テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
「と、父さん・・・、なにこれ、この漫画・・・」
「ちょ、何処で手に入れた!?」
「うわ、リョーヘイ、なにコレ!? これ、少年時代のお父さんと国光さんよね、うわ〜、男同士でキスしたり、うわ〜!!」
「当時、父さんたちのファンの人が作った、いわゆる二次創作の漫画だ。他にもレジェンド世代のほぼ全員が、そういう乙女の妄想のエジキにされてる」
「まさかお母さんまでエロい目に合わされてないよね!? やるならせめてお父さんとだけにしてほしい!」
「リョーヘイ・・・男の先輩として、忠告しておこう。お前も人気が出たら、いずれこういう目に合うんだ。お相手は、部の先輩かな?」
「いやだあああ!?(爆泣)」
ここは越前竜崎邸。15年前のあの日、病院のレストランにて、リョーマと桜乃は刈谷めぐみと対面した。その思い出を語る桜乃、それを聞くリョーマと朋香。
「いや〜、そりゃエライ目にあったわね、あんたら」
話を聞いた朋香がしみじみ語る。
「で、退院して桜乃と同居することになって、入院中衰えた筋肉と実戦のカンを半年かけて元通り以上にして、見事に現役復帰と相成ったわけだな」
「トレーニングのとき以外は基本家にいたから、半年間、専業主夫やってくれて。その習慣が今でも続いてるから助かってるわ」
しみじみ語る、越前竜崎夫妻。
「なんかあの当時、世間ではリョーマ様の再起不能説や死亡説まで流れてたのよ。けしからん話よねぇ!」
「・・・無理もないわ、全治半年の大怪我だもん。私も初めて診察したとき、交通事故にでもあったかしらと思ったわ。何回も手術してさ、治療とリハビリの最中も、『これは身体のどこかに麻痺や後遺症が残るかも』と、彼にも覚悟を決めてもらっていたぐらい。結果的に杞憂に終わったけど」
主治医・桜乃の証言である。
「見事そこから不死鳥のごとく現役復帰されたリョーマ様、おまけに結婚のサプライズまであったもんだから、みんな大騒ぎでしたわ〜」
そう言って朋香は、タブレットで当時のニュース映像を再生する。ナレーションの声が聞こえてきた。
「・・・試合中の怪我で復帰が危ぶまれ、再起不能説まで流れていた、越前リョーマ選手が、先日行なわれた復帰戦において、見事ストレート勝利! 一年ぶりの完全復活をアピールしました。さらにその日の夜、公式SNSにて自身の結婚を発表! お相手は、怪我の治療に当たった医師の方で、しかもなんとこの二人、中学時代の同級生で、かつて交際していた仲であった事が判明! インスタグラムでは、学生時代のツーショット写真と並べて、全く同じ構図の現在のお二人のツーショットを掲載。『奇跡のような出会いと、夢をあきらめない不屈の精神が、二人を結びつけました』とコメントしております・・・」
「
「
互いに相手を称え合い、尊敬し合う夫婦の図。
「えーと、何の話だったっけ・・・そうだ、刈谷めぐみだ! 俺が復帰する直前に、桜乃がアイツと会ったことあるって話題だった」
横道にそれたことに気付いたリョーマ、軌道修正。
「・・・今思い出しても、腹が立つ。あの人、彼の体調を気遣う素振りのひとつも見せなかったのよ。浮気現場を目撃したからだとしても、ちょっとはねぇ・・・」
桜乃は普段、他人のマイナスポイントをこんなふうに何年も引きずるタイプではない。朋香はそれを知っているがゆえに、彼女の「愛するリョーマを苦しめた(であろう)女に対する深い憤り、怒り、悲しみ」をおもんばかるのであった。そして、友のその思いは朋香もまた同じであった。
「そもそもリョーマ様! なんでそんな自己中な女と付き合っていたんですか? ご自分から女性に声をかけるタイプじゃないですよね!?」
