理滅の刃   作:瓢さん。

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今回はカナエ視点でお送りしたいと思います。


魔王との遭遇

「ハァッ……ハァッ……くっ……」

 

 

 息苦しい。呼吸がうまくできない。胸をおさえるも、それで苦しさがまぎれるわけじゃない。

 

 今、私は窮地に陥っていた。

 

 鎹鴉からの情報をもとに向かった場所で遭遇した鬼は、なんと鬼舞辻無惨の直属である十二鬼月の中でも二番手に位置する上弦の弐。

 

 そのまま戦闘に移行したが、相手は上弦の鬼。私の攻撃が全く通用しない。

 

 戦っているうちに血鬼術を使われていたのか、肺を傷つけられてしまった。全集中の呼吸が大きく乱れ、追い詰められていく。

 

 目の前の鬼は屈託なく笑っている。しかし、その瞳の中からは何の感情もうかがえない。

 

 

「君って意外ととっても強いね!!だけど俺の血鬼術を喰らって肺はもうボロボロでしょ?救ってあげるからもう抵抗はやめよう?ちゃんと食べてあげるから、さ!」

 

 

 言葉と同時、一足飛びに接近した上弦の弐の手に収まっている扇が煌めく。

 

 私は何とか日輪刀でその一撃を防御した。

 

 しかし次の瞬間、パキン、という音とともに日輪刀が真っ二つに折れてしまった。そんな。

 

 

「さあ、俺とともに永遠を生きよう」

 

 

 そのまま扇が私に迫る。それは、確実に私の命を絶つであろう、必殺の一撃。

 

 私は死を覚悟した。脳裏に浮かぶのは蝶屋敷に住む大好きな子たちと、愛するたった一人の家族である妹。

 

 せめて最後に、もう一度だけ会いたかった。だけど、それはもう叶わない。目に涙が浮かぶ。

 

 私は目をつぶり、おとなしくその一撃を待った。だけど、

 

 

「貴様、何をしている?」

 

 

 その一撃は私に届くことはなかった。

 

 閉じていた目を開けると、私の前には一人の少年が立っていて、扇をその手で受け止めていた。見慣れない服を着ているが、自分よりも小さい。

 

 なんで男の子がここに?そう思ったのは一瞬だった。

 

 

「あなた、早く逃げなさい!死にたいの!?」

 

 

 力を振り絞り、少年に向かって叫ぶ。今、私の、胡蝶カナエの目の前にいるのは、人ではない。人の命を簡単に奪う、恐ろしい鬼なのだ。

 

 なんで扇を受け止められているのかは知らない。考えなくていい。今は少年を助けることを優先しないと。

 

 お願い、逃げて――そう願ったけど、

 

 

「叫ぶな。おそらく肺を傷つけている。死にたくないなら口を閉じていろ」

 

 

 目の前の少年にそう一蹴され、この状況だがポカーンとしてしまう。

 

 叫ぶな?口を閉じていろ?少年のくせになんて言葉遣いだろう。

 

 すると、目の前の鬼が口を開いた。

 

 

「おいおい、せっかくの食事を邪魔しないでおくれよ。俺は男はあまり食わない主義なんだ」

 

 

 言うが早いか、上弦の弐はもう一つの扇で少年に斬りかかる。

 

 

「クッ!!カハッ……」

 

 

 少年をかばおうとしたが、うまく動けない。私のせいで――そんな後悔が胸の中に生まれる。

 

 

「とりあえず死んでもらおう――――がばあぁっ!!」

 

 

 上弦の弐が吹き飛ばされた。

 

 

「……は?」

 

 

 目の前のありえない光景に頭の中が真っ白になった。

 

 私の瞳に映っているのは吹き飛ばされ倒れている上弦の弐と、その上弦の弐を殴り飛ばした一人の少年。

 

 

「くはは。その程度の強さで俺を殺すだと?」

 

 

 上弦の弐が体を起こす中、その少年は泰然と笑った。

 

 

「身の程をわきまえろ、下郎が」

 

 

 これが、この先の未来にて鬼舞辻無惨を滅した少年と、私、胡蝶カナエが出会った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は本当に人間かい?俺を殴り飛ばすなんてそれこそあのお方ぐらいだと思うけど」

 

 

