年が明けたわけなんだが、男4人で道場に赴き初稽古だ。一応爺さんは神職なんだから初詣の参拝客の相手をしなきゃいけないんじゃないのかと思ったけど、宗一さん曰く俺もダイチさんも居ることで爺さんがすこしはしゃいでるらしい。それに朝早くから来る場所じゃないってさ。…仮にも自分の一族が守ってきた神社じゃないのか?と思わないでもないが、まぁ、便利な場所とは言いにくいのも事実だな…。とはいえ、お昼にはそこそこ来るらしいので初稽古を終えてみんなでお雑煮を頂いた。…不思議な事に涼介の記憶にある味と似ている。こんなところでも共通点があったとは流石に不意打ちを食らった気分だったよ。それから夕方まで神社の手伝いをして夜にはおせちを食べて1日が終わった。明日は天城さんに手伝いをお願いされているし、爺さんたちにも行ってこいと言われているのでダイチさんと向かう予定をしている。
「やあ、明けましておめでとう雪子ちゃん。今年もよろしく」
「おめでとうね、雪子ちゃん」
「お兄さんにダイチ君だ!あけましておめでとうございます。よろしくね」
「ちょっと、おにーさんたち、アタシもいるよ!」
「ゴメンゴメン、千枝ちゃんも明けましておめでとう」
ついつい千枝ちゃんをからかってしまう…。いいリアクションするんだよなぁ。今日はなんでも子供たちを初詣に連れて行ってやって欲しいんだとか。俺もダイチさんも八十稲羽の神社で初詣はまだしてないし、ダイチさんも行ったことあったからどうかすら定かではないのでちょうどいい機会だと思ってる。
「今日は君たちを連れて辰姫神社に行って欲しいってお願いされてるから準備は出来てるかい?お年玉って程でもないけど君たちが屋台で食べたいもの位はお兄さんたちがごちそうしようじゃないか」
「そうそう、遠慮しないでいいからねー」
「やった!夏祭りの時食べられなかったモノリベンジするよ雪子!」
「千枝ったらすぐ機嫌なおしちゃった…」
「ほらほらバスが来ちゃうから行くよ」
4人でバスに乗り込み神社へと向かう。実はこの後宗一さんが迎えに来る事になっていてウチの神社にも来る事になっているのだが、知っているのは俺だけ。ドッキリって言うほどのものでもないけど、爺さんがお年玉をあげたいらしく何とかして連れてこいって話らしい。
「うわー、夏祭りの時も迷ったけどお正月のラインナップも迷うなぁ」
「千枝、はしゃぎすぎ。はぐれたらどうするのよ」
「大丈夫、大丈夫。そんなに広くないんだしさ」
「おっと、ダイチさんすこし見といてもらえます?俺近くのお世話になったお店の子供連れてくるんで」
「あいよー、ほらほら二人ともダイチお兄さんを置いてかないでくれー」
多分完二君は暇を持て余した寝正月してるだろうと思っていたけど予想通りだったな。おばさんも快く送り出してくれた
「お待たせ、どうせ暇してるだろうと思ったから連れてきたんだ。ダイチさん、この子は完二君。そこの染物屋さんの子供で天城屋旅館にも卸してるようなお店さん」
「へー、すごいじゃん。よろしくね完二君」
「う、うっす」
「あー、完二、久しぶりじゃん」
「私は旅館について来た時たまに会うよ」
「へ、へん、リョウの兄ちゃんに連れ出されただけなんだからな」
「こらこら、誘われるかもしれないからっておかわり少なくしてたって聞いたぞ?新年早々喧嘩しない」
「げっ、母ちゃん何で喋ったんだよ!!」
「はっはっは、やっぱりそうか、屋台に随分気を取られてるからカマをかけただけさ」
「おいおい、リョウスケ子供相手になんて大人気ない…」
「うわー、お兄さんエゲツない…」
「おにーさん、こわっ!」
「素直になれない少年をからかっただけなんだがなぁ…」
「うがーっ!!」
「完二くんが暴れてるよ千枝」
「でもあっさり取り押さえられちゃったね雪子」
「ほらほらここでお腹空かせてないで食べに行こうじゃないの。君たちもお節飽きただろう?あんまり子供向けじゃないからね正月料理は」
「お前、すっげー誤魔化しかたするのな…」
「まぁ不器用な照れ隠しですよこの子の場合。じゃれてくる程度かわいいもんですって」
「お前が本当に後輩なのかわかんねぇや…」
「ま、食べる前にお参りは済ませましょうかね」
初詣を済ませて5人で色んな屋台を冷やかした。やはり年末年始の料理はイマイチだったらしくみんな結構食べてる。そういう俺は嫌いではないんだがこの雰囲気だとつい食べたくなるよな…
「よーし、次はあっちの肉!」
「千枝まだ食べるの?」
「俺はイカ焼きもう一本!」
「よく食べるなぁ君たち。ほら、リョウスケ君お迎えだよー」
「宗一さん、ありがとうございます。ほら、その食べ物持ってこのおじさんの車乗った乗った、こっちの神社にも初詣行こう。何かいい事あるかもしれんぞー」
「おじさん…、まぁ俺もおじさんかぁ。キョウジのことおじさんって呼んでるもんなぁ…。少年少女たち、安心したまえ、帰りはこのおじさんがまたここまで送ってあげるから。雪子ちゃんも大丈夫だよ」
爺さんたちへのお土産に焼きそばやタコ焼きを抱えて車へ乗り葛葉神社へ。そういえばみんながウチの神社に来る事ってこれまであったっけ?どんなリアクションするか楽しみだな。
完二くんは不器用です
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