理滅の刃   作:瓢さん。

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今日は二話連続投稿です!

途中でしのぶさん視点挟みます。


蝶屋敷への誘い

「屋敷?」

 

 

「はい。あなたは姉の命の恩人です。ぜひ私たちの家、蝶屋敷に招待したいと思いまして……」

 

 

 屋敷を持っているのか。まあ、この世界に来たばかりで泊まるところも使える金もなかったからな。家に招待してくれるのはありがたい。

 

 

「そうか。では言葉に甘えるとしよう。彼女は大丈夫なのか?」

 

 

「はい。しかし、私では姉を運ぶことは出来ません。なので、背負ってもらえませんか?」

 

 

 見たところ、彼女は小柄で、人間一人を背負い走れるほどの筋力はない。

 

 俺に頼むのも無理はないだろう。

 

 

「分かった。お前の姉は俺が責任をもって家まで送り届けよう」

 

 

「ありがとうございます。なるべく早く治療をしたいので、私は全力で駆けさせていただきます。あなたも出来るだけ速度を上げてついてきてください。万が一、もしついてこれなくなったら、この鴉が道案内をしますので……どうか、お願いします」

 

 

 少女は腕に乗った鴉を掲げる。

 

 俺が付いていけないなどという、そんな心配をする必要は全くないが、彼女なりの配慮だ。ありがたく受け取っておこう。

 

 

「了解した。すぐに向かおう」

 

 

 俺は少女の姉を背負った。

 

 

「では……行きます」

 

 

 

 そして、少女と俺は、強く地を蹴った。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだついてくる……」

 

 

 私、胡蝶しのぶは後ろからついてくる少年をちらりと見る。彼は私の真後ろにピタリとついてきていた。

 

 先ほどまで上弦の鬼と戦ってたとは思えないほどの速さだ。

 

 私は今、姉さんを一刻も早く治療するために自分が出せる最高の速度を出している。

 

 死ななかったとはいえ、肺の傷は深い。早く治療しなければ、それこそ呼吸ができなくなって命を落とす可能性がある。

 

 しかし、先ほど姉さんを救ってくれた少年は、その私に当然のようについてくる。

 

 姉さんを治療するためだから、速度は速くてもいいけど、それでも驚愕を隠せない。

 

 自慢ではないが、私の素早さは鬼殺隊の中でもトップクラスだ。それこそ柱の域に達するくらいには。

 

 それ故に、少年が私に追いついているという事実を、受け入れられていなかった。

 

 ……いや、信じられていないことがあるとするならば、ほかにもある。

 

 私は先ほどの光景を思い出す。目に焼き付いた、鮮烈な光景。

 

 任務を終え、蝶屋敷に変える道中、姉が上弦の弐と遭遇したと鎹鴉から聞かせられた時、私は心臓が止まるかと思った。

 

 お願い。姉さん生きて。死なないで。頭の中がぐちゃぐちゃになった。

 

 必死で姉さんのところに向かった。汗が絶え間なく全身から噴き出るが、暑いとは微塵も思わない。全部冷や汗だ。

 

 それから私がどのように走ったかはあまり記憶にない。何回か道を間違った気がする。それでも私はやっとの思いで戦いの場に着いた。

 

 肺を傷つけられながらも、姉は生きていた。それを理解した時、どれだけ安堵したか。一瞬、膝から力が抜け、転びそうになったほどに。 

 

 だけど、次の瞬間、その安堵は吹き飛ばされた。

 

 一般人としか思えない少年が、十二鬼月の中でも上位に位置する上弦の弐を圧倒していた。

 

 その光景は、たとえいつになっても忘れることはないだろう。

 

――彼が、鬼舞辻無惨を殺すことができるかもしれない人だという事。

 

 姉さんが口にした言葉が頭によぎる。

 

 その言葉が、急に現実味を帯びてきた。彼なら、本当に鬼舞辻無惨を―――

 

 思考がそこに行きそうになった瞬間、目の前に見覚えのある建物が見えた。

 

 そう、私たちが住んでいる屋敷であり、傷ついた隊士の治療もしている建物、蝶屋敷だ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 俺は今、屋敷の来客用の部屋にて待っていた。少女には遅れることなくついていった。

 

 少女は姉の治療をしている。肺は傷ついているが、ほかに目立った外傷はなく、命は助かるそうだ。

 

 一時間ぐらい待っただろうか。襖が開くと、そこには少女と女が座っていた。

 

 女は布団から身を起こしている。

 

 

「お待たせしました。私は胡蝶カナエ。こちらは私の妹、胡蝶しのぶです。命を助けていただき、本当にありがとうございました」

 

 

「気にするな。たまたまそこを通りがかっただけのことだ」

 

 

 カナエは開口一番、俺にお礼を言った。あと数瞬あそこに行くのが遅かったら、カナエの命はなかったかもしれぬ。ぎりぎりのタイミングだった。

 

 しかし、名前のような姓だな。どちらも名前が胡蝶で名字がカナエとしのぶ。それでいて姉妹とはな。

 

 二人を区別するためにとりあえず姓のほうで呼ぶとするか。

 

 

「そういえばまだ自己紹介していなかったな。俺の名はアノス。アノス・ヴォルディゴードだ」

 

 

 そう自己紹介すると、カナエが思案顔になり、俺に聞いてくる。

 

 

「アノスさん……。あなたは、もしかして外国の方ですか?」

 

 

 外国?外の国ということか?名前を聞いただけでそのことを聞くとは、どういうことだ?

 

 

「まあ、そこらへんも含めて、お互いに聞きたいことが沢山あるはずだ」

 

 

 そう言うと、カナエの顔が真剣なものになり、その視線はまっすぐに俺を捉えていた。

 

 

「そうですね……。お互いに聞きたいことは山ほどあると思います」

 

 

 そうだろうな。お互いに聞きたいことは山ほどあるだろう。

 

 俺は殺しても殺しても死なず、魔法のような術を使うあの存在のことを。

 

 そして、俺が転移してきたこの世界について。

 

 カナエたちはその存在を圧倒していた俺の素性を。

 

 おそらく、あれはこの世界の人間が簡単に倒せるものではないのだろう。

 

 

「では、まずは私から聞きましょう」

 

 

 カナエは意を決して、俺に問うた。

 

 

「アノスさん。あなたはいったい、何者なのですか?」

 

 

 

 




魔王学院の大正コソコソ噂話

アノス様は今日泊まるところがなかったら、学生服を売って金を稼ごうとしてたみたいだぞ!
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