世間でいうなら今日はバレンタイン。通学途中で見かける同じ制服の連中もソワソワしている。…当日にソワソワしたところで何にもならんと思うんだかな。そうこう言ってるウチに学校も目の前だ。え、えぇ…芝原何やってんだよ、ソワソワ通り越して不審者じゃねぇか…。
「おい、落ち着けバカ」
「お、おぅ?お前かよ。俺は普通だ」
「嘘つけ、ニワトリみたいな首振りやがって…完全に周囲の目を気にする逃亡犯だったぞ」
「うぐっ…、仕方ねーだろ。高校生にもなったなら俺に春だってきても良いじゃねーか!」
「そのへんのガッつきっぷりがなぁ…」
「テメーはいいよなぁ、どうせ貰えんだろ?」
「どうかなぁ。同級生の女子ほとんどしらねぇし、別にどうしても欲しいって程でも無いしな」
「ケッ、よゆーのある御人の言う事は違うねぇ」
「おーい、お前ら仲良く登校か?って、なんで芝原は荒ぶってんの?」
「ダイチさん、あんたも俺の敵か?」
「ほら、今日ってバレンタインでしょ?ガッついてるだけですよ」
「あー、なるほどねぇ。当日焦ってもどうにもならないんじゃね?」
「ですよねぇ」
「よゆーのある奴らは敵だ!うおおおー」
「あー、行っちゃった…」
「…まぁ恥ずかしいヤツが勝手にどっか行ったと言う事で学校行きましょうか」
勝手に暴走したアイツはほっといて学校についた。ふむ、芝原だけがソワソワしてるのかと思いきや割と男達はみんなあんな感じだったんだな。のはほんとしてるダイチさんと特に気にしてない俺くらいがいつも通りにしてる感じだ。俺としては壁を作ってるつもりもないんだけどどうにも威圧感みたいなのがあるらしくキッカケが無いと話しかけづらい人ナンバーワンとかいうなんとも悲しい称号を得ている。そんな俺にチョコレートを渡す同級生なんてほとんどおらず、同じ女子部員もヒナコさんが高嶺の花らしく仲の良い俺を遠ざけてるフシもあるから望み薄とかいう響きは悲しいね…
「辛気臭いでー、男ども。この合気道部のアイドルが恵んでやろやないか」
「良いんだ、俺はヒナコさんから貰えたってだけで勝ち組だ…」
「なんやの芝原の奴、どないしたん?」
「花の学生生活を夢見て散った男どもですよ」
「あー、なるほどなぁ…。そういう割にリョウスケ、アンタは余裕やんか。もらえる予定でもあるんか?」
「俺はどーにも取っ付きにくく見えてる上につるんでる人たちも中々のメンツしてるんでハードル上がってるらしいんですよねぇ」
「なんやつまらん反応してんなぁ。まぁええか、アンタには世話なったし大っき目の義理を渡しとくわ。サイズ差付けたのは内緒やで」
「あ、ありがとうございます。お返し期待しててくださいね」
「その辺ソツ無いんがアンタらしいなぁ。まぁ期待しといたるわ」
ちなみに言っておくが俺とヒナコさんの間に恋愛フラグみたいなモノは今のところ全く無い。というかそもそもヒナコさんに恋愛願望が無いんだよな。まだまだ自分で手一杯らしいんだけどそれを知ってる人はほとんど居ない訳だから寄ってくる男達をバッサリ返り討ちにするから辻斬りヒナコなんて一部界隈では言われてたりするらしい。本人は知らない…と思うけど。
さて、学校も終わって昨日から準備していたチョコケーキでも持ってベルベットルームへと行きますか。あれだけ言われてたのに結局事前告知してない俺もどうかと思うんだがこの手のイベントは伝えるのも面白くないから仕方ないよな…
「今日はみんな揃ってるかな?」
「おや、本日も修練に?」
「いや、世間の暦通り動いてみようと思ってね。バレンタインってやつさ。別に女性が義理で渡すことがあるなら男性が世話になってる人たちに持ってきても不思議じゃないだろう?」
「ふふ、その物言い実にリョウスケ様らしいですわね。しかし女性からお菓子を渡すイベントですか、そのようなものが有るとは存じ上げておりませんでした。長姉として不甲斐ないですわ…」
「まぁ、俺がこの部屋に通うのもまだまだ続きそうなんだからあんまり気にしないでくれって。それでも今年一年で大分と俗っぽいイベントやっただろう?」
「ええ、改めて人の世とは暦とのつながりを感じる一年でしたわ。立ち話もなんですわね、せっかく持ってきていただいたのですからメアリにお茶をお願いいたしましょう」
「あぁ、お願い出来るかな?」
「すぐ準備致しますわね」
本当にスグ準備は終わった。すげぇ、あっという間に切り分けとか全てのセッティングが終わってる…
「あー、どうだい?まだそこまで自信ないんだけどね。いま手伝ってる店で教えてもらったケーキのレシピなんだよ」
「ウフフ、美味しいですわ。これだけのものをいただけるだけでも十分役得と言えます。ほら、エリザベスたくさん持ってきていただいたのだから落ち着きなさい」
「もむもむもむ」
「お姉様…はしたないですよ。しかし、随分と芸達者でいらっしゃいますね」
「まぁ、元々料理とか作るのも興味あったしなぁ。バイト先もそういう意味じゃ飲食店だし。それに家だと自炊だからさ。身体作りやってる身としては食にもこだわりたくなったら止まんなくなっちゃったんだよね」
「ごくん。その恩恵に預かることができるのですから誠に良き客人でございますわね」
「調子のよろしいことで。そこまでみんなが気に入ってくれる様ならまたレパートリー増えたら持ってくるさ」
よかったよ、随分と気に入ってもらえて。リクエストが飛び交ってるがそれは俺の気分だから全スルーだけど…。もう2月も中頃、ってことはそろそろ卒業式なんだよなぁ、寂しくなるってもんだね。
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