フレイザードの弟として活躍する   作:リーグロード

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かなり長い間お待たせしました。この小説をお気に入り登録してくださった皆様に申し訳ございませんと謝罪の文を書かさせてもらいます。

今回はオリジナル設定をふんだんに盛り込んだ内容で、色んなオリキャラが出てきますが、あまり漫画内との矛盾とかを考えないように読んでくれると助かります。


魔界侵略作戦決行中!

 魔界は死の世界と例えられる程に荒廃した場所だった。空は地上で蓋されて闇で覆われており、大地には溶岩が流れている。

 そこかしこには凶悪なモンスターが歩いており、ただの人間ならば1日とて生きてはいけまい。

 

 そんな地獄とも言える場所を現在支配しているのは4つの勢力。

 

 1つは冥竜王ヴェルザーの支配下にあった軍で、今現在の頭はヴェルザー一族のガンドーラというドラゴンのようだ。

 

 2つ目はバーン様に敵対している魔族の軍団で、どうやら俺の体となっている魔族が所属していた集団のようだ。

 こちらに関しては、誰がリーダーかは分からなかったが、全体の平均レベルは35を超えるかどうかの強さだった。

 

 3つ目はヴェルザーとバーン様のどちらにも組みしなかった残り物の集まりだ。ハッキリ言ってただの烏合の衆程度の認識で構わないだろう。

 

 4つ目は他の3つの勢力と違って、軍ではなくたった一人で勢力扱いとなるほどの実力を持つ魔人と呼ばれる種族のモンスターらしく、名をカイオウと名乗っているようだ。

 

 この4つの勢力は均衡を保っているというよりも、カイオウから逃げながら互いを牽制しているといった状況だ。

 もし、カイオウを叩き潰せば他の3つの勢力が漁夫の利を狙って、新たな脅威に連合となって襲い掛かってくることが予想される。

 ひとまずは、カイオウ以外の3つの勢力を削りつつも、自身の勢力を伸ばしていくのが先決だろう。

 

 そうした方針でこの魔界に来てから1週間と数日が過ぎた。

 

 今の俺の勢力は生みの親であるハドラーから受け継いだキラーマシンの量産とそれの改良によってできたキラーマシン2とキラーマシンガーの2つを束ねるブレイン的立ち位置のスーパーキラーマシンを頂点にしたマシン軍団だ。

 

 この軍団は非常に有能だ。恐れもなければ恐怖もない。チェスのように簡単に捨て駒にできるし、疲労もない分壊れるまで働かせることができる。

 まあ、もっとも命令されたこと以外は何もできないし、状況に応じて臨機応変に行動する等といった優秀さは持ち合わせていないがな。

 

「ギィギィ、イレイザー様。2日前に出発したキラーマシンガー部隊が戻りました。戦果はガンドーラの配下の部隊1つとバーン様に歯向かう愚かな魔族の集団の一部の討伐に成功しました。こちらの受けた被害はキラーマシンガー部隊の3割が大破され、残り5割が中破し、残った2割のみが無傷です」

 

「ほう、勢力の2つを相手どった割に損害は予想よりも遥かに軽微だな。これはキラーマシンガー部隊が優秀だからか? それとも、相手が予想以上に弱かったのか? 

 いずれにしても、これで奴らも俺たちの存在に気が付くだろう。謎の新たな勢力か、はたまた、別の勢力の増援なのか……、どちらの考えをするかによって奴らの対処の仕方も変わってくるだろう」

 

 後者の考えならば互いの勢力争いが激化してこっちはやりやすくなるのだが、前者なら万が一にも手を組まれるなどといった事態も考えられる。

 

「まあ、どちらにせよ最終的に勝つのは俺だ。どっちに転ぼうとも問題はない」

 

 自信満々に独り言を呟く俺は報告が来るまでの暇潰しと経験値稼ぎ(修業)によって出来た足元に転がる無数のモンスターの死骸を踏みつけながら、戦果を挙げたキラーマシンガー部隊の様子を見に行くことにする。

 

 

