テニプリkids!〜王子様25years after〜   作:ハネ太郎

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 今回の話は、廃墟好きの自分の趣味が全力で出ましたね。ペンションリゾート廃墟と遊園地廃墟が同居する地があるのかは不明ですが。


第ニ十三話「テニス猿ハヌマーン」

 何故か白い猿に奪い取られてしまった、桜乃お母さんのラケットは、学生時代にリョーマお父さんが買ってくれた、思い出の品だった。

 

 

 

「あれがまだ残っていたなんてな。すっかり忘れてたよ」

 リョーマも自身の記憶を辿る。さっきまで忘れていたはずなのに、あの日、あのラケットを使ったときの衝撃の数々が、昨日のことのように蘇る。

「留学先のドイツの地でも、あのラケットは私とずっと一緒だったわ・・・。あなたに逢いたい気持ちが沸き起こったとき、辛いとき、寂しいとき、ラケットを抱きしめてたの・・・」

 しみじみ語る桜乃。見知らぬ土地での彼女にとって、愛する人との思い出のラケットは、何よりの支えだったのだ。

 

「あれは、正体はわからないが、曰く付きの代物だ。あくまで個人的感想の域を出ないが、父さんみたいに腕の立つプレイヤーが使うと、取り憑かれてしまうようなんだ。あまりに使い心地が良すぎて、誰にも渡したくないとまで思ってしまう。ここからは想像の域を出ないが、しまいには、誰かの血を吸わないと、カバーに収まらないようになったりして・・・」

「妖刀ムラマサかー!」

「妖刀ならぬ妖ラケットね。っていうか、そんなヤバいもんをプレゼントしたお父さんって・・・」

 父の問題発言に、子供たちのツッコミがすかさず飛んだ。

「お母さんが持ってたほうが、一番安全だと思ってたんだよ・・・。強くないから」

「・・・そうでもないわ。向こうの学校で一度だけ盗まれたことあるのよ。彼も後にプロデビューするほど腕の立つプレイヤーだったけど、私のラケットを使わせてあげたら、見事に取り憑かれてしまって・・・。手放したくないと別人のように暴れる彼を、数人がかりでやっと取り押さえた・・・」

「まさかあの猿も、ラケットの魔力に惹かれたんじゃ、あるまいな・・・!? 猿の分際で」

 妖ラケット談義が尽きない夫婦。

 

 

 

「・・・あーもう! 四の五の言ってても埒が明かないわ!」

 桜夜が突然、立ち上がり大声をあげた。

「やるべきことは一つ! そうでしょリョーヘイ!」

「おうともさ! あの猿どもからラケットを取り返してくる! ・・・でも、どこへ行けば会えるんだ!?」

 リョーヘイも呼応する。しかし現実的な問題があった。

「見たところ、遠くに鉄塔が見える方へ去って行ったような」

 お父さんの発言。

「そっちを探すしかないか・・・。じゃあ、行ってくるね」

「おう、頼んだぞ、二人とも!」

「可南子はここに残って、お父さんと一緒にお母さんを守ってほしい!」

「分かった、いってらっしゃい」

 幼い末っ子を仲間はずれにせず、ちゃんと相応の役割を振っておくリョーヘイ。

 

 両親と妹を残し、双子は勇ましく旅立つ。

「・・・愛してるよ、桜乃。そして子供たちも、お母さんが大好きだ。だいじょうぶ、あいつらなら、きっとやってくれるさ・・・」

「あなた・・・可南子、愛してる、私も・・・」

 妻と娘を優しく抱きしめるリョーマ。

 

 

 

 白い猿を追って、とりあえず鉄塔を目指す双子。と、突然彼らの前に一匹の猿が。しかも、こちらへ向かって手招きをしている。

「来いってことか? 罠じゃないかな、どうする?」

「他に手がかりもないし、乗ってみましょう」

 

 案内された先は、先のリゾート廃墟とは別の、しかし同じ目的で建てられ廃棄されたと思しき施設。どうやら猿たちはここを根城にしているようだ。

 辺り一帯に獣の臭い、しかしフンなどはほとんど落ちていないし、アスファルトやタイルの隙間から生えてる草も、先の廃墟と比べると、かなり短い。

「この猿たち、自分たちの住み家を掃除してるってこと?」

 桜夜がいぶかしがると、目の前を山羊や豚の親子連れが通った。牧場かなにかで飼われていたのが野生化したのだろうか。

「なるほど~、草が短いのは山羊が食べるからなのか。そして豚の食べ物は・・・。・・・・・・。」

 リョーヘイは、それ以上深く考えないことにした。

 

