うれしいですね!
絶対見よ!
本編はちょっと短めかな?
掌の中でかつて上弦の鬼だったものが灰となって崩れ落ちていく。
鬼が日輪刀で斬られ死ぬとこうなるのか。なかなかに哀れだな。
向こうからも戦闘音が消えた。これで、ここでの戦闘はすべて終了した。
俺は、天元のもとに向かった。聞きなれた声が小さく聞こえた。
天元とその嫁たちはかつて屋敷があった場所に座っていた。鬼の姿はない。天元がすべて倒したのだろう。
「よー、アノス……お前、無事だったか」
「くはは。俺の心配をすることほど、無駄なことはないぞ」
「そうみてえだな……見た感じ無傷だし」
「傷ついているのは俺ではなく、お前のほうだろう、天元」
「あー……まあ、そうかもな……。嫁が援護していなかったら俺死んでたわこれ」
天元の身体は、ボロボロだった。
身体には至る所に裂傷が走り、地面は赤く染まっている。顔も青い。かなりの血を流したのだろう。
二十体ものの鬼を相手したのだ。その中には血鬼術を使う鬼も少なからずはいただろう。天元の実力では、死んでいてもおかしくはなかったかもしれんな。
三人の嫁たちは必死で天元の治療をしていた。
「いやあああああああ!!死んじゃヤですよ天元様あああああ!!!!!」
「不吉なこと言うな須磨ァ!!!!口よりも手を動かしなさい!」
「まずいです!この傷では、早急に蝶屋敷に搬送しないと、危険です!隠の方に今、緊急で要請しているのですが、ここの周りにはいないらしく、遅れるとの連絡が……」
治療を終え、天元を包帯でぐるぐる巻きにした雛鶴が深刻な顔をする。
「なら、俺が蝶屋敷に連れていく」
「え、アノスさん、でも……」
俺は天元を背中で抱える。雛鶴が心配そうな顔をしているが、問題ない。
「俺ならばすぐに蝶屋敷に連れて行ける。お前たちは隠に説明をした後でいいから、ついて来い」
そう三人に言い残し、俺は地面を蹴った。
「なっ……う、うおああああああああああ!?」
「口を閉じていろ。舌をかみ切るぞ」
俺は夜の闇の中を、すさまじい速度で駆ける。その速度は、昼に天元が走った速度とは比べ物にならない。
二秒で山を下り、直線の道を一秒で駆け抜ける。
そのあまりの速度に、背中の天元が悲鳴を上げた。
周囲の景色がすさまじい勢いで流れていく。しかし、これでも天元に影響が出ないように慎重に運んでいるのだ。
走り出して数十秒。眼前には見覚えのある屋敷が建っていた。
「す……すげ……」
天元は絶句していた。
俺は急いでアオイの元へ向かう。今の時間なら、まだ彼女は寝ていない。
「あ、アノスさん帰ってきたんですか?今日は音柱様のお屋敷に泊まるものだと……お、音柱様!?」
アオイはカナヲと廊下を歩いていた。湯気が二人から立っている。どうやら風呂上がりのようだ。
俺に気付いたのか、二人は俺に話しかける。
しかし、すぐに背中の天元に気付いたのか、アオイは軽くうろたえた。カナヲも言葉には出さないが、驚愕の表情をしている。
「急患だ。治療を頼む。失血が多い。すぐに輸血をしなければ死ぬ可能性がある」
「分かりました。カナヲ、輸血袋、何袋か持ってきて、お願い」
真剣な顔になったアオイはすぐにカナヲに指示を出した。カナヲがどこかに行ったかと思うと、赤い袋を何個か持ってきた。あれが輸血袋だろう。
「アノスさんも治療室に来てください。私たちの力では音柱様を運ぶことは出来ませんので」
俺は治療室に天元を連れていき、寝台に乗せた。
「では、あとは私たちが治療します。アノスさんは風呂に入ってください。結構服も汚れていますし」
自分の服を見ると、可楽の突風で巻き上がった泥や、天元の血で確かに汚れていた。
まあ、鬼の襲撃で天元の家では風呂にも入れなかったしな。言葉に甘えるか。
風呂から上がると、天元は寝かせられていた。腕からは管が伸びており、それが先ほどの輸血袋につながっていた。
天元の寝顔は穏やかなものだった。
「処置が適切だったのと、アノスさんの搬送が早くて助かりました。あと五分遅ければ死んでいたかもしれません」
隣に立つアオイがそんなことを口にする。
「そういえば、カナエとしのぶはどうだ?傷は大したことがなかっただろう」
俺はアオイに聞いた。
確か、カナエとしのぶは昼間の稽古の疲労で寝ているのだったか。強くは打ったが、ちゃんと加減している。骨は折れていないはずだ。
「カナエ様としのぶ様なら、今も寝ています。傷は、打撲と擦り傷が多いですね。あとは、筋肉痛でしょうか」
そこでいったんアオイは言葉を切り、こちらをジトッとした目でにらみつける。
「全く……何をしたらあそこまでボロボロになるんですか」
「なに、軽いチャンバラだ」
「絶対違うと思うんですけど……」
別に違わないが。
「俺はもう少し起きているが、アオイとカナヲはどうする?寝るのか?」
「はい。もう遅いですし、明日のために今日はもう寝ます。万が一、急患が運ばれてきたときは、起こしてください」
そう言って、アオイは部屋から出て行った。カナヲも恐らく寝たのだろう。
しばらく自分の部屋で待っていると、戸がノックされる音が外から響いた。
外に出ると、天元の嫁たちが息も絶え絶えになりながらそこに立っていた。
「あ、アノスさん、速すぎますって……。こっち、結構無理したんですよ……。それで、天元様は……?」
「無事だ。状態は安定している」
そう告げると、三人は「よかったぁ~」と安堵の声をこぼした。
「今日はもう遅い。ここに泊って行け」
「そうですね……」
三人を部屋に案内した後、俺も自分の部屋に戻り、布団に潜り込む。
しかし、上弦の肆であの程度か。この世界には、強者はいないのかもしれぬな。
しかし、もし俺が満足に戦えるものがいたのならば、存分に戦ってみたいものだ。
そう思いながら、俺は静かに意識を手放した。
魔王学院の大正コソコソ噂話
二十体の鬼はすべて、血鬼術を使う異能の鬼だ!
お知らせ
今までの話を読み返して、ちょっと直したいなと思うシーンが多々あったので、しばらくそちらを直すことにに専念したいと思います。
この作品を読んでいる皆さんに、どこが変わったのかと、もう一回見直してくれるならば幸いです。