「どこだ、ここは?」
目覚めた俺の一言目はそれだった。
俺は昨日の記憶をたどってみる。昨日は久しぶりの雑務でさすがの俺もくたびれた。
それでも何とか昨日中にすべての仕事を終わらせ、家に帰って眠ったのだが、起きてみれば全く知らぬ場所で目が覚めた。それに加えて、着替えた覚えもないが、俺の服装は魔王学院の制服になっていた。疑問に思うのも無理はなかろう。
周りを見渡す。どうやら町のようだ。しかし、街並みが俺の見慣れたものとは全く違う。このようなところは俺の世界にはない。
建物の造りや道の補整の程度、そのほかのいろいろな要素から、俺は自分が元の世界とは全く違う世界にいるのだと結論付けた。
まさか、世界というものが複数あるとはな。異世界というものが存在するということは、今の今まで俺も知らなかった。
――たとえば、こうは思わないかい? 僕たちが理の外にいるのは、この世界に外がある証明だって。
まさか、あの男の言葉が当たっていたとはな。業腹なことだが、受け入れるしかないようだ。
しかし、これはいったい誰の仕業によるものだ?世界間での転移など、大魔法に類ずるものなのは間違いない。何せ世界を移動するのだからな。
魔法陣も複雑、使う魔力も大量に必要だ。そこらのものにできていい芸当ではない。
それこそ、神にでもならない限り、な。
しかし、彼らが俺をこの世界に転移するはずがない。元凶は取り除いた。する理由がない。
つまり、現状確認できていることは、何もないということか。
そこまで考えを巡らせたところで、自分の体のある異変に気付く。
「俺の体が……人間になっている?」
そう、俺の体が魔族ではなくなっていた。人間になっていた。どういうことだ?
試しに<
ふむ。<
ならば、考えられるのは――
「
そう結論を出すのに時間はかからなかった。
つまり、俺の世界では普通に使っている<
運よく滅ばなかったとしても、世界に重大な損傷を残すのは間違いないだろう。
それは、治癒魔法とて例外ではない。使えば最後、過回復で全身が腐りグズグズになってしまうだろう。
つまり、俺がこの世界で生きていくためには、この世界で魔法を使ってはならない。
この世界について何も知らない状況で、魔法を使えないのはなかなかに窮屈だ。
治癒も蘇生も出来ないのは、不便だしな。
時間があるならば、この世界でも魔法が使えるようになるがな。
幸い人間になっても身体能力は変わらなかった。
それだけでも十分だ。
すると、南の方角でうっすら、剣戟のような音が聞こえてきた。
俺は音が聞こえた方向に向かって駆けだす。すぐにその場所にたどり着いた。
「君って意外ととっても強いね!!だけど俺の血鬼術を喰らって肺はもうボロボロでしょ?救ってあげるからもう抵抗はやめよう?ちゃんと食べてあげるから、さ!」
「ハァッ……ハァッ……くっ……」
そこには、二人の人間がいた。
一人は女だ。かろうじて立ってはいるものの、体中がボロボロだ。蝶の髪飾りをつけ、見たことがない服と、珍しい刀を身に着けている。胸をおさえている。どうやら肺を傷つけたらしい。
もう一人は、男だ。白橡色の長髪に血をかぶったかのような赤黒い模様が浮かんでいる。服装も髪と同じ血のような模様が描かれた赤と黒の服を着込んでいる。目に刻まれているのは……あれは文字か?読めぬ。
瞬間、俺は男は人間ではないと、瞬時に悟る。
男のまとっている気配が、人間のそれと全く違っていたからだ。
この世界にも、人と魔族が存在しているのか?しかし、見る限り、男は魔族ではない。この世界特有の種族なのだろうか。
女と人ならざる男は相対している。戦っているのか。しかし、このままでは女が負けてしまうだろう。
やれやれ。この世界がどこか知らぬが、まずはあの女を助ける。そして、この世界について教えてもらうとするか。
まあこのままじゃ鬼なんてすぐ滅びちゃいますんでね、アノス様には魔法を使えないというハンデをつけさせてもらいました。
アノス様を人間にしたのは、アノス様が魔族だったら、さすがに気づかれちゃうかな……。と思ったからです。