テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
先日、手塚翠子の家が近所だと分かったリョーヘイ、桜夜と共に翠子と登校することにした。
「翠子さ〜ん、おはようございます!」
「まあ、わざわざこちらへまわり道してきたの!」
仲良くバスで登校する三人。校門をくぐるその姿を、苦々しい思いで見つめるひとりの人影。
学年別に分かれた下足室。上履きに履き替えようと蓋を開けたら、リョーヘイの下駄箱に怪しい物が。
リョーヘイ は げたばこ を しらべた。
なんと ラブレター? を みつけた!
「リョーヘイも隅に置けないねぇ、流石は私の弟」
桜夜にからかわれつつ、その手紙を読む。
越前リョーヘイどの 大事なお話があります
お昼休みに 屋上に 来てください
河原あずき
「やっぱりラブレターだわ、女の字に女の名前」
「ここは真に受けて、要求に従うべきだよね」
そしてお昼休み。学食で食事を済ませたリョーヘイ、はやる気持ちを抑えつつ屋上へ。
「来てくれたのね、越前リョーヘイくん・・・」
どこからか声がしたかと思えば、突然物陰から人の気配が・・・。
「覚悟っ!」
誰かが襲ってきた!? 咄嗟にその一撃を回避するリョーヘイ、しかし相手は攻撃をやめない!
手に持ったナニモノかを振り回す、謎の襲撃者。リョーヘイはその攻撃を避けて、避けて、避けて、間合いを取って相手の姿をようやく認識できた。
女の子だ! 見たところリョーヘイと同じ学年のような、ツインテール髪の小柄なロリ系だ。そして手にした得物はフライパンだ!
「君は誰だ! 手紙の名前・・・河原あずきとは君のことか!? あれはラブレターじゃなくて果たし状だったのか!? 何故僕を狙う!」
矢継ぎ早に飛び出すリョーヘイの質問に、可憐な襲撃者の回答は。
「アンタを叩きのめしてから答えてやるわ!」
問答無用だった。
為す術なく、屋上から逃走すべく階段を駆け下りるリョーヘイ、追う少女。突然始まった追いかけっこに、周囲の生徒たちも野次馬モードに。
「助けて桜夜! あれはラブレターじゃなかった、なんか命狙われてるよ!(泣)」
「うわ〜、今ちょっと手が離せないのよ! せめて5分! 5分間逃げ延びてちょうだい!」
桜夜の助けを得られなかったリョーヘイ、ひたすら逃げる。それをひたすら追うフライパン娘(仮)。
校舎の外、広い場所に出たふたり。
「訳もわからず殴られてたまるか! もう一度聞くぞ、君は誰だ! 何故僕を狙う!」
「・・・あたしの名前は手紙にも書いた、河原あずきよ。3年3組、料理部の部長なの」
まさかの上級生だった。
「仮にも料理人が、その命たる調理器具を血で汚していいのか!」
「包丁じゃないからセーフ!」
「どんな基準だよ、十分アウトだよ!」
「アンタは翠子おねえさまと、ずいぶん仲がおよろしいのね。他に彼女いるくせに! 二股かけるなんて信じられない!」
どうやら、とんでもない誤解があったようだ。
「他に彼女って・・・。え〜! いや、あの二人とはそんな関係じゃ・・・」
「問答無用!」
ふたたび襲い来る河原あずき。防戦一方のリョーヘイ。
「リョーヘイお待たせ、これ受け取って!」
桜夜の声だ! そして飛んできたのは愛用のラケットとテニスボールだ!
「よおし、これさえあれば!」
あずきめがけて強力なサーブを打つリョーヘイ、しかしその一撃はフライパンで打ち返された。カ〜ンと心地良い音が響き渡る。
「ええい、やるな!」
「リョーヘイ、ここはフォーメーション
「乗った!」
あずきの背後に回った桜夜の提案に従い、体勢を整えるリョーヘイ。困惑するあずき、その一瞬のスキを突き、双子が動いた!
