テニプリkids!〜王子様25years after〜   作:ハネ太郎

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 読者(いるかどうか分からんが)諸氏に申し上げます。新作投稿前にどしどし改訂します(2023年10月)


第二話「男たちの再会」

「お母さん、桜夜(さくや)、リョーヘイ! お前らもうちょっと分かりやすい所にいろよ! 散々探したぞ!」

「あ、お父さん♡ カナちゃん♡」

「ほら、噂をすれば。あなた〜♡」

「越前リョーマ! 久しぶりだな!」

「どうも、ご無沙汰してます、大石先輩」

 

 

 

 桜夜&リョーヘイの父親にして、竜崎桜乃の夫、越前リョーマ(37)だ! 上物の上下スーツでバッチリ決めた彼は、プライベート変装用の伊達眼鏡を取りつつ挨拶する。髪の毛の色は本来は少年時代同様の深緑だが、今日は変装の一環で黒く染めている。

 そして彼の腕に抱かれている、父親譲りの緑髪の幼子は、夫妻の三人目の子、竜崎可南子(4)だ。こちらは幼稚園の式典用制服を着て、父親にしがみつきつつスマホを握り締めてる。カンのいい読者諸氏ならお気づきだと思うが、かの一家では男性は『越前』女性は『竜崎』の姓を名乗る。

 

 

 

「可南子がスマホの電波を辿るアプリを思い出してくれて、やっと見つけたよ。ほら、カナちゃん、お母さんのところへ行くか!」

 

 リョーマお父さんにスマホを返して、桜乃お母さんに抱かれる可南子。無口でおとなしい、マイペースな彼女は、たまにそのひらめきと行動力で周囲を驚かせる。

 

「二人ともお疲れ様。カナちゃん、いい子にしてた?」

 幼子を撫でつつ夫に尋ねる妻。

「特に泣きも騒ぎもしない、いつもどおりだったよ。そっちは?」

 幼稚園の入園式に出席してきた夫。

「こっちも何の変哲もない入学式、平和そのものだったわ。あ、先輩、この子がさっき言った三人目の可南子です。ほらカナちゃん、ご挨拶して?」

 そして幼子を先輩に紹介する。

「ああ、そういえば、何年か前に赤ん坊連れてたのを思い出した。あの子がこんなに大きく・・・。こんにちは」

 大石は身をかがめて、桜乃の胸の高さの可南子に視線を合わす。

 

「・・・こんにちは」

 お母さんの腕の中で萎縮しつつ、小声でなんとか挨拶する可南子。

「いきなり変なとこ連れてこられたから、緊張してるな。すいませんね先輩」

 リョーマは大石に娘の非礼を詫びる。

「無理もないよ。ところで・・・」

 気にしないと伝え、大石は唐突に話題を変えた。

 

「こないだのTV見たぞお前! すっかりタレント稼業が板についちゃってさ、笑っちまったよ」

「そーゆー先輩こそ、お似合いですよ、その顧問ジャージ。けっこう調子良いみたいじゃないスか、おたくのテニス部。てか俺たちの後輩か」

 

 ここで言う顧問ジャージとは、かつて竜崎スミレが着用していたピンク色のジャージ・・・ではなく、彼らが学生時代に着用していた、俗に言う「青学ジャージ」をモノトーンにアレンジした物である。現在選手たちが着用しているものとは、またデザインが異なる。

 

「スミレ先生が長年築き上げた伝統を守りつつ、新風を吹かせなければならない。毎日が手探り状態でいっぱいいっぱいさ」

「ま、俺でよければいつでも相談に乗りますよ、先輩」

 思い返すと、学生時代から大会の時は名門部を率いて強敵と相対するプレッシャーでいっぱいいっぱいだった副部長の大石。そして今また顧問として、名門の重みをその背に負う。それを知るリョーマは、先輩に精一杯の労いの言葉をかけた。

 

 