 上弦の弐が目の前の少年を注意深く見る。その顔には先ほどの笑みなど一切なく、ただただ目の前の敵を観察していた。

 

 

「人間だ。今は、な」

 

 

 今は?どういう事だろう?私はそう思ったけど、黙っていた。別のことに思考を割いている時間はない。

 

 

「それよりも、貴様、今こいつを喰うといったか?」

 

 

 こいつ?まさか私のこと!?叫ぶなとかこいつとか、この子には一回、言葉遣いというものを教えてやらなければ!と場違いにもそう思った。

 

 私の心中とは無関係に、戦場の状況は動いている。

 

 

「言ったよ?誰もがみんな死ぬのを怖がるから、俺が喰ってあげてるんだ。俺が喰った人はみんな俺の体の中で永遠に生き続ける。もう苦しくないし、つらくもない」

 

 

 それがさも当然のことであるかのように、上弦の弐は言葉を続ける。

 

 

「俺は喰った人たちの想いを、血を、肉を、しっかりと救済して高みへ導いてあげてるんだ。今から食べるその子も一緒だよ。俺の体の一部となって幸せになるんだ」

 

 

 聞いているだけで、私の気分が悪くなる。悪辣。それ以外にこの鬼を表現する言葉が見つからなかった。

 

 

「聞くに堪えぬな。それを本気で言っているのならお前の脳は腐っているぞ」

 

 

 少年が吐き捨てるように言葉を発する。声からは、嫌悪感がありありと漂っていた。

 

 

「初対面なのになんでそんなに怒っているのかな?可哀そうに」

 

 

「黙れ。そのような軽い言葉で物を語るな」

 

 

 そう少年が言葉を発した瞬間、空気が、冷えた。いや、実際には冷えていないのかもしれないが、空気が冷えたと私は感じた。

 

 そして、その源が、目の前の少年から来ていることも。

 

 

「そのような独りよがりで、自分勝手な理由で人を喰ってきたのか」

 

 

「ならば―――心置きなく、貴様を滅ぼせるというものだ」

 

 

 少年がそう言った瞬間、少年から膨大な殺気が発された。

 

 そのあまりの激しさに私の身体が震え、汗が流れ出る。

 

 瞬間、少年の頭上に巨大な氷柱(つらら)が落ちてきた。

 

 氷柱(つらら)が少年を串刺しにする――瞬間、少年は地を蹴っていた。

 

 その速さは柱である私でさえ視認することができない。鋭い蹴りが上弦の弐に向かって放たれた。

 

 上弦の弐もその攻撃を読んでいたのか、冷気をまとった扇子で蹴りを迎え撃つ――瞬間、少年の姿が消えた。

 

 

「え……?」

 

 

 上弦の弐が一瞬硬直する。周りを見渡すも、少年の姿が見当たらない。

 

 しかし、私には見えていた。

 

 

 

 

 

 少年は、上弦の弐の後ろに立っていたのだ。

 

 

「どこを見ている?こちらだ」

 

 

「な……」

 

 

 上弦の弐がすぐさま振り向こうとするが、少年が上弦の弐の頭を鷲掴みにするほうが早かった。

 

 そしてそのまま、上弦の弐を地面に叩きつける。あまりの威力にドッゴオオオオオンと轟音が鳴り響き、地面がひび割れる。

 

 それは一度だけではなく、何度も、何度も、地面に叩きつけられる。

 

 

「グッ!?グガッ!?グバッ!?ガッ!?」

 

 

 上弦の弐は苦しみ、顔面から血をまき散らしながらも、氷でできた巫女を二体作り出し、凍結させようとする。

 

 少年は顔から手を放し、一度離れた。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 上弦の弐は息を乱していた。少し汗が浮かんでいる。

 

 私は唖然としていた。あまりの光景に、動くことすらままならない。

 

 くくく、くはは、と笑い声が聞こえる。

 

 少年は上弦の弐に向かって笑っていた。

 

 

「だから言っただろう。貴様ごときが俺を殺すことはできないと」

 

 

 

 




魔王学院の大正コソコソ噂話

この世界では魔法は使えないけど、魔力が消えたわけじゃないから、アノスはいつも通り自分の力を抑えてるぞ!
今アノス様が使っている力は全力の力と比べて塵ほどにも満たないくらいだぞ!
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