朋香の質問は当然であった。それに対し「とうとう来たか・・・」と言いたげな表情のリョーマは。
「俺だってなぁ・・・。ひどいこと言わせてもらうと、付き合いたくて付き合ってたんじゃないんだ」
「本当にひどい!」
「でも当然でしょう!」
「あの当時・・・プロスポーツ選手としてそれなりに名の売れてきた俺は、とあるセレブが主催するパーティーに招待されたんだ・・・」
越前リョーマが語る、15年前の出来事。
※回想シーン※
※普段は三人称の作品ですが、ここだけリョーマの一人称視点でお送りします。
場所も主催者の名前も忘れたが、そこはとても大きな会場だった。一言で言うなら、ファンタジー映画に出てくるお城の舞踏会。芸能界、スポーツ界、政財界・・・各界の著名人が大勢参加していた。新進気鋭の若手から、ちょっとここでは名前を出すのもはばかられる人たちまで、多彩な顔ぶれ。
普段はプライベートでもあまりお酒を飲まない俺だったが、その日に限っては、会場の雰囲気に当てられたのか、勧められるままにしこたま飲んだ。・・・せめて、自分がどれだけアルコールに強いか、それだけでも把握しておけば、と今なら思う。
酔い潰れて、前後不覚になり、ソファーに寝かされた俺。朦朧とした意識の中で、聞こえてきたのは「この人はわたくしが送ります」という、聞き覚えのない女の声。
それからしばらくして、俺を誰かが数人で運び出し、車に乗せられ、走り出したところで・・・意識が途切れた。
気がついたら、朝だった。小鳥の鳴き声、爽やかな光、そして見知らぬ部屋とベッド。
薄布一枚だけを被せられ、俺は一糸まとわぬ姿。隣で誰か寝ている。恐る恐る、そちらを向く。
「おはようリョーマさん。昨夜は素敵な夜だったわ」
裸で寝ている、見知らぬ女性。それが、刈谷めぐみだった。
※回想終わり※
「・・・あなたらしいと言えばらしいけどねぇ〜」
そう言って顔を伏せ、くっくっくっ、と肩を震わせながら、右隣の夫をバシバシ叩く妻。これでは笑っているのか泣いているのかわからない。
「酔い潰れて、お持ち帰りされて、朝チュンですか。その時にもう、いただかれちゃったんでしょうね〜」
呆れ気味に語る朋香。
「・・・一生の不覚とはこのことだよ」
妻に叩かれるまま、リョーマはつぶやく。
「・・・元カノの悪口なんて聞きたい?」
「続けて・・・あなたがどんな目に合ったか、共通認識にしておかなくちゃ」
「同意」
「その後もアイツは俺の住み家に押し掛けてきたり、バカ高いドレスや宝石をねだったり、俺の持ち物勝手に処分しようとしたり、すっかり彼女ヅラさ。しかもこっちの事情なんざ何処吹く風。あの時も、明日試合だからゆっくり休みたい、と言っても聞き入れてくれなくてさ」
「・・・それで、あの大怪我ですか」
朋香が納得したようにつぶやく。
「対処できない球じゃなかった。確かに凄まじい豪速球だったが、普段だったら簡単に打ち返せた。でも前日からの徹夜・・・いやそれ以前に、アイツのせいで自分のペースがすっかりグチャグチャだった。それでだろうな・・・」
リョーマが述懐する。遥か遠い過去のようで、つい最近のような、そんな出来事。
「・・・さる筋から入手した、リョーマ様が対戦相手の必殺技・スカイクウェイクを食らって綺麗に吹っ飛ぶ映像がありますが・・・」
「・・・またの機会にしとくよ」
「私も・・・」
「まあ、あの大怪我があったからこそ、こうして桜乃と再会して結婚、そして三人の子供にも恵まれて・・・。人生万事塞翁が馬、災難のようで何が幸いするかわからないってね」
人生や運命の妙を噛みしめる、越前リョーマ37歳であった。
つづく
刈谷めぐみの実態が次々と明らかになる。しかしもっとも肝心なことが残っていた! 次回「朋香と健児と大女優・結論編」お楽しみに!