「ま、俺たちの話は置いといて・・・」

 言いつつエア荷物を移動させるパントマイムをするリョーマ。けっこう古典的なやつだ。

「今日の主役はこいつらなんスよ。前にもお話しした通り、こいつらテニス部に入りたいそうなので。なにとぞ面倒見てやってください」

 双子の息子と娘を、改めて先生に引き会わせる。

 

 

 

 大石先生、真剣な表情でリョーヘイと向かい合う。

「リョーヘイくん・・・。君も知っての通り、先生と君の父さんは親友同士だ。しかし、だからと言って・・・いや、だからこそだ! 贔屓も手加減も忖度もなしだ、ビシビシ鍛えさせてもらう!」

「お手柔らかにお願いします・・・」

 これから始まる日々に期待と不安が半分こなリョーヘイが、少々引き気味に返事。

「是非そうしてやってください。コイツちょっと甘やかし過ぎたトコあるんで」

「父さん余計な事言わないでよ」

 一同、笑。

 

「そして桜夜ちゃん。君がお世話になる女子テニス部の顧問は、岸田銀狐(ぎんこ)先生だ。今から一緒に挨拶に行こう!」

「はい!」

 大石先生、桜夜と共に去っていく。その背中を見送る一同。

 

「・・・お父さんとお母さんも昔、ここの生徒だったんだよね・・・?」

「そうよ」

「懐かしいな、何にも変わってない・・・」

 25年前、アメリカの地からふらりと青学にやって来たスーパールーキー、越前リョーマ。そんな彼に、竜崎桜乃は恋をした。それがすべての始まりだった。

 

 

 

 ところ変わって、体育館前。岸田銀狐先生(28)に桜夜を引き合わせる大石先生。岸田先生の横には細い眼鏡の女子生徒がひとり。

 

「・・・というわけで、おたくに入部希望のこの子です」

「お願いします」

 桜夜は深々と頭を下げる。

「ふ〜む、あの越前リョーマの娘にしてなおかつ、曽祖母が伝説の指導者、竜崎スミレときたもんだ。こりゃまた目がくらむようなサラブレッドだね」

 入部届とにらめっこしつつ、感嘆の声を漏らす岸田先生。

 

「名選手の血筋だからと言って、御子息・御息女にも同様の才能を求めるのは、あまりにも短絡的な思考では?」

 横の女子生徒が口を挟む。口調は穏やかで丁寧だがツッコミはキツイタイプのようだ。

「わーってるよ、みどりこ。でもさ、世間はなかなかそうは見てはくれないのさ。カエルの子はカエル、名選手の子は名選手。それはアンタ自身が身にしみてるはずさ」

 先生に『みどりこ』と呼ばれた眼鏡の女子生徒も、どうやら名のある選手の血筋のようだ。

「はい・・・生憎と父はプロではありませんが」

 アマチュアでその名を轟かす、知る人ぞ知る選手らしい。

 

「竜崎桜夜、だったね。アンタもこれまで散々そういう目に晒されてきたんだろうが・・・青学(ここ)でやるからには、もっと酷くなるよ。何しろ名門だからねぇ、ライバルからの評価も自然と厳しくなるのさ。大石先生にアンタの父さん、いわゆるレジェンド世代も通った道さ」

「・・・肝に銘じます」

 岸田先生の言葉が突き刺さる桜夜。覚悟はしていたはずだったが、やはり重い。しかしその重みを本当に実感するのはこれからなのだろう、とも考えた。

 

 越前リョーマが学生テニスプレイヤーとして活躍した前後数年間、それに呼応するかのように全国各地で綺羅星のごとく、歴史に名を残す学生選手たちが多数出現した。故に現在、彼らは『レジェンド世代』と呼ばれる。

 

 

 

「・・・と、入部前からあんまり脅しても可哀想だ、逃げられてもかなわん。話題を変えよう。竜崎スミレ先生はかつてこの学校の教師で男子テニス部顧問だった、大石先生もここの生徒で部員としてお世話になった。そうだな大石くん?」

