テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
青学テニス部の同窓会で、レジェンド世代と同時期にいたはずの女子テニス部の話題が出た。彼女たちとの試合では、越前リョーマを始めとする青学メンバーが苦戦した、などの証言が得られたが・・・。
「・・・それだけの実力がありながら、我々の先輩方は名を残すことは出来なかったのですか?」
手塚翠子の疑問は氷解してはいなかった。
「まあ、彼女たちも俺たちと互角の戦いをしたことで、観戦に来ていた他校の男子連中にも一目置かれるようになったんだよ?」
「公式戦ではない、プライベートだから記録には残ってないし、俺たちもそれについて話題にする機会がなかった。そもそも学生女子テニス全体の注目度がね・・・。ジャンル違うけど、例えば高校野球でも男子と女子の注目度ってめちゃくちゃ差があるだろ? そういうことだよ」
大石と菊丸の証言である。
「・・・私たちがどれだけがんばっても、男子のように歴史に名を残すことはできない、のでしょうか・・・」
感情を押し殺し、唇を咬む翠子。
「行う前から諦めてどうする! ・・・先人達の無念は、お前たちで晴らすんだ。道の長さに嘆いてる暇があったら、その分一歩でも前に進め!」
「お父様・・・。はい! まずは全国制覇を目指します」
父・手塚国光の叱咤激励で、己を取り戻す翠子だった。
と、そこへ桜乃を車で寝かしつけたリョーマとリョーヘイ、桜夜が戻ってきた。
「ほら英二、ちゃんとごめんなさいしような」
「どうも、重ね重ねすいませんでした」
桜乃に誤ってビールを飲ませて酔っ払わせるなど、さっきからリョーマに迷惑かけまくりの菊丸、大石に促され深々と頭を下げる。
「まあまあ先輩、俺とアンタの仲じゃないスか」
「ううっ、相変わらず器の大きい漢だな〜(涙)」
「そもそも俺たちが何故レジェンド世代と呼ばれるのかと言うとだな、俺たち青学以外にも、歴史に残る名選手が山程出ていたからなんだ」
河村隆の証言である。
「知ってる、こないだバラエティ番組でお父さんと共演していた、跡部って社長さんもその一人でしょ?」
「なんだと!? そんなことがあったのか!」
桜夜の発言に驚きを隠せない手塚。
桜夜は再度タブレット端末を操作、件の番組映像を再生する。
【究極! ミラクルドッキリマン 初笑いの巻】
各界のアスリートたちが、その身体能力やテクニックを駆使して、用意された困難なミッションをクリアしたりドッキリを仕掛けたりするバラエティ番組、その正月特番である。
以下、しばらく内容の描写。
ナレーション「跡部コンツェルンのCEO、跡部景吾! このやんごとなきお方にドッキリを仕掛けられるのは、この男をおいて、他にない!」
「どうもー! 王子様こと、越前リョーマで〜す!」
ナレーション「実はこの二人、学校こそ違うが学生時代はテニスのライバル同士で、大会で度々しのぎを削っていた。今の世で言うレジェンド世代である」
「このビルの屋上から、あのビルの窓にボールを打ち込め?」
高層ビルが立ち並ぶ都会の片隅。築何十年の古びたビルの屋上から、それよりずっと新しい超高層ビルを仰ぐリョーマ。
ナレーション「今回彼に課せられたミッションは、『インタビューが終わる前に、社長のいる部屋にボールを打ち込む』こと」
ナレーション「となりのビルでは、偽のインタビュー番組の収録で、跡部社長がインタビュアーやスタッフたちと、40階の一室にいる。もちろん彼らもみんな仕掛け人だ」
右手にラケットを持ち、入念にシミュレーションを繰り返すリョーマ。現役を退いて以降、利き腕の左でラケットを持つことは控えるようになった。というか、左で勝手に打つと
ナレーション「越前リョーマが部屋にボールを打ち込むと、光と煙と轟音で部屋一面が大パニックになる仕掛け。そうとも知らず跡部社長、インタビューに律儀に答え、新年の抱負やら経営の秘訣やら、得意気に語っている」
チャレンジスタート。ビルの窓目がけて矢継ぎ早にショットを繰り出すリョーマ、しかし風が強く、思うように狙いが定まらない。
ナレーション「誰もが諦めかけた、その時、奇跡が起きた!」
何十回目のショットなのか、ボールは跡部社長のいる部屋の窓に吸い込まれる。センサーが反応、たちまち爆発音とフラッシュ、そして吹き出す煙。
「ど、どわあっ!? なんだ、テロか、暗殺か!?」
