テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
旧友の跡部景吾に招待された越前リョーマ一家。大きなヘリコプターで山中の別荘に到着!
・・・と、いざヘリから降りる段になって、何故かリョーマお父さんはあたりをキョロキョロ。景色が見たいと言うより、何かを警戒している?
「どうしたの、お父さん?」
息子のリョーヘイが声をかける。
「・・・あ、分かった! 仕返しされると思ってるんでしょ、バラエティ番組で跡部さんにドッキリ仕掛けたから!」
娘の
「・・・んなガキみてえなことしねーから、さっさと降りろ! 後がつかえてんだぞ!」
跡部に促されて、ヘリポートに敷かれたレッドカーペットに一歩、足を踏み入れるリョーマ。と思いきや・・・?
「と、みせかけて、うりゃあ!」
「うわぁ!?」
その挙動は疾風のごとし。たちまち跡部の目と鼻の先にテレポートしたリョーマ、すかさず彼を投げ飛ばした!
ぶうん!
ドガシャーン!
ヘリから降りた所に敷かれたレッドカーペットに叩きつけられた跡部、突如空いた穴から奈落の底に落下!
「ぎゃっ!」
「だ、旦那さま〜!?」
山中に使用人一同の悲鳴が木霊する。
「まだまだだね。跡部さんよ、アンタの目論見なんざこっちはお見通しだぜ!」
ヘリの出入口から身を乗り出し穴の底を見下ろすリョーマ、逆ドッキリ大成功で上機嫌である。
「うるせぇ、サービスでわざと引っかかってやったんだ!」
衝撃吸収ウレタンがたっぷり敷きつめられた穴の底から、跡部の負け惜しみが響いてきた。
「いくつになっても、大人気ないひとたちなのね・・・」
リョーマの妻にして彼同様に、学生時代から跡部を知る桜乃は、後方から呆れ気味につぶやく。
「・・・ていうか、なんでヘリポートに落とし穴掘ってあるの?」
桜乃お母さんに抱っこされてる、リョーマ夫妻の次女の可南子が当然の疑問を冷静に口にする。
「本来は車用のエレベーター昇降口なのを、急遽板貼ったりして作りました」
疑問に答えるは、執事の駒ヶ根さん。
そんなこんなで別荘に到着した一行。流石に世界的企業の跡部財閥、ドーム○個分という比喩が安易に思える。いや、彼らの場合はテニスコート○個分か。
敷地の中央に家族用の滞在施設とイベント施設、その周囲に使用人用宿舎、そして来賓用宿泊施設。その間をつなぐ庭園その他も芸術的に整備・管理されている。
「お風呂とご衣装の支度はできております。入浴とお着替えが終わる頃には、こちらもパーティーの支度が整いましょう。それまでお待ち下さい」
「わかりました」
駒ヶ根さんの説明にうなずく一同。気がつけば夕焼けがまぶしい時間。跡部は使用人たちに指示を出すべく忙しく立ち回る。
来賓用の宿泊施設は、上を向いても下を向いてもザ・ゴージャス、絵にも描けない美しさ。とあるアラブの王族とお揃いの調度品だという浴室は、まばゆくキンキラキンで目が開けられなかった、とは桜夜の弁。
日がすっかり落ちた頃、大ホールにて催されたのは・・・跡部景吾の長女、恵子の二十歳の誕生パーティー。
列席者たちは友人、親類縁者、跡部グループの重役一同、各界の著名人たち、エトセトラエトセトラ。プロのカーレーサーである恵子のチームメイトにスポンサー、そしてもちろん越前リョーマ一家。
「あとべけいご?」
「あとべけいこ・・・」
字は違うが、恵子の名前が父親の名前を踏襲したものだと、ふと気付いた双子。
タキシードとドレスで着飾り、ご馳走に舌鼓を打つ一家。バイキング形式の料理を皿いっぱい確保する双子、お母さんに手伝ってもらいながらステーキを切り分け、口いっぱいに頬張る可南子。
「よう、楽しんでるか? ああ〜ん?」
「おじさま、今日は来てくださって、ありがとうございます!」
宴もたけなわの頃、リョーマのもとに跡部景吾とその妻、そして娘の恵子が訪ねてきた。
「恵子ちゃん! しばらく見ないうちに大きくなったなぁ・・・。今や世界に名だたる美人すぎるカーレーサーだもんな」
「もう、嫌ですわおじさま」
リョーマのリアクションが、完全に親戚のオジサンのそれである。
さらに傍らには、リョーヘイたちと年の頃がそう変わらないような少年・・・。
「おや、その子もあんたの子かい?」
「会うのは初めてか? 息子のジュニアだ」
「はじめまして・・・」
ジュニアと呼ばれた少年は、緊張ぎみに挨拶する。
「よろしく、ぼくはリョーヘイ、こいつは桜夜。桜の夜と書いてさくや。で、あそこで踊ってるのが可南子」
挨拶がてら姉と妹を紹介する。可南子は他の来賓の連れてきた幼児に誘われてダンスパーティー中である。最初は恥ずかしがっていたが、お母さんに促されて幼稚園で覚えたばかりのミツバチダンスを披露する。
