テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
越前リョーマと同じレジェンド世代、学生時代のライバルにして、大企業の総元締めである跡部景吾にお誘いを受け、越前・竜崎一家は軽井沢の別荘地へと向かっていた。だが・・・。
「お、お父さん・・・、カーナビが壊れた・・・何も映らないよ・・・(泣)」
「情けない声を出すな!(汗)とにかく道は続いている!」
弱音を吐くリョーヘイを叱咤するリョーマ。一家は彼の運転する紅のワンボックスカーで移動していたのだが、道を間違えてしまったのだ。ちなみに助手席にリョーヘイ、後ろの座席は中央の可南子(チャイルドシート)、右に桜乃、左に桜夜。
「どこか適当なとこで停まって、助けを呼んだほうがいいんじゃ・・・」
「停まるにしても、こんな山道じゃ。せめて対向車とすれ違える場所じゃないと」
桜夜の提案はもっともだったが、実行するには場所が悪かった。
車を走らせていると、不意に視界が開けた。さっきまで田舎の山道だったのに、急に都会的な建物の集まる集落? が出現したのだ。
駐車場に車を停めるリョーマ。全員降りて、状況を確認する。よく見ると、立ち並ぶ建物は住宅ではなく店舗の類いだ。白だのピンクだの、ポップでカラフルな色使い。いかにも若い女性向けを狙った感じだ。
「静かだ・・・。まるで人の気配がない」
これまで通ってきた山の集落とは明らかに別物。ここはどこだ? リョーマは神経を研ぎ澄ませ、あたりの様子を探ろうとするも・・・。
「まあまあ、ずっと運転してきたから疲れてるでしょ。とりあえず休憩しましょう」
妻の的確な提言を受け入れることにした。
ピクニック用の椅子とテーブルを広げ、サンドイッチと飲み物で軽くランチタイム。
一息ついたところで、車の位置が駐車場のマス目とずれてることに気付いたリョーマ、車を動かそうとするも・・・。
「エンジンがかからない・・・」
「うわー、煙吹いてる!」
どうやら愛車は故障してしまったようだ。
「この車も、ずいぶん長く乗ってたからねぇ。それこそ
桜乃は、リョーマとの思い出を語った。
※回想シーン※
全治半年の怪我から回復、退院したリョーマと、彼を治療した桜乃。ふたりは同居を始めた。ある日リョーマの運転で買い物に行くことにした桜乃だったが・・・。
「こ、これ、ひとりで運転するには大きすぎない!?」
彼女が驚くのも無理はない。駐車場から出てきた彼の車は、独り者には似つかわしくないワンボックス。
「どっかの大会の副賞で貰ったやつを、そのまま乗り回してるからな〜」
こともなげに言ってのけるリョーマ。
「あ〜あ、無頓着。相変わらずの無頓着・・・」
嘆息する桜乃。貰った車を売って、別の車に買い替えるという発想は出なかったらしい。ふと中を覗いてみた、するとある事に気付いた。
「他の誰かを乗せたこと、ないの? あの、めぐみさんさえも?」
「よく分かったな。アイツ、こんな車じゃなくて黒塗りセダンか高級スポーツカーじゃないとヤダとか言いやがって・・・」
友人を乗せて走ったこともなさそう。大人になっても、人付き合いは相変わらず不器用らしい。七年の歳月を経ても、色々変わっているようで彼は変わってなかった。なんとなくほっとした桜乃だった。
「お邪魔します・・・」
助手席に座ると、感慨深いものがある。いよいよ彼のパートナーとして正式に認められたと、勝手に気合いが入る。
「まあ、子供が四人ぐらいいれば、この車もちょうど良くなるかもねw」
「おいおい、誰が生むと思ってるんだ?w」
※回想終わり※
「それ以来15年、よく働いてくれたわ」
「実際にはそれにプラス2年だ、ハタチの頃に貰ったから。成人祝いを自分で勝ち取ったと言われたのを思い出した」
「それよりどうするのさ、助けを呼ばないと!」
愛車の労をねぎらう夫婦に、リョーヘイのツッコミが入る。
「まあ慌てるな。いま連絡するから、そこら辺を探検したらどうだ?」
「んじゃ、三人で行ってくるわ!」
桜夜、リョーヘイ、可南子の三人は、この謎の街を調べることにした。
「あんまり遠くに行かないでね〜!」
行けども行けども、人の気配はない。聞こえるのは風の音、鳥獣の鳴き声。建物には「ペンション」「リゾートホテル」などの文字が見える。が、長い年月放置されてボロボロだ。
喫茶店らしき建物を覗いてみても、人もいなけりゃテーブルや椅子もない。数少ない遺物のポスターには「’93」とある。どうやら本当に1993年を最後に人が消えたようだ。
「誰もいない町って、こんなにもボロボロになっちゃうのか・・・」
「ここに住んでた人たちは、どこ行ったの?」
「わからないわ・・・。あるいはここは人が住むところじゃなくて、遊び場の施設なのかも」
かつて大勢の人が遊びに来ていたであろうプールにアスレチック遊具にテニスコート。どれも皆、割れ目から草が生えて見る影もない。
と、可南子がここで恐ろしいものを発見した。
「にいちゃん、ねえちゃん・・・遊園地、死んでる・・・」
「!!!」
それはまさしく「遊園地の墓場」と呼ぶべき光景だった。塗装が剥がれたティーカップ、錆びついた観覧車、草にまみれたメリーゴーランド、朽ち果てて崩れた展望台、その他の「死んだ」遊具の数々。
「怖いよう、もう帰ろうよう・・・」
これ以上いると、本当に可南子が泣き出してしまう。双子は撤退を選択した。
車に戻って、事の次第を報告する双子。可南子はお母さんに抱かれて落ち着きを取り戻した。
「間違いないな・・・ここはいわゆるバブル廃墟だ!」
「何それ!?」
「父さんも話で聞いただけだが、かつて日本中が好景気で浮かれていた、バブル時代というのがあったそうな。そこで、金と暇を持て余した連中相手に、遊び場を提供するビジネスも当然生まれる。ここは週末や夏休みとかで泊まりがけで遊ぶリゾート地だったんだよ」
「こんな山奥で!?」
「山奥だろうと来たんだろうな。隠れた穴場として案外人気だったかもよ」
ポカンと口を開けて父の話を聞く双子。父の代ですら遠い過去の話なのに、それよりさらに下の世代である自分たちには、まるっきりファンタジーのように思える。
「あ、それより助けは呼んだの!?」
桜夜は肝心なことを思い出した。
「跡部さんに連絡したら、迎えに来てくれるそうだ」
「よかった・・・」
「迎えが来るまで時間があるな。何して遊ぼうか?」
場の空気を変えるべく、リョーマが積極的に提案する。
「つっても・・・テニスコートがあるから、というかそれしかないから・・・」
突如として始まった、リョーマ&リョーヘイペアvs桜乃&桜夜&可南子の変則マッチ。可南子は基本的にスポーツに興味がないたちだが、こうやって身内で遊ぶときには付き合う。
あくまで遊びなので、非常にゆるい雰囲気で打ち合う。お父さんはちゃんと、お母さんや幼い娘の打てるところに打つ。高く伸びた草が地味に邪魔ではある。
そんな一家を見つめる、獣の目が。しかも複数。
段々とその数を増していき、そして・・・リーダーの合図で襲いかかった!
「うわー!? 猿だー!!」
つづく
廃墟で猿の大群に襲われた一家。果たしてその運命や如何に!? 次回「お母さんのラケット」お楽しみに!