テニプリkids!〜王子様25years after〜   作:ハネ太郎

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第二十一話「人はそれをバブル廃墟と呼ぶ」

 越前リョーマと同じレジェンド世代、学生時代のライバルにして、大企業の総元締めである跡部景吾にお誘いを受け、越前・竜崎一家は軽井沢の別荘地へと向かっていた。だが・・・。

 

 

 

「お、お父さん・・・、カーナビが壊れた・・・何も映らないよ・・・(泣)」

「情けない声を出すな!(汗)とにかく道は続いている!」

 弱音を吐くリョーヘイを叱咤するリョーマ。一家は彼の運転する紅のワンボックスカーで移動していたのだが、道を間違えてしまったのだ。ちなみに助手席にリョーヘイ、後ろの座席は中央の可南子(チャイルドシート)、右に桜乃、左に桜夜。

 

「どこか適当なとこで停まって、助けを呼んだほうがいいんじゃ・・・」

「停まるにしても、こんな山道じゃ。せめて対向車とすれ違える場所じゃないと」

 桜夜の提案はもっともだったが、実行するには場所が悪かった。

 

 車を走らせていると、不意に視界が開けた。さっきまで田舎の山道だったのに、急に都会的な建物の集まる集落? が出現したのだ。

 駐車場に車を停めるリョーマ。全員降りて、状況を確認する。よく見ると、立ち並ぶ建物は住宅ではなく店舗の類いだ。白だのピンクだの、ポップでカラフルな色使い。いかにも若い女性向けを狙った感じだ。

「静かだ・・・。まるで人の気配がない」

 これまで通ってきた山の集落とは明らかに別物。ここはどこだ? リョーマは神経を研ぎ澄ませ、あたりの様子を探ろうとするも・・・。

「まあまあ、ずっと運転してきたから疲れてるでしょ。とりあえず休憩しましょう」

 妻の的確な提言を受け入れることにした。

 

 ピクニック用の椅子とテーブルを広げ、サンドイッチと飲み物で軽くランチタイム。

 一息ついたところで、車の位置が駐車場のマス目とずれてることに気付いたリョーマ、車を動かそうとするも・・・。

「エンジンがかからない・・・」

「うわー、煙吹いてる!」

 どうやら愛車は故障してしまったようだ。

 

 

 

「この車も、ずいぶん長く乗ってたからねぇ。それこそお父さん(リョーマ)の独身時代から」

 桜乃は、リョーマとの思い出を語った。

 

※回想シーン※

 

 全治半年の怪我から回復、退院したリョーマと、彼を治療した桜乃。ふたりは同居を始めた。ある日リョーマの運転で買い物に行くことにした桜乃だったが・・・。

 

「こ、これ、ひとりで運転するには大きすぎない!?」

 彼女が驚くのも無理はない。駐車場から出てきた彼の車は、独り者には似つかわしくないワンボックス。

「どっかの大会の副賞で貰ったやつを、そのまま乗り回してるからな〜」

 こともなげに言ってのけるリョーマ。

「あ〜あ、無頓着。相変わらずの無頓着・・・」

 嘆息する桜乃。貰った車を売って、別の車に買い替えるという発想は出なかったらしい。ふと中を覗いてみた、するとある事に気付いた。

「他の誰かを乗せたこと、ないの? あの、めぐみさんさえも?」

「よく分かったな。アイツ、こんな車じゃなくて黒塗りセダンか高級スポーツカーじゃないとヤダとか言いやがって・・・」

 友人を乗せて走ったこともなさそう。大人になっても、人付き合いは相変わらず不器用らしい。七年の歳月を経ても、色々変わっているようで彼は変わってなかった。なんとなくほっとした桜乃だった。

「お邪魔します・・・」

 助手席に座ると、感慨深いものがある。いよいよ彼のパートナーとして正式に認められたと、勝手に気合いが入る。

「まあ、子供が四人ぐらいいれば、この車もちょうど良くなるかもねw」

「おいおい、誰が生むと思ってるんだ?w」

 