「で、ホントの名前はなんてーの? アンタ」
桜夜がすかさず質問する。
「ホントの名前って・・・?」
「いやだから、ジュニアって呼ばれてるけど、本名はなんなの」
「・・・姓は跡部、名は景吾ジュニア!」
ためらいがちに答える。
「えっ、まさか・・・ジュニアって本名!? ニックネームじゃなくて!?」
「わりいかよー! 人が気にしてることをお前らは!?」
激怒するジュニア。どうやら思い切り地雷を踏んだようだ。
「お姉さんの恵子さんといい、跡部のおじさんの名付けセンスっていったい・・・?」
半ば呆れるリョーヘイだった。
宴から一夜明けて、朝食を済ませたリョーマ一家に、跡部が声をかけた。
「よう、グッドモーニング!」
「おはようっす、何か用すか、跡部景吾シニアさん?」
「変な言い方するな!?」
「だって息子がジュニアなんだから、親のアンタはシニアだろ・・・」
「それはともかく・・・。お前の車をうちのスタッフが見たところな・・・」
故障し、バブル廃墟に置いてきたリョーマの自家用車。どうやら跡部の部下が回収したようだ。
「・・・廃車にしたほうが早いってよ」
「やっぱり!」
リョーマも最悪の事態を予想してたが、やはりショックだ。
「そこで、だ。ものは相談なんだが・・・ちょっと来てくれるか? できれば家族総出でな」
促され、跡部の後をついて行くリョーマ一家。宿泊施設から地下通路を通り、広い駐車場に出た。古今東西、種々様々な車が置いてある。よく見ると消防車や救急車、土木工事車輌まで! 来賓や使用人の車ではなさそうだが・・・?
「跡部さん・・・これは?」
「俺のコレクションだ。でも飽きちまったからな、ひとつやるよ」
「アンタそんな、ミニカー感覚で実車集めるなよ! しかもタダで譲るって、これだから金持ちは!」
リョーマには理解しがたい、金持ちセレブたちの感覚。いや収入や社会的地位ならリョーマも充分セレブレベルなのだが。
「カナちゃん、跡部のおじさんがクルマくれるって。どれがいい?」
「ん〜・・・」
桜乃お母さんの言葉を受けて、幼児なりにコレクションの観察を始める可南子。ちなみに彼女のライブラリには、兄から受け継いだ自動車図鑑がある。
「このスポーツカー、確か三桁万円するんだって!」
「流石にこのリムジンは普段使いじゃないな・・・」
双子もあちこち見て回り、口々に声を上げる。
「やっぱりなんだね、家族全員で乗れるやつにどうしても目が行っちゃうよね」
「おめーも大概マイホームパパだな、ああ〜ん?」
お父さんたちはお父さんたちでふたり、駐車場のコレクションを鑑賞する。
「どうだこいつは? このオープンカーモデルはなかなか手に入らないぞ」
「オープンカーは2回乗って2回とも、大波や爆弾豪雨でびしょ濡れになったから却下」
若い頃、桜乃とのデートでひどい目にあったらしい。
と、不意に可南子がなにかに反応し走り出す。
「あ、カナちゃん! 走ると危ないわよ!」
お母さんの悲鳴を尻目に、可南子が辿り着いたのは一台のSUV。鮮やかなオレンジ系・・・例えるなら「柿」の色だ。
「そいつが気になるのか? お〜い、可南子がこれがいいって〜!」
お父さんも悠然と駆けつけ、双子に声をかける。
「他に候補もないし、いいんじゃない?」
「てか全部は見られない! ぶっちゃけ疲れた!」
悲鳴をあげる双子も集まってきた。
「俺はもとより、
呟きつつ、運転席に腰掛けるリョーマ。
「俺は昔、そいつの色違いでこのあたり一帯を走り回った。なかなかいいもんだったぞ」
「へ〜ごきげんじゃん?」
跡部の説明を受けつつ、視界やシートの乗り心地、ステアリングその他の位置をチェックするリョーマ。ほとんど乗られていない、新品同様のクルマだ。
「じゃ、次はお母さん・・・」
夫に促され、入れ替わりに運転席で乗り心地を確かめる桜乃。
「いいクルマだと思いますけど・・・実際に動かして見ないことにはなんとも・・・」
「なら、外のテストコースで確かめりゃいい」
桜乃の言葉を受けて、跡部はスタッフに命じ、テストコースまでのハッチを開かせた。
薄暗い地下駐車場に差す一条の光めがけて、柿色のSUVが走る。リョーマと桜乃夫妻に可南子、そして跡部を乗せて。ちなみに可南子はちゃんとチャイルドシートを装備している。
走り去るクルマを見送る双子に、背後から声をかける影ひとつ・・・。
「おい・・・リョーヘイつったな?」
「あ、ジュニアくん? なんか用?」
「不躾だが・・・俺と勝負しろ!」
つづく
突然の跡部景吾ジュニアからの試合の申し込み。ヤツの実力は果たして父親譲りなのか? 次回「その名はハーキュリー」お楽しみに!