バーチャルだけど現実 対戦(合法ロリ)編 作:道長(最近灯に目覚めた)
「今回説明するのは『スタンダード』、『パイオニア』、『モダン』、『レガシー』、『ヴィンテージ』の5つのフォーマットについてだ」
用意されたホワイトボードに書き込んでいく。
「相変わらず汚い字ー、変わんないね。先輩いるんだし、もうちょっと丁寧に書いたら?」
「大丈夫ですよ。全然読めますから」
コメント欄にも流れるが、自分の字はとても褒められるようなものではない。これでも他人が読める範疇になったんだから、随分とマシになったのだ。流石に仕事は、他人と情報を共有しないと何も出来ないし。
「読めるんならいいだろ、続けるぞ。どうして『フォーマット』が制定されたかは先輩が先に言ってくれたとおりだが……」
「リリーで構いませんよ?」
「……ではリリーさんで。妹の面倒を見ていただいてる身としては呼び捨てには出来ません」
「はい。分かりました先生」
「ブッッ! 先輩、何言ってるんですか!?」
私の言いたいことも、出せないことも妹が全部言ってくれた。吹き出さなかった自分を褒めてやりたい。視聴者も盛り上がっている。
「だって私達に教えてくれるんですよ?だったら先生ですよね?」
「そうですけど! 例えばタバコや酒を教えてくる人を先生って呼びますか!?」
ほう……?
お前ハイスラでボコるは・・・
妹が発言後「あっ」と、声にならない声をあげるが時既に遅し。ついげきの失言でさらにコメントは加速した。
私はあえて何も触れず
「このまま説明してもいいか?」
と言うと妹は必死に釈明してきた。私はリリーさんに話を振って回避。
これは一歩間違えると炎上して大ダメージを受ける隠し技なのでコメント欄が騒ぎはじめた。
私が
「これは口で説明するよりも体感する方が早いかもしれない。スタッフさん。黒のウェルカムデッキの内容、スクリーンに出してもらえたりします?」
と言うとコメント欄は静かになっていった。
まだ妹が何か言ってるが時既に時間切れ、スルーを決め込んだ私にスキは無かった。たまの無視出来ない発言もスタッフさんを手伝っている振りをして撃退。
終わる頃にはズタズタにされた妹がいた。
基本セット2020ウェルカム・デッキ 黒
土地 (13)
13 沼/Swamp
クリーチャー (12)
2 男爵領の吸血鬼
2 張り出し櫓のコウモリ
1 沼踏み
1 残忍な異形
1 グレイブディガー
1 墓起こし
1 骸骨射手
3 歩く死骸
呪文 (5)
1 苦しめる吸引
1 墓暴き
1 闇の療法
1 見栄え損ない
1 殺害
「さて、ここで2人に問題です」
「だから違うんです。そういう意味じゃなくて……えっ、なに?」
「なんでしょう。先生?」
「……もういいや。このデッキに30枚ピッタリ足して、可能なかぎりこのデッキを強化してください。同名カードは4枚まで、というルールさえ守れば、あなた達の知りうるマジックのカードを全て使ってくれて構いません。考える時間は3分。3分の間なら質問も、手元にあるタブレットで調べるのもありです」
「はっ? ちょっと待って」
「分かりましたー」
「ではスタート。視聴者の皆さんも是非参加してみてください。出来上がったデッキはマシュマロまでどうぞー」
正直自分も思い付きで言ったことなので、模範解答はない。
(『ヴィンテージ』の制限カードを適当に4積みすればいいか。『黒蓮』と、黒だから『教示者』は4積み確定だとして)
ヴィンテージの制限リストを開く。
(多色は恐らく厳しいな。黒単と言えばあの『ネクロディスク』か。無制限の黒ならサーチカードには困らないから実質12枚の『ネクロポーテンス』が……だめだ。仮に『ネクロポーテンス』で10枚ドローしても撃てるのが豆鉄砲だけじゃ勝てない。自分で言っといて30枚縛りが存外キツいぞ。これ)
『ネクロポーテンス』でアドバンテージを稼いで殴り倒すのなら、殴れる時間を作れるカード、『露天鉱床』や『3なる宝球』を積みたいところだが、それだけで30枚のスロットを圧迫する。これに早出しを容易にするマナ加速を積まなくてはいけないのだ。
(『Black Lotus 』、『暗黒の儀式』、『Mox Jet』のマナ加速12枚。『悪魔の教示者』、『吸血の教示者』に『ギタクシア派の調査』を合わせてのサーチカード12枚。そこに『ヨーグモスの意思』を1枚入れて計25枚。実際のスロットは5枚だから、積めるのはキーカード2枚のコンボ1セットが限度。黒単色2枚の低マナ即死コンボなんてあったっけ?)
