テニプリkids!〜王子様25years after〜 作:ハネ太郎
ここは都内某所の「河村寿司」。
「子ども達の入学&入園祝いと」
「我々の再会を祝して」
「かんぱーい!!」
元・青学メンバーと、その子供たちによる盛大なパーティーが行われようとしていた。
「大将のタカさんも、レジェンドだったんだね!」
「おうよ、波動球使いのタカさんだぜ!」
タカさんこと河村隆(40)は、リョーマたちと同じ時代の青学メンバー。ラケットを持つと性格が変わることでも有名なパワーファイターだったが、家業の寿司屋を継ぐ修行のために中学卒業と共にテニスを辞めていた。ちなみに越前一家は何かのお祝い事ではちょくちょくこの店を利用するため、子ども達とも顔馴染みである。
「大将、寿司は俺っちがやりますんで、大将はお友達と楽しんでてください!」
「おお、すまんな!」
河村の弟子の木彫くんが、厨房から声をかける。この場で包丁を預けられるほどだから、その腕前と信頼の高さはうかがえよう。
「お茶をお持ちしました〜」
「こよみちゃん、ありがとう〜」
河村暦(7)は河村隆の娘。この店の看板娘である彼女の今日の主な任務は、友人の竜崎可南子の相手をする事だ。よく考えたら、彼女も今日始業式のはずだ。
「奥さんはまた寝込んでるのか、大変スね」
リョーマはこの場に姿を見せない先輩の奥方を思いやる。
「なあに、心配ない、いつものことさ」
あっけらかんとした返事が返ってきた。
「しっかし懐かしい連中が揃ったな!」
「ここにスミレちゃんがいたら完璧だったのにな」
大石&菊丸の(元)ゴールデンペアは、この場に恩師の竜崎スミレがいないことを少しばかり残念がった。厳しくも暖かい、青春のメモリー。
「大ばあちゃんは今、世界中を廻ってるから」
「指導者は引退しても、元気は有り余ってるみたいで・・・また近々、何か始めるんじゃってみんな噂してますよ」
スミレから見てひ孫の桜夜と孫娘の桜乃は口々に答え、遠い空の下の(大)おばあちゃんを思い天を仰ぐ。今頃はオーストリアのウィーンだろうか。
「先生も気になるが、残り四人はいま何やってるんだ?」
手塚はこの場にいない仲間たちに言及する。
「乾先輩なら、こないだ学会で会いましたよ」
「!?」
桜乃の衝撃発言に、男性陣がにわかに色めき立つ。
「アルケミー製薬の研究員として、相変わらずスポーツ選手用の栄養ドリンクやら、サプリメントの研究に血道をあげているそうですよ」
「ううっ・・・!」
「???」
乾貞治(40)は学生時代、独自の研究を重ねてオリジナル栄養ドリンクを作り続けていた。その研究成果「乾汁」は、主に罰ゲームという形で他の学生たちに供され、多数の犠牲者を出した。その味を思い出し、戦慄を覚える元・青学メンバーと、その様を見てきょとんとする子供達であった。
今度はリョーマの証言。
「桃城武先輩は、警察官やってます。ちょっと前まで駅前交番にいたんですが、異動になっちゃいましたね。自転車で商店街を廻ったりしてさ」
「そうそう、前にこよみが駅前で迷子になったとき、交番でバッタリ会ってビックリしたよ」
タカさんはその時の光景を思い出した。
「海堂薫は、埼玉の方で蕎麦屋やってるそうだ。彼の息子さんの
「・・・青大将! あいつもレジェンドの子だったのか!」
「どうしたの!?」
大石の発言を受けて急に大声をあげるリョーヘイ。驚く菊丸。
「小学校最後の大会で、コテンパンにされたばっかなんスよ。なぁリョーヘイ」
「私も観戦してたけど、傍から見ててもアイツ、他の出場者から頭一つ抜きん出て・・・圧倒的に強かった」
リョーマお父さんと姉の桜夜が語る。お父さんは仕事で観戦は叶わなかったが、見ていたら海堂薫の子だと気付いただろう。
「埼玉は浦和か・・・。うちが関東大会までコマを進めたら、顔を合わせるかも知れないぞ」
「絶対に、リベンジしてやる・・・!!」
青学テニス部で、大石先生の指導のもと、当面の目標は大会出場、そして青大将へのリベンジ。決意を新たにするリョーヘイであった。
「あとは・・・不二周助か。ヤツはいま、何処で何をしているんだ!?」
「以前、テレビ番組の企画で捜してもらったんですが・・・北海道の方にいるらしい、ってトコまでは突き止めて、それっきりなんスよ」
手塚の問いに答えるリョーマ。タレント活動しているとこういうこともできる。
「俺もたまたまテレビ見ててズッコケたぞ! 出てこんのかーい! って」
「ある意味、一番野放しにしちゃいけない奴が消息不明って、コワイなぁ・・・」
学生時代「天才」の尊号を欲しいままにしていた男は、年月を経てさらに余人の預かり知らぬ存在になっていた。
「みんなそれぞれ別の道でよろしくやってるんだな。手塚も今や日本を代表する文豪だし」
「よせ、ただのしがない物書きだ」
大石の発言を少し照れ気味に否定する手塚。
