「ツチグモとガシャドクロは、警告のつもりだったんだけド......。なるほど......なかなか腕はたつみたいネ。ミーの足元にも及ばないけド」
大道寺邸宅の門をググッたその先で、俺たちを待ち受けていたのは、長身かつ細身で生気を感じられない瞳をもつ男だった。もじゃもじゃの髭を蓄えた奇怪な顔が目を引く。黒ずくめの衣装と片仮名混じりの胡散臭い喋り方が特徴的である。明らかに日本人ではないイントネーションの男だった。
「ここまで来ちゃったからネ。ユーは、知らなくていいことまで知っちゃったヨ。悪いけど逃がせないヨ。ミーが大目玉喰らっちゃうからネ。というわけデ......」
男の背後に悪魔の気配がする。巨大な目玉を持つ触手を帯びた不気味な悪魔が俺たちの前に立ち塞がる。
「ミーに睨まれたのが運の尽きヨ。死ぬがいいネ」
「うぉれは伊勢の暴れ神イチモクレンだああああああああああぁぁぁ!!」
「イチモクレンだと......!?天津神の1柱ではないか!」
ゴウトは驚いたように声を上げた。
ゴウト曰く、イチモクレンは、三重県にある一目連神社に祀られており、火の玉となって飛び回り、嵐を起こすイチモクレンが神威を発揮しやすいように、扉は開け離れたままであるという。
嵐が神格化された存在とされているのだが、イチモクレンが普通の嵐と違うのは、自然の台風のように周り全てを壊すのではなく、その通り道以外は被害がない事から一目連のものとわかったのだそうだ。その跡から、一目連は、大蛇であるため一目龍ともいわれた。
しかし、イチモクレンの力が知られているのは、時折遊行する際の所業ではなく、嵐にあった時にもたらす力。洪水になった時に、白馬が現れ、それと共に火の玉が現れ、洪水が来るのを止めた。命永らえた村人が一目連神社に行くと、藻が馬に付いていたという。
伊勢・尾張・美濃・飛騨では不時に暴風が吹くことがあり、これを俗に一目連といい、神風となす。一目連の名が旋風や突風、台風を象徴するものとして扱われている。
また、百井伊勢、桑名の東に建つ多度山権現の摂社に一目竜の社があり、扉の代わりに御簾が掛っている。一目竜が外に出る時は雨や雷がしきりになり、門や窓からその様子を見れば、地方一帯の黒雲が屋根を擦らんばかりに走る。この神が出て行くと、波は穏やかで海上も荒れないと地元民は喜ぶが、他国の者はこれを嫌う。田畑が荒れ物が散乱するからだ。人はこの神を一目連と呼ぶのは間違いである。一目の竜である。
多度山に住んでいた片目を失った龍神を祀ったものが本来であるともいわれる。
「ヒトツメノムラジとも呼ばれる多度大社の祭神の一柱だ」
ヒトツメノムラジという神は古事記等に登場する天津神であり、岩戸隠れの際に刀斧・鉄鐸を造ったという。
大物主神を祀るときに鍛冶者として料物を造った。また、崇神天皇のときにヒトツメノムラジの子孫とイシコリドメの子孫が神鏡を再鋳造したとある。
『日本書紀』の国譲りの段の第二の一書で、高皇産霊尊により天目一箇神が出雲の神々を祀るための作金者に指名されたとの記述がある。『古語拾遺』では、筑紫国・伊勢国の忌部氏の祖としており、天太玉命と同一神とも見られる。
江戸時代に庶民を中心として信仰された神であり、稲光や暴風雨をもたらす暴風神として畏れられたという。
「一つ目の神、鍛冶に関わる神として集合されたのか。このイチモクレンは嵐の神格化が前面に出ているようだが」
「うぉれは狂っているかァァァッ!!」
「かなり狂気入ってますね、ダークサマナーの影響かな?」
「うぉ、うぉれは、気にしてないぞぉぉっ!狂ってて悪いかァァァァッ!そぉぉだぁぁぁっ?うぉれは、悪魔だぁぁぁっ、違うかぁぁぁっ!そぉぉだぁぁぁっ、うぉれは、悪魔だぁぁぁっ だから、うぉまえを、殺ォすぅぅっ!!うぉ うぉれは、怒りでぇぇ、とろけそぉだぁぁぁ!!!」
イチモクレンを中心に疾風が吹き荒れる。
「ぬ、ぬぉ、ぬぉぉぉぉ~!知っている、うぉれは知っているぞぉぉぉっ!うぉれには、見えるんだぁぁぁ!ヤ、ヤツが、飛び交じっているのがぁぁぁ!きっ、きえぇぇぇぇっ、やっ、やめて、やめてくれぇぇぇぇぇっ!!うぉ、うぉまえのなかにいるぅぅ!ジッとしてろ、斬り殺してやるぅぅ!!」
疾風はやがて暴風となり、ふたつの旋風を産み落とす。どうやら仲魔を呼ぶ技能を持っているようで、俺たちの背後に新手が2体出現した。
「うぉれは狂ってるよォ!今だって、うぉまえ内蔵を、引っ張り出してよぉ!ヴェ~ロヴェロしてぇなって思ってんだ!いいやぁ、やっぱり実行しちゃおぉぉっ!!」
「来るぞ、ハルアキ。中村さんを頼む。自分はイチモクレンをやる」
「わかりました、お気を付けて」
「ああ」
「イチモクレンは雷撃が弱点、火炎と呪殺が無効だ。ハルアキも恐らく似たような性質の悪魔が相手のはずだ。抜かるなよ、2人とも」
俺たちはうなずいて、それぞれが相手すべき悪魔目掛けて武器を向けたのだった。