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カナエさん視点なのですよー!
私たちが魔力を持っている?どういうことなのだろうか。
アノスさんの世界では、「魔力」という、魔法を使うために必要な源が必要となる。
わかりやすく言うと、鬼が血鬼術を使うときに消費するエネルギーのようなものだ。
彼の世界では、ほぼ全ての生物が持っている。そして、その中には人間も入っている。
ほかの柱たちもそんなことを思っているのだろう。
「それは……どういう……?」
悲鳴嶼さんがアノスさんに問う。
アノスさんは、これはあくまでも俺の推察なのだが、と前置きをして説明をし始めた。
アノスさん曰く、もともとこの世界には魔力というものはなかったらしい。
しかし、その世界に魔力を持った異物―――アノスさんが現れた。それにより、この世界にも魔力というものが存在するようになったという。
解き放たれた魔力は、空気中を漂っている。しかし、そこに存在するだけでは魔力を取り込むことはできない。
ではなぜ私たちが魔力を持っているのか。それは、全集中の呼吸によるものだという。
全集中の呼吸は、普通とは違う特別な呼吸法。遥か昔に考案された技術であり、未だに解明されていないことも多い。
なぜ、多数の型に分けられるのか、そもそも誰が考案したのか。あまりに謎が多すぎる。
確かに、全集中の呼吸は特別。ゆえに、偶然ではあるが、魔力を取り込めるような呼吸になっていたのかもしれない。
「貴様たちは全集中の呼吸とやらを四六時中行っているのだろう。ここに来てから、柱たちの呼吸法はカナエがいつも行なっている呼吸と一致していたからな。嫌でも分かる」
確かに、全集中の呼吸を常時行う全集中の呼吸”常中”は、柱への第一歩。
並みの鬼殺隊員ならば至難であるそれも、柱ならば当然できる。
妹であるしのぶも柱ではないが、常中を行えるほどの実力を持っている。
並みの人以上の観察眼を持つアノスさんなら、容易に察知できたことだろう。
この世界に放出された魔力は 日本全土を覆っているらしい。つまり、私たちは全集中の呼吸をしていれば魔力をさらに取り込むことができる。
「魔力を持っていればこれまで以上に鬼と戦える。魔力を目に集中すると相手の動きがよく見え、体にいきわたらせると身体能力の向上や血鬼術の威力を緩和することもできる」
アノスさんの説明を聞いて、私はある一つの希望を抱いた。
もしも、本当に魔力で身体能力が上がるのならば、しのぶも普通に鬼の首を斬ることができるかもしれない、ということ。
長年筋力不足に悩まされていた彼女だけど、魔力を自由自在に操るなら……と、思い浮かべざるを得なかった。
「じゃあ、俺たちも派手な魔法とか使えたりするのか!?鬼を一気にドカーンと倒せる魔法とか、瀕死でも派手に直せたりする魔法とか!?」
似たような妄想をしたのか、宇随さんが目を輝かせながらアノスさんに詰め寄る。
気持ちはわかるけども、宇随さん、少し子供っぽくはないでしょうか……?
「使えるようにはなるが、まあ、今はほんの少ししか溜まっていない。全集中の呼吸を常時していれば、次第に魔力は溜まっていく。そんなにいきなりは強くなれないことは、お前も重々承知しているだろう」
「グッ……」
宇随さんが痛いところを突かれたように苦い顔をする。
「しかも、魔力が溜まったからといって、それをすぐに実践に応用することはできない。しかも、日輪刀による戦闘方法を捨てて魔法主体の戦いに映るなど論外だ。生兵法は即刻死につながるぞ」
「わ、分かってるに決まってんだろ。ちょっと聞いただけだっての」
アノスさんからの追い打ちを受け、しどろもどろになりながらも宇随さんが言い訳をする。
絶対嘘ですよね、宇随さん……。
「宇随……?」
「わ、分かってるっての、悲鳴嶼さん!」
加えて、悲鳴嶼さんからも少しドスの効いた問いを受け、さらに宇随さんの顔色が悪くなっていった。
しかし、これで鬼殺隊の戦力が向上するのは言うまでもないことだ。
「しかし、魔力云々はアノスが異世界の出身だってわかってるやつしかできねえんじゃねえかァ?実際俺たちは魔力を持ってるって自覚はねぇぞ」
不死川さんがアノスさんに聞く。確かに、魔力はもともとこの世界になかったもの。いきなり言われても納得はしないだろう。
「皆の魔力のたまり具合を見るからに、数ヶ月もすれば己の内に存在する魔力の存在に気がつくだろう。とりあえず、今は魔力云々はここだけの話にする。時がきたら俺が直々に魔力の使い方を教える」
しかし、これで鬼殺隊に常中をもっと浸透させる必要があるべきだという結論に達することになった。育手たちに、常中の習得をもっと奨励することになった。
これで魔力云々の話はいったん終了。最後に、気になることがあったので、私は御館様に聞いた。
「これから柱になる人にはアノスさんのことや魔力のことは伝えるんでしょうか?」
アノスさんと同じ立場の柱なら、アノスさんのことを言わなければならなくなるだろう。そこはどうするのかな、と思った。
「説明することになるだろうね。特に魔力のこと関連は、聞くからに全集中の呼吸をしていると己の異変に気付かざるを得なくなるから、喋らないわけには行かないね」
「そうなると、口止めもしなくちゃいけねぇなァ。万が一漏れた場合とかどうすりゃいいんだァ?」
「ふむ。一応、口止めをする魔法はあるのだがな」
「なんか派手にやばそうな魔法だな……。その魔法を使わなくてすむことを願うぜ」
最後に、柱が各々の状況を報告して、柱合会議は終わった。ちなみに、アノスさんは蝶屋敷に継続して滞在することになった。
屋敷をどこに建設するとか、彼の場合は複雑になっているので、御館様が今、考えているそうだ。
そして今、アノスさんと帰路に着いている。
「俺の入隊が無事に決まって、良かったな」
「ええ……」
「どうした。返事が上の空だぞ」
「!い、いいえ。何でもありません」
「ふむ。そうならばよいが……」
アノスさんが私のことを心配そうに見てくるが、私は目を合わせることができなかった。
――今、ハッキリと分かりました……。あなたはこの世界の存在ではない!
さっき、正気になって考えると、私はとんでもない暴言を吐いていた。
私の命の恩人に、彼の存在を否定するような暴言を吐いてしまった。
その暴言を吐いた相手と目を合わせることなんて、出来るはずもない。
いや、そもそもこうやって一緒に帰るべきではないこともわかっている。
私はこうなっても無意識に彼に甘えてしまっているのだ。
そんなことが、許されていいはずがない。
彼は許しているようだが、私が私自身を許さない。
地平線に太陽が沈み、空が闇に染まる。いつもなら、星空が見える夜空も、今は黒き闇しか視界に映らない。
夜空を見る私の心は、夜の闇よりも、暗く、黒かった。