テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
自販機のある休憩室で、時を越えて親子5人(可南子も合流した)が談笑中。
自販機でドリンクを買うリョーマ。銘柄はもちろん「ポンタグレープ」。
リョーヘイ「父さんは、やっぱりそれなんだ。未来の父さん(37歳)もよく飲んでるよ」
リョーマ「あっ、そう・・・」
性格は違うが二人の容姿はとても似ている。イトコ、もしくは別々の家庭で育てられた双子と言っても通じる。リョーヘイが前髪を染めてなければ見分けが付かなかっただろう。
桜夜「ちなみに、リョーヘイは同じポンタでもオレンジが好きなのね。私はアップル、可南子はレモンフレーバーよ」
桜乃「みんなそれぞれ違うんだ・・・」
こちらもよく似た顔だ。しかし桜夜の方が若干背が高く、鍛えられたアスリート体型なので、見た目の印象は大きく異なる。ちなみにトレードマークの三つ編みも、足元まで届かん勢いの桜乃に対して桜夜のそれは胸のあたりまでしかない(付け根で輪っかにしているので、実際はもう少し長い)。
桜夜「お父さんでポンタと言えば・・・こないだ、普段お酒飲まないお父さんが、何故かどでかいビールジョッキを持ち出してきたのね」
可南子「そんで、こーんなでっかいポンタ買ってきて、冷やしてたの」
全身で大きさを表現する可南子。まさか1.5リットルより大きいスペシャルサイズなのかっ!?
リョーヘイ「でかいジョッキにポンタグレープをなみなみとついで・・・グビグビと一気に飲み干したんだ! あれには流石にその場にいた全員、開いた口が塞がらなかったな〜」
桜乃「まさに大人の飲み方・・・(苦笑)」
リョーマ「今度やってみようっと(ボソッ)」
桜乃「え!?(驚愕)」
晴れて青学テニス部への入部の日を迎えたリョーヘイ。しかし彼がかの伝説の男・越前リョーマの息子だと知り、部員たちがにわかに色めき立った!?
先輩たちに続いて、新入部員たちの挨拶。
「はじめまして、越前リョーヘイです。もうバレてるみたいですが・・・はい、僕の父は越前リョーマです」
「やはりか・・・」
「あいつ、小学生時代からあちこちの大会で上位入賞してたな」
「双子の姉が女子部にいるってよ」
口々に噂する部員たち。
「こらお前ら、静かにしろ!」
大石先生も注意せずにいられない。
次々と新入部員が挨拶する、その中でひときわ目を引く生徒がひとり。
「
自己紹介したその姿を見て、一同はまたもざわつく。
「あれ・・・どう見ても、女子だよなぁ・・・?」
周囲と同じような服装で、仕草も男子のそれながら、顔と体つきは間違いなく女子のそれである。なお、新入生にはまだ部活ユニフォームは支給されていないので、彼やリョーヘイは自前のテニスウェア姿。他の面々も、各々体操服やジャージを着用。
「言ってもいいかな・・・?
