流星降臨(葛葉ライドウ)   作:アズマケイ

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デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 死人驛使
ミルクホール新世界にて


「マダンシン?」

 

聞き慣れない言葉だった。問い返すと安倍さんは教えてくれた。

 

「悪魔の魔に断絶の断、地震の震で、魔断震。世間では大地震の予兆だってささやかれてるくらい、最近、多いんだ小規模な地震が。明治政府が成立してから、明治時代に新たな結界をはったとはいえ、江戸時代の結界を徹底的に破壊して、将門公の結界まで手をつけたからね。そのうち本格的な歪みがでるだろうとは思ってるんだけど、まだ持ち堪えている方だ。まだ小さな地震ということで誤魔化せてる。ただ、いつまで持つかはわからない」

 

安倍さんはそういって帝都の地図をみせてくれた。わかりやすいように鉛筆でかつてこの街に張り巡らされていた結界、明治政府が作り上げた結界、そして山手線などでズタズタにされていった将門公の結界について書き足してある。わざわざ準備してくれていたらしい。

 

「魔断震が起きているのは、このあたり」

 

丸がつけられていく。

 

「表鬼門と裏鬼門......あと破壊された昔の結界あたり?」

 

「うん、このあたりが特にひどくてね、時空の亀裂が入って異界とこの世界が一時的に繋がってしまっている。そこから悪魔が湧き出しているんだ。悪魔に関する怪奇事件が続発してる」

 

「塞がないとダメですよね、これ」

 

「うん......その通りなんだけど、数が多すぎるんだ。あっちをふさいだら、こっちで魔断震が起きる、という状況もあいまって人手が追いつかない」

 

「あ、もしかして、だから帝都は名田庄村よりマグネタイトが多いんですか」

 

「うん、その通りだよ。おかげで名田庄村より強い悪魔が異界から湧き出してきて、ヤタガラスは頭をかかえているんだ。ヤタガラスはあくまでもこの地に住む人たちを守るためにいる。今、この地の人を守るのは明治政府だ。だから、ヤタガラスは明治政府の意向に反くことはできない。明治政府主導で帝都はつくられたから、もうこの状況は自業自得ながら仕方ないともいえるね。......先先代のうちの当主は真っ当な主張をしたせいで今の僕らの状況になっているわけなんだけど......うん、世知辛いよ」

 

「ああ、なるほど......そういう事情が」

 

「でも、おかげで今の帝都は、新入りのフリーのデビルサマナーも仕事がまわってくる土壌ができあがってるともいえるね。ハルアキのことを考えたら、今回ばかりは感謝かな。ああ、そうだ。父の名刺と僕の名刺、預けておくね。発言権がないとはいえ、僕もヤタガラスの末席にいるし、父は子爵だが華族だ。貴族議員の安倍の名前を出したら、悪いようにはされないと思うよ」

 

はい、どうぞと地図と名刺を渡される。あとでCOMPに登録しておこう、重要な情報は全部アナログだから二度手間だが仕方ない。

 

「さあ、ついた。ここがフリーのデビルサマナーの社交場、そして仕事の斡旋をしてくれるところだよ」

 

安倍さんが銀座の北の外れにある隠れ家のように佇むミルクホールの前で足を止めた。新世界と看板がかかっている。見た目はモダンな作りでデートに最適なミルクホールだからか、若い男女が目立つ。

 

「こんにちは、安倍星命さん。そちらの方は......?」

 

「今日からうちの預かりになった、名田庄村からでてきたばかりのデビルサマナーなんです。今、帝都を案内中なんですけど、今度からお世話になると思ってあいさつにきました」

 

「はじめまして、土御門ハルアキと申します」

 

「そうですか、それはご丁寧に。私はここのマスターをしているんだ。よろしく」

 

マスターは闇の仕事人御用達のミルクホール、新世界について教えてくれた。ここには国内外のデビルサマナーが集うため、国内最大級の情報の量と質を誇る。ここにくるときは自分の身分を明かすのはご法度であり、そのかわりにあらゆる情報交換が許されている。マスターはその不文律が守られるように見張るのが、ミルクホールから一歩出たならそのかぎりではないという。

 

「きみはどのような任務がお望みかな?」

 

「俺は、なるべくたくさんの悪魔を倒す依頼を回して欲しいです」

 

「おや、陰陽師なのにですか......ふむ、デビルバスター志望されているのですね」

 

「はい」

 

「そうですね......今回の依頼の達成度であなたに見合った依頼を選ばせていただきます。よろしいでしょうか」

 

「あ、はい、わかりました。よろしくお願いします」

 

「では、さっそく」

 

俺はさっそく手帳と鉛筆を用意した。COMPは目立っていけない。

 

ミルクホールのマスターが用意してくれたのは、シンプルに悪魔の討伐依頼だった。

 

「あれ、依頼はマスターからなの?」

 

「はい、うちのカクテルは原田商会から仕入れているのですが、その積荷が狙われているようなんです。原田商会はデビルサマナーのみなさん御用達のアイテムも数多く扱っていらっしゃるのですが、流通経路から爪弾きにされているダークサマナーが放った悪魔による襲撃があとをたたないようなのです。うちのカクテルは悪魔の忠誠度を操作できる貴重なもの、出禁にされたダークサマナーの仕業です」

 

マスターは写真を何枚か出してきた。片方が写りが悪く、よく見えないが神父の服を着ている。背丈が高く、恰幅もいいため外国人のようだ。もう1人は顔に影がかかっていてよく見えないが、こちらもまた神父の服を着ているのがわかる。こちらは背丈は普通のサイズだが手足が太いことから鍛えている可能性があるとのこと。

 

「原田商会はエルフマンという神父と原田という男性が経営しています。一ふたりに話を聞いてみてください。ちなみに2人とも裏社会と繋がりがある人ではありませんから、私たちの話が通じにくいと思いますが......」

 

「安倍さんのところは、原田商会と取引はないんですか?」

 

「うーん、うちと直接取引はしたことないけど、原田商会と取引がある金王屋はヤタガラスが贔屓にしている店だよ」

 

「なにか物品頼んだことは?」

 

「ああ、うん。それはある。ヤタガラスの人間でお世話になったことない人はいないと思うよ」

 

「なるほど......うまくいけばアイテム融通してもらえるかもしれませんね。わかりました、お引き受けします」

 

マスターのサングラスがきらりとひかった。

 

「ひとつ、ご忠告を......。エルフマンは敬虔なキリスト教徒です。そのあたりをよく考えていってみてください」

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