 

 

 そしてテニスコートに陣取るは、目指す敵の大将、白い猿! リストバンドとハチマキ型ヘアバンドを装着、かなり本格的だ。さらにラケットを持っているが、桜乃の黒いやつと違う! ボールも籠盛りで用意してある。

「やい、お母さんのラケットを返せ!」

 リョーヘイのその声に、白猿はサーブで応えた。やっぱりスタイルが堂に入ってる。誰かに仕込まれたのだろうか?

「試合しろってこと!? どうするリョーヘイ? 私の心は決まってるけどね!」

「僕たち双子、いつでも心はひとつだ!」

 

 大勢の猿たちを観客に、白猿と桜夜&リョーヘイの変則マッチが始まった。桜夜もリョーヘイも、あたかも人間を相手にするがごとく、ルールに則った的確なショット。猿相手に2対1なのは気にしない。対する白猿は、周囲のフェンスの金網を有効活用して、三次元的な動きからのショット。

「流石に猿だなぁ・・・」

「一応、ルールは理解してるみたいね」

 

 一瞬のチャンス、リョーヘイが仕掛けた!

「ミーティアー!」

 天より落ちる流星のごとく、大ジャンプからの振り下ろしスマッシュ! 見事決まった!

「ウキーッ!!」

 歯をむき出しにして悔しがる白猿。なんかカワイイ。双子も笑みがこぼれる。

 

 サーブ権を獲得、続けて攻撃。激しいラリーの末にボールが高く跳ね上がる。と、次の瞬間! なんと白猿は、空中高く大ジャンプすると、振り下ろしスマッシュを決めた! そう、先ほどのリョーヘイの技を一度見ただけで覚え、使ってみせたのだ!

「技を完コピされた!?」

「所詮は猿真似よ! 怯まず行きましょう!」

 双子もビックリである。

 

「ブロッサムレイン!」

 低い姿勢からのボレー、桜夜の得意技だ。その動きは花が咲くようだと称され、打球は花吹雪を伴い飛んでいく。見事得点したものの、しかしこれまた完コピされてしまった! 花吹雪の球が二人を襲う!

 

「強い技を使うと、こっちにも被害が来るぞ!」

「じゃあどうするの!?」

「決まってる! 真似できない技を使おう!」

 

 次に白猿が繰り出したサーブは、双子をさらに驚愕させた!

「ウッキャーッ!!」

「なっ!? あの球は・・・!」

「スカイクウェイク!?」

 空を振動させる、激しい唸りを伴った豪速球! 完全に不意打ちを食らった双子、避けるので精一杯だ!

「冗談じゃないわよ・・・。昔、お父さんに全治半年の怪我をさせた技が、猿でも使えr」

「桜夜ー! それは思っても口に出してはいけない、絶対に!!」

 リョーヘイは禁句を全力で封じた。

 

「しかし、これで対処法は決まった。おい猿! さっきの球、もっかい撃ってこい!」

「ほらほら、バッチこいカモーン!」

 双子の挑発に、白猿は全力で応じた。スカイクウェイクが飛んでくる!

 当たれば病院送り確定の球を、

 

「「ダブルブロック!!」」

 

双子はふたりがかりで受け止め、そのまま返す!

「どうだ、こいつは流石に真似できないだろう!」

「ウ・・・ウキ・・・」

 

 

 

「そこまでだ、ハヌマーン! 勝負あったぞ!」

 不意に轟くは、父・越前リョーマの声だ! 母と妹もあとからついてきた。

「お父さん! ハヌマーンって、こいつの名前?」

「なんとまあベタなネーミング・・・って、そもそも何で知ってるの!?」

 双子の問いに、父の答えは。

「ついさっき思い出した。その白猿と、それから恐らく周囲の猿たちもだが、ロメロ木崎の飼っていた猿だ」

「ロメロって・・・ああ、昔よく、家に遊びに来ていたおじさん!?」

 