すかさず大石先生の説明が入る。
「トランスジェンダー・・・つまりこの場合は、女の体で男の心、ってことですか?」
竹田部長がすかさず尋ねる。
「そうだ。だからみんな、『彼』は『男子』として扱ってやってくれ。なあに、すぐ慣れるさ」
「・・・・・」
一方その頃、こちらは第二テニスコート。越前リョーヘイの双子の姉・竜崎桜夜も女子テニス部にて、同じような場面に出くわしていた。
「ドイツから来ました、ヨーコ=ブランデンブルクです、趣味は編み物です・・・」
「って、なんで男子が女子テニス部にっ!?」
それは優しい顔立ちをしていながら、乙女のごとき仕草をしていながら、女子用テニスウェアを着ていながら、紛うことなき男子であった。当然のことながら、女子たちはざわつく。
顧問の岸田先生曰く、
「あー、彼は男子だが心は乙女なんだ。どうしても女テニに入りたいというので、特別に許可した。ちなみに彼の名は日本の名前を付けたいと思った両親が、ヨーコが女の名だと知らずに付けたそうな」
「男子が女子部に入部・・・そういうの、ありなんですか?」
部長の手塚翠子の問いに、
「ありです」
力強く応える岸田先生。LGBTQにも寛容な、新世代の青春学園である。
「竜崎桜夜です。テニスは小さい頃からずっとやってます!」
「もっと他に言うことあるでしょ。アンタの親が有名なあの人だって、ネタは上がってるのよ」
桜夜の自己紹介に、先輩のひとり、三年生の櫻田=ファー=ミリアから厳しい追及が飛ぶ。
「じゃあ、ぶっちゃけますけど・・・。私のお母さんは、世界的に有名なスポーツ専門医、竜崎桜乃博士です!」
「そっちか〜い!!」
先輩の目論みなど先刻承知な桜夜のボケに、見事にのけぞるファー。この二人にけっこうな因縁があることは、本人たち含めまだ誰も知らない。
「エチオピアから来た菊丸レオです。ワタシたちのパパ、菊丸英二を知らないとは言わせないデスよ!」
対抗心に火がついたのか、菊丸レオが尊敬する父の名を出すも、
「・・・誰だったかな、それ?」
妹のリブラ共々、塩対応に盛大にズッコケた。
ふたたび第一テニスコート、男子部。ひとしきり自己紹介が終わったところで、レギュラー部員たちは新入部員に帽子を配り歩く。
その帽子というのが、形はオーソドックスなテニスキャップ、色はレギュラージャージと揃いの青白ツートンカラー、青学の校章とロゴ入り。なのだが、頭頂部に・・・。
「先生、これは・・・紙風船?」
「そうだ。今から君たち新入りの実力を見せて貰うぞ」
セリフとアイテムがどうにも結びつかない。
「全員行き渡ったな、よし、それじゃ、その紙風船を膨らませてから帽子を被れ。そしてラケット持ってコートいっぱいまで散らばれ」
リョーヘイも含めて総勢8名の新入部員たちがコートの中、その他はフェンス外に退避。
「これから諸君には、殺し合いをしてもらう! 冗談だ!」
「唐突に何言い出すんですか!」
「足元に大量に転がったボールを、お互いに打ち合ってくれ。頭の紙風船を潰されたり、帽子やラケットを落とされたり、本人がノックアウトされたら脱落。最後まで生き残った者に、レギュラー枠の末席を与えよう!」
レギュラーの座をかけた、バトルロイヤルが開幕。飛び交うボール、歓喜と怒号、雄叫びがこだまする。
その様子を先生の横で見ていた、竹田部長がつぶやく。
「先生、どう見ても・・・あの、越前リョーヘイを、みんながよってたかって攻撃してるようにしか見えないんですが」
「やはりこうなったか・・・」
大石先生には予想通りの展開だった。
「名選手を親に持つヤツの宿命だよ、力丸くん。リョーヘイくんの場合は特に、本人も実績をあげていたから、なおさらね」
「いっつもそうだ・・・。父さんが強い選手だったからって、やる前からみんな警戒しまくってくれちゃってさ」
飛んでくるボールを巧みに避け、防ぎ、打ち返しながらリョーヘイはボヤく。
「テニスをやるからには、父さんのように強くならなければならないぞ。そうでないと周りは納得しないんだ。幼い頃、父さんは僕たちにそう言った」
カウンターで相手の紙風船を正確に射抜きながら、リョーヘイは過去を振り返る。
「幼い僕たちにはその意味はわからなかった。でもじきに、大会に出るようになるとようやく理解した。陰に日向に、相手は口々に父さんのことを引き合いに出すんだ・・・」
もう残っている相手はいないか? 周囲を見渡しつつリョーヘイは幼き日に思いを馳せる。
決着が付いたと思った彼は、一言つぶやく。
「まだまだだねっ☆」
と。しかし・・・
「本当にまだまだだな! まだ試合は終わってないぞ!」
その声とともに弾丸のごときボールの一撃。寸前でかわすリョーヘイ。声の主は樺雪緒だ!
