流星降臨(葛葉ライドウ)   作:アズマケイ

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怪人赤マント現る2

「怪人だぁ!」

 

その声に一番怯え、慌てた様子で後ろに下り、脱兎したのは赤マント本人だった。うろたえるように左右を見て、そのまま壁に向かって逃走、驚異的な脚力で跳躍し、家の屋根や塀を飛び越えていく。黒い閃光とともに目の前の障害物を破壊しながら逃げていく。俺の誘導に倉橋さんのドライブテクニックが唸る。土地勘があるのか俺が先導する前にわかっているそぶりすらある。

 

「!?」

 

いきなり周りの景色がかわった。どうやら怪人赤マントが龍脈の穴に飛び込んだようだ。

 

「どうやら、ここが赤マントの秘密の抜け道みたいだな。俺はここで穴を塞いで一般人が入らないように見張っておこう、先を頼めるか。車では狭すぎる」

 

「わかりました!ありがとうございます!」

 

「気をつけろよ」

 

「はい!」

 

俺は倉橋さんの車から降りるとそのまま龍脈の穴の中に飛び込んだのだった。

 

「ジークフリード、赤マントを追ってくれ」

 

「あいわかった、待ちかねたぞハルアキ!」

 

COMPから召喚されたジークフリードが赤マントを追いかけて建物から建物へと飛び移っておいかけていく。俺もまた急いで追いかけた。

 

赤マントも倉橋さんのように土地勘があるのかもしれない。やけに裏通りや小道に入って俺たちを撹乱しようとしてくるが、あいにく筑土町あたりのマッピングは終わっているのだ。怪人赤マントのマグネタイトはすでに捕捉している。つまり、いくら逃げても無駄なのだ。

 

不気味に静まり返る異界の筑土町でひたすら駆けていく。何度か行き止まりに追い詰めたが赤マントは声にならない呻き声をあげながら逃げてしまう。桜蘭女学院の女学生や教師を襲うと噂される赤マントにしてはあまりにも不似合いな臆病者の行動に疑問を抱きながらも走るしかない。

 

耐え難い奇声を上げる。どうやら錯乱状態にする作用があるようだが、ジークフリードも俺も精神耐性があるので意味をなさない。隙をついて攻撃するあたり、実は頭が回るのかもしれないが相手が悪かったと諦めてもらうほかないだろう。

 

一度でも攻撃があたると怯えて逃げてしまうあたり、やはり臆病者なのかもしれない。幾度となく遭遇するのに逃走してしまう赤マントだが、次第に追い詰めていく。ジークフリードが逃げ道の先に立ち塞がり、ついに異界の隅にまで追い詰めた俺に、臆病な子供が切れたように叫びながら襲い掛かってきた。高い塀からこちらに向かって一気に飛び降りながら黒い光線を発射してくる。俺はその攻撃をかわしながら退魔刀を抜いた。赤マントの攻撃をなんとか受け止める。装甲を貫通し、ダメージが通ったようで人外めいた色をした液体をぶちまける。

 

「ワルクナイッ!ワタシハワルクナイ!!ワルイノハシンプサマ!カミサマ!ウソバカリ!ウソバッカリ!ドウシテタスケテクレナイノ!オスクイニナルナンテウソバカリ!!」

 

「なにを訳のわからぬことを喚いているのだ、貴様。大丈夫か、ハルアキ」

 

後ろから赤マントの脳天を蹴り飛ばしたジークフリードは俺と赤マントの間にわってはいってくれた。

 

「ありがとう、大丈夫だ」

 

「ならよし」

 

絶叫した瞬間に赤マントを覆っている真っ赤な武装が赤マント自身を覆い隠し、見えなくなっていく。武装が強固になるにつれて錯乱状態に陥らせる絶叫があたりに響き渡り、満月でもないのに気が狂ってしまった悪魔たちが俺たち目掛けて襲い掛かってきた。

 

「無駄な抵抗を」

 

逃げようとする赤マントをジークフリードが足止めする。邪魔な悪魔を切り捨ててマグネタイトを回収しながら、俺は指示を飛ばす。

 

「ジークフリード、雄叫びでブーストをかけてくれ!」

 

「任せるがいい」

 

気合いを入れた雄叫びがあたりに木霊する。COMPをみれば攻撃力が急上昇しているのがわかる。

 

「雑魚が目障りだ、一気に片付けるぞハルアキ!」

 

「わかった!」

 

「我が力を受け取るがいい!」

 

