リョウメンスクナは、両面宿禰と書く。
シャム双生児のように顔がふたつあるから両面とするならば、宿儺はなんだろうと調べてみたところ、古代日本における称号の一つのようだ。
大和朝廷初期では武人や行政官を表す称号としてもちいられていた。
主に物部氏や蘇我氏の先祖に宿禰の称号が与えられた。8世紀には八色の姓で制定された、姓の一つとなった。
真人(まひと)、朝臣(あそん)についで3番目に位置する。大伴氏、佐伯氏など主に連(むらじ)姓を持った神別氏族に与えられた。
スクネには古く足尼や足禰の漢字を用いた。知られている最も古い用例は、埼玉県行田市稲荷山古墳出土の鉄剣銘に見える〈多加利足尼〉である。
古い伝承を伝える国造本記には20を超える国の首長としてスクネを称号あるいは官名とする人名あるいは氏族名が見られ、物部氏先祖に多く見られる。そこではスクネの官名がオオネ(大禰、大尼)の官名と並んで補任されている。
たとえば、崇神天皇期にタケイゴコロ(建胆心命)をオオネとし、タベ(多辨命)をスクネとした、と伝えている。
ここではスクネやオオネは単なる称号ではなく、ある定まった官名あるいは職名として使われている。なおオオネの称号は軍事的部族である物部氏の先祖に限られている。
オオネやスクネの語尾「ネ (称号)」は神別氏族の軍事的長の称号であるので、オオ・ネ(大根)とスク・ネ(少根)は、今日でいう「大将」と「少将」にそれぞれ相当すると考えられ、大将軍「オオネ」に対する副将軍の意味が「スクネ」の起源と考えられる。
両面宿禰が信仰されている地域を考えたとき、両面宿儺はたんなる妖怪・鬼神ではなく、飛騨国造の祖先の一人であった可能性がある。「宿儺」は「スクナ」の神、すなわち少彦名神(鴨県主・葛城国造や鳥取造などの祖)に通じる。
宿儺には少彦名命の末裔という所伝もあり、「オオナムチとスクナヒコナ」とが二心が一体となって国造りをした喩えとの見方もある。何らかの繋がりが示唆されているとあった。
「ビンゴだなこれ......スクナヒコナだとしたら、あれはあいつの刺客なのか?いや、それならあんな手荒な真似して誘拐するわけがない。鬼憑きで未来予知の真似事をする娘がいると考えた方がいいな、それに気づいた宗像将校が伽耶さんを攫ったと考えた方が......?その場合宗像将校はスクナヒコナを使役できるほどの悪魔召喚士ってことになるけどうーん......?それならパーティで暗殺するのに銃なんて軽率なことダークサマナーがするわけがないし、やっぱりあれか。スクナヒコナあたりが宗像将校の背後にいるな」
「それだけではあるまい」
「ジークフリードもそう思うか?」
「お前の友が国津神の本霊を使役するほどの実力者ならば、一連の騒動の首謀者の地位を簒奪するのは時間の問題だろう。いや、もう始めているのかもしれんぞ。大道寺伽耶が誘拐された途端に、ツチグモ、朝廷にまつろわぬ忍者の祖・藤原千方が率いたキンキ、スイキ、フウキ、オンギョウキ、イヌガミ、まつろわぬ民だけでなく、国津神まで刺客として放ってくるわけがあるまい。お前の友は本気でお前をころそうとしているのだ、ハルアキ」
今日1日、鬼憑きについて調べに行く先々で刺客が待ち伏せているのは正直参った。どうやら完全にあいつに俺の思考回路は読まれているようだった。
「マグネタイト補給が出来るのはありがたいけどやっぱそうだよなあ......。国津神まで敵となると長のオオクニヌシも怪しくなってくるもんな」
「神田明神が敵の手中に堕ちているのだ、オオクニヌシとスクナヒコナが敵なのは明らかだろう」
「ちゃんと祀られてるみたいなのにな」
「そういう問題ではなかろう。そうでなければ未曾有の危機を前に結束どころか内紛で自滅するわけがあるまい」
「ああ、うん、まあな......」
「浮かない顔だな、ハルアキ。相手は歴史改変のためには先祖が憑き物筋だと忌み嫌われるのも厭わぬ覚悟なのだ。半端な気持ちで挑む方が失礼ではないか?」
「わかってる、わかってるけどさあ......やっぱりやり切れないんだよ。あいつがなにをしたいのかわからない、見えてこないんだ。こんなことしたって、あいつのいる俺が来た世界線はなんも変わらない。この世界が俺たちの世界線からどんどん離れてくだけだろ。しかも伽耶さんの中にいるあいつはいずれ本人に還元されるとは到底思えない。それなのになんで......なにがあいつをここまでさせるんだ......」
「それは本人に聞いてみなくてはわかるまい」
「でもそれってあれだよな。そんな状況になるってことは、遅かれ早かれあの使用人の話を前提に考えるなら、伽耶さんの人格が完全にあいつに掌握されることにもなるんだよな......あークソッ」
「どちらも、は無理だぞ、ハルアキ」
「わかってるよ、そんなこと」