流星降臨(葛葉ライドウ)   作:アズマケイ

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消えた資産家令嬢14

鋼鉄のように凍てついた道路にて、俺たちはタケミナカタと交戦していた。先程まで俺たちがいた場所のあらゆる部分が急にカリッ、カリッと鳴り出すと、一瞬にして氷が張ってしまう。

 

そこは白粉でもふりかけたように、霜の結晶でキラキラに光った。寒さのために凍り果てて、触れ合えば石のように音を立て、コンクリートの床から冷気が迫り上がってきて、空気が凍って固形の微粉になったような冷たさが皮膚に跳ね返る。

 

気づけば異界はどこも凍りついていた。

 

冷えた大気が、月の光にいよいよ冷たさを増すかのように輝きながら降りてくる。気づけば異界は満月だ。

 

もし攻撃があたっていたらと思うとゾッとしてしまう。

 

「愚かな......私に氷結の攻撃は通りませんよ」

 

ソロネはせせら笑うと右手をかかげる。

 

氷結は本来ソロネの弱点なのだが、俺の仲魔は悪魔合体などを駆使してすべて弱点は相殺してあるし、枠に余裕があるなら耐性も増やすようにしているため、ダメージソースたりえる要素はないようにしてある。だからこそ安定して戦えるのだ。

 

俺が最近ジークフリードばかり使うからか、いつになくソロネはやる気充分だ。

 

「私こそは天使階級第三位、上級第三位の座天使。その名は『玉座』『車輪』等の意。尊厳と正義を象徴する存在であり、神の決定による天の配剤を責務に持つ者。名をソロネ。さあ、天からの罰を受けるがいい、雷神にかつて敗北せし極東の神よ───────」

 

天罰が炸裂した。

 

タケミナカタはその閃光に呑まれて絶叫をあげる。どうやら国津神はCHAOS属性に位置する悪魔のようで、その効果は絶大だ。

 

ためしにCOMPを確認してみると、初めて国津神と戦っているからか、タケミナカタに関する情報と共に、主義主張を細分化したフラグメントが更新されていた。

 

ちなみに区分けとしては3×3の9つある。

 

まず縦軸のDARKとLIGHTだが、これは言わば善と悪と意味する。表の上に行けば行くほど神聖度が高い、高次元の神、あるいはそれに準ずる存在と言える。逆に表の下に位置するものは破壊的な衝動が強い邪悪な存在である。自らの欲望の赴くままに行動をし、人間界においては人間の怒り、悲しみ、絶望といった負のエネルギーを喰らって自らのパワーとしている者たちだ。

 

次に横軸のロウとカオスだが、これは秩序と混沌を意味する。通常の人間は縦軸に関してはニュートラルで固定されているが、横軸に関してはロウとカオスの中で揺れ動き続ける。

 

ちなみに俺はNUTRAL-LAWだ。善悪にはこだわりを見せず、自分が思うところの正義の実現を目標に行動する性格。特にメシア教徒はそれが神のためであると判断すれば、殺生にも迷いがない。ある意味、きわめて頑固な性格とも言えるだろう。まあ、だいたいあたっている。

 

故に俺はLAWかNUTRAL属性の悪魔しか使役できない弊害があるが、もう慣れている。

 

「国津神はLIGHT-CHAOSなのか」

 

善行を旨とするが、秩序だった世界を嫌い、混沌的状況を好む。一般的に戦や自然を司る神が多く属し、またそれゆえに自分に厳しい性格である者も多い。当然ながら人間に対する態度も非常に厳しい。

 

もちろん俺とは思想的にも性質的にも相容れないだろうことは明白だった。使役することはもちろん出来ない。これは話を聞くにはやはり正面から叩くしかなさそうである。

 

「ソロネはそのまま天罰でタケミナカタを攻撃してくれ」

 

「ハルアキはどうします?」

 

「神話が正しいなら試す価値はあるだろう、ほかの魔法で攻撃してみる」

 

「雷撃ですか?そうですね、力自慢の悪魔のようだ。下手に攻撃してカウンターを食らったら目も当てられない。そうしましょう。上手く行けば天罰から切り替えることも考えられるでしょうし」

 

「そういうことだ。よしいくぜ」

 

俺は雷撃を放った。タケミナカタの巨体が大きくゆれる。やはり記紀神話の伝承通り、雷撃は弱点に値するらしい。2回も弱点を突かれたタケミナカタは行動不能になってしまう。俺たちはその隙を狙って、さらにダメージを追加すべく魔法を発動したのだった。

 

 

 

 

 

 

「タケミナカタ、お前の主は何が目的でこんなことを企んでるんだ?なにか聞いてないか?」

 

「この時代を半年も生きて、なぜわからぬのだ。貴様、それでもあの男と同郷なのか。意味もわからぬまま刺客をするなど笑止千万。盲目もここまでくると罪よな」

 

「こっちに転写されてるのも勘違いしてるあいつの記憶なのかよ。なんで俺があいつを殺なきゃならないんだ」

 

「呆れてものも言えぬ......まだ素知らぬ振りをするとは......。いや、知らぬのか?興味が無いのか?なぜあの男が失望したのかわかろうというものよ。なるほどあの男が苛烈なまでに憧れと期待を過去に求めるのは、貴様のような思考しかできぬ人間ばかりだからか。成そうとして成せなかった理由が貴様の誕生だというのに、当のお前がその有様とは......げに恐ろしきはヘブライ神族の謀略か」

 

「はあ?なんでヘブライ神族が出てくるんだよ、タケミナカタ。メシア教となんの関係があるって?」

 

「その程度もわからぬとは無知は罪よなあ!」

 

高笑いしたタケミナカタだったが、構成していたマグネタイトがとうとう尽きたようで、どんどん体が崩れていく。

 

「む......少し喋りすぎたか?だがこの程度の挑発にも応じねば張合いが無かろう。なあ、40代目葛葉ライドウよ」

 

その言葉を最後にタケミナカタは消えうせてしまい、結界もとかれた。

 

14代目が誰かと対峙している。あのダークサマナーだ。

 

「清叔父ちゃんは逃げきれたようだシ、今回は良しとしておくヨ。いずレ、ユーとは会うことになるとは思うけド、今のうちにアイサツだけでもネ。コンゴトモヨロシク。クズノハライドウ、ツチミカドハルアキ」

 

その言葉を残し、男の姿は完全に消え失せてしまった。

 

「ハルアキが追っているダークサマナーか......」

 

「そうみたいですね、驚きました。あれから消息が全くわからなかったのに、まさかこんな形で会うことになることは思いませんでした」

 

「厄介な事件になりそうだ」

 

「伽耶は誘拐、凛は行方不明、叔父の清氏まで怪人に姿を変えて消息不明。事件を追って、帝都の治安を守らなくてはならない」

 

「だが深入りするのはやめておけ」

 

「ゴウト」

 

「どの事件もまだ始まりにすぎないはずだ。必ずなにか続きの事件が起こるはずだ。その時に備えてしっかりと準備をととのえるのだ。つぎこそは頼んだぞ、ライドウ」

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