合上どうあがいてもオフコラボになるわけで。つまり、分かるだろうか。私は非常にデリケートな立場にいるのだ。
「あれ? 兄さん、ガラにもなく緊張してる?」
当たり前だ。一歩間違えれば明日にでも社会的焼死体になるんだぞ。さっきから冷や汗が止まらねぇからよ……。
希望の花〜♪ がいつ流れておかしくない。
「そんなに緊張しないでください。何かあったら私達でフォローしますから、ね?」
下手にフォローされると地獄にスローされそうなんだよなぁ。
ただ、その辺は会社も分かってるようで、今回は会社が所有するスタジオを使用しての配信だ。そこまで分かってるから素人を出演させるなと言いたい。なお、今回の配信に合わせて遂に私にアバターが製作された。
見た目は完全にコ◯ンの犯人だ。
……これ絶対狙ってるよね? ええい、ままよ!
「とにかく今回のテーマにいくぞ。お題は『フォーマット』だ」
「たまに出てたけどちゃんと話すのは初めてだね。先輩は?」
「え〜と。カード資産の差が、直接勝敗に影響しないように定められたとしか……。新しく始める人が不利になりにくいように、ですよね?」
驚いた。ちゃんとWikiに目を通してるのか。正直知識0から説明しなくてはいけないことを覚悟してたのだが。
「制定理由はその通りです。100点の解答だと思いますよ。まさかズバリ言い当てられるとは」
「テーマは先に出していただきましたし、アーカイブもチェックさせてもらってました。スズネちゃん、すっごく楽しそうでしたね」
「いやいやいや。私が一方的に虐められてるだけなんですけど!?」
「そうですか?いつもより生き生きしてましたよ?」
「そりゃあ、兄が相手ですから遠慮はなくなりますけど……」
「私にも、遠慮しなくていいんですよ~?」
「えぇ~……、これ以上は先輩に対して不敬にあたる気が」
「フフフッ、真面目ですね、スズネちゃん。そういうところも先輩は大好きです」
「わわっ、ちょっと先輩!?」
先輩が突然、妹を抱きしめた。妹は「溺れる!溺れる!」と言って手を中空にさまよわせている。
女性の胸部装甲って可変式なんだなーと、初めて知った。高級スイートのベッドに飛び込んでも、きっとあそこまでは沈まんぞ。
プハッと、ようやくまともに息を吸えるポジションを確保した妹が、息も絶え絶えに話し始めた。
「な、なんか距離が近くありません?先輩。いえ、不快とかそういうわけではなく」
「はい。実はチーフマネージャーさんにお願いされまして」
「チーフさんが?」
それ言っていいのか? と思いつつもド素人が口をはさめるはずもなく黙って見守るしかない。下手に動けば「ガイアッッッ」のごとくボゴボコにされるだろうから。
「チーフさんが打ち合わせの時、『適当に女同士仲良くしてれば「百合てぇてぇ」とか言って、ついでに可変装甲の描写でもしてやれば見てる人が喜ぶでしょう。『てぇてぇ』がなんなのかよく知らんけど。きっと高評価もくれるでしょう』と、呟いてましたので」
「リリーさぁーん!」と、スタジオの隅でそのチーフさんが叫んだのが聞こえた。だが、彼の悲劇はここで終わらない。
「そういえば『正直緑と青の一騎討ちだと思ってたんだ。何で赤が2位なんだよ。見てる人の3割がホモとかどうなってんだ。……もういい。ホントは赤最後のつもりだったけど、希望者が少ない順に書いたろ。人気あるやつがトリなら文句は無いはずだ。赤が2番目になってるし、嘘は言っとらん』……緑とか青とか赤ってなんなんでしょう?」
妹の追撃により膝から崩れ落ちたおっさんが黒服の手により引きずられていった。
南無。チーフの処遇は神のみぞ知る……。
「ところでなんで私ばかり『てぇてぇ』なんでしょう?」
「……ん? どういうことですか」
「だって『百合』って、私の名前の和訳じゃないですか? スズちゃんもこんなに可愛いのに。私。怒っちゃいますよー?」
「「えっ」」
「そういえばお兄さん、全然お話しされてないですね。どう思われますか? こんなに可愛い妹さんなのに『てぇてぇ』されないなんて」
久し振りに妹とハモったことにもツッコミたくなったが、そんな余裕は、ない。
このまま観葉植物になるつもりが、引っこ抜かれて百合の間に移植されてしまった。
(やめてくれ! 自由とかお日さまとか要らないの! 観葉植物は植木鉢で平穏を享受させてもらえればいいんだから!)
移植した張本人は悪気の無いほんわか笑顔でこっちを見てくれてますけど。正直このまま挟まりたい自分がいるのも事実だが、勢いに身を任せたら破滅へまっしぐらだ。ボーナスの時、調子にのってフェッチランドを揃えた時のことを忘れたか。定期預金のことをすっかり忘れてて酷い目にあった。
……いや。そもそもだ。
まさか、『百合』の意味を知らない?
