流星降臨(葛葉ライドウ)   作:アズマケイ

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在りし日の予兆

202X年に発生した大洪水を逃れた人々は、水没した東京に建てられたカテドラルで共同社会を築き、生活していた。やがて、その場所は拡張されて「TOKYOミレニアム」と呼ばれるようになり、メシア教徒で構成される統治組織(通称「センター」)に管理されるようになった。センターの管理の下、直属エリートのテンプルナイト、センターに住むことを認められた一級市民、アームターミナルの所持を許可された二級市民と厳格な階級社会が作り上げられていた。

 

二級市民が一級市民としてみとめられるには、闘技場で優勝するなどして名を挙げるしか方法はない。テンプルナイトになるほど優秀な人材はかなり希少で、その希少なやつが俺の同期にいた。

 

そいつはセンターの外から来ただけあってアウトローな雰囲気があり、テンプルナイトながら制服が似合わないという理由だけで赤いジャケットにジーンズというかなりラフな格好で任務を受けており、上司からあんまり評判はよくなかった。

 

ただ、テンプルナイトに認められるだけの実力はあり、俺よりはるかに高位な悪魔を使役できていた。たぶん、ライドウより強かった。

 

そいつには苗字がなかった。二級市民にはよくある話で大破壊の混乱の最中に大人とはぐれたり、身内が全滅したせいで身元がよくわからなくなってしまった孤児というやつだった。

 

名前も幼児だったころになんとか名乗れた名前であり、本名じゃないかもしれないし、年齢も自称で定かじゃないそうだ。

 

そいつは親をなくしてから二級市民の住むエリアの一角にあるバーのおっさんに拾われ、それからずっと育てられてきた。Noah'sArkというパソコンを持っていて外部と接続できる環境があれば参加できる大会にいって少しでも生活を楽にしてやりたいと思ったらしい。

 

プレイヤーの精神をヴァーチャルの肉体に転送する形式で、一定進むとバージョンアップされ、より奥へ進めること。クリアするとセンター市民になれる。

 

日夜攻略に挑む機体新鋭の噂をかぎつけたのか、バーの常連客が自分はマダム(あらゆる勢力から中立を保つ、かつ緩和剤的な立地にあるエリアの主だ)に雇われている情報屋であると明かし「Noah'sArk内で死んだ人間が現実世界でも死ぬ事故が多発している」「センターには救世主の見極め以外に目的があるのではないか?」と話をしてきたらしい。マスターにNoah'sArkをやめろと言われたものの、育ての親たるマスターにそいつは初めて首を横に振った。意思は固かった。

 

情報屋に「コンピューターウイルスを防ぐパーツ」をつけてもらい、バージョンアップしていった。

 

Noah'sArkを攻略した人間はもう数人いて、センターは市民権を与えることを公表したが、実は例をもれず行方知れずになっていた。Noah'sArkプレイ中に死んだ人間はセンターにスパイを送ろうとした、センターに反抗する組織に属する人間だったとわかったからだ。

 

「テロ組織が紛れ込んでたのか」

 

「カオス教団かもしれないし、ネオメシア教かもしれない。そこまではわからないな」

 

バーに戻るとテレビで例の常連が殺害されたと報道されていた。 

 

「えっ」

 

驚く俺にそいつは静かにうなずいた。

 

「僕が探してるやつは常連を殺したやつなんだ。未だに誰の仕業かわからない。もしセンターなら大事だ、不可侵協定を破ったことになる。いつか中立地帯ごと消されるかもしれない」

 

にわかには信じられなかったが、同期の話が嘘だとはどうしても思えなかった。

 

そして、同期はNoah'sarkの開発者であるミタニ博士からB180Fの階層まで到達できる人間ということは救世主の可能性が非常に高い人間と思われる。通常の人間ではそう易々とこの階層に来れるものではないということだ。そして、ここまで来た人間は君が初めてなのだと絶賛された。

 

本当は、Noah'sarkを攻略した人間はまだいない。以前、攻略した人間が現れたという情報を流したのは本物の救世主を早く探し出すために、センターの市民権は残り一人と言って情報工作をしたため。開発したNoah'sarkは、ただのネットワークゲームではなく本物の悪魔と闘う戦闘能力が高い人間ほどこのゲームの中で強く成長するようにプログラムしてある。従って、同期は訓練を受ければ本物の悪魔と対等に闘える潜在能力を秘めた人間なのだという。

 

 

なぜ悪魔と闘う能力が高い人間を必要としているか質問したところ、これからすべての災いから解放される千年王国の建造が始まるが、建造には大きな問題がある。何者の支配もない、混沌の世界を築こうとしている魔界の王ルシファーが平和な国である千年王国の建造を阻止してくる。だから争いの無い平和な世界を築くには正義のため、人類のためにもルシファーを消す必要がある。

 

そして、来るべき闘いに備えて少しでも力になってくれそうな人間が欲しかったという。我々と共に、真の平和な世界を築き上げよう!協力してくれるだろうと問われた同期は、真意はどうあれ手をとった。

 

そして、センターの市民権を獲得し、バーのマスターとともに移住することができた。ようやく平和で争いのないセンターで、バーのマスターは安定した暮らしを過ごしており、同期はテンプルナイトになったのだという。

 

「来るべき闘い......」

 

「その様子だとハルアキは知らなかったんだな」

 

「俺は優等生じゃないからなあ......ライドウなら知ってるかもしれないけど」

 

「なるほど、わかった。話を聞いてくれてありがとう。僕はあの人を殺したのはセンターの仕業だったのか未だに聞くことも出来ないでいる。力をつけながらセンターの動きを調査するしかないんだ」

 

「まあ、まだセンターの仕業だって決まったわけじゃないし、結論をだすのははやいんじゃないかい?」

 

「そうだね、僕はまだセンターに来たばかりだし、慎重に動くことにするよ」

 

「是非そうしてくれ。同期が処罰されるのはいやだよ、俺」

 

同期は笑った。

 

あのとき俺はセンターの仕業にはどうしても思えなかったんだけど、今思うとあながち同期の主張も間違ってないんじゃないかと思えてならないでいる。

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