「成程、確かに報告通り8割程度しかやられていないな。それもやられた大半が修復可能クラスの損傷か……。炎や氷による跡はガンドーラ部隊のブレス攻撃によるものか。

 そして、こっちの剣と矢による傷は魔族によるものだな……」

 

 破損した部分を触れながら、何で出来た傷かをつぶさに観察する。それと同時に、自身の魔力によって回復させていき、大破してここにいないのは新たに作り出す。

 およそ自身の魔力の3割程度で部隊の完全回復が完了する。

 

「さて、これで戦力は完全に元に戻った。お前たちは引き続き他の勢力の牽制と間引きを行え」

 

『了解しました』

 

 直っても命令されたらすぐに行動しなくてはならない。これも悲しきロボット兵のありようかな……。

 っと、自分で作り出した状況で感傷に浸っている場合じゃないな。俺の予想だとそろそろ──

 

「きたか……」

 

「貴様があの忌まわしき機械兵共の親玉か……」

 

 やってきたのは種族がバラバラなモンスターの群れだ。つまり烏合の衆の群れだ。

 まあこいつらがくることは予想できていた。敵対勢力の2つが謎の集団によって深手を負わされた。

 それも、自分たちが襲われた相手にだ。そうなれば手負いとなった部隊に奇襲を仕掛けるのは当然のこと。

 

 そして、その過程で黒幕の元に辿り着けるとなれば黙って俺のところまでストーカーするのも当たり前だ。

 奴らはまんまと俺の正体を突き止めた思ったようだが、実際は俺の掌の上でまんまと踊らされているとは考えてもいなのだろうな。

 

「ああそうだ。俺がお前たちが探している黒幕で間違いない」

 

 ザワリ! と俺の言葉は波のように広がり、モンスターたちはざわめきだした。

 きっと奴らの頭の中では俺は卑怯な臆病者で、自分たちが現れて慌てふためき様を想像していたのだろうな。

 

 とはいえ、流石は乱世のような魔界に住まうモンスターたちだ。

 そのざわめきはすぐさま落ち着き、各々の武器を握りしめる。

 

「ふん、貴様のような裏でコソコソする奴はてっきり貧弱そうな奴だと思っていたが……」

 

 ジロジロと不躾に見てくるモンスターだが、その顔には恐れが見え隠れする。

流石はこの魔界で未だに生き残っているモンスターだな。一目で俺との実力差を感じ取った様だ。

 

 今俺のレベルは50を超えている。それに対して目の前のモンスターたちは平均30かそこいらの雑魚モンスターだ。

 レベル10の差はこの世界でも絶望的なひらきだ。普通に戦えば数で押しても通用しない程の敵を前にしてもはや逃げることもできないモンスターたちは玉砕覚悟の顔つきで迫ってくる。

 

「力の差に絶望してもなお向かってくるのは勇気かそれとも諦めか……。いずれにしても、策なく俺に向かってくれば待つのは死のみだぞ」

 

「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉ」」」」」

 

 雄叫びを挙げながらも全員の胸中にあるのは勇気ではなく絶望だ。

 そして、それが正しいと言わんばかりに一人また一人目の前の男に沈められていく。

 

 斬られ殴られ蹴られ呪文で吹き飛ばされる。たくさんいた仲間が次々に倒れ伏す光景は恐怖以外のなにものでもなかった。

 

「ヒ、ヒィィィィ!!!」

 

 そしてついにはその凶刃が最後の一匹となったモンスターに迫る直前に邪魔が入った。

 

「……っ!?」

 

 俺が気分よく北斗無双して最後のとどめを刺そうとした瞬間、突如空からメラゾーマが俺目掛けて飛んできた。

 流石にそれを喰らってまでとどめを刺そうという気にはなれず、その場から離れる。

 

「た、助かった……?」

 

「何者だ?」

 

 空にいる者を睨めつけ、その身に纏った暗黒闘気をさらに高めていく。

 

 それは空間が闇に汚染されたのではないかと錯覚するほどの濃密さだ。これが魔界で修行し鍛え上げたイレイザーの強さ。

 もはや、つい1週間前とでは比較にならない強さだ。

 

「我の名はクリフォード。五芒星(ペンタグラム)を支える最強の五柱の1人だ!」

 