あるんだろうなと、思いつつも全然イメージが出来ない。
(『ヴィンテージ』の即死コンボなんて、知り合いが『逆説ストーム』を実際に回して見せてくれた時しか……あっ)
あったよ。黒単色でも出来る即死コンボが。
「先生に質問です」
ちょうど思い出した時に声がかかる。手をピンと伸ばして質問の許可を取る模範的生徒がいた。リリーさん、そこまで熱心に演技しなくてもいいんですよ? さっきから妹の視線が痛い。
「この変態兄貴が……」
うるせえ。男はみんな変態なんだよ(暴論)。
「なんでしょう? リリーさん」
「土地のカードは何枚くらいが目安なんでしょう?」
スペルではなくマナ基盤に着目するところに、先輩の初心者らしからぬセンスを垣間見た。てっきり30枚全てをスペルにするのかと思っていたのだが。
「大体20枚は入るんじゃないでしょうか? 多色だともっと増えますが」
「ありがとうございます。そうすると残りは22枚になるから……」
「なるほどねー。……じゃあ私は残り17枚? でもそれって……」
妹は私の『ジャンド』にこっぴどくやられた経験がどう出るか。
思考時間の3分が終了。あとは足した30枚を各タブレットに入力して公開だ。
「まずは妹からいくか」
「オーケー。結構頑張ったよ」
効果音とともにデッキレシピが画面に映る。
土地 (9)
4 深緑の地下墓地
3 血染めのぬかるみ
1 血の墓所
1 草むした墓
クリーチャー (6)
4 タルモゴイフ
2 運命の神クローティス
呪文(9)
4 思考囲い
2 致命的な一押し
3 コラガンの命令
プレインズウォーカー(6)
3 レンと六番
3 ヴェールのリリアナ
「多色にしたか」
「兄さんの使ってるカード全部強かったし。『レンと六番』でフェッチランド使いまわせば勝手に土地は増えるじゃん?」
「まあ。確かにそうだな」
「そういえば先生も色んな土地をデッキから出してましたね」
「色は多い方がやれることが増えますから。黒はアーティファクト触れない色みたいだし、『コラガンの命令』は外せないでしょ」
「わー、スズちゃん流石です」
自信満々な所悪いが、ツッコミどころ満載のデッキに結構なコメントが書き込まれている。
どうやらコメント欄を確認する勇気はまだないようだ。今は構築の話ではないので触れないでおいてやろう。あとでエゴサした時、身悶えするのを楽しみにしておく。
「じゃあ次はリリーさんで」
「はい。私はこんな感じになりましたー」
土地 (8)
4 深緑の地下墓地
4 血染めのぬかるみ
クリーチャー (4)
4 闇の腹心
呪文(14)
4 思考囲い
4 コジレックの審問
4 致命的な一押し
2 苦しめる吸引
プレインズウォーカー(4)
4 ヴェールのリリアナ
「……」
「ど、どうでしょうか? すいません。全然知らないので変なデッキになっちゃってると思うんです」
「全部黒のカードなんですね。色増やすべきじゃないですか?あと『闇の腹心』ってなんですか?」
訳知り顔でリリーさんのセレクトを批評し始める妹。
すごいなー。あこがれちゃうなー。
……うん。これは私が多色のカードは強いって印象を植え付け過ぎたか。
「そうですよね~。手札破壊だけじゃ限界がありますし。『闇の腹心』は黒の低マナの強いクリーチャーを探したら見つけました。ライフを払ってデッキから追加ドローが出来るみたいなんですけど、今見てみると『苦しめる吸引』だけじゃライフ回復手段が足りませんね~」
「多分『リリーさんとお前のデッキどっち使う?』って言われたら、半分以上はリリーさんのデッキ使うと思うぞ」
「なんで!?」
ショックを受けた妹が音をたてて椅子から転げ落ちた。
いい反応するな。今のお前はちょっと面白いわ。
それとスカートはもうちょい長い方がよかったな。
「あとでコメント見返しておけ。想像以上に堅実にデッキを組みあげられたので驚きました」
「そう……なんですか?」
「上から目線ですが、短い時間でよくぞここまで、と言わせてもらいます」
「わぁ~、褒められちゃいました。ありがとうございます」
「えへへ~」と、照れ笑いをするリリーさんはとても可愛らしい。首をコテンと傾けるのもポイントが高い。
見てるだけならエルフっていうより天使ですね。直接関わると天使の姿で悪魔みたいなことされますけど。
触らぬ神に祟りなしである。
「それに比べ私の妹は……」
「じゃあ兄貴はどうなのさ」
「私か?こんなのだ」
呪文(17)
4 暗黒の儀式
4 吸血の教示者
4 悪魔の教示者
4 ギタクシア派の調査
1 ヨーグモスの意志
アーティファクト(13)
4 Black Lotus
4 Mox Jet
3 通電式キー
2 Time Vault
「……なぁにこれ~?」
「え~と……?」
2人が困惑した表情でスクリーンを眺める。2人は全く知らないカードだから当然の表情だ。
コメント欄もドン引きの様相を呈している。
:石油王のデッキ
:どのフォーマットでも組めないんですがそれは
:これは黄金の黒の塊
「1ターン目か2ターン目に『Time Vault』と『通電式キー』で無限ターン作って勝つ。残りはそれを可能にするためのサーチカードとマナ加速カードだ。……改めて見ると『Will』はともかく『青フォース』と『緑フォース』へのガードが低すぎるな。これ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「……理解出来なくてごめんなさい」
「こういった事態を防ぐ為に『フォーマット』が存在するんだ。マシュマロにもいくつかデッキが投稿されてますし、実際に見てみましょう」
その時、私の携帯が鳴った。あまりのタイミングの良さに思わず取り出してしまう。
「すいません。すぐ電源切ります」
どうやらRINEの通知だったようだ。画面のメッセージは
友人(膝邪魔)
ギタ調とヴァンチューの8スロットならデモコン4でコンボパーツ増やした方がいいだろ
……見てるんかい!
ということで次回はご協力いただいて作成してもらったデッキを載せさせていただきます。
突然のメッセージに驚かれた方も多かったと思います。申し訳ありませんでした。そして反応していただいた方、協力していただいた方、ありがとうございます。
折角の配信ものなのにマシュマロなるものが無いのは寂しいなと思い、感想をいただいた方と評価をいただいた方メインで、協力の依頼を送らせてもらいました。
ホント無茶振りすいませんでした!