流星降臨(葛葉ライドウ)   作:アズマケイ

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怪人赤マント現る3

 

「シンニュウシャ、排除スル」

 

無数の赤い憲兵たちに取り囲まれた中、何人かが俺たちの前に進み出てきた。丑込め帰り橋で伽耶さんを攫った赤い憲兵たちに間違いない。相手にするにはかなり数が多い。深入りしすぎただろうか。COMPには近くにいるなんて反応なかったのだが。

 

伽耶さんへの糸口になるかもしれないとはいえ、処刑されるのはごめんだ。俺は戦闘態勢を崩さないまま相対する。

 

丑込め帰り橋で14代目たちと一緒に赤い憲兵と交戦したときを思い出す。あの人間離れした強さは破格だったが、俺もあの時とは装備も仲魔も一新しているのだ。戦えない相手ではないはず。相対した赤い憲兵を推し量った俺はそのまま戦闘に移行した。

 

赤い憲兵は力量もそうだが、言動に自我がみられない。人間離れしている。交戦する前から俺が一撃いれるまで同じ言葉を壊れたラジオみたいに何度も繰り返している。

 

「ハルアキ、こやつらからも不安を原材料にしたマグネタイトの気配がするぞ。赤マントより高濃度だ」

 

「ってことはあれか、侵食度は赤マントから赤い憲兵ってところか」

 

「適合できなければゾンビーになるのだろう」

 

「戻せるか」

 

「ここまでくるとさすがに難しかろうよ。黄泉の国に送ってやるほうが慈悲というものだ」

 

背中合わせになりながら、俺たちは確実に一体ずつ屠っていく。

 

赤い憲兵は操り人形のように自分という意思が感じられない存在にまで堕ちた人間で間違いなさそうだ。

 

最初に出てきた奴らをあらかた片付けると銃火器をもち、やたら鋭い蹴りを飛ばしてくる個体が出てきた。赤い憲兵より動きが洗練されているのは、陸軍の人間を素体にしたからだろうか。軍人は個としての行動より組織として動くことを訓練し、その身体や心に叩き込まれている専門職だ。任務を遂行するために集団としての動きを最優先し、個を抑制する訓練を受けて、軍という組織の中で歯車の一つとして動く存在であることを求められる。

 

今の赤い憲兵はそういう意味ではかなり優秀な軍人だろう。個人の意思や思想を喪失し、軍人としての特殊性に人間として苦悩することはまずないし、精神をやられることはありえない。まるで見えない糸で操られている傀儡の異様にして異質な存在であり、素体が人間であることをのぞけば、だが。

 

そういえば陸軍にもゾンビーが出てるって話だったなと思い出す。軍の人間まで素体になってるってことは、かなり組織的な陰謀がちらつく。海外の勢力が資本だと外交問題になりかねないがまだなんともいえない。

 

「だからマシンガンはダメだって!!」

 

どんどん強くなってくる赤い憲兵たち。物理半減のジークフリードが盾になってくれる。俺たちは多勢に無勢で勝ち目がないと悟り、煙幕で目眩しをして戦線を離脱したのだった。

 

「げ、龍脈の穴が塞がれてる......!」

 

さっきまであいていたはずの穴が巨大な人形みたいなやつに塞がれて通れない。異様な威圧感を感じる。ジークフリードが何度か攻撃してくれるがびくともしないし、ヒビすら入らない。最終的に首をふられてしまった俺は舌打ちをして、なんとか赤い憲兵たちから逃れるべくジークフリードと共に異界の筑土町をかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ギシギシと椅子の背中にもたれかかりながら、くわえたばこでなにやら考え事をしているのかずっと鳴海は天井を見上げている。なにかあるんだろうかと身構えていたが、特になにがあるわけでもなく日が過ぎていくばかりの鳴海探偵事務所にて、ライドウは呼び鈴に応じてドアをあけた。

 

「いつもありがとう、ライドウくん」

 

「ん?まさかその声は......」

 

「なーによ、嫌そうな顔しちゃって。お久しぶり、探偵さん」

 

ライドウの開けたドアから白い靴に白いスカートとジャケット、白いシャツに白い帽子、首からカメラを下げ、革のカバンをななめがけしたモガの若い女記者がたっていた。

 