 そう名乗ってきた白髪のヴァンパイアらしきクリフォードと名乗る男。

 五芒星(ペンタグラム)とは恐らく俺がずっと烏合の衆の群れと呼称していた連合の呼び名だろう。(初めて知った)

 

 先程まで無双してきた雑魚とは明らかに違うその風貌に警戒の色を示すが、俺の見立てではレベルは50に届くかどうか。

 俺の敵にはなるだろうが、強敵かと言われれば悩むところだ。

 

 この1週間戦い続けて分かったのだが、ゲームでいうところの会心いやモンスターなら痛恨か……。その痛恨や回避(ミス)などといったものは才能に左右される。

 そして、俺の才能はずば抜けており、先程の無双もほぼ全ての攻撃は痛恨の一撃となっており、敵の攻撃も全て回避《ミス》している。

 

 そんな俺の感だが、このクリフォードは強さは俺と並ぶかもしれないが、才能という点においては俺が遥か格上という自信がある。

 

だからこそ、敵という一応の戦えるレベルではあるが、強敵で死闘を演じるということはないだろう。

 

「ここ最近派手に暴れている無礼者がいるという報告を聞いたが、どうやらお前がその無礼者のようだな」

 

「ああその通り、とはいえ、正確には俺の部下が暴れたというのが正しいかな?」

 

「どっちでもいい。お前が俺の配下の兵共を殺した。それだけで貴様を殺す理由としては充分だ」

 

「それは怖いな。なら、俺としては殺されないように必死で抵抗させてもらおうか」

 

互いに口にすべき事は全てしたと言わんばかりに口を閉じる。

そして訪れる静寂の中、殺気と闘気の入り混じった空間に耐えられず、先程助かったモンスターが歯をガタガタと鳴らし、ついに耐え切れず悲鳴をあげたのがスタートの合図だった。

 

「うわあああああああ!!!!」

 

「いくぞ!死ね!!」

 

「それはこちらの台詞だ!!」

 

滑空して迫るクリフォードを迎撃するため俺は地面を粉砕する威力で飛び上がる。両者が空中でぶつかることで辺りに轟音が鳴り響く。

 

「うひゃああああ!!!???」

 

両者の激突で生まれた衝撃波を浴びて吹き飛びながら悲鳴をあげるモンスターを無視して、空中で始まる激戦は尚も激しくなっていく。

 

「イオラ!」

 

「ベギラマ!」

 

クリフォードの爆発に加えてイレイザーの業火が巻き起こり、ただでさえ熱い魔界の空気が更に熱くなる。

だがそんなこと関係ないと言わんばかりに、2人はさらに強力な呪文を連発していく。

 

「イオナズン!メラゾーマ!」

 

「ベギラゴン!マヒャド!」

 

繰り出しては相殺され、MPが目減りしていく中で徐々にだがイレイザーの呪文がクリフォードの呪文を上回っていく。

 

「ぐっ!?何故だ!撃ち合う度に奴の呪文の威力が僅かずつだが上がっていっている」

 

この戦いの中で互角に戦うクリフォードに対し、イレイザーは自身の暗黒闘気を呪文に上乗せする技術を編み出した。

それが、イレイザーの呪文の威力が上がっていく理由だった。

 

困惑するクリフォードはそれでも呪文を撃ちだす手を止めず、なんとか隙を見つけようと飛び回るも、同じ速度で自分以上の威力がこもった呪文を使ってくる者を相手に隙などそう簡単に見つけられる筈もなく、逆に呪文の威力に押し返されたクリフォードの目の前にイレイザーが拳を構えて現れる。

 

「最初の一撃はいただくぞ!」

 

「っ!!」

 

遂には距離を詰められてしまい、イレイザーの攻撃を防御できたものの無様に地面に叩き落されたクリフォードは防御した腕を見て驚愕に打ち震える。

 

「…た…ただのルーキーではなかったのか!?これほどの力の持ち主がいるなんて聞いた覚えがない?」

 

防御したはずだというのに酷い傷を負った腕をぶら下げて立ち上がる。このレベルの傷となると、いくらヴァンパイアとはいえ回復に数十秒は集中しなくては治らない。

だが、そんな隙をみすみす目の前の男が見逃すとも思えない。

 

ほんの僅かな時間。深呼吸程度の時間でいいというのに、その時間が得られない!