「はい」

 年上の大石をくん呼びして許される、これは彼女の人徳の為せる技か。

「実はアタシも、大石くんとは世代は違うんだけど、スミレ先生にお世話になったことがあるのよ」

「あれ? 大ばあちゃんって確か、男子の指導しかしてこなかったんじゃ?」

 桜夜(およびリョーヘイ)はスミレを「ひいおばあちゃん」ではなく「大ばあちゃん」と呼ぶ。

「・・・と言っても、性転換後の元・男とかそんなんじゃないからね(笑)。部活とは別に、個人的に見い出されて弟子になってたのよ」

「指導者の跡継ぎが欲しかったってことだな。男子テニス部の後継者は俺、そして自分の代では手が回らなかった女子テニス部の後継者は岸田先生ってね」

 先生の手腕に、改めて感服する大石。

 

「しかしなんだね、えらい事だね。これで我が女子テニス部には『レジェンドの子』が四人もいることになっちまう」

 しれっと重大な事実が岸田先生の口から飛び出した。

「四人!? って・・・桜夜ちゃんとみどりこちゃんと、あと二人は!?」

「今さっき、アンタたちと入れ違いで挨拶に来たのよ、親子で」

「いるのか・・・我が校のOB、レジェンド世代、そして俺と同じ『青学メンバー』が!」

 大石はにわかに戦慄を覚えた。

 

 

 

 一方、こちらは桜夜以外の越前一家。数え切れない思い出に彩られた、テニスコートの前に佇む。

 

「ここも変わってない・・・。かつてお父さんたちもここでプレイして、お母さんはこのフェンス越しにいつも見てたのよ」

「僕や桜夜もここで戦うことになるのか・・・!」

 お母さんの言葉を受け、興奮気味にフェンスにしがみつくリョーヘイ。ちなみに桜夜の女子テニス部は、こことは違う第二テニスコートを主に使うのだが、彼等はまだ知らない。

 

 

 

 ・・・リョーヘイがテニスコートを見つめていると、ふと、無人のコートの中央に人影が見えた。それは次第に形を成し、現れたのは・・・越前リョーマ! しかも、今や記録映像でしか見られない、少年時代の彼だ! 驚き、目を見張るリョーヘイの方に視線をやる少年リョーマ。未来の息子に興味が出たのか、やがて体ごと向き直り、左手のラケットをリョーヘイに刺すかのように向け、これまた映像でお馴染みの不敵な笑みを浮かべる。・・・まるで息子を挑発するかのように。

 

 

 

「どうだ、リョーヘイ。歴代部員たちの血と汗と涙が染み付いたテニスコートは」

 不意にお父さんの声、そしてリョーヘイは夢から醒めた。春だというのに、やけに冷たい汗が頬を伝う。いつの間にか少年リョーマは消え、コートは再び無人になった。

「・・・すごい、や」

 素直な、精一杯の感想、しかし間抜けな答えをしてしまったとリョーヘイは思った。

 

 ちなみに可南子は興味がないらしく、その間も両親の周りを付かず離れず、適当に遊んでいる。

 

 

 

「た・・・大変だ〜!」

 と、そこへ大石が、血相を変えて走ってきた。その後から桜夜、岸田先生、みどりこと続く。リョーマたちがいるならここだろうと当たりをつけてコートまで走ってきた、その予測が図に当たった。

「どうしました先輩、そんなに慌てて」

「聞いて驚け、俺たちの仲間が来てるんだよ! 今日、この青学に! 子供二人連れて!」

 

「それは、何を隠そう、俺だ!」

「お・・・お前は!」

                  つづく




次回予告
 リョーマ、大石に続く第三の青学メンバーとは誰か!? その子供も気になるぞ! そしてみどりこの正体とは!? 次回「俺達が青学メンバーだ!」お楽しみに!
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