「ね、ちょっとコーヒーでも飲みながらお話しできないかしら?」

 

どこか得意げな顔で鳴海を見つめている。

 

「あのさぁ、タエちゃん。前も言ったけどうちは変わったの専門の探偵事務所なわけよ。つーかコーヒー飲むのはカフェーで、ここは、た、ん、て、い、しゃ!わかる?た、ん、て、い、しゃ!コーヒー飲むところじゃないんだよ!」

 

がっくりと肩を落としながら、大袈裟に机をたたきつつ、おどけてみせる鳴海に、タエちゃんと呼ばれた女はムッとした様子で唇をとがらせた。

 

「その名前で呼ばないでっていってるでしょ!帝都新報の敏腕記者、朝倉葵鳥だっていってるじゃない!」

 

ビシッと鳴海の目の前に名刺を突きつけてくる。

 

「はいはい、タエちゃんはタエちゃんだろ。で、今度はなんのよう?今ね、こっちは大事な依頼受けて大変なんだから、冷やかしなら帰ってくれる?」

 

「冷やかしですって!?失礼ね!あたしはちょっと変わったの専門の鳴海探偵事務所に情報提供にきたのよ!」

 

「情報提供?タエちゃんが?あー、だめだめ、今ね、うち大忙しなの、悪いんだけど諦めて帰ってくれる?

 

「ふーん、大忙しねえ?いいのかなー?」

 

ちら、ちら、とカバンから見せてくるのはどこをどうみても怪人赤マントだった。ただ写りが悪い上にぶれていて大道寺清から変じた赤マントかどうかはわからない。

 

「ライドウ、いますぐコーヒー準備してあげてくれるか」

 

「わかりました」

 

「あ、私砂糖3つにクリープ一杯でよろしくね、ライドウくん!」

 

「はい」

 

態度がガラッと変わった鳴海をみて、してやったりとばかりにタエは笑った。

 

昨日、別件で銀座の龍宮に取材に来ていたタエは、たまたま帰り道に怪人赤マントの姿を目撃した。あわててシャッターをきったのがこの写真なのだという。

 

「で、お願いなんだけど、ライドウくんの調査に同行させて欲しいなーって。ブレブレの写真しか取れなくてね、これじゃあ記事にならないって編集長から言われちゃってるの。だからよろしくね」

 

「えっ」

 

「あら、いいの、鳴海さん。龍宮のおかみさんに相当ツケを溜め込んでるそうじゃない。あたしを連れて行ってくれたら、依頼料即金で払ってあげてもよくってよ。今日給料日なの」

 

「引き受けましょう!というわけでよろしくな、ライドウ!」

 

満面の笑みで鳴海が手を広げた。

 

『調子のいいやつめ、ライドウにまた丸投げする気か。悪魔がらみの事件だというのに』

 

呆れたようにゴウトは鳴いたのだった。

 

怪人赤マントの写真を撮りたいタエから月が出ているときに出現するから、夜になる前に目撃証言を集めた方がいいとアドバイスをもらいつつ、ライドウはコーヒーをいれて2人のところにもっていく。

 

じりりりりん、とけたたましい電話の音が銀座に行こうとするふたりを足止めしたのはでかける間際だった。

 

「もしもし、鳴海探偵事務所ですが......」

 

鳴海もなにやらでかける用事(みんなまた女遊びかと呆れている)があるそうで留守になるとつげようとしたやさき、目が見開かれた。

 

「ライドウ、電話だ電話。ちょっとこっち」 

 

「自分にですか」

 

「ああ、安倍くんからだ」

 

声をひそめながらいうのでヤタガラスの情報局からだと察したライドウはうなずくなり受話器を受け取った。

 

「もしもし」

 

「もしもし、ライドウかい?よかった、でかける前で。実は頼みたいことがあるんだ」

 

「なんだ」

 

「今朝から赤マントを調査してるハルアキが筑土町の異界から帰ってこないんだ。きみも調べてるの思い出してね、ついでに探してくれないか。なにかあったのかもしれない」

 

「ハルアキが......わかった」

 

「頼んだよ」

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