 

「暗黒闘技『黒の手刀(ブラックソード)』」

 

「うっ…、うおおおぉぉぉ!!!」

 

ザシュッ!

 

「お…俺の…、俺の腕が…!?」

 

首を狙って放たれた手刀は傷ついた腕を犠牲に首チョンパは防げたが、代わりとして腕を失ってしまった。

 

多少MPを消費した程度のイレイザーと、実力で負け腕を失ってしまったクリフォード。

もはや決着は付いたと言っても過言ではないだろう。

 

「決着は既に決まったようなものだ。無駄な抵抗はやめて素直に死ね!」

 

跪いて失った腕を嘆くクリフォードの首筋に、伸ばした暗黒闘気の刃を突きつける。

あっけない決着だが、これが残酷なまでの才能の差というものだ。

 

「それじゃあな…」

 

イレイザーはクリフォードの命を絶つ死の刃を振り下ろす。

 

だが…!

 

「っと…!!!」

 

「なっ……!?」

 

凄まじい(はや)さを持つ何者かが首を斬られる直前のクリフォードを助け出した。

 

「ふう~、ギリギリセーフ!」

 

黒豹(パンサー)の顔の獣人型モンスターがクリフォードを抱きかかえていた。

 

「テメェ…、なんでここにいる?」

 

「ん~、なんかここら辺走ってたらクリフォードんとこの部下が助けを求めてきたからよ。来てみたらビックリ!クリフォードが殺されかけてたんだもんな!?」

 

あいつの部下?成程、さっき吹っ飛ばしたあのモンスターが呼んできた助っ人か。

しかも、あいつの態度からして、恐らくはクリフォードと同じ地位に立つ者。

つまり、五芒星(ペンタグラム)の1柱であることが予想できる。

 

別に地位が同じだから強さも同じとは思わないが、先程のスピードは不意を突かれたとはいえ、この俺が獲物を奪い取られたからな、少なくともクリフォードより弱いとは思えんな。

 

「何者だ貴様?」

 

「ん?オレか…。オレはスペンサー!クリフォードと同じ五芒星(ペンタグラム)の1柱だ」

 

「バカか貴様は!敵に聞かれてベラベラと自分の情報を話す奴がいるか!?」

 

コイツ…、あまり駆け引きとかを得意とするタイプではないな。なんというかリアルにいる陽キャの属性を持ったようなキャラだ。

んで、逆にクリフォードは駆け引きで自分に有利になるよう進める策士だな。さっきのスペンサーの五芒星(ペンタグラム)の1柱の宣言は何も考えずに言っただろうが、クリフォードの場合は恐らく威圧や牽制の意味合いを込めたものだろう。

 

「それで、ここからどうするつもりだ?」

 

「ん~、とりあえずクリフォードがこんな状態だし、今日はここまでってことにしない?」

 

「ちっ!」

 

舌打ちをするクリフォードだが、気に入らなくとも、それが最善だということが分かっているのだろう。

 

だけどな、

 

「それを俺が許すと思っているのか?」

 

「いいや、お前ってチャンスは絶対に逃さないタイプだろ。だからもう1人助けを求めた!」

 

「なにっ!?」

 

「へっ、俺様を呼んだか!!!」

 

頭上から高らかな声と共に、俺に向かって斧が飛んでくる。

またもや不意を突かれる形となったが、大声をあげての不意打ちなど避けてくださいと言っているようなものだ。

 

「不意を打ちたければ、静かに行うべきだな…」

 

イレイザーは飛んでくる斧から避けもせず、手刀で弾き返す。弾き返された斧は襲撃してきた持ち主の手元に帰っていく。

 

「はっはっは!別に不意打ちをしたつもりはない。オメェさんが今のに反応出来るかどうか試しただけの事よ。だがまあ、俺様の斧が避けられるんじゃなく弾き返されるとは予想していなかったがな!」

 

新たに現れたのは変態と称される類のモンスター?だった。覆面を被った半裸のマッチョといういかにもお巡りさんにお世話になるタイプだな。

 