「たまたま趣味でネットにあげた小説が、口コミで評判になって・・・あっと言う間にベストセラー!」
「俺がアフリカにいる間に、色々と面白いことになってる(笑)」
「そういうお前はどうなんだ」
「今は流石に引退して、学校開いてアフリカの少年少女にテニス教えてる、娘たちも含めてな」
「その成果があのダブルスか。越前、お前のとこのふたりも・・・」
「ちょ、ちょっと、ちょっといいスか?」
盛り上がるゴールデンペアに、突然口を挟むリョーマ。
「どうも皆、こいつらのテニスに関して大きな誤解があるようでして・・・おい、桜夜、リョーヘイ! ハッキリ教えてやれ」
「僕たち、お父さんにテニス教えてもらったことなんて、一度もないんです」
「そうそう。遊びで打ち合うことなら今でも家族みんなでやってる。でもコーチってのはなかったし、私達もあえて教えを請わなかった」
「・・・なんと!」
「俺たちてっきり・・・!」
「あの技の数々は、おチビが考え出したもんだとばっかり・・・」
衝撃を受ける一堂。
「そりゃ、普通は菊丸先輩や手塚部長のとこみたいに、親がやってたスポーツを我が子に仕込んで『父さんと一緒にやろうな』とか『立派なプロになるんだぞ』ってやるんでしょうけど」
― 回想シーン ―
妻・桜乃が桜夜&リョーヘイの双子を出産して数日後。産院の病室にて。
「この子たちに、テニス教えないの?」
「ああ。少なくとも、こいつらが大きくなって、ぜひ教えてくれと頭を下げにくるまでは、俺からは何もしないつもりだ」
「・・・一応聞くけど、なんで?」
「・・・俺みたいになって欲しくないからさ」
「・・・?」
「俺は、小さなガキのころからテニスプレイヤーだった。練習したり大会に出たり、生活のすべてがテニスを中心に廻っていた」
「・・・」
「中学生になって日本に、青学に来るまでは、友も、恋も知らなかった。性格も人付き合い悪くて、口が悪くて、生意気で(ry」
「・・・普通の男の子になりたかった?」
「・・・好きでやってたことだ、後悔なんてしてないよ、これが俺の人生だ。でも、同じことを自分の子供にやらせたいかと問われたら、答えはハッキリ、ノーだ」
「・・・」
「こいつらには、テニスだけじゃない、もっといろんなことに目を向けて欲しいんだな。末は博士か大臣かって、下手に英才教育とかやって、逆にその可能性を潰してしまうとかバカじゃんね」
「子供の生き方を親が決めちゃうのは、やっぱり良くないよね・・・」
「それよりも、俺はこいつらに自由にさせて、その行く末を見守ることにするよ。そしてやりたいことや好きなことが見つかったら、親として全力で応援するぞ!」
「私も!」
ベッドの赤ちゃん二人を、優しく抱き上げるお父さん。
「桜夜、リョーヘイ、お前らはどんな風に育ってくれるのかな・・・」
子供たちに顔が大いにほころんでいたのがリョーマお父さん。が、不意にその視線が鋭くなり、病室の扉に向けられた。
「・・・ということで、そこの扉の向こうに隠れている、おじいちゃんおばあちゃんたちも、こいつらに勝手にテニスを仕込むなんてしないように! くれぐれもお願いします」
扉の向こうから声がした。
「おい見抜かれてるぞ、スミレちゃん」
「お前のことだろ、南次郎!」
― 回想終わり ―
「でも結局、この子たちもテニスやってるよね!?」
「そりゃ、親がテニス選手だから、親の真似してラケット握るぐらいはするでしょ」
「止めなかったのか?」
「言ったでしょ、自由にさせるって。テニスするにしてもしないにしても、こいつらが『自分の意思で選んだ』ってのが重要なんスよ。テニスを嫌いじゃないなら何でもいいやって感じで」
「なるほど・・・」
リョーマの説明に合点がいった、元青学メンバーたち。
「んで、そうやって自由にやらせていたら。こいつら自主的にルール覚えて、独学で技を編み出しやがった(苦笑)」
「マジで!?」
「誰か師匠がいるとかじゃないのか!? とても信じられない!」
・・・と思いきや、またしても衝撃の事実。
「そういうことにしといてください、お願いします」
リョーヘイは懇願した。
「親の手前、ひた隠しにしているけれど」
「絶対にあれは、裏で先生が仕込んでいるな」
「或いは南次郎さんか?」
「こらそこ! 大人同士でひそひそ話しない!」
「話は変わるけどさ。リョーマと桜乃ちゃんは夫婦なのに、なんで苗字が違うの? ・・・もしかして、もう、離婚してる、とか?」
「!?」
菊丸の質問、またまた驚く一同。さっきからこの連中は爆弾発言ばかりである。
「ちょ、お前、他所様のデリケートな問題をそんなあっさりと・・・! しかも!」
大石、大慌てであわあわしている。
「はあ、忘れてるなら教えて差し上げましょう・・・。うちの夫婦の秘密を!」
つづく
宴の席でリョーマが語る、夫婦の秘密とは? 結婚を決めたあの日に何があったのか! 次回「リョーマと桜乃、夫婦別姓の話」お楽しみに!