「トングホールド・ブロック!」
バチ〜ン!
あずきが持つフライパンめがけて、桜夜とリョーヘイが前後同時にラケットを叩きつける! トングで挟まれたような状態のフライパンに、トングでは絶対に出ない衝撃が走る。
「ぐっ!」
手が痺れたあずき、たまらずフライパンを落とす。
と、ここでようやく翠子がやってきた。
「河原さん、なにやってるんですか!」
「あ、おねえさま・・・」
「お知り合いですか?」
「古い友人です・・・」
「おねえさま、このリョーヘイとかいうやつ、おねえさまの彼氏じゃ?」
「彼とはそんな関係ではありません!(キッパリ)」
「そうもハッキリ否定されると、それはそれでショックだなぁ・・・」
思春期の少年の心に、深い何かが刻まれた。
「だいたい、なんで私の弟が女たらしのクズ野郎なのよ!」
「桜夜、誰もそこまで言ってない・・・」
続く桜夜のセリフに、野次馬していたクラスメートたちが、大いにざわついた。
「え・・・弟って・・・?」
「ええ〜っ!? 桜夜ちゃんとリョーヘイくんって、双子のきょうだいだったの〜!?」
「分かりづらくて、すいません!」
女子生徒の驚く声に、ヤケ気味ながら素直に謝るリョーヘイ。
「初日の自己紹介で、双子だって説明したよね? 二卵性だから似てないって」
「案外みんな、人の話聞いてないんだよね」
「・・・つまり、外見はもとより名字も違う二人が親しくしているのを、河原さん始め大勢が恋人同士と誤認していたと・・・」
翠子の的確な分析である。
「傍から見て、そんなに僕ら、ラブラブだったの?」
「なんだかなぁ・・・」
困惑の度合いを深める双子。
「あの、名字が違うのはどういう・・・」
「両親が夫婦別姓制度を使ったから! 入籍してとても仲がいい二人だけど、お父さんの合理的判断でお母さんの名字は変えない方がいいとなったんだ」
「私の名字『竜崎』は、大ばあちゃんにおばあちゃん、お母さんから受け継いだ私の誇りよ!」
桜夜が胸を張る。
「そんな事言って桜夜、何年前だったか? お母さんと大喧嘩して『もう私、お母さんの名字やめてお父さんのにする〜!』って大騒ぎしてたじゃないか」
「そ〜だったかな〜?」
「勘違いから襲ったりして、本当にごめんなさい」
「はあ、もういいですよ・・・、とにかく色々な誤解が解けてよかった」
平謝りのあずき、あっさり許すリョーヘイ。
「あ〜君たち、もう揉め事は解決したのかね? なら指導室に来なさい」
「あう・・・」
こんな騒ぎを起こして、先生方が黙っているはずはなかった。このあとめちゃめちゃ事情聴取された。
一方その頃、双子の両親たる越前リョーマ&竜崎桜乃夫妻は、テレビの討論番組に出演していた。(元)スポーツ選手と医師という組み合わせの二人は、夫婦揃ってメディア露出することも珍しくない。
今回は「選択的夫婦別姓制度」施行から15年経ち、社会への影響その他を問うというテーマで、スポーツ界でいち早く同制度を取り入れた夫妻にも白羽の矢が立った、というわけだ。
「あなた・・・私、今からでも『越前桜乃』になってもいいのよ?」
「いや待て、それこそ社会への影響が大きすぎる。俺たちに触発されて夫婦別姓を選んだ人たちを裏切ることになるはず。もう個人の問題じゃないんだ」
討論は、大いに盛り上がっていた。
つづく
旧友・小坂田朋香が告げる、息子健児の出生の秘密。それには、越前リョーマの過去が関係していた!? 次回「朋香と健児と大女優・導入編」お楽しみに!