「スペンサー!お前は先にクリフォードを連れて逃げろ。五芒星(ペンタグラム)が3人も揃って逃げるってのは情けないが、俺様の部下の情報でカイオウがこの近くに現れたらしいからな。こんな奴とやりあっていたら間違いなく目をつけられっちまう。だからさっさと行け!!!」

 

「OK!ウォーカーも無事に逃げ切れよ。んじゃ、行くぞクリフォード」

 

「ちっ、クソがぁ!貴様今度あったらただでは済まさねぇ。覚悟しとくんだな!!!」

 

そう言い残すとスペンサーはクリフォードを連れて一瞬で遠くまで走り去っていった。

すぐにでも追いかけて始末したいところだが、目の前の変態がそれを許してはくれないだろう。

 

恐らくだが、この変態は単純な肉体の戦闘力でいえばクリフォードとスペンサーの2人を凌ぐ強さを持つと俺は睨んでいる。ここで1人となったコイツを始末出来るチャンスが来たと喜ぶべきなのだろう。

だが、それでも俺はクリフォードが3人の中で一番厄介な存在になると考えている。

あいつの恐ろしさはあいつ自身の強さではなく、リーダーとしての策士の才能や仲間を指揮する強さだと考えている。

さっきのあいつは俺に負けて頭に血が上ってしまったから、冷静な判断ができずに仲間に指示を出すことはしなかった。

 

だが、一度傷を癒し、再び俺の前に現れた時には、確実に俺を仕留める兵と準備をして立ちふさがるだろう。

 

だからこそ――

 

「そこをどけ。そうすれば貴様を見逃してやる」

 

「それは無理な相談だな。そうすればお前は約束を守るだろうが、代わりに俺様の仲間を殺しに行く。それだけは絶対に阻止させてもらうぜ!」

 

手に持った斧を構えて仁王立ちのポーズで立ちふさがる。ただそれだけのことなのに、巨大な鉄壁の壁が立ちふさがったかのようだ。

 

「どうやら、楽に通ることはできそうにないな」

 

腰を落として突撃の態勢を作る。この勝負はさっきのクリフォードよりも楽に勝つことはできそうにないな。

だが、負ける気はこれっぽちもない。

 

暗黒闘気を最大まで高め、身体能力向上に加え、先程消費した魔法力を回復させていく。

相手にとって今の俺は力を溜めている最中で攻撃を仕掛ける絶好のチャンスだというのに、一切その場から動こうともしない。

 

厄介だな、見た目はふざけているのに、目先のチャンスに飛びつかずに足止めの役割を忠実に守ってやがる。

とはいえ、

 

「時間もない。さっさと倒させてもらうぞ」

 

「出来るものならやってみろ」

 

解放した暗黒闘気をオーラにして纏い、単純なタックルをぶちかます。ただのタックルと侮るなかれ、俺の今の防御力は準オリハルコンクラスの硬度を誇る。それが、超高速でぶつかるのだ。

それがどういうことか理解できるか?つまりだ、目の前に武装した列車が突っ込んできたと例えれば分かりやすいだろう。

 

「ふんっ!」

 

ドスンッ!!!!

 

イレイザーとウォーカーがぶつかると同時に強烈な衝突音が鳴り響いた。それが今のタックルの威力を物語っている。

それでも、目の前のコイツは気合いで俺のタックルを受け止めた。とはいえ、無傷ではない。

受け止めるためにワザと俺のタックルを喰らったのだ。受け止めた衝撃で内蔵のいくつかは潰されただろう。その証拠に奴は口から血を吐き出した。

 

「ぐほっ!!?」

 

「俺のタックルを受け止めるとは大したものだ…。だが、その代償は少々高くついたみたいだな」

 

イレイザーはウォーカーを逃がさまいと、逆にウォーカーの腰に手を回し、そのままの態勢で飛び上がり、ジャーマンスープレックスを決める。

 

「なんの!?」

 

ウォーカーは頭が地面に叩き落されるよりも先に両手で着地を成功させ技の威力を無効化させる。

技が完璧に防がれたイレイザーは反撃を喰らう前にウォーカーを掴んでいた手を放して真正面に立つ。

 