ジークフリードから加護を受けた俺は跳躍し、一気に地面に目掛けて退魔刀を振り下ろした。鮮やかな光が足元に広がり、一瞬にしてあたりは大爆発を起こす。

 

「震天大雷!!」

 

断末魔が響き渡る。範囲は広範囲に及ぶ上に物理攻撃を参照にする万能属性の攻撃だ、怪人赤マントがもし弱点がないとしても防ぎようがない。悪魔たちのマグネタイトを余すことなく回収し、俺は怪人赤マント目掛けて距離を詰める。

 

「ジークフリード!」

 

COMPでジークフリードをふたたび召喚する。

 

「我に攻撃を通そうなど100年早い!」

 

俺たちは一斉に赤マントに切りかかったのだった。蛍光色のマグネタイトが四散してはCOMPに吸い込まれていく。どうやらクリティカルが入ったようだ。一気にマグネタイトを失った赤マントは動けなくなってしまう。その隙を逃すまいと俺たちは一気に攻撃をたたきこんだのだった。赤マントが絶叫する。赤い装甲が剥がれ、内側からたくさんのマグネタイトが溢れ出る。それは次第に勢いを増し、決壊する。とうとう耐えきれなくなったようで、マグネタイトが赤マントのガワを破壊、爆発がおきる。

 

「ハルアキ、下がれ!」

 

なにかに気づいたらしいジークフリードが赤マントの首のあたりから飛び出してきたなにかを即座に切り捨てる。どうやらそれが本体だったようで、それが今までになく大きな爆発を起こして消えていく。マグネタイトが大量に手に入った。

 

「あれはいったい?」

 

「わからん、わからんが、なにやら不安を主原料にしたマグネタイトを大量に溜め込んでいたようだ。我はこの味は好かん」

 

マグネタイトは人間などの感情の起伏からくるエネルギーだ。悪魔に言わせれば感情によって味が違うといい、好みがあるらしい。

 

「不安が材料......そういや、赤マントやゾンビーは生前の恨みの原因を襲撃するって話だったな、たしか」

 

「ならば、先程爆発したなにかが赤マントたらちに寄生し、そやつらの不安を増大させるように仕向けているのではないか。人間ならば悪魔に寄生され、大量のマグネタイトを蓄えさせられれば悪魔にも変生しようものよな」

 

「じゃあ、今マグネタイトを全部回収したから......」

 

「変じる前ならまだ間に合うだろうよ」

 

蛍光色のマグネタイトを垂れ流しながらぐったりとしている赤マントをみる。COMPをみるとマグネタイトは尽きる寸前のようだ。

 

「トドメはささぬのか」

 

「正体がわかるならそれに越したことはないしな」

 

「ハルアキがいうなら従おう。なにやら不穏な動きをしたら、ただちに叩き切るからな」

 

「ああ、見張っててくれ」

 

俺は聖なる光を赤マントにあててやった。さっきの八つ当たりにも似た絶叫をきくに、行方不明が多発している桜蘭女学院の女学生か教師のあたりだろうと踏んだのだ。かつて信仰をしたことがあるのなら、絶望しきっていたとしても助かるとわかったらまた光に手を伸ばしてくれるはずだ。

 

赤マントは苦しみ始める。

 

赤マントを覆っている赤い装甲が砕け、蛍光色の光になってCOMPに吸い込まれていく。次第にそれはどんどん広がっていき、正体不明の悪魔と思われるなにかに寄生されていたかわいそうな被害者の姿に戻っていく。

 

「リンさん!?」

 

ぐったりとしている女学生をあわてて抱き止めた俺は治癒の魔法をかけてやることにする。傷は塞がった。COMPをみるが生体反応は悪魔ではなく人間に戻っている。

 

「リンさん、リンさん、大丈夫ですか!?」

 

呼びかける俺に返事はない。脈を取ったり、呼吸を調べたりしてみるが、さいわい気絶しているだけのようだ。

 

「怪人赤マントの正体がリンさんだなんて......」

 

「行方不明者が赤マントかゾンビーになっているのがわかったな、ハルアキ」

 

「そうだな......はやく戻ろう。リンさんを病院に連れていかないと」

 

俺はリンさんを抱き上げた。

 

「ハルアキ......どうやら簡単には行かぬようだぞ」

 

「え?」

 

「みろ、囲まれたようだ。さそいこまれたのは、我々だったようだな」

 

ジークフリードに促されて辺りを見渡すと隊列を組んだ赤い憲兵たちが道路から塀から屋根からこちらを見下ろしていたのだった。

 

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