理滅の刃   作:瓢さん。

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フライング魔王学院の大正コソコソ噂話

アノス様の赫刀で斬られると、雑魚鬼だろうと鬼舞辻無惨だろうと、鬼の力ではもう二度と治せないぞ!

分裂したとしても治らないのは変わらないぞ!




上弦襲来編後編!

半天狗はどうなってしまうのか。


戦場の理

「俺は今まで幾万もの命を奪ってきた。それほどの命を奪った俺が善人であろうはずがない。貴様の言うとおり、極悪人だ」

 

 

「……う……あ……」

 

 

「貴様が極悪人の理由を言った時、俺はとても拍子抜けした。まさか、そんな理由で俺が極悪人扱いされるとはな。ならば、俺は極悪人を超えた何かということになる。まあ、それでも俺は構わないがな」

 

 

「い……が……ああ……」

 

 

「せめて何か喋れ。と言っても、この有様ではな」

 

 

 俺は憎珀天に向かって喋りかける。しかし、憎珀天はうめき声しかその口から漏らさない。

 

 いや、そこにあるのは、口だけとなった憎珀天だった。

 

 周りには、かつて憎珀天だった肉片がサイコロのようにゴロゴロ転がっていた。

 

 憎珀天は、いくら切り刻んでも死ななかった。頸を斬っても死ななかったのだから、別のところに急所があるのかもしれないと思ったのだが、それも間違いだった。

 

 とはいえ、この赤い日輪刀の効果で再生も出来なく、灼けるような痛みを常時感じているのだから、死んだほうがましだと言うべきか。

 

 口だけは、言葉を喋ることができるように、斬らないでおいてやった。

 

 すると、そこらに転がった憎珀天の目の一つが、弱弱しく俺を見る。

 

 

「……し……れ……」

 

 

 憎珀天の口から弱弱しい声が漏れ出た。

 

 

「聞こえぬぞ。何か言いたいのならはっきりと、声に出して言うことだな」

 

 

 瞳に絶望と諦観を映しながら、弱弱しく、しかし辛うじて聞こえる声で、憎珀天は言った。

 

 

「殺……し……て……くれ……。もう……終わりに……して……くれ……」

 

 

 口から漏れ出たのは、懇願するような声だった。

 

 恨みも憎悪も消え果て、ただこの苦痛から解放されたい、そんな響きだ。

 

 

「ほう。ではお前に聞くが、今まで何人の人間がお前によって苦しめられたと思う?」

 

 

 俺は憎珀天の目に日輪刀を突き刺す。ジュウウッという音とともに、目が一つ、潰された。

 

 

「グッ……ギャアアアッッ!!!!」

 

 

 悲鳴が溢れる。しかし、こいつらに殺された人間の苦しみはこの比ではない。

 

 

「まだまだ元気ではないか。もう一つも潰しておくか?」

 

 

 俺はもう一つの瞳に刃を向ける。その瞳が恐怖を感じたかのようにブルブルと震える。

 

 

「待っ……わ……儂が……悪かった……だ……から……」

 

 

「口に気をつけろ。お前は今、俺にすべてを握られている状態だ。喋りたいのなら、相応の注意をしながら喋るのだな。でなければ、お前は喋ることが出来ないまま、永遠に苦しみ続けるものと思え」

 

 

 口を吊り上げ、嗜虐的に笑いながら俺は憎珀天に警告する。

 

 転がった瞳には、恐怖がありありと浮かんでいた。

 

 

「わ……儂が……悪う……ござい……ました……全部……極悪人……と言った……ことも……取り消しまする……だから……もう……」

 

 

 瞳から涙がポロポロとこぼれ出る。声にも懺悔の気持ちがいっぱいに含まれていた。

 

 

「貴様がなんと言おうと、お前を殺せないのは変わりがない。それとも、まさかお前が教えてくれるのか?」

 

 

「本体が……おります……。それを……殺せば……」

 

 

 まさか本当に教えるとはな。よっぽど苦しみから逃れたいらしい。

 

 それにしても、いくら殺しても死なないとは思っていたが、本体がいるのか。

 

 恐らく、本体はあまり強くないのだろう。でなければ、戦いに参加するだろうからな。逃げに徹していると考えるのが妥当か。

 

 これで、上弦の肆の戦い方が見えた。頸を斬っても死なない喜怒哀楽の四体で隊士を追い詰め、自分は安全なところにいる。

 

 厄介な戦い方だ。相手が俺でなければな。

 

 

「本体は……貴方様の……背後……に……」

 

 

 位置まで教えるのか。本体は隠れているというのに、まさか自分の分身から教えられるとは思ってもみないだろう。

 

 

「は……や……く……」

 

 

「では問うが」

 

 

 俺は憎珀天の瞳を持ち上げ、その目に聞いた。

 

 

「いくら自分とはいえ、仲間を裏切り、情報を売ったお前が、そんな楽に死ねると思うか?」

 

 

「……え……」

 

 

 憎珀天の口から言葉が失われる。

 

 俺はもう一つ、憎珀天の口を持ち上げ、その両方とも宙に投げた。

 