「やるな…」

 

「流石に俺様も五芒星(ペンタグラム)の1柱だからな。そう簡単にくたばっちまう訳にはいかんからな」

 

そこから互いに距離をとり、再び様子見に入る。今のは正直決まったと思うくらいの会心の流れだったはずなんだが、やはりそう簡単に決着はつかないか。

とはいえ、こっちのダメージは0に対して相手は確実に深手を負った。

 

そう考えて余裕を持ったのがイレイザーのミスだった。

 

「ベホマ」

 

ウォーカーは腹に手を当てて回復呪文であるベホマである使用した。まさか、あの見た目で回復呪文を覚えているとは思わず、そのまま見逃す形で使わせてしまった。

 

冷静な判断力に、高いステータスに加えて回復呪文による自己回復か…。まさにタンク職の理想の構成だな。

一撃で決着をつけるつもりだったが、見通しが甘かったな。

 

もう既に逃げ切るに十分な時間を稼がれてしまった。今から追いかけても逃げたあいつらを見つけ出すのは正直不可能だろう。

 

なら、もう片手間で相手をするのはやめにしよう。

 

「優先順位の変更だ。既にクリフォードは追跡不能の距離まで逃走されただろう。なら、今の俺の最優先事項は貴様を殺すことだ」

 

「へっ、それは怖いな…。でも俺もスペンサーから無事に逃げ切れよって言われてるからな。悪いがテメェに殺されるわけにはいかねぇな!」

 

気迫は充分。死ぬ気はないと……。別にナメられてるとは思わないが、……やはり不快だな。

これもまた魔族として転生した影響か、ハドラーによって生み出された影響かは知れないが、前世とはまるで違う性格になっているな。

今の俺は誰が相手であれ、勝てるもしくは負けないといった感情を持たれると、酷く不愉快な気持ちになる。

完全に悪役ボスの性格だな。まあ、別にそれが嫌いというわけでもない。これが今の俺なのだから甘んじて受け入れるだけだ。

 

「いくぞ!!!」

 

「こい!!!」

 

再び激戦が始まる。スピードと一撃離脱によるイレイザーの攻撃に対し、ウォーカーはその場で動きを止め、確実に致命傷となる攻撃のみを防ぎ、それ以外の攻撃にはダメージ覚悟のカウンターで攻撃を刻んでいく。

 

ダメージ量ならばウォーカーの方がデカいが、スタミナの消費量はイレイザーの方が多い。

もはや時間に気をまわす必要のなくなったイレイザーは縦横無尽に攻撃を繰り返す。少しずつ、されど確実にウォーカーを死に近づけていく。とはいえ、ウォーカーもただ黙ってやられているわけもなく、出来た傷を無視しながら痛みを感じた瞬間に反射で攻撃を繰り出す。

 

戦況は膠着状態といって然るべき状況だが、この戦いの決着の(とき)はすぐそこまで迫っている。

 

「ハァハァ、まさかここまで手こずるとは想像だにしていなかった。所詮は残り物共である烏合の衆の群れのまとめ役程度だと思っていたが、存外に楽しめたぞ」

 

「グゥ……、そいつは結構な評価で嬉しいぜ」

 

致命傷を防いでいるとはいえ、既にその全身は傷だらけで特に黒の手刀(ブラックソード)による刺突によってできた風穴が酷い。

最初のベホマを合わせてこの戦いでもう10回以上の完全回復呪文を唱えてしまったウォーカーはもはやホイミをかけるMPすら残っていなかった。

 

「本当に厄介だったよお前は、もし五芒星(ペンタグラム)の全員……いや、下手すれば先程逃げた2人が一緒になって戦っていたらこちらも痛手は免れなかっただろう」

 

これは勝者として敗者に送る最大限の称賛であった。そう、既に決着はついている。

それはウォーカーにつけられた傷にあった。暗黒闘気によって強化された拳による攻撃はまだしも、暗黒闘気によって直接作られた黒の手刀(ブラックソード)によって出来た傷は回復呪文では癒すことができない。

 

