理滅の刃   作:瓢さん。

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そして久しぶりのアノス様視点!


黒き刀

 翌日。

 

 俺とカナエ、しのぶは訓練場にいた。俺が全集中の呼吸を習得するためだ。

 

 「別に全集中の呼吸覚えなくてもいいんじゃないですか」としのぶは言っていたがせっかくなのだ。全集中の呼吸を覚えてみたい。

 

 

「まあいいんじゃないの~。アノスも覚えてみたいんでしょ」

 

 

 どうやらカナエには俺の心が読まれていたようだ。彼女にミーシャ並みの目があるとは思えんが、なぜ読まれたのだろうか。

 

 

「で、アノス、全集中の呼吸を覚えるためには……」

 

 

 とカナエが俺に説明してくれる。昨日と比べて少し距離が近くなったようだ。

 

 これから同じ隊士として鬼を狩る、もとい救うのだ。お互いの距離が近くなれば、それだけ鬼を救える。いい傾向だ。

 

 

「というのなんだけど、アノス、出来るわよね?」

 

 

「ああ。十分だ。今から始めるとしよう」

 

 

 俺は全集中の呼吸を習得に向け、特訓を始めた――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のだが、わずか10分で全集中の呼吸を習得してしまった。意外だな。もう少しかかると思っていたのだが。

 

 

「姉さん姉さん、あの人もう習得しましたよ!?やっぱりいらなかったんじゃないですかコレ?」

 

 

「しのぶ、いい?こういう時はおいしいもののことでも考えるのよ」

 

 

 しのぶは驚き、カナエはこういう光景はもう見慣れっこといった風に無我の境地に至っていた。

 

 

「おそらく、柱合会議で皆が全集中の呼吸をしていたから、それが頭に残っていたのだろう。そうでなければ、あと5分ぐらいはかかっていたはずだ」

 

 

「それでもたった5分なんですね……」

 

 

 しのぶは呆れている。カナエは相変わらず、無だ。

 

 これを常時続けるのが全集中の呼吸・常中というわけか。試しに常中を行ってみる。出来た。

 

 ふむ。身体能力の向上をわずかながら感じる。これを行っていけば、この状態の俺でもなかなか戦えるようになるだろう。

 

 

「常中も出来た。これで次の段階に行けるのだろう?」

 

 

 カナエは無の状態から脱出した。

 

 

「ええ。まあまさかこんな早く常中まで習得するとは思ってなかったけど……」

 

 

 そう言いながらカナエは一本の刀を取り出した。おそらく、これが―――

 

 

「これが、日輪刀。この世界に存在する武器の中で唯一、鬼を滅ぼせるもの」

 

 

 

 やはりか。しかし、どうしてこの武器だけが鬼を滅ぼせるものなのか?

 

 その疑問は、続くカナエの言葉によって解消された。

 

 

「日輪刀の原料は太陽に一番近く、一年中陽の射すという「陽光山」という山で採れる猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石という日光を吸収した特殊な鉄。しかし、これでも鬼の頸を斬らなければ鬼は倒せない」

 

 

 その山で取れる鉄は、おそらく特殊な鉄なのだろう。そうでなければ、日光に当てただけで鬼を殺せるはずがあろうはずもない。

 

 カナエが、日輪刀を俺に差し出してきた。

 

 

「抜いてみて」

 

 

 言われるがまま、日輪刀を抜く。白銀に染まった刀身が姿を見せた。

 

 瞬間。日輪刀の色が変わった。竜の鱗を思わせる白銀から、闇夜を思わせるような、黒き、黒き漆黒へと。

 

 魔法がない世界での、この不可解な現象に、俺は少しばかり驚いた。

 

 

「これはどういうことだ?」

 

 

 俺はカナエに問う。

 

 

「日輪刀は、別名『色変わりの刀』と呼ばれ、持ち主によって刃の色が変わり、持ち主の適性を示すの。水の呼吸なら青、炎の呼吸なら赤、花の呼吸なら桜色といったように。だけど……」

 

 

 ここでカナエは口を噤んだ。

 

 なるほど。そんな特性が。その色を変え、鬼を滅ぼす。それが日輪刀の特徴なのだろう。

 

 俺の色は黒だった。黒だと何か不都合があるのか?

 

 カナエは口を開く。

 

 

「黒の日輪刀は何の呼吸に適性があるか、わからないとされているの……。しかも、『黒刀の剣士は出世できない』とも……」

 

 

 なるほどな。前例があるにはあるが、その者たちもこれが何の呼吸かわからないというわけか。

 

 しかし、出世できないというのは言い過ぎではないのか?黒刀だとしても、実力があれば出世できるのであろう。

 

 何か別の要因が働いているのかもしれぬ。例えば、「黒刀の剣士を殺すことに執着した鬼」などというのがいて、その鬼が黒刀の剣士を殺しまくったから出世できないなど、だ。

 

 まああり得ない話ではあるがな。なぜそんなことをしなければならない。

 

 

「だけど姉さん、アノスさんの黒刀って、ほかの人の黒刀とちょっと違わない?」

 

 

 不意に、しのぶが口を開いた。その内容にカナエが「どういうこと?」と聞く。

 

 

「前に、黒刀の隊士を見たことがあったんだけど、その人の黒って光を反射するようなきらめく黒だったの。だけど、アノスさんのはほら」

 

 

 俺の持っている黒に染まった日輪刀を指さす。

 

 

「アノスさんの刀の黒は、光を反射しない、なんかその空間だけが切り取られたような……そんな黒」

 

 

 つまり、俺の適性は黒刀の剣士の適性とは違うということなのか?

 

 しかし、それでも俺の適性が分からないのなら気休めにもならぬな。

 

 

「どうする?とりあえず別の呼吸を覚える?花の呼吸とかもいいわよ!」

 

 

 カナエが提案する。そうだな。とりあえず俺の適性を探すのは後にして、とりあえず何らかの呼吸を覚えるとするか。

 

 しかし、何を覚えるか。水、炎、岩、風、音、花。俺が知っているのはそのくらいだが、ほかにもあるのだろう。

 

 カナエは自らも使っている花の呼吸を強く推してくる。それも、結構強めに。目をこれでもかと輝かせながら。

 

 しかし、俺としてはどれか一つだけ覚えるよりは――――

 

 

 

 

 

「そうだな。とりあえず今存在する呼吸、そのすべてを覚えるとしよう」

 

 

 

 

 




魔王学院の大正コソコソ噂話

アノス様は日本食を食べるのはもちろん初めてだ!

元の世界に戻れたら日本文化を広めようと思っているぞ!
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