『フォーマット』どうこうより、そっちの方を知っておいて欲しかった。
(どっちだ。どっちがマシだ)
なんで中継ぎに悩まされる投手コーチみたいなことになっているのか。このまま『百合』の意味を教えればフェードアウトは容易に見える。しかしこの天然ぶりが彼女の魅力と考えると……。
(高確率で
時間がない。急いで決断しなくてはいけない。思考時間は10秒に満たない。が、人生で一番濃密な10秒間だった。
……百合に挟まるより、ユリを汚す方が重罪だよな?
妹にアイコンタクトで合図を送る。
ごまかす?
ごまかすぞ。
視線だけ寄越した妹と目だけで会話しつつ、同盟を結ぶことに成功。
「多分違うと思いますよ? 兄さんなら意味を知ってるんじゃないかなー?」
明智光秀に裏切られた織田信長ってこんな気持ちだったんだろうなって。
「わー、そうなんですか。お兄さんは物知りなんですね」
「なにせ我が家の雑学王ですから!」
「私が雑学王とか初耳なんだが? 少なくとも草花に関しては興味がないから知らん」
「文脈的に違うでしょ。パソコンの前で『百合サイコー!』とか言ってたじゃん。私は分かんないけど」
生涯で一度たりとも言っとらんわ。第一家族の前で同人誌読む勇気なんか狗にでも食わせてしまえ。クソッ、逆に状況が悪化したか。
……いや、まだだ。まだ終わらんよ。
「視聴者の中に知ってる人がいるんじゃないか?」
「あっ、やられた」
「そうですねー。見てる方で知ってる人はいらっしゃいますかー?」
甘いわ。私の人生の8割は口車とゴマすりよ。正攻法で生きてきたお前とは場数が違うわ。ちなみにコツはどんな場面でも嘘は言わないこと。
: 知らんな
: 教えておにーさん
(ブルータス。お前もか)
カエサルも最期はこんな気持ちだったんだろうなって。
なんでこういう時だけ息ピッタリなんですかねぇ? 視聴者のみなさん。
「っシャァオラ!兄さん。みんな『百合』の意味を知りたがってるんだよ」
妹が勝ち誇ったような笑顔で私を見る。もう逃げられまい、という勝利宣言だろうか。
ここで知らないです、と言ったら妹に負けた気がする。
正直に話せばそれだけで済めばいいが、リリーさんのこの感じ、そこから延焼が起きて大惨事が起きそうな気配がするんだよ。
あ~リアルで『思考囲い』を打ちたい。リリーさんの頭の中を覗いて致命札抜き取りたい。
そもそもチーフさんとやらが余計なことを言わなければ……。
……チーフさん? そうか。
「チーフさんの言ったことだし、いわゆる業界用語なんじゃないですか?」
自分の蒔いた種だ。自分で刈り取ってもらうのが筋だろう。うん。間違ってない。
「業界用語、ですか?」
「以前の放送で『サクる』って、私言ったじゃないですか。そんな感じで『百合』も、マネージャーさん達の間で使われる言葉だったんじゃないかと。あくまで推測ですが」
これも嘘は言ってない。『百合』も元々は業界用語だし、マネさんの中では本当に『百合』なる業界用語があるのかもしれん。いや、ホント知らんけど。
「なるほどー、私、また勘違いしちゃいました。『サクる』って初めて聞いた時も、てっきり後ろから『サックリ』いくことかなーって」
「あははは。なんで微妙に私と同じことを考えるんだ……。実は私も最初はそういうことだと思ってました。生け贄のことを英語で『Sacrifice』というところから来てるそうです。あとでチーフさんに聞いてみたらどうです?」
「そうですねー。そうします」
……こうやってパレスチナ問題は生まれたんだろうなって。
とにかく急場は凌ぎきった。妹が先輩の後ろで舌打ちしたのが見えるが、今はスルーしかあるまい。
「そろそろ『フォーマット』の話をしてもよろしいでしょうか」
「あっ、すいません。ついついお二人とのお話が楽しくて」
ふわりと、笑顔になるリリーさん
無垢の笑みって、こういう笑顔のことを言うのだろう。
色々勘違いしそうになるからやめてほしい。なんというか、自分が受け入れられたような気分になる。
クズは拒絶された方が楽なんですよ。妹みたくストレートに否定してくれた方が万倍やりやすい。
「……ではアイキャッチのあと、すぐに説明に入りましょう」
会社から提案された相手は? (あまり差がなければ予定通り進行します)
-
緑(予定通りフォーマットの説明)
-
青(目と目が合ったら勝負の合図)
-
赤(プランC?ねぇよそんなもん)