それが今回の勝負の明暗を分けたのだ。ほんの少しのかすり傷程度のイレイザーと、満身創痍のウォーカーの2人を見てどちらが勝者と敗者などか誰の目から見ても明かだというのに、それでもまだウォーカーは諦めてはいなかった。

 

「まだだ……、俺達には責任ってのがあるんだ。この過酷な環境である魔界の統一。それを成すことが群れの長―――五芒星(ペンタグラム)を支える5柱の役目なんだよ!!!」

 

ウオオオオォォォ!!!!っと最後の力を振り絞って立ち上がるウォーカー。

その目には確か意思が宿っており、決して折れはしない決意が満ちていた。

 

もしも、今ここに立っている俺が前世の俺ならば、その行為に尊敬と憧れ、そして敬意を示したであろう。

 

だけども、

 

「カッコイイけど、ウザイよ」

 

「―――がっ!!!」

 

立ち上がったウォーカーの腹に蹴りを打ち込む。体がくの字に曲がったウォーカーは血を吐きながら吹き飛ばされ、遠くに見える岩山へと叩きつけられる。

 

その主人公らしい行動に何故か虫唾が走り、悪意による攻撃でウォーカーは死に体となった。

 

「なんでだろうな?その心意気に素直にカッコイイとは評価できるんだけど、俺の心が鬱陶しいって騒ぐんだよ。やっぱし、もう俺は根っからの魔王軍の一員ということなのかもな」

 

誰に話すわけでもなく、確認するように独り言を呟くイレイザーは、最後の止めを刺そうとして岩山に叩きつけられ動けないウォーカーにメラゾーマを打ち込もうとした。

 

その時―――

 

ドドドゴーン!!!

 

遠くの方から破壊音が聞こえてきた。その音が聞こえてきた方角には確か復活させたキラーマシン部隊を送り込んだはずだ。

まさかと思いキラーマシンの反応を感知してみたが、一切の反応が返ってこなかった。これは全滅させられたと思っていいだろう。

 

だが、キラーマシンならともかくキラーマジンガを含めた機体が一瞬で破壊する者などこの魔界には―――!?

 

「まさか、カイオウか!?」

 

そういえば、ウォーカーの奴もカイオウがこの近くに現れたと言っていたな。クソッ!こんなタイミングでフラグを回収するか。

とはいえ、まだカイオウとは距離がある。あの一瞬で俺のキラーマシン部隊を全滅させるということは今の俺では負ける可能性が高い。悔しいがここは見つかる前に撤退しなければならないだろう。

 

「だが、その前に貴様は確実に殺すぞウォーカー!!!」

 

右手に発動しっぱなしだったメラゾーマを今度こそウォーカー目掛けて投げつけた。

 

「おっと、そうはさせるか!」

 

「なにっ!!?」

 

再びイレイザーの攻撃が直撃する寸前に、横から飛び出したスペンサーがメラゾーマを天へと弾き飛ばし、空中で行き場をなくしたメラゾーマが暴発し花火のようにはじけ飛んだ。

 

「さて、まさかウォーカーまでやられるなんてビックリだけど、今のでカイオウもこっちに獲物がいるってバレちゃっただろうし、ここは痛み分けってことでヨロシク!」

 

「―――っ待て!」

 

言うが早いかスペンサーは意識を失ったウォーカーを背負って再びその自慢のスピードで戦場から遠ざかってゆく。すぐさま後を追って殺しにかかりたいが、カイオウがいると思われる方角から猛スピードでこっちに近づいてくる巨大な力を感じる。

 

このままスペンサーを追いかけてもいいが、もし行く手を妨害するトラップでも仕掛けられていれば、後ろから迫ってくるカイオウと対面してしまう恐れがある。

 

「ちっ、今日のところは貴様の言う通り痛み分けにしておいてやる。だが、次に会った時は必ず殺してやる!覚悟しておけ!!!」

 

遠ざかってゆくスペンサーの背中に向かって殺意の乗った怒りの言葉を吐き捨ててイレイザーはその場から逃げ去っていった。

 




大分オリキャラが出てきたけど大丈夫だった?面白かったり続きが読みたかったら高評価&感想をお願いします!
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