 ロメロ木崎とはかつて存命だったプロテニス選手で、若き日のリョーマを(心ならずも)得意技・スカイクウェイクで病院送りにした張本人だ。ある意味、間接的にだがリョーマ桜乃夫妻が結婚するきっかけを作ったとも言える。彼自身もこのときリョーマを見舞ったのが縁で、その後も親しく付き合い、その交友はロメロが数年前に亡くなるまで続いたのだ。

 

「わたし、知らない・・・」

「カナちゃんは、まだ生まれてなかったからね〜」

 可南子を抱っこしている桜乃も思い出したようだ。

 

「ハヌマーン、俺を覚えているか。昔、ご主人様が生きていた頃は、よくお招きに参上したもんだ」

「ウイ〜ウイ〜」

「話は尽きないがとりあえず・・・桜乃のラケットを返せ!」

「ウ・・・キ!」

 リョーマの言葉を受けて、ハヌマーンは配下の猿に合図を出す。すると群れの中から出てきた子猿たちが、うやうやしくラケットを差し出す。

「・・・確かにこれは、私のラケット! ありがとう・・・」

 漆塗りのごとく黒光りする、美しきラケットを桜乃が受け取る。

「・・・でも、後で一応洗っておかなくちゃ・・・」

 

 

 

 スポーツ界きっての愛猿家(あいえんか)、猿のトップブリーダーであったロメロ氏は、邸宅に猿を飼っていたのみならず、別荘地に自前のモンキーパークを所有していた。

「ロメロさん亡き後、そこの猿が野生化したってこと?」

「一応、どこかの会社がまるごと引き取って管理してたって聞いたんだがなぁ」

 後に判明したことだが、モンキーパークを引き取った会社は倒産、別荘地も土砂崩れなどの災害で崩壊。猿たちは囲いを破って自由になったのだ。

 

「ハヌマーンは、ロメロさんといつも一緒だったからな。テニスもご主人様についてて覚えたんだろう」

「それにしたって、必殺技まで覚えるなんて・・・猿のレベル超えてるよ!」

 リョーヘイが感嘆の声をあげる。

「ご主人様の事を思い出したのか? それとも・・・思い出して欲しかったのか? どっちにしても、もうこんな悪さはするなよ!」

「ウキ・・・」

 ハヌマーンとその仲間たちは、反省と恭順の意を込めて、めいめいその場でリョーマに向かってひざまずいた。

「さ、これでもう猿たちは悪いことしないぞ」

「すご〜い!」

 可南子は素直に驚く。

 

「でも、本当は猿の恭順のポーズって、よつん這いで尻を向けるんだけどね」

「しっ、余計なこと言うな」

 双子がこっそりつぶやく。

 

 

 

 友となったハヌマーンたちと越前竜崎一家が、遊園地跡地でたわむれていると、上空からヘリコプターが! 何人もまとめて乗せられる大型だ!

「よう、俺様が直々に来てやったぜ、ああ〜ん?」

「ああ、すいませんね跡部さん。お手数かけます」

「ご無沙汰してます」

 挨拶する夫妻。着陸したヘリから降りてきたのは、リョーマの友人、跡部景吾だ!

「で、これがてめぇのガキどもか。そっくりだなw」

「はじめまして、越前リョーヘイです!」

「同じく、竜崎桜夜です!」

「竜崎可南子です」

 子供たちは、跡部と直接顔を合わせるのはこれが初だ。

 

「って、ロメロ木崎のハヌマーンじゃねえか!」

 跡部は、周囲の猿たちにすかさず反応した。

「なんだ、知ってたんすか」

「別荘立てるときに周辺リサーチは欠かさねえよ。とりあえず乗れ、遅くなっちまう」

 

「ハヌマーン、お猿さんたち、バイバーイ!」

「また遊びに来るからな〜!」

 

 空を見上げて、一家を見送る猿たち。ヘリコプターは一路、跡部の別荘へ飛んでいく。

 

              つづく




 跡部景吾の別荘に来たリョーマ一家は、彼の息子ジュニアと対面する。偉大な父親を持った二代目の苦労を知れ! 次回「ジュニアの傷心(ハートブレイク)」お楽しみに!
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