流星降臨(葛葉ライドウ)   作:アズマケイ

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プロローグ6-安倍邸にて4

「赤い憲兵に赤マントか......ハルアキのいうとおり、偶然というにはあまりにも類似する点が多すぎる。これは調べてみる必要がありそうだね」

 

「晴海町あたりに目撃証言が集中しているようなので、原田商会への護衛も強化しようと思います」

 

「うん、そうだね。君でも歯が立たないレベルの実力者となると、本気で制圧されたら、帝都の悪魔召喚士を支える物流が壊滅してしまう。それだけは避けないと。それと、しばらくは赤マントと赤い憲兵の目撃証言の収集だね。場所がもうすこし特定できれば、彼らを分けるものはなにか、彼らを量産しているのはどこか、わかるはずだ」

 

「了解です」

 

「赤い憲兵がそれだけの武装をしているとなると、基本は離脱になりそうだね。いくら体があっても足りないよ。本陣に乗り込むのは諸悪の根源がわかってからだね」

 

「わかりました」

 

「サイガ子爵の時と違って、明らかに組織的な規模の支援があるのはたしかだ。ヤタガラス内にそれだけの性能を持った武装を用意出来るだけの部局はないからね」

 

「やはり軍関係者でしょうか」

 

「正直な話、軍の関係者による犯行じゃないと非常にまずいことになってしまうんだよね。国外の勢力によるものとなると外交問題まで絡んできてしまって、問題が複雑化してしまう。そうなったら終わりだ、僕らの手には負えなくなってしまうよ」

 

「それは困りますね......」

 

「ただでさえ軍縮会議の余波を受けて、軍はピリピリしてる状態なんだ。赤い憲兵の件が海外に露見するのもまずいが、海外による工作の場合はもっとまずいことになる。これは慎重に動かなければならない案件だね......」

 

安倍さんはため息をついた。

 

「君の友人はほんとうに頭がいい人なんだね、ハルアキ。赤い憲兵が君の友人の仕業だとするなら、この時代の今の時期にこんな前代未聞の騒動を起こしたらどうなってしまうのか、完全に把握した上で動かれてるのがわかるよ。将来人たちはこれだから困るんだ。ハルアキがいなかったらと思うとぞっとしてしまうよ」

 

「あいつの仕業かはまだわかりませんが、厄災の芽は摘まないといけませんね」

 

「うん、そうだね。それが僕らの仕事だ。明日ハルアキはそのための戦力強化にいくんだよね?」

 

「はい、そのつもりです」

 

「なら、きみに渡したいものがあるんだ」

 

「え、なんですか?」

 

安倍さんが差し出してきたのは一枚の式札だった。安倍さんがいつも使うものとはちがうようだ。

 

「これはいざなぎ流という陰陽師のある分派が使う式札なんだ」

 

「いざなぎ流」

 

安倍さんはうなずいた。

 

いざなぎ流は高知県香美市において陰陽道の要素を含む独自発展した民間信仰である。

 

伝承によれば、天竺のいざなぎ大王から伝授された24種の方術に基づくとする。法具は無く、儀式の都度にそれに応じた定式の和紙の切り紙(御幣)を使う。民間信仰ではあるが、祭祀の祝詞・呪文は体系化されて定式的に伝承されている。

 

祭儀は太夫と呼ばれる神職によって執り行われるが、太夫は家元制度や世襲でもなく、特定の教団組織もなく、男女の性別も問わない。地域の中の適格者と認められた人物が膨大ないざなぎ流の祭文と祭礼の様式を伝承する。

 

江戸時代に土御門家から地方で独自発展した陰陽道の流れを汲む信仰と公認され、太夫も地方の民間陰陽師として認可されていた。

 

ゆえに土御門家宗家の次期当主である安倍さんもまた扱うことができるらしい。

 

「ハルアキに貸し出すよ。きっと力になってくれるはずだ」

 

安倍さんが式札をさしだした。

 

「私の名はシキオウジ......よろしく頼む......」

 

シキオウジとは陰陽道の一流派「いざなぎ流」において使役される式神。主に病人の祈祷で、病気や厄災の原因となる悪霊を追い払うために呼び出される。呼び出される式神は神霊や精霊を祈祷により神格化させたもので、強大な力と恐ろしさをも併せ持つという。

 

「......土御門ハルアキ......正直お前の日和見なところは相容れない......」

 

「まあまあ、そう言わないでよシキオウジ。僕よりハルアキは君の力を十二分に発揮できるはずだ。力になってあげてね」

 

「む......。だが他ならぬ星命の頼みだ...... 力を貸すとするか......私の力を糧に新たなる悪魔を生み出すがいい......」

 

「こちらこそよろしくな、シキオウジ」

 

「ああ......」

 

シキオウジは口数が少ないクールな悪魔のようだ。

 

「シキオウジは物理と射撃に特化した耐性があるんだ。本来は火炎属性が弱点だけど悪魔合体で耐性をつけてある。貫通持ちには注意が必要だけど、効率と安定性は僕でもしえきできる悪魔の中ではトップクラスだよ。防御よりの悪魔だからスピードだけはどうしても劣るけど、使い勝手の良さはトップクラスだろう?」

 

「ほんとうだ、ありがとうございます安倍さん」

 

「きっときみの新しい仲魔の力になってくれると思うからね。新しい戦力の拡充頑張って。金王屋の主人にもよろしくつたえてね」

 

「わかりました。ほんとにたすかります」  

 

「お礼を言うのは僕の方だよ。こんなにはやくゾンビーの大量発生の背後に大きな組織の存在があることを掴むことができるとは思わなかった。この調子で頑張ろうね」

 

「はい」

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