ナレーション「当然のことながら、パニックになる跡部社長。と、そこへ部屋においてあったテレビが作動した」
「どうも、跡部さんお久しぶりです。新年明けましておめでとうございます」
「げえっ! お前は! 越前リョーマ!」
ドッキリ大成功でドヤ顔のリョーマと、この上なく驚愕の表情の跡部。今回の出演で、その面白キャラが大いに受けた跡部社長、このあとも度々テレビに呼ばれるようになるのだが、それはまた別の話だ。
番組描写終わり。
「面白すぎるだろwww俺このまま日本に残ろうかなwww」
菊丸は笑い転げ、のたうち回っている。
「正月番組など、毎年つまらないのが多いからチェックしようともしてなかったのだが・・・迂闊だった」
苦笑いし、おのれの不明を恥じる手塚。
「あともうひとり・・・そうだ、お母さんと同じ病院で働いていた、看護師の、キリハラって人!」
「・・・それはもしや、立海大の切原赤也か!?」
「そのもしやですよ」
リョーヘイの証言に反応する大石、それに続くリョーマのさらなる証言は、驚くべきものだった。
ー回想シーンー
若き日のリョーマが、試合中の大怪我で入院、桜乃の治療を受けていた頃のこと。同じ病院にて、もうひとり懐かしい顔と出くわした。
病院の屋上、両足ギブスで車椅子のリョーマと、白衣で身を固めた医師の桜乃、そして看護師の切原。
「俺はバカだからよ、償いといえばこんなことしか思いつかなかったんだ」
「充分だと思いますよ・・・」
ー回想終わりー
「確か、対戦相手に怪我をさせるようなダーティーな試合をしてたって、本に書いてありました」
「別にアイツに限った話じゃないんだが・・・あ、いやいや、そうか、そんなふうに名前が残っちまったか」
「その事を大いに恥じた彼は、せめてもの償いとして怪我人を治すほうに行ったわけだな」
「そうか、あいつがねぇ・・・」
流れた歳月の長さと人の移ろいと。思わずしみじみする一同であった。
「お、寿司がまだ残ってるな。も〜らい」
大皿にひとつ残されたイカを、無造作に口に放り込む菊丸。
「*@$%・−¥¥〜!」
次の瞬間、涙目で口を押えてのたうち回る彼の姿があった。
「パパ〜!?」
菊丸の娘たちの悲鳴。
「大人になってもワサビに弱いのは相変わらずですね、先輩」
リョーマの仕業だった。ワサビを増量した寿司を、菊丸の目に付くところに、これみよがしに置いたのだ。菊丸の性格と弱点を見越した、リョーマのささやかな仕返してある。
「昔馴染みを怒らせると、こういうのが怖いんだよなぁ・・・」
苦笑する大石だった。
「可南子〜カナちゃ〜ん?」
「ん〜」
うつらうつら、リョーヘイお兄ちゃんの呼びかけにも生返事な可南子。
「お父さん・・・」
「可南子、もう眠いか?」
「ん〜」
「お母さんのとこ、行く?」
「ん〜」
幼い娘を抱き上げ、まずはトイレに連れて行くリョーマ。
「あいつもすっかり、いいお父さんになっちゃったな・・・」
「二人同時に世話してた頃を思えば楽だろ。そうでもないか?」
またも先輩たちはしみじみ。
「時間も時間だし、そろそろおいとましますよ。いいよな?」
「僕らはいいよ〜」
「あ、お母さんの車、どうしよう!」
「あ〜いい、そのまま駐車場に置いといていいよ」
「すいません、河村先輩。また後日取りに来ます」
越前一家は揃って帰り支度。
「先輩方、ご馳走様でした」
財布を出そうとするリョーマを制するのは。
「今日は俺が出すよ。越前・・・それにみんな。楽しかった。今日はありがとう」
「手塚部長・・・」
「僕たちも。レジェンドの先輩たちから貴重なお話の数々、ありがとうございました」
「リョーヘイ・・・よそ行きだからって、こういうときだけ丁寧になりやがって、こいつ」
「リョーヘイくん、桜夜ちゃん、また明日学校でな!」
「大石先生・・・」
「桜夜ちゃん、レオちゃんにリブラちゃんも、また学校を案内しますね」
「翠子さん、これからよろしくおねがいします」
後日。娘たちの入学&入寮を見届けた菊丸英二は、妻と教え子たちの待つエチオピアの地へと帰ることに。その空港にて。
「大石〜! 娘たちを、よろしく頼む! レオ、リブラ、困ったことがあったら先生に言うんだぞ!」
「おう、任せろ!」
「パパ、私たち、頑張るから! ママをお願いね!」
娘たちと友に見送られ、レジェンドは大空へ立った。
つづく
いよいよ始まった、リョーヘイ&桜夜の学校生活。普通に過ごせるはずもなく!? 次回「新世代テニス部へようこそ! 前編」お楽しみに!