理滅の刃   作:瓢さん。

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今回もカナエさん視点です。


希望の光

 戦闘が始まった。しかし、私にはそれが本当に「戦闘」なのかどうか、判断がつかなかった。

 

 上弦の弐が扇子をふるい氷の蓮の葉や蔦を出し、攻撃するも、少年はそれらをなんて事のないように踏み割り、引きちぎる。蓮の葉や蔦からは強烈な冷気が発せられているが、少年は凍ったり動きが鈍る様子はない。

 

 

「君って、なんで凍んないの?ほんとにめんどくさいなぁもう!」

 

 

「その程度の氷で俺が凍ると思ったか」

 

 

 上弦の弐はその後も次々と私には見せなかった氷の血鬼術で攻撃するも、少年はそのすべてを薙ぎ払い、踏み潰す。

 

 上弦の弐に匹敵する血鬼術を放つ、上弦の弐そっくりの人形が、とてつもない冷気をまき散らし、あらゆるものを破壊する巨大な大仏が、少年の拳や蹴りで簡単に破壊される。

 

 そのまま少年が上弦の弐の間合いに入った。上弦の弐の扇子が煌めくが、扇子が少年に届く前に、少年が上弦の弐の腕をつかんでいた。

 

 

「こんなもの…………ッ!?」

 

 

 上弦の弐が少年の腕を振り払おうとするも、その腕は一ミリたりとも動かない。尋常じゃない力を持っている。

 

 

「その程度の力で、俺の腕を動かせると思ったか?」

 

 

 そのまま少年は上弦の弐に向かって膝蹴りを食らわした。グシャメキボキィと上弦の弐から鈍い音が連続で響く。

 

 

「がはっ……」

 

 

 その一撃だけで上弦の弐が吹き飛ぶ。赤い飛沫が数滴、道路に染みを作った。

 

 上弦の弐に少年がさらに攻撃する。踵落としが上弦の弐の顔面にめり込み、鈍い声が漏れた。

 

 

「その程度では世界を千周しても俺には勝てぬぞ。もっと全力を見せてみろ」

 

 

 

 

 

 

 

 何が起こっているのか、私には全くわからなかった。幻惑の血鬼術をくらっていると思ったほうが、まだ現実的。

 

 一般人が鬼を倒す事自体は、稀ではあるけど確かに前例はある。

 

 鬼殺隊の岩柱、風柱の二人がそうだったと聞いている。

 

 だが、それは下級の鬼が相手だからこそ出来た芸当だ。

 

 しかし、十二鬼月は一般人じゃ歯が立たない。十二鬼月に丸腰で挑むというのは、頭の螺子が何本か外れている行為だ。

 

 いや、十二鬼月の中でもあの鬼はは上弦の弐。上から二番目なのだ。一般人でなくとも鬼殺隊の隊員のほとんどが瞬殺だろう。

 

 しかし、私が今見ているのは本物だ。血鬼術にかかっているわけではない。その事実が私の頭をなお混乱させる。

 

 ただの少年が、上弦の弐を圧倒している。いや、もう『ただの』少年と呼ぶべきではない。

 

 上弦の弐を上回る力と、柱である私でも見えないほどの速さ。

 

 人間なのかも怪しいところである。しかし、彼の雰囲気は間違いなく人間だった。鬼とは違う、生命の輝きある人間の。

 

 

―――次元が、違う。

 

 

 少年について私は、そう感じた。

 

 そして、一つの結論に私の思考は至る。

 

 彼なら、もしかして。鬼殺隊の長年の悲願を―――

 

 

「姉さん!」

 

 

 そこまで考えたところで、もう聞くことがないと思っていた耳朶を打った。この声は――

 

 

「姉さん、大丈夫!?」

 

 

 振り向くと、妹のしのぶが駆けつけてきた。

 

 鎹鴉によって知らせられたのだろう。

 

 

「よかった、姉さんが生きててよかったっ……!」

 

 

 

 しのぶは泣きながら私に抱き着いてくる。あの少年が来なかったら、私は今頃死んでいただろう。私も妹を強く抱きしめる。

 

 そうだ、あの少年はいまどうなっているんだろうか。

 

 

「大丈夫よ。それより――」

 

 

「ふむ。これだけの攻撃を浴びせても死なないとは。しかも、即座に傷が治る。興味深いな。」

 

 

 

 少年の声が聞こえた。先ほどと変わらない。泰然とした響きで。

 

 見ると、そこには驚愕の光景が広がっていた。

 

 上弦の弐が地に伏し、少年がその頭を踏みつけていた。

 

 少年の視線は、虚空に向けられていた。その思考を読むことは、出来ない。

 

 

「くっ……」

 

 

「どうした?もう終わりか?」

 

 

「……え……」

 

 

 しのぶはその光景を見て絶句していた。ただの少年が、上弦の弐を圧倒している。目でそれを認識しても、頭がそれに追いつかないのだろう。

 

 

「姉さん……あの少年は……なんなの……?」

 

 

 しのぶは、何とか声を絞り出し、私に聞いてくる。

 

 その声は震えていた。仕方がないこと。あの光景は、それほどまでに衝撃的なのだから。

 

 現に今、私も驚いている。少年の身体にはかすり傷一つついてない。もはや理の外の存在としか言いようがない強さ。

 

 私は、妹の問いに対して静かに首を振る。

 

 

「分からないわ。私が言えるのは、あの少年によって、私は助けられたという事、そして―――」

 

 

 私は、目をつぶり、心を落ち着かせる。

 

 私はあの少年について何も知らない。だけど、彼は私たちの敵ではない。これは断言できる。

 

 そして、私たちは彼によって少しずつ変えられてゆく。そんな「予感」がした。

 

 だから、私は目を見開き、断言する。

 

 

「彼が、鬼舞辻無惨を殺すことができるかもしれない人だという事」

 

 

 

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