この時って柱五人しかいなかったんだよね……。こっから四人増えるって相当ですな。
襖の奥から声がかけられる。
その一声を聞いただけで、俺は御館様と呼ばれる人物がかなりのカリスマ力を持っていることを感じた。
なるほど、慈愛がありながらも威厳に満ちている声だ。彼が、鬼殺隊にとって無くてはならない人物だということがよくわかる。
現れたのは一人の青年だ。顔には何やら痣のようなものが浮き出ている。見たところ体が弱そうだが、それで鬼殺隊の最高管理者をやっていけるのか?
そう思っていると、カナエから、小さい声で、
「アノスさん、周りの皆のようにしてもらえませんか?」
周りを見ると柱全員が御館様に向かって跪いている。例外はなく、皆、このひ弱な青年に従っているのだ。
まあ、それがしきたりなら仕方がないか。
俺はほかの柱がするように御館様に向かって跪く。
「さて、会議の前に……カナエ、彼のことを私たちに紹介してくれるかな?」
それは鎹鴉が俺たちに柱合会議のことを知らせた直後のこと。
「アノスさん……。すみませんが、先ほどの約束を守れそうにはありません……」
カナエが俺に申し訳なさそうに言う。
「どういうことだ?」
俺はカナエに問う。どうしたのだ?何か約束を守れないようなことがあるのか?
「実は……」
俺はカナエから柱合会議のこと、御館様のことを聞いた。
「御館様は嘘を見抜くのが得意なお方です。もしも柱の前で嘘をついていることが分かったなら、鬼殺隊全員から反感を買ってもおかしくありません。最悪、入隊試験を受けられないかも……」
なるほどな。御館様というのが何者かはわからぬが、相当のカリスマを持っているようだ。
「つまり、俺が今カナエたちに言ったことをその御館様とやらの前でも話せ、と」
カナエが頷いた。
「はい。御館様が嘘をついていないと言えばみな信じます。たとえあなたが異なる世界の出身だとしても」
まあ、仕方がないことなのかもしれぬな。秘密などいつかばれるものだ。
「では、話すとするか」
「上弦の弐を素手で撃破したり、それになんだぁ!?別世界!?神!?派手過ぎんだろオイッ!!!!!」
耀哉からの紹介を受け、俺は自らがここに至るまでの経緯を柱の面々へと説明した。
その反応は、最初のカナエと同様―――困惑と驚愕の二言に尽きていた。
こいつは何を言っているんだと、頭がおかしいんじゃないかと、五名全員が表情で露わにした程だ。
しかしながら、カナエの説明と、
「彼は嘘を言っていないよ。おそらくすべてが真実だ」
耀哉の保証があってか、俺の話が真実であると理解してもらえた。
音柱である宇随天元は俺に好意的な反応をしてくれた。
「でも結局逃がしたんだろ?それじゃダメじゃねえかァ」
風柱の不死川実弥は幾分か俺に反発したような態度だな。
まあ、彼からしてみれば俺は、上弦の弐を屠るチャンスを逃した者のような扱いなのかもしれぬ。
まあ、それは俺も不甲斐無いと思っているしな。
「違う世界から迷い込んでただ一人……。なんと可哀そうな……」
岩柱の悲鳴嶼行冥からはなぜか哀れまれていた。
まあ、転移して初日に住むところが見つかったというのはとてつもない幸運だったと俺は思っている。
「ふん。だからどうだというのだ」
燃えるような髪型の男、炎柱の煉獄槇寿郎はあまり俺に興味を持っていないようだった。
それに加え、ごくわずかではあるが、酒の匂いがする。飲んでいたのか?
他にも、上弦の壱と弐の名前や外見、俺が体験した血鬼術なども事細かに説明した。
「アノスさん、あなたがここではない世界の出身だということは理解しました」
突然、耀哉が俺に話しかけてきた。ほかの柱と同様に、呼び捨てで読んでもらっても構わないのだがな。
耀哉が俺の目を見据える。そして、おもむろに問いかけた。
「そして、あなたは上弦の壱と弐と交戦したと言いました。正直に答えてください。あなたから見て、彼らは強かったのですか?」
魔王学院の大正コソコソ噂話
アノス様は何物にも縛られないってイメージがあるけど、こういう時はちゃんとするぞ!
ちゃんと一般人の感覚も持ってるんだ!