 

「そん……待っ……」

 

 

「なに、すぐに本体も殺す。少し苦痛の度合いが増えるだけだ。鬼だというのなら、それぐらいは我慢して見せよ」

 

 

 そのまま俺は口と瞳を赤き日輪刀で木っ端みじんに切り裂いた。

 

 叫ぼうと思っても、粉々になった口では声を発することは出来ない。

 

 もう憎珀天が声を発することはなかった。

 

 しかし、肉片になろうとも、憎珀天は生きている。死ぬことが出来ない。

 

 死ねないというのはある意味別の地獄だ。死んだほうが救済となる場面も、この世にはある。

 

 皮肉だな。鬼と言う体質が、この苦しみから逃れることを出来ないでいるのだから。

 

 しかし、今考えるべきは本体の討伐。いくら憎珀天が苦しもうとも、おそらく本体にはあまり影響が言ってないものと思われる。

 

 今逃がしてしまえば、また人を襲うかもしれぬからな。

 

 

「本体は、俺の背後だと奴は言っていたか」

 

 

 俺は後ろに振り向く。

 

 よく目を凝らすと、木の陰に小さな、それこそ手のひらに収まるぐらい小さい老人の鬼が隠れていた。

 

 その姿は、分裂する前の最初の老人鬼と同じ容姿だった。

 

 小さいな。俺でなければ見つけるのも困難だっただろう。

 

 

「ヒッ……」

 

 

 向こうも俺が見つけたことに気付いたのか、一目散に逃げだす。その小さい体からは想像できぬほどの速度で奴は俺から距離を取ろうとする。

 

 しかし、逃げる速度は天元のそれよりもはるかに遅い。この程度なら楽に殺せる。

 

 

「遅いな」

 

 

 俺は老人鬼の正面に回り込む。口からは「怯」の文字が見えた。

 

 そのまま小指の太さぐらいしかない頸に日輪刀を叩きこもうとする。

 

 

「お前は……儂がかわいそうだとは思わんのかアアア!!!」

 

 

 刀が老人鬼の頸を斬り飛ばすその直前、老人鬼が急に巨大化し、二メートルほどの大きさに変化した。

 

 

「弱い者いじめを……するなアアアア!!!」

 

 

 そのまま、その大きな手で俺を握りつぶそうと襲い掛かってくる。

 

 しかし、動きは非常に鈍い。避けるまでもなく、俺は二本の腕を俺は横一閃に切り裂いた。

 

 

「貴様の言葉は何もかもが理解に遠い」

 

 

「ガッ……」

 

 

 腕を切り落とされたことで、老人鬼がよろめく。

 

 可哀そう?弱い者いじめ?まったく、こいつは何を言っているのか。

 

 

「戦場とは、弱肉強食の世界。弱き者は駆逐され、強き者が君臨する」

 

 

 俺はそのまま老人鬼の頸を薙いだ。

 

 頸が飛ぶ。しかし、死ぬ気配が感じない。口から見える文字は「恨」。

 

 本体は確か「怯」だったか。つまり、こいつも本体ではない。

 

 

「戦いとは、そういうものだ。そこに憐憫や同情などの感情は塵芥とも存在しない」

 

 

 しかし、逃げたわけでもないだろう。逃げたなら、俺がもう発見している。たとえ小さいとはいえ、その気配を逃すような俺ではない。

 

 「恨」の鬼は、「怯」の鬼が巨大化した姿。つまり、体内にいる可能性が高い。

 

 俺は魔眼()を使い、鬼の身体を透視する。

 

 ふむ、そこか。まさか心臓の中に隠れ潜んでいるとはな。

 

 

「貴様が俺たちに戦いを挑んだ時点でここは戦場と化している。お前の理屈はもはや通用しない」

 

 

 俺は首なしの鬼の体の中に手を突っ込み、心臓を握りつぶし、本体を引きずり出す。

 

 

「ヒ……」

 

 

 手の中で「怯」の鬼が悲鳴を上げる。手のひらから逃れようとするが、その小さき体でできることはたかが知れている。少し握りしめてやるだけで、鬼の動きは簡単に止まった。

 

 俺はその小さな体を宙に投げ飛ばした。そして、手の中にある日輪刀を構える。

 

 

「貴様が弱い者いじめをされたくないのなら、俺に戦いを挑むべきではなかった」

 

 

 俺はそのままその細き小さき頸を日輪刀で一息に斬り飛ばした。

 

 最後、鬼の顔に浮かぶのは驚愕の表情。しかし、その口から悲鳴が上がることはなかった。

 

 そして次の瞬間、目の前の頸なしの鬼の身体と手の中の小さき鬼の身体が灰となって消滅した。

 

 上弦の肆は、死んだのだ。今度こそ。もう再生することもない。

 

 

 

「俺に戦いを挑んだ時点で、お前の敗北は確定していたのだからな」

 

 

 




魔王、滅殺一体目――


もういっちょ魔王学院の大正コソコソ噂話

アノス様は透視ができるぞ!詳しくは漫画一巻の巻末小説に書いてあるぞ!
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