理滅の刃   作:瓢さん。

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カナエさん視点です。

最近これいるのかどうか疑問に思ってきた……。


入隊許可

 私たちは全員黙っていた。彼の凄惨な人生に、口を開くことが、できなかった。

 

 すべて理解したからだ。アノスさんが魔王と呼ばれる所以も、力の理由も、あの言葉の意味も。

 

 彼も、私たちと同じ、自分の無力さに苛まれながらも理不尽な世界を必死に生きていた一人なのだ。

 

 そこまで思い至った時、私はとんでもない罪悪感に襲われた。

 

 私は、なんてことをアノスさんに言ってしまったのだろう。どうしてそんなに強い?この世界の存在ではない?

 

 馬鹿か私は。いや、大馬鹿だ。超大馬鹿だ。もし時間を戻せるのなら、あの時の自分に5時間ぐらい説教したい。

 

 不死川さんも、柱のみんなが罪悪感を顔に浮かべていた。

 

 

「転生したあと、俺は、俺が守る民に約束をした。この世界に不自由、悪意、悲劇があるならば、己の命を賭して、それを滅ぼすと。それは、この世界でも例外ではない」

 

 

 アノスさんは、再び話し始めた。それは、彼が彼の国の民との誓いなのだろう。

 

 

「悪意ある鬼によって夜は自由に動けず、たくさんの人が食われ悲劇は止まらない。ならば俺はこの世界でも己の命を賭して、それらを滅ぼす。そのために俺はこの世界に来たのかもしれぬ」

 

 

 アノスさんは、覚悟をした表情で宣言した。

 

 

「産屋敷耀哉。俺は鬼殺隊に入りたい。この世界から鬼を滅ぼし、世界の平和を手に入れるために。そして、人が本当に笑うことのできる世界を作るために」

 

 

 アノスさんの決意を聞いた時、私はあることに気づいた。

 

 あの御館様の質問は、彼を私たちに本当の意味で認めさせるために、アノスさんに聞いたのではないか?と。

 

 

「アノスさん……。あなたの過去と覚悟、しかと聞き取りました。あなたの誇りは本物です。ならば私も、誇りをもって答えなければなりません」

 

 

 御館様の口調が、先ほどと少し変わっていた。尊敬するような、そんな口調。

 

 御館様も、アノスさんを認めたのだろう。同じ頭として。同じ人を導く者として。

 

 

「あなたを―――アノス・ヴォルディゴードを、鬼殺隊に入ることを許可します。最終選別は必要ありません。上弦の弐を圧倒したことでその実力は証明されたと見て取るべきでしょう」

 

 

 最終試験を受けないで鬼殺隊に入るなんてことは、異例中の異例だ。柱のみんなも驚いている。

 

 そんな柱に対して、御館様は、

 

 

「ごめんね。このことはここにいる者たちだけの秘密にしておいてくれるかな?」

 

 

 といたずらっ子のような顔を私たちに見せた。

 

 

「ついでに、彼の過去云々もね」

 

 

 苦笑いをするほかない。御館様からこういうお願いをされるのは一度や二度ではなかったから。

 

 まあ今回のは今までの中でも飛び抜けているんだけれども。

 

 

「無論……。アノス殿の話を聞いた今、その提案を断る必要などどこにもありませぬ……」

 

 

 悲鳴嶼さんが私たち柱を代表して答える。

 

 不死川さんもその発言に異論を上げないことから、渋々ながら認めたのだろう。

 

 

「ようこそアノスさん、鬼殺隊へ。あなたのこれからのご活躍、期待しています」

 

 

 

 御館様は、立ち上がってアノスさんを歓迎した。柱からも、異論を認める者はいなかった。

 

 今ここに、異世界の魔王アノス・ヴォルディゴードの鬼殺隊入隊が決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、彼の階級をどうするか、議論が繰り広げられた。

 

 一番下の癸にしたところで、彼はすぐに上がってしまう。

 

 それ程の実力を彼は持っているのだから。

 

 しかし柱にすると、ほかの隊員から疑念が上がる。彼を探るものが現れるかもしれない。

 

 それで彼の秘密がばれたら大変なことになる。

 

 鬼殺隊は政府非公認の組織だけど、政府と繋がっていないのかと言われたら、否と答えるしかない。

 

 彼の存在を秘密にしていたことで政府からの信頼がガタ落ちし、援助を受けられなくなるかもしれない。

 

 いや、それだけでは済まされない。彼の話を聞いた人間が彼の力を利用したりしようとするかもしれない。

 

 そうなってしまったら最後、この国が滅んでしまう可能性だって十分にある。

 

 議論に議論を重ねた結果、御館様が打った手は、透明人間だった。

 

 アノスさんを、正式な鬼殺隊員としては認めるが、隊員名簿といった正式な記録には載せないということ。ほかの隊員にも彼のことは知らせないらしい。

 

 階級も柱並みにするが、柱の席にはつけない。柱合会議には参加してもらうけど。

 

 

「人間にはいろいろなしがらみがあるのは理解している。その条件でいいなら、受け入れよう」

 

 

 アノスさんもその条件でいいと、納得してくれた。

 

 その後の柱合会議は、アノスさんを正式な一員として加え、執り行われた。

 

 鬼達の動向についての報告、情報の共有。アノスさんを含めた事による、各自の役割分担・持ち回しの再編成。

 

 今後の隊の運営について、様々な意見が取り交わされていった。

 

 決めるべき事は多くあるけれど、アノスさんの呑み込みが早く柔軟な事も手伝って、会議は円滑に進んでいった。

 

 アノスさんの担当地域は、彼がまだ隊服と日輪刀を支給されていないので、それまではほかの柱が、支給できたあとは彼が勤めてくれることに決まりました。

 

 話し合うことをすべて話し終え、そろそろ解散だという空気になった時に「ちょっといいか」とアノスさんが手を上げた。なんなんでしょうか。

 

 そんな疑問は、アノスさんの言葉を聞いた瞬間、頭から吹っ飛ぶこととなった。

 

 

「この世界に来て気づいたことが一つある。それは、お前たちが俺と同じく魔力を持っていることだ」

 

 

 

 




なぜこの世界の人が魔力を持っているのか。

それは次の話で。
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