「もう僕たち二人だけか。じゃあタイマン勝負だ!」
言うなりリョーヘイは勇躍、コートの一方に着地、ネットを挟んで雪緒と向かい合う。そう、通常の試合と同じように。ちなみに脱落した他の方々は、速やかにフェンス外に退避している。
「行くぞリョーヘイ!」
「来いユキオ!」
雪緒のツイストサーブから始まった試合、お互いに一歩も引かず。先生も部員たちも思わず見入る、手に汗握る攻防。
「アイシクルダンサー!」
樺雪緒の必殺技が発動、テニスコートが突如としてスケートリンクと化した。雪緒はその上を軽快に滑り、華麗にターンを決めながらスマッシュ。空気中の水分がダイヤモンドダストとなり、戦場を美しく彩る。断わっておくが、あくまでテニスの試合の描写である。
「スターダスト・アベニュー!」
応戦するリョーヘイ、冷気をふんだんに纏った球を一度宙に逃がし、落ちてきたところを一撃。ラケットが氷の破片を零す。星屑を撒き散らしながら、ボールは彗星と化した。
「うわっ!」
頭上の紙風船への直撃は避けたものの、派手に転んでしまった雪緒。慌てて帽子を押さえる。
「両者とも、そこまで!」
大石先生が声をかける。
「その勝負は先生が預かる。二人とも合格、レギュラーだ!」
「よ、よろしいのですか?」
副部長の不知火が、恐る恐る尋ねる。
「どっちみちこの後も、出場メンバーの枠を奪い合うからね。補欠が一人になろうが二人になろうが変わりないさ」
「立てるかユキオ、僕たち合格だってさ」
新たな友に手を差し伸べるリョーヘイ。
「噂以上だった・・・強いなリョーヘイ」
その左手を、力強く握り返す雪緒。
「ユキオもやるなぁ。これからもよろしくな」
帽子と紙風船は、そのまま入部の記念品となった。
一方こちらは第二テニスコートの女子部。先ほどの男子部と同様のバトルロイヤルが、新入部員10名(一年生8人、留学・転入生2人)で行われた。
造花のバラを髪飾りとしてそれを撃ち落とす戦い、先ほどの父の扱いに憤慨した菊丸姉妹が大いにハッスル。桜夜以外を秒殺して終わった。そのまま三人がレギュラー入り。
夕方。仕事帰りに幼稚園に可南子を迎えに行き、父リョーマは帰路につく。ついでに双子も回収して、親子四人が車の中。
「可南子、幼稚園楽しかったか〜」
「うん」
「ほら兄ちゃんからお土産だ、紙風船だぞ」
「お姉ちゃんからは、ほらこれ、造花のバラ」
「ありがとう、にいちゃん、ねえちゃん」
「ただいま〜」
「お帰りなさい、お疲れ様」
帰宅した一行の目に飛び込んできた光景、それは・・・。
「タカ先輩のところに車を取りに行ったら、ついまた食べたくなっちゃって・・・買ってきちゃった♡」
ダイニングテーブルいっぱいに、木桶から寿司を並べる母の姿だった。
前日に置いてきた車を取りに、河村寿司に行った母桜乃。ちなみに行きに使ったスクーターは車のトランクに載せて帰った。
「昨日は木彫くんが握ったけど、今日のはタカ先輩の渾身の品よ」
「はは、そりゃ楽しみだ」
平和な一家の夜は更けていく・・・。
つづく
頼れる先輩、手塚翠子から越前リョーヘイに突然のお誘い! これはラブロマンスの予感が!? 次回「リョーヘイくんと翠子ちゃん」お楽しみに!