東京に帰ってきてから改めてベルベットルームへと訪れたんだが、珍しい事にイゴールから話があると呼び出された。
「何かあったんだろうな。朗報を期待したいんだけど、判断に困る話かな?」
「流石でございます。貴方様はかつてないほど長くこの部屋の住人と接してこられた。加えて我が主人、フィレモン様が直々に話を伺う事になった理由が少し見えたのでございます」
「なるほど。イゴールにも出会いがあったのか」
「おっしゃる通り。そもそもここに訪れる事が出来るヒトは何かしら立ち塞がる運命がございます。中でも彼は…」
「そうか…」
「はい。彼のお客人を待ち受ける運命はあまりにも過酷なものでございました。エリザベスも暫しの間落ち着かない様子、心当たりはございますでしょう?」
「ああ、人の世界で言う正月に俺の夢に出てきたよ。…今思えば、どうにも誰かに話をしたかったのかもしれないな」
「ええ、力を司る者としての我が従者達も貴方様との交流を重ねる上で随分と成長したようでございます。…成長したからこそ苦しい思いをしてあるのでしょう。それもまたあの者の糧となるハズ、ワタクシも期待しておりますから」
「…で、こっからなんだろう?本当に話したいことは。わざわざ客人の俺とサシなんだからさ」
「申し訳ありません、ついお客人と話す時回りくどくなってしまいます。左様、本題と参りましょう。…彼の客人の未来を見たのですが、どうにも揺らぐのでございます。担う役目の為にも自身の成長と縁を紡ぐ事が必要なのですが、交わるハズの無かった運命が待ち受ける壁を取り払う、その様な未来もあるのではないかと…。次なる客人を確信するほどの未来を見たのも初めてではございましたが、その未来に自信が持てないのも初めてでございました」
「…で、イゴールとしてはイレギュラーが俺なんじゃ無いかと思うようになったわけか」
「左様。貴方も実に素晴らしい客人である事に間違いは無いと確信しておりましたが、もしかすると我々ベルベットルームの住人やその客人達の一助となる…その様な役回りなのでは無いかと思う様に至ったのでございます」
なるほど、俺のこれまでの行動とここの姉妹達の変化がイゴールにとっても想定外だったのか。まぁ、たしかにベルベットルームに複数年渡って厄介になるのって「p4u」や「p5s」とかの短期間だものな。それだって異例の話だったろうに俺なんて既に三年目…下手すりゃまだまだ長い付き合いになるんだろう。それにしてもイゴールが見た未来に影響を及ぼす可能性が出てきたのか。やはり俺は俺でこれから起こる大事件のラスボスと戦う必要がありそうだ。…彼らは彼らだけで乗り越えていたが過酷な運命、少しでも助けになるんだろうか。
「どうやら、貴方様にも思い当たるフシがございましたな?」
「ああ、なんの因果か戦うだけのチカラとここに訪れる客人達が迎える試練の事を
「なるほど、お客人も随分と悩んでらした」
「ああ、こんな話できる相手も居なくてさ」
「ワタクシで良ければいつでも話を致しましょう。我が従者達を導いて下さっているお礼としては物足りないかもしれませんが。ワタクシもこの部屋の主人としてもてなしを致しましょう」
「そうか、何であんまり接点がないのかと思えば俺が『ワイルド』の素養が無いからか」
「言われてみれば…。客人がこの部屋に訪れる目的と言えば得たペルソナの力を新たなるペルソナへと変化させる事、たしかに貴方様には必要が無い。ともすればワタクシと顔を合わす機会もありませんでしたな」
「…まぁ似たような話なら過去のサマナーは錬金術師みたいな連中の協力を得て仲魔を生贄にしてより強い悪魔を召喚していたみたいだけどな」
「ふぅむ、流石に我々と言えど悪魔合体はしたことがありませんな…」
「いやいいんだ、俺は仲間を合体に使うつもりは無い。今の世の中目的の悪魔に所縁のある場所なんて然程見つからないモノじゃ無いからな」
「なるほど…、確かに人の世は荒廃しておりませんからな。自ら仲魔となってくれる様行脚なさるのも方法の一つでしょう」
「ああ。この間はそちらのエリザベスのコレクションにメッセージを紛れ込ませるなんて器用な事をする奴が居たよ」
「あの気配…、やはり外なる者でしたか。我々はペルソナ使いと出会い記録した全書から使うペルソナを呼び出しているのです。確か、貴方様が我が従者と対峙された時でしたな。一瞬、それも気のせいかと思うほどの間に違和感を覚えたのです」
さすがは力を司る者達の主人にしてこの部屋の主人、招いていない客の気配には敏感か。
「流石だな。俺もエリザベスも全く分からなかったのに」
「ほっほ、ワタクシはここベルベットルームの管理人。それくらい成さねばフィレモン様に顔向けできません」
ずっと考えてきた事がある。イゴールに姉妹達が居てもベルベットルームがヤルダバオトに乗っ取られるのって何で何だろうか。強さで言えば勝てるわけ無い…、たとえ数人不在であっても誰かは残るだろう。ラヴェンツァの経験が足りなかったから?だから敗北して2つに分けられた?
多分違う。ここの住人達は基本的に善性なんだ。人間の持つ可能性と希望を見捨てる事ができないんだ。ま、元々人の無意識をポジティブサイドとネガティブサイドに分けてフィレモンとニャルラトホテプが象徴となっていたんだから、そのフィレモンの後継だから当たり前なんだろうけど。見捨てる事が出来ないからこそ莫大な人数が抱えるネガティブな無意識を少しづつ溜めて神格を得た偽神にして悪神『ヤルダバオト』に勝てなかった。そしてゲームを持ちかけられた…って事なんじゃ無いのか。
変な話悪魔や神様見たいな連中同士が持つ相性って絶対的に近いんだよな。圧倒的悪相性の相手に窮地に追い込まれる…ってのがこの部屋に訪れる試練だろうか。
「…なぁ、イゴール。ヒトってさ、弱いんだ。弱い連中の方が圧倒的に多いんだ。でも中には眩しい位強い奴がいる。だから人間の可能性、未来を諦めないで見ていてくれるか?」
「…⁉︎ヒトとは弱きモノ。この部屋に訪れるヒトを見ていたばかりその様な考えには至りませんでした。貴方様が改めてワタクシに仰せつかった、その意味を考えさせていただきましょう。でも一言だけ、ワタクシ達はいつまでもヒトの可能性を信じておりますぞ」
「その一言で十分。俺は新人サマナーだけどさ、姉妹達で何ともならん問題が出てきたら頼んでくれよ」
「ええ、貴方様は客人にして友人と言える存在なのかもしれません」
「依頼を出すならそっちが客だな。それも初めてだろ?」
「ほっほ、それは面白い。ワタクシが客人になるとは…。ならば依頼を考えておきましょう。本日は良い話が出来ました」
「ああ、こちらこそ。色々と整理になったし覚悟もついた」
「では、貴方様の良き旅路を願っております…」
まさかイゴールとこんな話をするなんてな。ベルベットルームもようやく形が定まったと思えば洋館だからなぁ。「ルーム」とは何か考えさせられるよ。部屋から出るとこちらを伺うわざとらしいエリザベスの姿が見える。そうだよな、向こうとも話をしておこう。
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