※回想終わり※

 

「それ以来15年、よく働いてくれたわ」

「実際にはそれにプラス2年だ、ハタチの頃に貰ったから。成人祝いを自分で勝ち取ったと言われたのを思い出した」

「それよりどうするのさ、助けを呼ばないと!」

 愛車の労をねぎらう夫婦に、リョーヘイのツッコミが入る。

「まあ慌てるな。いま連絡するから、そこら辺を探検したらどうだ?」

「んじゃ、三人で行ってくるわ!」

 桜夜、リョーヘイ、可南子の三人は、この謎の街を調べることにした。

「あんまり遠くに行かないでね〜!」

 

 

 

 行けども行けども、人の気配はない。聞こえるのは風の音、鳥獣の鳴き声。建物には「ペンション」「リゾートホテル」などの文字が見える。が、長い年月放置されてボロボロだ。

 喫茶店らしき建物を覗いてみても、人もいなけりゃテーブルや椅子もない。数少ない遺物のポスターには「’93」とある。どうやら本当に1993年を最後に人が消えたようだ。

「誰もいない町って、こんなにもボロボロになっちゃうのか・・・」

「ここに住んでた人たちは、どこ行ったの?」

「わからないわ・・・。あるいはここは人が住むところじゃなくて、遊び場の施設なのかも」

 かつて大勢の人が遊びに来ていたであろうプールにアスレチック遊具にテニスコート。どれも皆、割れ目から草が生えて見る影もない。

 

 と、可南子がここで恐ろしいものを発見した。

「にいちゃん、ねえちゃん・・・遊園地、死んでる・・・」

「!!!」

 それはまさしく「遊園地の墓場」と呼ぶべき光景だった。塗装が剥がれたティーカップ、錆びついた観覧車、草にまみれたメリーゴーランド、朽ち果てて崩れた展望台、その他の「死んだ」遊具の数々。

「怖いよう、もう帰ろうよう・・・」

 これ以上いると、本当に可南子が泣き出してしまう。双子は撤退を選択した。

 

 車に戻って、事の次第を報告する双子。可南子はお母さんに抱かれて落ち着きを取り戻した。

「間違いないな・・・ここはいわゆるバブル廃墟だ!」

「何それ!?」

「父さんも話で聞いただけだが、かつて日本中が好景気で浮かれていた、バブル時代というのがあったそうな。そこで、金と暇を持て余した連中相手に、遊び場を提供するビジネスも当然生まれる。ここは週末や夏休みとかで泊まりがけで遊ぶリゾート地だったんだよ」

「こんな山奥で!?」

「山奥だろうと来たんだろうな。隠れた穴場として案外人気だったかもよ」

 ポカンと口を開けて父の話を聞く双子。父の代ですら遠い過去の話なのに、それよりさらに下の世代である自分たちには、まるっきりファンタジーのように思える。

 

「あ、それより助けは呼んだの!?」

 桜夜は肝心なことを思い出した。

「跡部さんに連絡したら、迎えに来てくれるそうだ」

「よかった・・・」

「迎えが来るまで時間があるな。何して遊ぼうか?」

 場の空気を変えるべく、リョーマが積極的に提案する。

「つっても・・・テニスコートがあるから、というかそれしかないから・・・」

 

 

 

 突如として始まった、リョーマ&リョーヘイペアvs桜乃&桜夜&可南子の変則マッチ。可南子は基本的にスポーツに興味がないたちだが、こうやって身内で遊ぶときには付き合う。

 あくまで遊びなので、非常にゆるい雰囲気で打ち合う。お父さんはちゃんと、お母さんや幼い娘の打てるところに打つ。高く伸びた草が地味に邪魔ではある。

 

 そんな一家を見つめる、獣の目が。しかも複数。

 

 段々とその数を増していき、そして・・・リーダーの合図で襲いかかった!

 

「うわー!? 猿だー!!」

 

             つづく




 廃墟で猿の大群に襲われた一家。果たしてその運命や如何に!? 次回「お母さんのラケット」お楽しみに!
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